公営住宅は誰が所有すべきか

<耐用年数>

鉄骨鉄筋コンクリート造又は鉄筋コンクリート造の住宅用の耐用年数は60年から47年に短縮されたが、維持管理の仕方がよければ100年以上の耐用年数を期待することも可能。

<公共はなぜ100年の施設を所有しないのか>

なぜ、公共セクターは、施設を買い取りたがるのだろうか?
そして、施設の維持管理をしないで30年経過したら残存価値がなくなるような管理をしてしまうのか?
それは、施設を作るということには、政治的に意味があるが、出来上がったものを維持管理することは政治的にほとんど意味が無いからだという。
したがって、予算は、作ることに回され、維持管理にはまわされないらしい。

たしかに、なるほどと思われるが、それでは、ライフサイクルで安くすると評価されないのか?

<政治家はライフサイクルでコスト削減したことをアピールすればよい>

ライフサイクルコストを算定し、今までかかっていたコストと比較するとどのくらいコストが節約できるかが分かる。
節約できたコストをアピールすれば、政治的にも意味があるのではないか。

すなわち、30年間づつ建物を壊して、3回建替えれば90年間。建設期間を入れて100年かかる。毎年1億円の支出を30年間続けると支払総額の現在価値は2%の割引率で22億円になる。
それでは、毎年0.5億円の支出を100年間続けるといくらになるであろうか。
超長期の割引率を中長期の割引率と同じにすることには異論があるかもしれないが、0.5億円の支出を100年間続けたときに2%の割引率で同じく22億円になる
すなわち、1億円で30年間の支払いの約束をすることと0.5億円で100年間の支払いの約束をすることと価値的には同じである。

ちなみに1億円を100年払い続けると現在価値は43億円である。

<100年民間に施設を所有させる>

30億円かけて建物を3回作ることと、
50億かけて100年持つ建物をつくり、民間企業に100年間維持させること(実際には30年間の維持管理契約を3回延長することになるであろう)
を比較するとどちらが安いだろうか?

30年間かけて30億円を支払うことと、100年かけて50億円支払うことは単純に比較はできないが、30億より、50億のほうが高いからVFMが出ないとはいえない。

30年後に施設の価値を10億円に保つというリスクを民間がとれば、公共は民間に対して30年間に20億支払えば良いことになる。価値が無くなれば、10億が受け取れないことになるからである。

支払総額にだまされてはいけない。リスク移転からVFMが生まれるという意味はここにある。

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登録日:2006年 08月 29日 20:05:04

コメント

公共施設の建設には国庫補助が入りますが、維持管理は地方自治体の単独事業としておこなわれます。
事業を実施する地方自治体にとっては、施設を長期間使用することによるメリットは財政的にあまりありません。
維持管理費と改築更新費に起債も充当できないことから、毎年数少ない単独費(現金)の中から手当てしなければなりません。

国全体で費用を考えると、施設を長期に活用するほうが経済的ですが、現在の補助制度の枠組みでは、悲しいことですが、新しいものを建設するほうが地方自治体には得になります。コンバージョンした場合に、補助金が用いると、施設の耐用年数はそれからスタートになりますので、より老朽化が進む心配もあります。

特に公営住宅では施設の陳腐化に伴い入居率も下がることになるので、地方自治体は身銭を切ることになる改修よりも、補助金の入る新築に走ることになっていまします。
現在の補助事業スキームを大幅に変更しないとこの状況は変わらないような気がします。

支払い総額だけではなく、補助金の関係も検討しないとなかなか100年の所有は難しいかもしれません。

とし @ 2006年 09月 25日 23:37:08

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プロフィール
Hiroshi Kumagae
Hiroshi Kumagae
(男)
1959年05月06日
アビーム コンサルティング㈱             ディレクター
著書:脱「日本版PFI」のススメ 相模書房 ISBN978-4-7824-0705-9
ESADE大学院 国際経営修士
慶應義塾大学院 特別招聘講師(非常勤)
三田図書館・情報学会会員、PMFJ会員 公益事業学会会員
平成18年度内閣府PFI事業の総合評価検討委員会委員
平成19年度自治体PFI推進センター専門家委員会委員
日刊建設工業新聞 所論/緒論コラムニスト
東京LEC 法律文化 連載中 
剣道3段、居合道3段(夢想神伝流)
福岡県生まれ横浜市在住
連絡先:
hkumagae-mobile@softbank.ne.jp
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