ひとり旅
【6月18日 MODE PRESS】映画『Hancock』のプレミア上映会のためシャーリーズ・セロン(Charlize Theron)がパリの空港に姿をみせた。最高にシックな旅行スタイルのポイントは、2つ抱えたロジェ・ヴィヴィエ(Roger Vivier)のバッグだ。
セロンはパリ滞在中に、ロジェ・ヴィヴィエのデザイナー、ブルーノ・フリゾーニ(Bruno Frisoni)と面会したという噂も。次回のキャンペーン広告に注目したい。(c)Fashion Week Daily/MODE PRESS
欧州-日本間のフライトを使うたびにおもうことだが、ここ4,5年で一人で世界を個人旅行している日本人女性がとみに増えているように見受けられる。正確な数はわからないがおもなところで20代半ばから30代そこそこ。世界の女性のひとり旅はもはや珍しくはない。例にもれず今回の私のヨーロッパからの帰り道、飛行機の中で同じ列に居合わせたのもすべてそうした女性たちだった。
・・・
真ん中の女性は20代も半ばくらい。とても小柄な、ちょっと目の飛び出た雰囲気の風貌で、いろいろ旅のこだわりがあるのか、落ち着きなくエア枕をふくらませて首にセットしてみたり、床に落ちたごみを席から拾おうとしたり、ととにかくひっきりなしに体をもぞもぞと動かし続けている。そうかと思うとやおら最新流行の型の白いバッグから、書類を一束取り出して、テーブルをとりだしてそこに書類を置き、身をかがめながらなにやらせかせかと赤ペンで文章を校正し始めた。
一方、窓際の女性は、真ん中の女性よりもややとしかさで、すらりとした雰囲気の、いくぶん地味な顔つきだが整った一重の持ち主。いわゆる独自の道をいくタイプらしく、ほかの乗客のことはあまりかえりみずに、ちょくちょくと窓のブラインドを開け閉めしていた。(このとき機内のブラインドはほぼすべて締め切られている状態だった)。このために外からの強い日差しが機内に筋状に切り込んだり消えたりして、その影響をもろに受ける近くで映画を見たり本を読んだりしている人はちょっと迷惑そうな顔をしていた。しかし彼女としてはまったく悪気はないようで、飛行機から眺める外の世界に見入っては自分の世界に入り込み物思いにふけったりしていた。
真ん中の女性は合いも変わらず書類の一枚一枚をがさがさと音を立てながら食い入るように、一心不乱に読みいっていた。その間、となりの女性が窓を開け閉めするので書類にたびたび光の筋があたり、ちょっと迷惑そうにしていたが、なにもいわずにいらいらしながら書類を読み進めていた。窓際の女性はふいにそれに気づいて「お仕事ですか」と社交辞令的に声をかけた。「そーですね」と真ん中の席の小柄な方は甘ったるいなかにもちょっととげっぽい声で答えた。彼女たちはその拍子に言葉を交わし始め、その話題はちょっとした自己紹介にまでいたっていた。
本にも映画にもちょっと退屈していた私は隣で起こっている会話に何となく耳を向けた。話によると、真ん中の女の子は、スイスのどこかにある病院に勤めている看護師らしいようなことを濁していて、2年ぶりの帰国の途にあるという。一方の窓際の女性は東京に暮らすイラストレーター。数年前にオランダの大学で美術を専攻し、卒業してから帰国したが、久しぶりにそのときの友達に会いに1ヵ月ほどアムステルダムに滞在していたのだとか。
そこまで紹介し終わって、外国にどれくらい滞在して、どんな場所を巡り歩いたかという外国経験のキャリアのようなものを一通り説明し終えると、ふたりの会話はぷつんと間が開いてやがて途切れた。そんな話をぼんやりと聞きながら、世界各地で日本人が動き回っていて、いまや国境をこえることは特別でもなく、あいも変わらずいろいろな目的や生き方があるものだなぁ・・・と思いながらうとうとし始めた。
ところでふたりの彼女たちはこれでもまだ交流しているほうかもしれない。諸外国で女ひとり旅をしている人々は、外国で母国人にあうとなんとなく敬遠する傾向にあるように見えることが多いからだ。道でばったり、あきらかに日本人の個人客に居合わせると、まるでテリトリーを荒らされたかのごとく、ちょっとした敵意のこもった視線で、相手をちらと一瞥して、早足に互いをやり過ごす。女のひとり旅が増えているから、自然に女同士のテリトリー争いとなる。虚栄心からせっかく外国の旅の気分を味わっているのに、ここでみすみす異国情緒を乱されたくはないのかもしれないし、単に余裕がないのかもしれないし、いちいち母国人と旅先であったからといって、どうということもないのかもしれない。そうしたひとは、ひとりで旅をきめた以上はやっぱりひとりでいることにこだわるのかもしれない。
ひとり旅をしてみたいと思う年頃というのはある。そしてそれは最近はたいがい女性が多いようである。とくに世の中が大体見えてきて、自分の収入をみながら、結婚とか出産のことも胸のうちにちらつかせながらも、自分のやりたいことってなんだろうとか、とにかく単なる休暇としてだけではなく、将来の夢のようなものを実現化させる手段あるいはヒントを得たいがために、ひとり旅を選んだりするのだろう。でもひとり旅とやらは、気ままな分、食事のときは味気ないことも多いし、なにかのトラブルにあったときのこころもとなさは計り知れない。
何かを求めてひとり旅をしても、訪れた土地そのものに答えがあるわけではないので、結局は答えは自分の中にあることをよくわきまえていかないと、何の収穫もなしに疲れてかえってくるだけかもしれない。世界をうごきまわっている日本人の若い女性は、ここ数年本当に増えている。でもひとりだからこそ異国の地で、母国人であろうが外国人であろうが、ボディランゲージである魅力的な微笑みをどれだけ多く送れるかも、その人個人のこころの持ち方次第かなとも思う。
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登録日:2008年 06月 21日 19:38:57
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- 福嶋 美香
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- ◆経歴:ふくしまみか
ライター/ジャーナリスト。東京生まれ千葉育ち。玉川大学文学部外国語学科を卒業後、コピーライター、新聞記者を経てフリーランスとなる。現在日本と英国を中心に活動中。詳細・近況などはNEWSリンクからご覧ください。
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