ブランド靴の構図
【ハノイ/ベトナム 24日 AFP】欧州連合(EU)のピーター・マンデルソン(Peter Mandelson)通商担当委員は23日、中国製とベトナム製の靴に反ダンピング税を課すと発表した。欧州とアジアの貿易相手国との間で、緊張が再燃する可能性があるなかでの決定だった。写真はハノイ(Hanoi)の靴工場で働く従業員(2005年9月撮影)。(c)AFP/HOANG DINH Nam
世界の生産拠点に躍り出たアジア諸国の勢いに見かねて、EU諸国も対策を練り始めている。それでもいまのところ、ブランドの持つ表面上のネームバリューだけは変わらない。実際にはヨーロッパ発信の有名ブランド品も実はメイド・イン・チャイナであったりするのだが。
…
あるヨーロッパ食材商社の人が、地中海沿岸のオリーブ生産国についてこんなことを言っていた。
地中海沿岸諸国ではおしなべて良質のオリーブが実る。しかし、例えば「メイド・イン・チュニジア」のラベルをはったオリーブオイルは、知名度が低く売れ行きが悪い。
そこでチュニジアで収穫されたオリーブをイタリアで製油し、「メイド・イン・イタリー」として市場に出す。すると格段に売れるようになる。対外的には「メイド・イン・イタリー」のオリーブオイルのほうが、「メイド・イン・チュニジア」よりはるかに分かりやすいし信頼感があるというわけだ。このためチュニジアは多くのオリーブオイルをイタリアに輸出し、イタリアも安く原材料を輸入して、互いに一石二鳥になるという。
「メイド・イン・イタリー」といえばファッションを愛する多くの女性の憧れである。
一方、すくなくともフットウェアに関しては、男性はしっかりとした「メイド・イン・グレート・ブリテン」を好む傾向がある。とりわけ日本人男性は履き心地や耐久性のよさから英国紳士靴を偏愛している人が多い。文明開化のころからの憧れである。
英国ではかつて革靴生産が栄え、1900年前後までに相次いで有名ブランドが産声を上げた。「チャーチ」「アルフレッド・サージェント」「クロケット・アンド・ジョーンズ」「ジョージ・クレバリー」「ジョン・ロブ」「チーニー」「ローク」「グレンソン」「エドワード・グリーン」
…どれも今に知られる、英国が世界に誇るブリティッシュ・トラディショナル・シューズブランドたちである。こうした有名ブランドを輩出したのは、イングランドのへその位置にあるノーサンプトン。産業革命の技術革新と軍需景気、大英帝国の繁栄とともに、大変な隆盛をほこった町である。
しかし第二次世界大戦後、他産業の復興とともに次第にその規模は縮小した。90年代から今日にかけてノーサンプトンにあるファクトリーはいよいよ減り、いまでは5~6つの工場が稼動するのみとなってしまった。
中国かいわいから押し寄せる格安商品の波は、英国のみならず、EU諸国の市場に大きな影響を及ぼしている。消費者は賢い。そして正直だから、いまとなってはメイド・イン・チャイナの商品の圧倒的な量とお値打ちな値段に、いちいち自らのこだわりを追求せずに、気軽に金を落としていく。
靴を含むファッション関係企業においても、生き残りをはかるためにMAそして製造コスト削減のための海外工場移転をすすめるところが後を絶たない。
英国靴でいえば、21世紀にはいってから「ドクター・マーチン」が中国に工場を全面移転し、多くの失業者が出た。また、英国が世界に誇る老舗ブランド「チャーチ」はプラダグループに、「ジョン・ロブ」はエルメスの傘下に入り、「伝統ブランド」もマネーゲームの波にもまれながら職人気質を維持する時代を迎えている。
頑固一徹に工房を続ける職人的ブランドも、もちろんある。それにしても「老舗」といわれるところでさえ、実はアッパーの皮革やソール、紐やパーツなどの部品類加工製造を海外で安く仕上げ、最後の仕上げのみ本国で行われている場合もあるくらいだ。これを「消費者の期待を裏切る」ととるか、「経済的で合理的」ととるかは、人それぞれだが。
こうしたことは例え「メイド・イン・イタリー」でも「メイド・イン・グレート・ブリテン」でもありえることだ。手元に届いた愛すべき一足は、もしかしたら皮革製造からなめし、染色から仕上げまで、はるばる各国での分業を経て海を渡り歩いてきたものかもしれない。そういう時代なのである。
ここ数年、日本でも日本ブランドのイニシアティブをあげていくための「ジャパンブランド構想」についての取り組みが、各方面で進められている。それでもやはり中国産経由の「メイド・イン・ジャパン」が登場せざるを得ないとしたら、それはそれで皮肉なものである。
カテゴリー[ UK ], コメント[7], トラックバック[1]
登録日:2006年 03月 02日 17:06:58
コメント
はじめまして、この度は私のブロクへの訪問及び
TBをして頂きありがとうございました。
文筆業の方にBTをされたのは初めてで、少々緊張しております。
私も英国靴に関してのブログを以前書いておりましたので
この日記へTBさせていただきました。
すいません、ちゃんとした文が書けないで・・・
また寄らせて頂きます、英国に関する記事は特に興味がありますので。
ではまた。
gota101 @ 2006年 03月 23日 05:45:02
gota101 さん
ご訪問とコメントありがとうございます。
緊張なんてとんでもない
もの書き業とはつまり流浪の何でも屋ということで(笑)
いつでもお気軽にいらしてくださいね。
Gota101さんのブログ
そうそう、と思えるところがあって
立ち寄らせていただいていました。
英国に関しては世間ではハイソなイメージも
多いのですが、知れば知るほど
庶民の視点でいろいろもっと
知りたくなりますよね。
靴についてもそのひとつです。
なにかおもしろい話題がありましたら
いつでもお知らせください。
mika @ 2006年 03月 23日 06:07:04
mika さんの記事を読んでいたら
またノーサンプトン行きたくなってしましましたよ。
お金を持っていかなくちゃなあ。
スペイン出張お疲れ様でした、私も秋まで英国にいれば
スペインへ出張があるんですよねー。
どちらのブログもいつも楽しみにしています。
これからもよろしくお願いします。
gota101 @ 2006年 03月 28日 01:31:54
ノーサンプトンへはやはり
けっこうお金を持っていかなければ
ならないですか??
(そうしないと指をくわえてみているだけに・・・)
私は一生付き合える靴には
いまのところであえていないので
もし見つかったら本当に大切に大切な
宝物になるのでしょう。
名前をこえてよいものはやはりよいということ
なのでしょうね。
mika @ 2006年 03月 29日 01:51:28
塩野七生さんと五木寛之氏の対談でイタリアのブランド靴の記事を以前見たことがある。何でも塩野さんが五木氏がイタリアを訪ねたとき、イタリアの有名な靴屋を案内したそうな。五木氏は日本円で何万円かの靴を3足買ったそうな。その晩はホテルのベッドの枕元に3足そろえて、まるで子守唄を聴くような気持ちで、しかしやや興奮しうきうきと眠りについたそうな。たかが靴と言うなかれ、靴のもつやさしさ、堅牢さ、形、色、すべてが素晴らしく、自分が今までも数段高貴な身分になったような気分になって、その靴をはいたそうな。それから10年後(正確には覚えてないが)その靴はびくともせず五木氏の足にフィットし、その足を優しくつつみ、10年前のイタリアでの塩野さん、五木氏の出会いを彷彿とさせたそうな。だてにブランド靴があるわけではないが、それが本物であることをみる確かな目とセンスとこだわりがあってこそのブランドものの価値である。その点、靴ははくためだけのものという無粋な見方に徹している小生とは、その文化度において、大きな乖離があることを認めざるをえない。
Y.F. @ 2006年 04月 01日 13:57:38
五木氏のエピソードはなんとも靴へのロマンを感じますね。
どなたか専門家がおっしゃるには、
靴はもったいぶらずにはくのが一番とのことですよ。
使いこめば使いこむほどに、その靴はオーナーの
癖をよく受け止めてくれる。そうすると、なんだか
使うほうもかわいらしく思えてくるようです。
お値段やブランドの有無はさておいても
最終的に、ストレスを感じさせず
自分にピッタリくるものが
みつかればそれが一番ですよね。
足は大地を踏みしめる重要な体の部位
健康のもとですから。
mika @ 2006年 04月 03日 04:51:03
靴もそう、そういえば、大事なのは自信でしょうね。これが自分に似合ってるんだという自信、帽子にこだわる紳士は、かぶってる帽子が断然自分にフィットし、誰よりもダンディでシックなんだという意識、自信が一層その人を引き立たせるんだって言いますよね。帽子をかぶっちゃうと自然に似合ってきちゃうんです。すると自信が出てくる。新しいものにチャレンジする。”ステキー”って言われる。まんざらでもないと思う。自信が湧く。そのサイクルが重なると自信がまろやかに心地よく自然の雰囲気をかもし出してくる。結局のところ、ブランドに価値があるんじゃなくてブランドものを自由にあやつり、自分のものに取り込んでいく、そのことがブランドものを際立てさせるんでしょうね。。要は身につけるひとのたたずまいがブランドものの価値を輝けるものにするんでしょう。靴においても、帽子においても、果てはバッグにおいても。
Y.F, @ 2006年 04月 05日 20:36:52
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【追記あり】英国産革靴の聖地へ 〜クロケット&ジョーンズの魅力〜
Northampton(ノーザンプトン)をご存知だろうか?ロンドンから高速道路で約2時間半北上したところに位置し、英国の老舗革靴メーカーが集まる町である。英国産革靴好きなら誰でも一度は訪れて見たい場所である事は言うまでもない。わかり易く言うならば時計で言うスイス車で...
date:2006年 03月 23日 05:26:14
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ライター・ジャーナリスト・エディター。東京生まれ千葉育ち。千葉県八千代市在住。玉川大学文学部外国語学科を卒業後、広告制作会社、新聞社勤務を経てフリーランスとなり、日本や海外で活動中。「ガンダーラ・ハウス」は気軽なエッセイ集です。近況などは上記「ブログ」のリンクからどうぞ。
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