2006年 08月

破綻税法の理念

検討中の破綻法制の整備
自治体の破綻法制の整備に向けて総務省が新たな枠組みを検討している。主な検討項目は3つ。まず、健全度を図る新指標を導入し、第三者機関が自治体に厳しい歳出入改革を勧告する「早期是正措置」を導入すること。次に、破綻認定の基準を厳しくし、再建計画の承認などで「裁判所を活用」すること。そして最後に、銀行貸し出しや地方債に「債務免除を認める」こと。具体策は米国を参照するという。このような既存のしくみの改善枠組みを設定する場合には、「対処療法」ではなく、「未然防止」の理念を原則とすることが重要である。
そこで、「未然防止」に焦点を当て、国と地方自治体を連結し「一般政府」として包括的に予算管理をしている英国の仕組みを紹介する。

英国の予算管理の仕組み
ア) 予算管理の目的を明らかにする
英国の予算管理のガイドラインでは、まず、予算管理の目的を次のように設定している。
① 財務ルールが機能するように公共支出の管理を行い、公共支出の管理を確実にすることによってマクロ経済を安定させること。
② 納税者にとってのバリューフォーマネーの高い、品質の高い公共サービスを提供することを目的とし、その公共サービスの支出を管理する部署が適切な支出をしたくなるようにインセンティブを与えること。

イ) 二つの基本的な財務ルール
上記の目的達成のために、次の二つの基本的な財政ルールを導入している。
① ゴールデンルール:政府は投資のためにのみ借り入れを行うことができ、年度会計の赤字を補填するための借り入れをしてはならない。
② 継続投資ルール:公共の累積債務は対GDP比率で算定し、健全なレベルで安定した景気循環ができるようにに維持すること。同様に、ネット債務は景気循環を考慮して対GDP比率で設定した基準以下に保つ。
最初の、ゴールデンルールは、健全な財政状況を維持するためのものであり、投資のために借り入れをすることは認めるが、投資を除いた歳出は歳入(公債による入金は含めない)以内に抑えるという考え方である。
二番目の継続投資ルールは、健全な財政を維持するためのものであり、借り入れが増えすぎないように限度を設定してチェックするという考え方である。

ウ) 省庁別支出限度額と年度管理費用
省庁別支出限度額(DEL)は、将来3年間の事業計画に基づいて策定された予算である。3年間の予算であるため、中期的に予算を管理することができる。たとえば、事業の進捗が遅れ年度末までに予算を使い切れない場合、翌年度にその予算を先送りすることができる。このしくみによって、翌年度の予算が削減されることを恐れ、無理に予算消化しようとするインセンティブをなくすことができる。
年度管理費用(AME)は、社会保障関連支出額のように支払額が大きく、しかも需要に応じて変動する支出の予算である。この種の予算は長期的に予測することが困難なだけでなく、短期的な予測も難しい。そのため、同じ年度内に2回予算見直しを行う。

エ) 投資予算
英国では、投資予算(CB)は、前述のDEL(中期予算)とAME(短期予算)とは別に管理されている。固定資産の価値を損なわないように不動産を長期的に所有するためには、継続した適切な投資が必要であるからである。

オ) PSAによる指標管理
前述のCB,DEL,AMEは、それぞれの事業実施部局のコミットメント(PSAと呼ばれ、組織の活動目的および達成目標を指標化したもの)を達成するために使われ、前述の予算管理目的の②が達成されているかどうかを客観的に評価する。

これらは、英国の財政健全化に貢献した実績のある方法である。結果がおかしくなったら対処するのではなく、おかしな兆候が見えたら対処するという理念から入る英国人らしい管理の仕組みである。

これらは、経営の観点から作られた管理システムである。
自治体には自治権があるのだから、このような管理手法を検討してみることもできるはずである。

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登録日:2006年 08月 31日 22:57:44

公営住宅は誰が所有すべきか

<耐用年数>

鉄骨鉄筋コンクリート造又は鉄筋コンクリート造の住宅用の耐用年数は60年から47年に短縮されたが、維持管理の仕方がよければ100年以上の耐用年数を期待することも可能。

<公共はなぜ100年の施設を所有しないのか>

なぜ、公共セクターは、施設を買い取りたがるのだろうか?
そして、施設の維持管理をしないで30年経過したら残存価値がなくなるような管理をしてしまうのか?
それは、施設を作るということには、政治的に意味があるが、出来上がったものを維持管理することは政治的にほとんど意味が無いからだという。
したがって、予算は、作ることに回され、維持管理にはまわされないらしい。

たしかに、なるほどと思われるが、それでは、ライフサイクルで安くすると評価されないのか?

<政治家はライフサイクルでコスト削減したことをアピールすればよい>

ライフサイクルコストを算定し、今までかかっていたコストと比較するとどのくらいコストが節約できるかが分かる。
節約できたコストをアピールすれば、政治的にも意味があるのではないか。

すなわち、30年間づつ建物を壊して、3回建替えれば90年間。建設期間を入れて100年かかる。毎年1億円の支出を30年間続けると支払総額の現在価値は2%の割引率で22億円になる。
それでは、毎年0.5億円の支出を100年間続けるといくらになるであろうか。
超長期の割引率を中長期の割引率と同じにすることには異論があるかもしれないが、0.5億円の支出を100年間続けたときに2%の割引率で同じく22億円になる
すなわち、1億円で30年間の支払いの約束をすることと0.5億円で100年間の支払いの約束をすることと価値的には同じである。

ちなみに1億円を100年払い続けると現在価値は43億円である。

<100年民間に施設を所有させる>

30億円かけて建物を3回作ることと、
50億かけて100年持つ建物をつくり、民間企業に100年間維持させること(実際には30年間の維持管理契約を3回延長することになるであろう)
を比較するとどちらが安いだろうか?

30年間かけて30億円を支払うことと、100年かけて50億円支払うことは単純に比較はできないが、30億より、50億のほうが高いからVFMが出ないとはいえない。

30年後に施設の価値を10億円に保つというリスクを民間がとれば、公共は民間に対して30年間に20億支払えば良いことになる。価値が無くなれば、10億が受け取れないことになるからである。

支払総額にだまされてはいけない。リスク移転からVFMが生まれるという意味はここにある。

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登録日:2006年 08月 29日 20:05:04

市営住宅建て替えについて

<この件は、PMFの会員によるインターネットフォーラムで取り上げられたテーマです。>

面白いブログの使い方を思いつきました。
ちょっと長い内容の場合は、メールに書くのではなく、ブログを参照先にする方法です。
興味のない人は、ブログに飛びませんので、メールも簡潔化しますよね。

さて、標記のタイトルにて、議論は公営住宅を自治体が整備すべきなのか、それともあまっている民間住宅を借り上げればよいのではないかというところからスタートしました。

その流れの中で、自治体が自前で整備することのメリットが述べられました。(面白い論点ですが、内容については本件とは直接関係しないので省略します。)

さて、自治体が公共住宅を整備するときの方法として、PFI手法があり、安くはなるけれど、補助金がもらえないという問題があるという意見が出てきました。

補助金については、重要なので、この具体的な事例に対して、状況を整理してみましょう。

次のような流れで考えて見ましょう。
A.補助金の適応に関しての国の方針と適用法について
B.国が審査対象としているBOTの条件についての考察
C.公共住宅にPFIを利用する場合の留意点


A 補助金の適応に関しての国の方針と適用法について

***************************************************************
1.国土交通省の基本的方針
http://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/policy/pfi/hojo-houshin.html
平成16年3月に地方公共団体がPFI事業を実施する際の補助金等の適用に関する国土交通省基本方針として、
  BTO、BOTともに、PFI事業で整備された公共施設に対し、補助金を一括交付することは可能である。
 ただし、BOT方式に関しては、以下の点について、個別プロジェクトごとに審査を行う必要がある。
①長期安定的に公共施設等を管理・運営できるか
②最終的にその公共施設等が公共に移転されることが担保されているか
③補助金等適正化法の適用条件(目的外使用の制限、財産処分の制限等)をPFI事業者が了承するか

2.17年12月31日現在での状況

http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha06/01/010314/08.pdf#search=%22PFI%20%E8%A3%9C%E5%8A%A9%E9%87%91%E3%80%80BTO%20BOT%22

住宅局担当案件は次のとおりです。
①公営住宅建設費等補助は、公営住宅法にて、公営住宅等整備事業対象要綱にもとづき、公営住宅(県営上安住宅(仮称)整備事業)に適用できます

②地域住宅交付金は、地域における多様な需要に応じた公的賃貸住宅等の整備等に関する特別措置法にて、地域住宅交付金交付要綱にもとづき公営住宅に適用できます。
***************************************************************

B.国が審査対象としているBOTの条件についての考察

①長期安定的に公共施設等を管理・運営できるか

「日本版PFI手法(定義は後述)により、たとえば30年間の割賦払いの契約を締結すると
公営住宅が必要なくなって空き家が出たとしても、お金を払い続けなければなりません。
もしくは、契約を解除して、必要なくなった住宅を民間から買い上げる必要があります。
お金を出す側から考えて必要な観点だと思われます。」

②最終的にその公共施設等が公共に移転されることが担保されているか

「個別のプロジェクトごとに検討するとなっていますので、住宅については、次のような要素を踏まえたうえで、移転する条件を明らかにしておけばよいと思われます。

日本版PFIの場合、割賦払いの支払満了後、機能的な状態の施設を公共に移転すれば、ただで資産が入手できるのと同じだから一見得するように思えます。しかしながら、その後の運営やライフサイクルコストで考えると、公共に移転することは次の3つの理由で必ずしもプラスではありません。
①施設が、不具合だらけになっている可能性があるため、そのまま受け取るよりも、更地に戻してもらったほうが得になることがある。
②古くなった施設を公共に移転して公共のリスクで改修工事をすることと、民間と契約更新して民間に投資させることを比較した場合、将来の公共が抱え込むリスクは後者のほうが少なくなる。
③公共住宅の場合、賃料が安いことから需要は一般的に継続するが、もし住民がいなくなったら、安くても誰も借りない。そのような状況の場合は、その施設を公共に移転することは、公共が負担する管理費と解体費が増えるだけであり、メリットがない。

将来の変動要素を分析した上で、契約書の中に、それぞれのケースごとに公共施設を移転する場合には、どのような条件にするかを明らかにしておく必要がありそうです。」

③補助金等適正化法の適用条件(目的外使用の制限、財産処分の制限等)をPFI事業者が了承するか

「これは単なる条件なので、PFI事業者が了承しなければ応募してこないと思われますが、制限が厳しければ、応募者がいなくなり、競争が働かなくなりますので、検討が必要です。」

C.公共住宅にPFIを利用する場合の留意点

詳細については、ここでは触れませんが、まず第1に次の二つのタイプのPFIがあります。
①施設整備費を割賦払いで支払う日本版PFI (わが国での一般的なBOT)
②民間施設を利用した後でその施設の機能とパフォーマンスに対しての後払い利用料金を支払うリスク移転型PFI(海外での一般的なBOT)
上記の「B.国が審査対象としているBOTの条件についての考察」は、基本的に①の日本版PFIで実施することを前提としたものです。割賦払いで施設を購入すると、民間事業者が施設を所有していたとしても、支払い債務が確定してしまいます。その結果、利用者がいなくなっても、支払いを継続しなければならなくなりますし、残存価値の状態が変わっているにもかかわらず、支払総額が同じとなる状況が生まれます。

某専門誌へ以前寄稿した記事の中に、住宅に関連した部分があったので引用します。

***********************************************************************************
英国国防省の幹部用住宅整備事業で投資コストを削減したPFI手法は次のようなものであった。
この事業は幹部用住宅という個人が住む住宅であるため一つ一つの規模が小さい。そこでロンドンの西にあるブリストル市のアビーウッド基地およびバース市のエンスレイ基地と、ロンドン南西の港町ポーツマス市のポーツマス基地の3箇所に点在する317戸の国防省幹部の家族帯同型高級住宅をまとめてPFI事業に適切な大規模プロジェクトにした。
つぎに、設計・施工・資金調達・所有・維持管理(DBFO)のすべてを民間事業者が行うBOT型のPFI方式で26年間の事業契約を締結した。そして、事業者が契約期間終了後の施設の残存価値変動リスクと需要変動リスクをとるという契約とした。
残存価値変動リスクを民間事業者が取る方法は、事業者が予測した26年後の施設の残存価値を除いた事業投資額を事業期間中に事業者に支払うというものである。そして、需要変動リスクを民間事業者が取る方法は、26年後に国防省が住宅を必要としなかった場合には、その住宅を民間に売却するか賃貸するなりして、将来の需要リスクを事業者が保証するというものである。

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以上

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登録日:2006年 08月 26日 07:39:07

立ち上げのご挨拶

ヤマハの桧森さんのブログ立ち上げに刺激され、何はともあれ、ブログを立ち上げてみました。

日本版PFIと現在世界中で標準化されようとしているPPP/PFIの違いを明らかにしていこうと思います。

私も8年前に、ロンドンでPFI関連の業務に従事したときはずぶの素人でした。

ただ、石ノ上に座り続けていますので、その姿がやっと見えてきたところです。

いまのところ、このブログを通して、アウトプット仕様書、業績連動支払い、アベイラビリティ、パフォーマンス、モニタリング、リスクの定量化、SLA、KPI、PSA、RAB,DEL,AME、資本予算、CSR、SR、等について、少しづつ紐解いていこうと考えています。

よろしくお願いします。

質問歓迎です。
すぐに返事できるかどうかは定かではありませんが・・・

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登録日:2006年 08月 25日 00:23:43

プロフィール
Hiroshi Kumagae
Hiroshi Kumagae
(男)
1959年05月06日
アビーム コンサルティング㈱             ディレクター
著書:脱「日本版PFI」のススメ 相模書房 ISBN978-4-7824-0705-9
ESADE大学院 国際経営修士
慶應義塾大学院 特別招聘講師(非常勤)
三田図書館・情報学会会員、PMFJ会員 公益事業学会会員
平成18年度内閣府PFI事業の総合評価検討委員会委員
平成19年度自治体PFI推進センター専門家委員会委員
日刊建設工業新聞 所論/緒論コラムニスト
東京LEC 法律文化 連載中 
剣道3段、居合道3段(夢想神伝流)
福岡県生まれ横浜市在住
連絡先:
hkumagae-mobile@softbank.ne.jp
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