東アジアにおける核武装論議
【米国 AFP】ジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)米大統領。
「北朝鮮の核保有国への願望は地域の安全保障に障害をもたらす。核開発問題に対し、IAEAと6か国協議で平和的、外交解決を目指す」
写真は20日、インドネシアを訪問中のブッシュ大統領。(c)AFP
六カ国協議も不調に終わり、米朝二国間協議の前例を付け加えた北朝鮮。時間が経つほどに、核を持つ現実を既成化することができる点で、北朝鮮にイニシアティヴをとられている。そこで出てきた韓国における核武装論議・・・
<経済制裁の実効性>
核実験を強行した北朝鮮に対する経済制裁が始まったものの、実効性があがっているとは言い難い。元々、経済制裁自体、過去の歴史を見れば実効性には乏しい施策である。例えば、米国の近くにあるキューバは経済制裁にも関わらず、未だにカストロ政権が続いている。イラクのフセイン政権も、経済制裁だけでは対処できず、最後は米国が武力行使に出て片を付けた格好である。
<関係国の同床異夢>
さらにやっかいなことは朝鮮半島における関係諸国の同床異夢である。米国にとっては朝鮮半島から外に核が拡散しないことが重要であり、日本や韓国にとっては朝鮮半島に核が残らないことが重要である。ある意味では、朝鮮半島から核が出て行ってくれた方が都合が良いという極論すら聞こえてくる。
<韓国における核武装論議>
こうした現実を背景にして、最近の韓国では「核武装論議」が冗談ではなく公然と語られている。もし韓国政府が国民に「核武装すべきか?」と聞けば、YESという回答は3割であろうが、核武装した後に、「北朝鮮が核武装を放棄する前に、韓国が核武装を放棄すべきか?」と聞けば、NOという回答が8割に達するのではないか。
問題は、韓国が核武装したときに日本も核武装するのではないかと案じることが、韓国における核武装論議を冷静に鎮めているというのも皮肉な話である。しかし、私見を言えば、日本も韓国も核武装をすることは国益には合わないことになる。
北朝鮮のような国にとっては、自由資本主義国との貿易に支障を来しても、国民に耐乏生活を強いることでかろうじて生き延びることができるかもしれない。しかし、韓国が核武装をしてNPTに反旗を翻した場合、欧米との貿易に支障が生じることになるが、韓国の国民が耐乏生活に耐えられるとは思えない。
<民主主義国の弱点>
その結果、選挙に反映して政策変更を求められることになるのではないか。これが選挙が機能している日本や韓国の落とし穴であり、それに北朝鮮がつけ込んでいるともいえる。結局は、感情的には「核武装すべき」と言いたい気持ちもわかるが、やはり現実を考えると、一層の経済制裁と米中に北との交渉を頼るしかないであろう。独裁国家に対する民主主義国家の弱点を披露しているようで、何とも歯がゆいばかりである。
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登録日:2006年 12月 31日 22:20:16
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- 井上玲子
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- 大阪府出身、海外の大学で研究をした後、現在は日本の大学院で政治学を教える。
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