PFIとDBOを比較することの是非

PPPに関して次の3つの質問がありました。(質問は汎用性があるように、ある程度一般化しています。)

1. DBOは設計・建設のための資金を予め用意できないと可能性は薄いのか、それとも公的資金は長期債務の形で調達できる仕組みをつくっておけばいいのか
2. (DBOは)PFIよりなぜVFMが出るのか、
3. DBOはPFIより規模の小さい事業でも導入が可能であるようにも見えるが、どのくらいの規模の事業(中略)で導入されているのか、

この質問は、日本版PFIの現状をあらわしている質問であり、回答者によって、返答は相当変わってくると思われます。日本版PFIと世界標準のPFIの比較を交えながら、この質問に取り組んで見ましょう。

まず、このような質問が出てくる背景には、議会から類似の質問が出てくることが想定され、その場合に、行政として合理的に返答する必要があるのだと想定します。

わが国の現状のPFI手法とDBO手法の考え方を前提としてPFIとVFMの論点を整理してみました。

<前提条件>
上記の質問には、PFIとはどのようなものであり、DBOとはどのようなものであるかの定義が明確になされていませんが、それはPFIとDBOを周知のものとしているからだと思われます。つまり、「PFIとは、民間資金を使って長期的に割賦払いをするという手法」であり、「DBOとは(民間資金を使わずに)設計施工運営を委託する」という考え方です。

<従来からあった類似の論点>
PFIよりもDBOのほうが、資金調達コストが安いのに、なぜPFIを利用するのかという論点は、わが国でのPFI導入の初期の段階からありました。
かつての返答は次のようなものでした。
「たとえ公共の資金調達コストのほうが安くても、公共が調達した場合にかかると想定される総事業費よりも、民間の資金調達コストを含めた総事業費が安くなるのであればVFMが出る」というものでした。
この場合、なぜ、公共が調達した場合にコストが高くなるかという理由は明確にしないまま、今までと同様の手法で発注すると公共調達コストは変わらないという前提と、PFIを利用するとなぜかわからないがコスト削減が達成できるという考えに基づいたものでした。

一方、PFIで調達するとなぜコストが下がり公共のVFMが生まれるのかという民間事業者からの理由は次のようなものでした。
「従来は、設計と施工と運営を別々に発注していたので、管理コストが重複したり、それぞれの事業者がリスクコストを重複させて見積もるために、無駄なコストが発生していた。PFIによってひとつにまとめることによって、無駄であったコスト削減が可能になりVFMが生まれる。」というものでした。

<従来の論点整理の矛盾>
上記の論点は、一つ一つ、独立して捉えた場合には合理的な答えのように見えますが、二つを一緒にしてみると矛盾しています。なぜなら、公共が資金を公債によって資金調達し、設計施工運営をまとめて民間に委託するという手法があるからです。
そうすると公債よりも資金調達コストの高い民間資金を使う理由はなくなってしまいます。

<民間資金を使う理由はどこにあるのか?>
PFIを利用する価値がないという結果になったのは、PFIを全否定しているわけではありません。前提条件とした割賦払いを前提とした日本版PFIは利用する価値がないということを意味しています。
すなわち、PFIの定義が間違っていたのです。
PFIの正しい定義は、「PFIとは、民間に資金を調達させ資産を持たせ、その資産の所有権に連動したリスクを民間に持たせることによって付加価値を生み出す手法です。そしてその付加価値が、公共の資金調達コストと民間の資金調達コストの差よりも大きくなるので、民間資金を利用する価値がある」というものです。

<BOT方式によるプロジェクトファイナンスとPFIはまったく異なる手法>
PFI手法は1990年以降に、リスク移転コストが資金調達コストの差を上回ることが証明されて始めて公共に導入されたものです。PFIとは、そもそも民間資金を利用することによって付加価値を生み出すことができる仕組みであり、1980年代に「投資する資金を持っていなかったアジア諸国」で利用された「うちでの小槌のようなBOT方式によるプロジェクトファイナンス」とはまったく異なった仕組みであることを理解しておく必要があります。いま、アジア諸国では世界標準のPFIの導入が検討されており、日本版PFIのような割賦払いを検討している国は、私の知る限り日本以外のどこにもありません。

<DBOとは何か>
米国では、欧州で発展したPPP(PFI)手法の導入が遅れています。そのかわりに、従来型の公共調達のベストプラクティスが追及されました。従来の公共調達手法はDBB(Design Bid Build)設計発注建設型しかありませんでしたが、公共調達の発注形態のひとつにDBOという発注形態があることが、コロンビア大学のMichael J. Garvin, Ph.D., P.E.の論文から分ります。

アメリカでの公共施設の供給方法の分類の仕方:

コロンビア大学のMichael J. Garvin, Ph.D., P.E.*は、2003年の建設リサーチコングレスにおいて、施設の供給方法を次のように分類しています。http://www.civil.columbia.edu/imerc/publications/downloads/RoleofProjectDeliverySystems.pdf#search=%22DB%20DBO%20DBFO%22 

1. DBB, Design Bid Build 設計、入札、建設
2. DB, Design Build 設計施工
3. DBO, Design Build Operate 設計施工運営
4. BOT, Build Operate Transfer 建設運営移転
5. O&M Services; Operate & Maintenance Service 運営維持管理サービス

従来はDBBしか存在しませんでしたが、いまでは、施設の所有者は、インフラのコスト、サービス、技術など、どのバリューを高めたいかの選択に応じて、適切な供給方法を選択することができるようになりました。しかしながら、その違いを理解していなければ適切なバリューを生み出すことはできません。
詳細については、論文に述べられているので繰り返しませんが、発注者が内容を自由に設定することができ、価格という明確な評価軸で事業者を選定できる従来型のメリットも大きいものです。
DBにすることにより、設計と建設を統合することができるようになり、設計と建設を合わせたコストでの競争が可能になり、発注から完成までの期間も短くできるようになりました。
DBOにすることで、ライフサイクルコストでの競争が可能になり、維持管理の期間のコスト変動を抑えることが可能になりました。その背景にはイノベーションの導入があります。
BOTにすることにより、さらに収益変動リスクまで民間に移転することができるようになりました。

<PFIとは何か>

EUにおける官から民へのリスク移転の違いによる分類の仕方:

EUが2003年3月に発行した PPPを成功させるためのガイドライン(GUIDELINES FOR SUCCESSFUL PUBLIC – PRIVATE PARTNERSHIPS)では、
http://www.bdi-online.de/download/Guidelines.pdf#search=%22EU%20PPP%20GUIDELINES%22 
PPPの発展形態に応じて調達の形態は異なることが示されています。
この報告書の18ページのFigure1には、DBOは示されていませんが、DBBとDBFOの間の形態であることは明白であるため、左から右に第1段階から第4段階というふうに分類することができます。つまりDBOは、第1段階と第2段階の間であることが分かります。
ちなみに、わが国のBTO方式や、BOT方式であっても割賦払い形態のPFI手法は、従来型の著立つ手法である第1段階であることが分ります。日本版PFIを欧州で導入されているPFIと同様に扱うことは適切ではありません。


回答

以上から、最初の質問をもう一度繰り返すと次のような答えが出てきます。
1. DBOは設計・建設のための資金を予め用意できないと可能性は薄いのか、それとも公的資金は長期債務の形で調達できる仕組みをつくっておけばいいのか

A1:DBOとは、設計建設運営を一括して発注する仕組みであり、公共が支払保証さえできれば、長期債務の形であってもかまいません。ただし、この仕組みを機能させるためには、アウトプット仕様による発注(米国では機能的仕様書“Functional Description”という用語が使われている)が必要になります。

2. (DBOは)PFIよりなぜVFMが出るのか、

A2:日本版PFIの場合、民間資金調達コストが公債による公共資金調達コストよりも高い分だけ、DBOのVFMが高いことになります。ただし、日本版PFIを前提としていることがナンセンスであり、民間資金を利用する合理的な理由が見当たりません。

3. DBOはPFIより規模の小さい事業でも導入が可能であるようにも見えるが、どのくらいの規模の事業(中略)で導入されているのか、

A3: この比較をすることは困難です。まず、DBOとPFIの定義が適切でないこと。事業によってリスク移転できる内容が異なるため、単純に規模だけで判断することが困難であることなどの理由をあげることができます。

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登録日:2006年 09月 26日 00:36:11

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ひょうごPFI協会のメインテーマは。。。

特定非営利活動法人ひょうごPFI協会のメインテーマは明らかに『PFI』です。 そ...

date:2006年 11月 22日 00:02:12

プロフィール
Hiroshi Kumagae
Hiroshi Kumagae
(男)
1959年05月06日
アビーム コンサルティング㈱             ディレクター
著書:脱「日本版PFI」のススメ 相模書房 ISBN978-4-7824-0705-9
ESADE大学院 国際経営修士
慶應義塾大学院 特別招聘講師(非常勤)
三田図書館・情報学会会員、PMFJ会員 公益事業学会会員
平成18年度内閣府PFI事業の総合評価検討委員会委員
平成19年度自治体PFI推進センター専門家委員会委員
日刊建設工業新聞 所論/緒論コラムニスト
東京LEC 法律文化 連載中 
剣道3段、居合道3段(夢想神伝流)
福岡県生まれ横浜市在住
連絡先:
hkumagae-mobile@softbank.ne.jp
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