<老子と投資>その32


この連載を初めて読まれる方は、AFPBBニューズブログ「大原浩の金融・経済地動説」の2008年2月8日の日記、(<老子と投資>その1)
http://www.actiblog.com/ohara/52816
を先にご覧ください。

43、天下の至柔は、天下の至堅を馳騁(ちてい)す。

○水が岩石を流すように、世界中で最も柔らかく弱々しいものが、世界中で最も硬くたくましいものを思い通りに走らせる。

○また、水のようにはっきりとした形が無いものであるからこそ、少しの隙間も無いところに入っていける。

○この水の姿を見ることによって、ことさら何もしない無為=自然体がとても有益であることがわかる。

○言葉に頼らない無言の教えと、「無為=自然体」とは、世界中でこれに匹敵するものが無い素晴らしいものだ。=自我を取り去り、内なる自然な声に耳を傾ければ、どのような集団・組織にも入っていける。

○何もしないでじっとしていることは実は難しい。パントマイムで最も難しいのは、何もしないで人形のように直立不動で立っていることだ。

老子で繰り返し述べられているのは、世間で言われている<強大なもの>が<本当に強いのか>を見極めろということです。

例えば、金融の世界で銀行・証券をはじめとする大手金融機関が、<強大なもの>の代表格ですが彼らは本当に強いのでしょうか?

例えば、大手金融機関などの運用する投資信託やファンドの運用成績を平均すると、統計的に日経平均やダウ・ジョーンズなどのインデックスの上昇率を下回ることはよく知られた事実です。

つまり、日本株に投資する投資信託やファンドを大手金融機関から買うよりも、日経平均そのものを買った方が、平均すれば良い結果を得られるということです。

これには、大手金融機関の運用力そのものが大いに関係しているのは事実ですが、大手金融機関が<強大なもの>であることも重要な原因です。

例えば、バフエットがまだ若くて、運用金額も今ほど巨大では無かったころの運用成績は、現在と比較すると高い水準でした。ところが、年が経てば経つほど、バフエットが運用する利回りは、徐々に低下していきます。

どうしてかと言えば、毎年バフエットが運用する金額が増加するため(年率30%で運用したら、年間30%資金量が増える)、運用がそのたびに困難になるからです。

なぜ金額が大きくなると運用が難しくなるのか?例えば、1000万円の資金を1300万円に増やすことが出来る可能性がある投資対象を見つけるのはそれほど難しくないでしょう。しかし、バフエット率いるバークシャーのように、10兆円の資金を運用するとなると、その資金を13兆円にするための投資対象を見つけるのはかなり難しい作業になるのは、簡単にイメージできると思います。

自分自身のオーダーでマーケットを動かしてしまい、売買さえままならないかもしれません。

つまり、一般的には、金額が増えれば増えるほど運用の選択肢が減り、高い利回りを得ることが困難になるのです。

多額の資金量を誇る、大手金融機関もこのようなハンディキャップを背負っているというわけです。

また、バフエット(バークシャー)の運用においては<期限>というものがありませんし、資金量は基本的に一定ですから自分の好きなタイミングで売買できます。

ところが、金融機関の扱うファンド等には、期限が設定されているものが多く、スタートしたときにいつまでも全額現金で持っているわけにもいきませんから、「何かに投資しなければならない」というプレッシャーが生じます。逆に、運用期限が終わりに近づくと、まだ上昇すると思っていても、現金を確保するために売却しなければなりませんし、ファンドの途中解約などがあれば、不本意なタイミングで持株などを売却しなければならない必要に迫られます。

それに対して<強大でない>個人投資家は、前述の様な大手金融機関が抱えるハンディキャップや制限なく自由に投資が出来ます。

つまり、水の様に、少しの隙間も無いところに自由に入り込んでいける個人投資家こそが<本当に強いもの>だということです。

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登録日:2010年 06月 14日 15:44:51

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プロフィール
大原浩
大原浩
(男)
GINZAX  グローバル経済投資 メールマガジン
2月度定例GINZAX・銀座セミナー『本当のバフェット投資』
グルメ投資家おーちゃん
1984年、同志社大学法学部を卒業後、上田短資㈱(上田ハーロー)に入社。

1989年、フランス国営クレディ・リヨネ銀行入行。フューチャーズ・ブローキング・ディビジョン課長などを歴任し、主に金融・債券先物、デリバティブなどを担当。

1994年㈱大原創研を設立し独立。
GINZAX ・グローバル経済投資研究会代表。
元・証券新報顧問

著書には
『韓国企業はなぜ中国から夜逃げするのか』(講談社)
「2012年に日経平均が2万円を超える15の理由」(講談社)
など。
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