★有事の日本の食糧問題と数字のトリック


日本の食糧自給率の低さがよく、マスコミで話題になります。しかし、政府が発表しているカロリーベースの食糧自給率という不思議な数字は、一種の数字のトリックです。

日本の食糧自給率はマスコミで喧伝されているほど低くはありませんし、単純に食糧自給率を上げるために政府の予算を使うのもばかげたことだと思います。

農産物をたくさん生産させたいのなら、農業を「儲かるビジネス」にしなければなりません。
ですから、日本の農業は、「カロリーベース」でたくさんの農産物を作るのではなく、「価格ベース」でより多くの売り上げを上げるようにしなければならないのです。

例えば、日本のメーカーが、価格競争の激しいおもちゃやアパレルなどの製品を、新興国などの賃金の安い国で生産して輸入し、他方で、高い付加価値をつけることが出来るハイテク製品などを日本で製造するのとおなじことです。

実際、とうもろこしや小麦などの付加価値の低い農産物においては、大規模農法で生産する国々に価格で対抗できません。

世界の食糧生産の半分は、5種類の作物(コメ、小麦、とうもろこし、ジャガイモ等根菜類、大豆)が占めます。そして、そのうち、とうもろこし生産は、米国を始めとした国・地域で約8割、大豆生産は上位4カ国で9割を占めるのです。

さらに、穀物メジャーの取り扱い量は、世界の穀物輸出の75%とされます。そのうち、カーギルが35%。その他のメジャーには、ADM、バンゲ、コナグラ、ルイ・ドルフェスなどがあります。

ですから、日本の農業は、このように寡占化された価格至上のビジネスの隅っこで細々と行うのではなく、高い付加価値をつけることが出来るブランド米(中国では、現地米よりもはるかに高いにも関わらず、富裕層を中心に大変な人気がある)や高級フルーツなどに特化すべきです。

さらには消費地に近いことを生かしフードマイレージを短く出来る、レタスなどの生鮮野菜を都会の「植物工場」で生産することなども日本の農業が進むべき方向でしょう。

その他の、農業を「儲かるビジネス」にする方法は、機会を改めてお話しするとして、今日は、日本では既に有事のために十分な食料が生産されているということをご説明します。

もちろん、有事の際には、外国から攻め込まれて食糧を奪われることも充分考えられますが、今回はそのことは計算に入れません。

2008年度に国民一人に供給された1日分の熱量は、2473キロカロリーです。そして。食糧自給率41%という政府が発表する数字は、このうち1013キロカロリーを国内で自給していることを意味するわけです。

しかし、実際に日本人が1日に摂取している熱量は平均1898キロカロリー(2007年度)にしか過ぎません。日本人が本当に必要としているエネルギーであるこちらの数字で計算すると日本の自給率は53%になります。(両者の差652キロカロリーの大部分は残飯などで廃棄されます)

さらに、生命維持に必要な熱量、1400~2300カロリーを基準にし、現在の耕地面積でカロリーの高いイモなどに転作すると、一人当たり1880~2030カロリーを国内で生産可能であることを考慮します。その場合の自給率は80%~140%に達するということになります。

つまり、日本の食料輸入が全面的にストップするような「有事」でも、贅沢さえしなければ日本人を養うために必要な食糧は日本国内だけで充分確保できるのです。

さらに、カロリーベースでの自給率を算出し、政策に用いているのは世界でも日本だけです。金額ベースでの日本の食糧自給率は65%ですが、国際的には重量ベースで算出した穀物自給率が一般的で、この基準では、日本の主要穀物自給率は61%になります。

農業も基本的には経済問題です。ことさら「自給率が低いぞ」と、国民を脅かす政府のやり方には少々疑問を感じざるを得ません。

★参考資料:週刊東洋経済10月17日号他

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登録日:2009年 10月 16日 14:29:51

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大原浩
大原浩
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グルメ投資家おーちゃん
1984年、同志社大学法学部を卒業後、上田短資㈱(上田ハーロー)に入社。

1989年、フランス国営クレディ・リヨネ銀行入行。フューチャーズ・ブローキング・ディビジョン課長などを歴任し、主に金融・債券先物、デリバティブなどを担当。

1994年㈱大原創研を設立し独立。
GINZAX ・グローバル経済投資研究会代表。
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著書には
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など。
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