英国庭園とゴミ箱の間
【10月16日 AFP】再び世界の株式市場が全面安となった16日、ブリュッセル(Brussels)で欧州連合(EU)首脳会議が開かれ、参加した各国の首脳から欧州における市場の監視強化を求める声が相次いだ。
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(c)AFP
ブラウン首相とミリバンド氏の故郷・英国では、もっか連日のように金融危機のニュースでいっぱいだ。そうした金融問題で揺れる中でも、生活に密着した問題も絶え間なくおこっている。たとえばゴミのリサイクルの話。
・・・
私がいまいる英国の一地方都市では、最近ごみ回収の方法が変更になった。それまで一家に一つ、巨大なゴミ箱が配られていて、そこにたいていのものは一緒に捨てられていた。任意で小さな箱にビン類などをわけてリサイクルするシステムは存在した。だが、今度は従来型に加えて、新たにリサイクルのゴミの種類別に、青、緑、そして黄土色の巨大なゴミ箱が配られた。
私は単なるいっかいの旅の者だから、あまり深入りはしないものの、一つの国に滞在している以上は、その国のルールとかマナーはできるだけ尊重したい。けれども、このたびのゴミ箱の一件にはいささか閉口してしまうものだった。
というのは、ゴミそのものの所在でなく、当面の配られた色とりどりのゴミ箱の行き場の問題である。それらは家の前の通りや歩道、あるいは道路に面した入り口付近に置くことになる。つまり家の人にとっては出入りが不自由だし、歩道の行き来の不便さが増すわけである。
テラスハウスが多い英国の一般的な住宅地では、家の入り口は方角に関係なく、同じ方向に入り口が向いている。そうしたところに、伝統的な英国的風景を期待する私のような外国人にとっては特によくないことに、プラスチック製の背の高いゴミ箱がこれ見よがしに幅を利かせ、古きよき家屋の風情を伝える英国的な景観を台無しにしてしまっている。素敵な壁伝いに群生する清楚なバラの花々の横に、色とりどりのゴミ箱が置かれるわけだ。
市のいうとおりに、色とりどりの巨大なゴミ箱をすべて受け取って、それを庭あるいは歩道に置く家もあれば、頑固としてそれに反対するというような家もある。それも通りによって階級や住民の趣味が変わってくる。中産階級の人が住むと思われる通りに限って、色とりどりのゴミ箱がたくさん乱立している。きちんと環境を守るためにリサイクルしているんです、という主張もこめてのことなのだろう。けれども町の景観といえば、信じられないくらいお粗末になってしまっている。
いまのところそれらの様々なゴミ箱は、色によってリサイクルの種類をわけるというものだが、強制ではないようである。このゴミ箱の一件については地域でもけっこうな賛否両論があって、まだまだ議論の余地はあるようだが、市が一斉に期日をきめてゴミ箱を配りあるいたところあたり、誰かがそれをきめて、リサイクルを促進しようとして、その法案が可決されたということのはずだから、それはどうも、実生活を重んじない机上だけで話が進んだもののように思える。
個人主義の社会で、いろんな考え方があって、リサイクルについての考え方も、分別ゴミが常識化した日本のようにコンセンサスがいまいち一定でない。科学的に納得できる根拠がなければ、リサイクルには参加しないという人の意見ももっともなことだ。私はいち外国人として、いっそのことゴミ箱は町の景色によくないし、歩行のじゃまにもなるんだから、曜日・時間・場所などを決めて、そこに一定の量のゴミだけを捨てられるような工夫をせめてできないものだろうかという話をした。すると「そこまで自分の家を出てゴミを捨てにいかなきゃならないなんて、どうみたってそれは自分の生活のリズムが乱されるだけじゃないか」という声もあった。・・・というと、まぁ確かに、そういう考えがあってもおかしくもないが。外国のこととあっては、余計な口出しもほどほどに、どう返せばよいのかもわからなくなる。
一家にいくつものゴミ箱を一気に配って、さぁ環境に配慮しましょう。というのは現実生活の現実的な快適性よりも、理想論を先走りさせて、それを実行させてしまったが故におこったことだろう。とにかくゴミ箱を美しい英国庭園の入り口のまん前をふさぐように配するのが環境にやさしいのだとしたら、なんとも不思議な理屈である。ある知人はこれを「ゴミの思想統制」と形容した。いかにも英国人らしい意見だ。
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登録日:2008年 10月 17日 04:47:39
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ライター・ジャーナリスト・エディター。東京生まれ千葉育ち。千葉県八千代市在住。玉川大学文学部外国語学科を卒業後、広告制作会社、新聞社勤務を経てフリーランスとなり、日本や海外で活動中。「ガンダーラ・ハウス」は気軽なエッセイ集です。近況などは上記「ブログ」のリンクからどうぞ。
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