歴史と伝統に裏打ちされた「マイスター」魂
【ベルリン/ドイツ 7日 AFP】ベルリン(Berlin)で動物の縫いぐるみオリンピックが開催された。第4回目となる今回のイベントで、子供達と縫いぐるみはスキージャンプとトナカイのレースで新記録樹立を目指して競い合った。写真は5日、愛らしいキリンの縫いぐるみ「Giraffe」をジャンプ台に置く4歳のJohannaちゃん。(c)AFP/MICHAEL KAPPELER
“ぬいぐるみ”といえばTeddy Bear テディ・ベアが有名だ。その名は、第26代アメリカ合衆国大統領・Theodore Roosevelt セオドア・ルーズベルトの愛称に由来する。1902年、ルーズベルト大統領がクマ狩りに出かけたが一頭もしとめることができずにいると、同行者が小熊を差し出し、これを撃つようにと勧めた。しかしスポーツマン精神に反するとして、この小熊を逃がしたという。このエピソードにちなみ、1903年に「テディ」と名づけられたクマのぬいぐるみが発売されたのがテディ・ベアの始まりだ。
*シュタイフ社のテディ・ベア
ドイツの有名なテディ・ベアといえばMargarete Steiff GmbH シュタイフ社のもの。1880年創業で、世界最古のぬいぐるみメーカーともいわれる。シュタイフ社では、1902年にクマのぬいぐるみを製作、翌年には発売したが、ドイツ国内ではあまりぱっとしなかった。しかしこれがアメリカのバイヤーの目にとまり、アメリカへ輸出されると、前述のテディ・ベア人気と相まってあっというまに世界中で人気を博すようになった。ルーズベルト大統領にもシュタイフ社のクマのぬいぐるみが贈られたという。しかしヒット商品には海賊版がつきまとうのが世の常。シュタイフ社のテディ・ベアの名をかたる粗悪な海賊版が後を絶たず、その解決策として用いられたのが、現在もシュタイフ社のトレードマークとなっている「Knopf im Ohr ボタン・イン・イヤー」である。ぬいぐるみの方耳(カメは甲羅に、など例外あり)には、社名の入ったタグが金属製のボタンで留められている。1926年からは、これに加え首から社名の入ったペンダントも下げるようになった。
*ドイツのマイスター制度
シュタイフ社のぬいぐるみはすべて、今でもなお、“ぬいぐるみマイスター”とでも呼ぶべき職人の手作業で作られている。ドイツの手工業を語る際に欠かせないのが、このMeister マイスターだ。時計、陶磁器の絵付け、楽器、帽子といったいわゆる工芸品はもちろん、電気や配管工事、塗装といった建設・建築に関するものから整形外科や歯科などの技師、パンや菓子の製造、ビールやワインの醸造といったものにもマイスターがいる。というより、2004年に新手工業法が施行されるまでは、94の手工業で、マイスターの資格取得者でないと独立して自分の店を開いたり、後進にその技術と伝統を伝えたりすることができなかった。法改正によりマイスターの資格取得が義務でなくなったのは53業種だが、この53業種についてもマイスター資格をとることはできる。一方、マイスターの資格取得が引き続き義務づけられている(例外もあり)のは41業種。これは技術取得が難しいものや、人の命に関わるものなどが主である。法改正の意図としては、手工業者として開業することを容易にすることで失業者を減らすことのほか、人から人へ伝えられてきた技術を、国際化・IT化に対応してコンピューター化やデジタル技術化することなどが挙げられる。
マイスターが「親方、師匠」といった意味からもわかるように、こうしたマイスター制度は中世の徒弟制度に由来している。中世ヨーロッパでは、手工業者が業種別にGuild ギルド(ドイツではZunft ツンフト)と呼ばれる同業者組合を作り、行政などに影響を及ぼすほどの力をもっていたが、産業革命以降の近代産業によって衰退。しかしドイツでは、1953年に手工業法として法制化されている。伝統に裏打ちされた技術を何世紀にもわたって引き継ぎ、そして後世に伝えていくマイスターたち。一度は産業革命の産物・機械によって活動の場をせばめられ、今度はグローバル化がすすむ世界の中で存続の危機にさらされている。マイスターの技術によって生み出される手工芸品には味があり、そして愛がこもっている。現代では、それが「質が一定していない」「価格が高い」というマイナス面としてとらえられることがままある。とはいえ、均質化された安価なものだけに囲まれての暮らしは、さぞ味気ないものだろうと想像する。
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登録日:2006年 03月 14日 20:44:16
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- プロフィール
- 成田美友
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- ambrosia
- ドイツにある観光公社「Historic Highlights of Germany」でのフリー編集者生活を終え、ドイツから帰国。現在はフリージャーナリストとして活動中
*主な経歴:出版社で旅行ガイドブック、街情報誌の編集、サイト運営会社で食に関するウェブサイトの編集と編集者人生10年目
*ひとこと:土地の歴史や文化に深く根ざしたヨーロッパの食文化に魅かれ、学ぶ日々。米・Society of Wine Educators認定Wine Specialist/日本ソムリエ協会認定ワインエキスパート
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