2006年 04月 18日
Matador & Matadora
【バルセロナ/スペイン 8日 AFP】バルセロナの闘牛場前で8日、闘牛に反対する抗議集会が行われた。写真はデモでプラカードを掲げてホイッスルを吹く男性。プラカードには闘牛を宣伝し支援するために使用される政府の財源について、「我々の金を無駄にするな」と書かれている。(c)AFP/CESAR RANGEL
スペインの国技とされる闘牛。その是非をめぐっては、引用した記事のように賛否両論あるわけだが、スペイン全土には常設だけでも500を超える闘牛場があり、3月12日から始まるバレンシアの火祭りとともに闘牛シーズンに入り、10月のサラゴサでのピラール祭りまで各地で闘牛が開催される。その数は1年で1万5000回を超えるそうだ。スペインの闘牛の起源には諸説あるが、当初、馬上から槍を使って牛を追っていたものから、現在のように人間の身ひとつで牛と向き合う形となったのは、18世紀に入ってからといわれている。
闘牛といえば闘牛士(Matador)。華やかな衣装に身を包み、迫りくる荒れ狂う牛をあしらいながら、真紅の「Muleta」を片手に剣で牛にとどめをさす。通常、1度の闘牛試合は3人の闘牛士が2頭ずつの牡牛、計6頭の牡牛を相手にする。試合では、牛を弱らせるため、その肩の部分に槍を突き立てる槍士(Picador)も馬に乗って登場する。こうした闘牛の姿を勇ましく美しいと感じるか、野卑で酷いと感じるかは人それぞれだ。
*女性闘牛士の闘い
闘牛士には見習い闘牛士(Novillero)と正闘牛士(Torero)がいる。闘牛士学校を卒業した見習い闘牛士はまず、若い牛を相手に試合を重ね、その技術・経験を磨いた後、Toroと呼ばれる大きな闘牛を相手にする正闘牛士となる。正闘牛士となる人の数は1万人に1人ともいわれるほどの少なさで、見習い闘牛士として闘牛士生活を終えてしまう人が多いという。
そんな中、正闘牛士として活躍した女性がいた。1972年マドリッドで生まれたCristina Sanchez de Pablos(クリスティーナ・サンチェス)は、1993年に20歳という若さでマドリッドでデビューし、1996年には正闘牛士となった。その後、1999年に引退するまでに、彼女は186試合を闘い、316頭の牛を仕留めたという。
彼女が登場するまでは、闘牛はまったくもっての男社会だった。実際、彼女は、闘牛士として牛だけでなく偏見・差別とも闘っていたという。観客や興行者は彼女を受け入れることにそれほど難色を示すことはなかったようだが、同業者である男性闘牛士の中には、彼女と同じ試合に出ることを拒否した人も多かったそうだ。彼女も当然、男性闘牛士同様に命がけで牛を向き合っているという事実、また、彼女の技術が男性闘牛士と比べて見劣りするということがなくても、女性であるというだけでフェアに扱われない。なんと理不尽なことか。クリスティーナ・サンチェスの引退の背景には、そうした偏見・差別との闘いに疲れ、闘牛への情熱を失ってしまったことが大きいといわれている。
*カクテル「マタドール」
テキーラを使ったカクテルで「Matador」と名のついたものがある。テキーラ1/3、パイナップルジュース1/2、ライムジュース1/6をシェイクし、氷を入れたオールドファッションドグラスに注ぐというもの。テキーラは、スペイン文化の影響が強いメキシコを代表するスピリッツ。個人的には、どこか青々しい夏の草原を思わせる独特の味わいが特徴だと思う。このカクテルは、そのテキーラ独特の香りと、パイナップルのすっきりとした甘み・酸味が心地よい、爽やかな味わいだ。
今回、女性闘牛士について調べるうち、このカクテルは「Matador」(より細かく訳すとすれば「男性闘牛士」)よりも、「Matadora」(同じく、より細かく訳すとすれば「女性闘牛士」)という名前のほうが合っているように思えてきた。私にとってこのカクテルは、テキーラの青々しい味わいのため、スペインに広がる夏の大きな青空をイメージさせる1杯だ。これは、男性闘牛士の雄雄しい美しさよりも、女性闘牛士の凛とした強さに秘められた女性らしい美しさを連想させる。また、男社会に果敢に飛び込み、正闘牛士として花を咲かせるという意味でも、夏の青空にむかってまっすぐに伸び、大輪の花を咲かせるヒマワリのようで、やはり「Matadora」と呼びたいところだ。以前、知り合いのBarでこのカクテルをオーダーした時、グラスの淵にパイナップルを添えて供してもらったことがある。次回はヒマワリの花びらを浮かべてもらおう。
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登録日:2006年 04月 18日 17:21:56
- プロフィール
- 成田美友
- (女)
- ambrosia
- ドイツにある観光公社「Historic Highlights of Germany」でのフリー編集者生活を終え、ドイツから帰国。現在はフリージャーナリストとして活動中
*主な経歴:出版社で旅行ガイドブック、街情報誌の編集、サイト運営会社で食に関するウェブサイトの編集と編集者人生10年目
*ひとこと:土地の歴史や文化に深く根ざしたヨーロッパの食文化に魅かれ、学ぶ日々。米・Society of Wine Educators認定Wine Specialist/日本ソムリエ協会認定ワインエキスパート
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