ちょっとヒドイぞ!久間発言
【東京 15日 AFP】防衛庁を「省」に昇格させる「昇格関連法」が15日、参院本会議で賛成多数で可決、成立した。日本は第2次世界大戦で敗戦。その後、米国が主導する連合国の思惑により「陸海空軍その他の戦力」を保持する権利を放棄して以来の省創設となる。一方、野党は安倍内閣への不信任案を提出したが否決された。写真は同日、衆院本会議で久間章生防衛庁長官と言葉を交わす安倍晋三首相。(c)AFP/Yoshikazu TSUNO
防衛省の初代トップに就任した久間章生防衛相の暴言が相次いでいる。女性を「産む機械」と失言した柳沢伯夫厚労相の問題でやや陰に隠れた形となっているものの、日米同盟関係の文脈を無視した一連の発言は、日本政府の閣僚としてはふさわしくないことおびただしい。こんな認識で安倍晋三政権の「主張する外交」と「21世紀の日米同盟」は成立するのだろうか?
◆ ミサイル防衛
久間氏は昨年10月、北朝鮮が核実験を強行した後、日米両国が共同開発を進めているミサイル防衛(MD)計画に関連して、「日本の上空をアメリカに向かって飛来する弾道ミサイルを日本が撃ち落すことはできない」と発言して波紋を広げた。ミサイル防衛は日米が互いの国家安全保障上の利害共同体として開発を進めており、日米同盟の根幹にも関わるものだ。久間発言は防衛庁長官(当時、現在は防衛相)として、技術的な見地から述べたものだと弁明したが、当時の発言はそうした条件に触れた丁寧なものではなく、米政府側は「同盟国として自分だけ守ればそれでよいというのか?」と強い疑問が出されたのは記憶に新しい。
◇ イラク戦争支持
さらに昨年12月の参院外交防衛委員会では、イラク戦争開戦に際して小泉純一郎首相(当時)が正式にイラク戦争開戦支持を表明していたにもかかわらず、「政府として支持すると公式に述べたわけではない」と、誤った発言をした。03年3月当時、小泉首相は「国際社会の責任ある一因として、同盟国である米国などの国々による対イラク武力行使を支持する」との首相談話を閣議決定して発表しており、正式にアメリカ政府を支持している。これを「公式見解ではなかった」などと妄言を吐くのは、政府閣僚としてあまりに無責任だし、知っていて意図的に発言したのだとすれば、国防指導者として失格である。
◆ 個人的信条と政府見解
久間氏は以前からイラク戦争に批判的な見解を示していた。それは事実であり、本人が個人的信条としてアメリカの政策を批判するのは個人の自由である。アメリカ国内でもイラク戦争に反対する世論が強いのは事実であり、そのことを問題にするわけではない。しかし、政府主要閣僚としての認識と行動は全く別の問題だ。歴代政府の公式見解を「公式見解でない」と述べるのは、そうした個人的信条とは全く関係のない誤解であり、悪意をもって見る人からすれば事実の捏造にも等しい。日本政府見解と信条を異にするのであり、それを貫きたいのであれば、昨年の入閣指名の際に自らそう申告して入閣を辞退すべきだった筈だ。大臣のイスはもらっておいて、政府見解を「見解でない」と述べるのはサギ的行為ではないか。
◇ 許されない米軍再編の文脈ねじ曲げ
だが、久間発言の中で最も許されないのは、米軍再編計画の中核となっている沖縄・普天間飛行場移設問題で、「(2本の滑走路を建設する)V字型案は予算が高く、1本のほうが安い。安いに越したことはない」(訪問先のタイで、07年1月3日)などと、日米政府間の合意を振り出しに戻すような発言を繰り返していることだ。日米両国政府は実に3年半の長い協議を経た後、06年5月1日、辺野古岬に隣接する水域に普天間の代替飛行場を建設することで正式合意(最終報告)にこぎつけたいきさつがある。この間、最終的にV字型滑走路を建設する案で固まるまでには日米間できわめて複雑な駆け引きが展開され、米国側は最後まで「この案で地元を説得できるのですか?大丈夫ですか?」と繰り返し日本政府側に念を押してきた。これに対して、日本政府側が「絶対にだいじょうぶです」と、太鼓判を押して合意に調印したのだ。久間氏は1月27日にも「アメリカには『あまり偉そうに言ってくれるな。日本のことは日本に任せてくれ』と言っている」(地元長崎県の講演で)と、発言している。しかし、交渉経過を見れば誰でもわかるように、V字型案は日本側が自らアメリカに対して約束する形で呑ませたものだ。アメリカが偉そうなことを言っているのでは決してない。「偉そうなこと」を言って、合意を勝手に書き換えようとでもする姿勢を見せたのは久間氏なのである。
◆ 自覚なき大臣は去れ
そもそも普天間飛行場の移転は、96年の日米安保共同宣言以来の約束であり、日本側が政治的怠慢から約束履行を怠ってきた問題だ。久間発言はそうした歴史的経緯や、今回の再編協議の文脈を忘れたかのような内容であり、アメリカ側から見れば「背信行為」にも映りかねない。自分だけがいいかっこをしたいのか。それとも、閣僚として過去・現在の政府の約束を平気で無視できるとでも思っているのか。初代防衛相としての自覚は全く感じられない。それならそれで、いさぎよく閣僚を辞すべきだろう。日米同盟関係に対する悪影響も計り知れない。
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登録日:2007年 02月 03日 21:38:43
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- プロフィール
- 多田 格<Tada Itaru>
- (男)
- ■職業:ジャーナリスト
■主な経歴:欧州、北米などで海外特派員を10年以上務め、国際政治・安全保障、軍備管理・軍縮、米国家戦略、日米同盟関係などの分野を多角的に取材、論評している。
■専門分野:国際関係、国連、軍備管理、国家戦略など
■ひとこと:日本の政治は視野を広く持ってほしい。「やればできる」のアメリカ式楽観主義と英国の戦略観をもっと見習っては
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