南西イングランド小紀行(1)

ロンドン・パディントン駅から、二泊三日の旅程でデーヴォンに向かった。季節は5月下旬。これまで様々なブリテンの都市や田園を訪れてきたけれど、イングランドの南西部へ行くのは初めてのこと。パディントンからグレート・ウェスタン鉄道で約2時間半、トットネスという60年代にはヒッピーたちが移り住んだ町の駅で下車した。そこから友人のCさんのお迎えの車で約50分かけて、デーヴォンの半島をさらに南下した。目的地はCさんの新居「プロスペクト・ハウス」だ。

「プロスペクト・ハウス」へと向かう途中、キングスブリッジという小さな町を通った。入り江の終わりとなる場所で、一日に4回ある潮の満ち引きによって景色が劇的に変わる美しい町だ。さらにそこから20分のドライブ。その間中、あいにくの霧に包まれていて周囲の景色がよく見えない。イングランドでもっとも美しい景色の一つだろう、いくつも折り重なって広がるなだらかな丘陵や谷間の細い田舎道であることは間違いないのだが、この日の視界はかなりせまく、幻想の世界へ迷い込んだように見えた。

「あと2,3分で到着よ」。友人のCさんがハンドルを握りながら声をはずませる。けれども私はまだその場所を見ていないので、いったいぜんたいどこに「住まい」らしきものがあるんだろうと不思議に思う。霧の中、イングランド南部のちょっと冷たい海風が香り始めると、いよいよさらに細い、小型車しか入れないような小道を一気呵成に下り始める。とこんどはその谷間の底から急こうはいの丘を、エンジンをふかしながらのぼりつめていく。

道の両脇に生い茂る植物が海沿いのそれであることは見当がついた。イングランドにしてはかなり起伏あるドライブで、少々面食らっている私。「ついたわよ!」とCさん。車から降りると、駐車場の先に広がるその景色は想像以上のもの。「プロスペクト・ハウス」は、高いがけっぷちに建築された、海岸の眺望を独り占めするコンドミニアム型のリゾートハウスだった。

(2)へつづく


南西イングランド小紀行 もくじ

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登録日:2009年 06月 02日 18:45:26

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福嶋 美香
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◆経歴:ふくしまみか
ライター・ジャーナリスト・エディター。東京生まれ千葉育ち。千葉県八千代市在住。玉川大学文学部外国語学科を卒業後、広告制作会社、新聞社勤務を経てフリーランスとなり、日本や海外で活動中。「ガンダーラ・ハウス」は気軽なエッセイ集です。近況などは上記「ブログ」のリンクからどうぞ。
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