2007年 12月
事業者と金融機関は、発注者側のレベルに合わせて入札の仕方を調整します。
PFI初心者さんから次のようなコメントが入ってきました。(初心者と謙遜してんのかな?)
「ススメ」やこのブログを読んで、PFIにおける金融機関の役割の重要性を再認識しております。ただ1つだけ、疑問があります。これまでの多くのPFI事業では施設整備費の割賦払いにより、金融機関の融資の回収にある程度確実性があったとすると、熊谷氏が言われるような「要求水準とモニタリングと支払いメカニズムの連動の仕組み」を導入して、金融機関に監視の役割を担わせようとしたときに、果たして「国内の」金融機関がこれに応じて融資を行う可能性があるのでしょうか。海外と国内のダブルスタンダードは早急に改善されるべきものとしても、実際に手を挙げる事業者と金融機関がいなければPFI事業そのものが成立しないという恐怖感が公共側の意識を縛り続けるように思うのですが。
確かに施設整備費の割賦払いにPFI事業は使われてきました。それは実際に、従来型で投資しようにも、一般財源から支出するお金がないためであり、背に腹は変えられないからでした。
しかしながら、PFI事業を、サービスを受け取った後のサービス料人の支払いと捕らえることによって、まったく同じキャッシュフローで、民間にリスク移転することが出来るわけです。
海外と国内にダブルスタンダードがあるだとか、手を上げる事業者と金融機関がいないかもしれないというのは杞憂です。
なぜなら、海外のPFI事業に参画している日本の事業者は存在していますし、既に、シティバンク、デプファバング、デクシアバンク、その他、毎日M&Aで新聞紙上をにぎわせている外資系の銀行が数多くあります。従って、彼らが興味を持てるような仕組みを作ってやればよいだけです。
また、日本人が責任者であっても、プロファイは成り立ちます。事業者と金融機関は、発注者のレベルに合わせて入札の仕方を調整すると言うことを理解しなければなりません。
スプレッドが低いから、金融機関が興味はないというのは、卵が先か、鶏が先かの議論に似ています。リスクが移転されていないのですから、スプレッドは低いのは当たり前です。
ノウハウのある事業者のリスクを適切に評価すれば融資できる事業が作られた場合に、応募者の金融機関が外資系の金融機関ばかりになったってかまわないではないですか?そこからノウハウを吸収して、日本の銀行も参加すればよいだけです。
わが国のPFIの基本理念は、次のとおりです。
公共施設などの整備などに関する事業は、民間事業者に行わせることが適切なものについて、民間の自主性、創意工夫を尊重しつつ、公共施設などの整備などに関する事業を出来る限り民間事業者にゆだねて実施するものである。このことによって、財政資金の効率的利用が計られ、また、官民の適切な役割分担に基づく新たな官民パートナーシップが形成されていくものと期待される。(PFI法 第三条より)
これを、金融機関の立場も含めて、導入可能な範囲で書き直してみました。
【対象となる事業】
長期的な契約によって、公共サービスの質を確保する民間ノウハウが存在し、イノベーションが活用可能で、より安く、より品質の高いサービスを提供することが出来る事業が、PFI手法の活用に適切な事業である。
【サービス購入契約】
官は公共サービスの質の設定と提供が重要なのであって、そのために施設所有する必要はない。かえって、その公共サービスの質を達成する手段や手法は民間の自主性、創意工夫を尊重しつつ、出来るかぎり民間事業者にゆだねて実施することことによってプロセスの見直しやイノベーションの導入が進む。ただし、公共サービスの性格上、適切なサービス提供ができなかった場合の責任は最終的に官が取らざるを得ない。
【官が事業枠組みを設定】
そこで、官は、民にサービス提供の手段や手法を任せる条件として、官が適切な要求水準をきめ、その業績をモニタリングし、要求したサービス水準を達成できない場合にはペナルティを課する事業枠組みを設定する。民は、事業枠組みの範囲内で、従来の仕組みを大幅に見直したり、サービスの質を達成するためのイノベーション手法を活用して、ペナルティをかけられないような事業管理システムを構築し、サービスを提供する。
【役割分担の仕組み】
このような新事業手法は失敗する可能性があるので、金融機関に精査させる。金融機関にとって、事業の失敗は不良債権につながることから、確実に融資が回収できるように民間の事業提案を改善させる。 実績のある事業者の提案を金融機関が精査した事業であれば、民間事業者は収益を十分上げながらも、財政資金の効率的利用を図る提案をすることが出来ると考えられる。
【成功を確保する仕組み】
ただし、万が一であっても事業破綻は、官にとっても好ましくない。そのため、民の事業契約上の債務不履行が発生した場合には、契約解除する前に金融機関に事業介入させ、事業の建て直しができるように、官、民、金融機関の三者が合意する。このような、直接の契約関係になかった官と金融機関が民を介在して結ぶ三者契約を「直接契約」と呼ぶ。「官と民の事業契約」、「民と金融機関の融資契約」、「官と民と金融機関の直接契約」の3つを同時に締結し、三者のリスクバランスを最適化し、安定した事業を継続的に行う。このような安定した高品質のサービス提供は、サービス利用者にとってのメリットにもなる。
【パートナーシップの源泉】
以上のような適切なPFI手法の活用ができれば、利害関係者の全てがマルチプルWINの状態となり、官民の適切な役割分担に基づく新たな官民パートナーシップが形成されていくものと期待される。
実際に募集しても応募者のいないPFI事業も増えているようです。
国際標準に従わないで、応募者が出てこないなら税金の無駄遣いとして行政訴訟されるかもしれませんよ。
日本の事業者が外国のPFI・PPP事業に海を越えて参加しているのですから、参加する意思があるかどうかを、まずヒアリングすればよいと思います。
がんばって、みなの血税を効果的、効率的、合理的に使いましょう。
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登録日:2007年 12月 27日 21:51:41
モニタリングは官だけの責任ですか?銀行はモニタリングしないの?(その3)
なかなか、面白い話の展開になってきました。
オーキーさんから
熊谷氏はちょっと物事をロマンティックに考えすぎるきらいがあるのではないですか?
というコメントをいただきましたが、合理的に、少なくとも、欧州や、過去に英国植民地であったアジア諸国(シンガポールや香港等)で成り立っている姿を前提に仕組みを考えているだけです。日本の銀行にリスク分析をする能力がないということになると、今、ニーズの高まっているアジアのプロジェクト・ファイナンスも、日本の銀行の欧州支店から対応することはできても、日本からは対応できないことになってしまいます。
さて、侍さんからの質問にお答えします。
1.最後の段落で、「「・・・その結果を活用して、発注者が示したままの・・・」とありますが、「その結果」とは、発注者が事前に提示するものなのか、それとも、金融機関が雇った技術アドバイザーの力を借りて、金融機関が算定した結果なのか。発注者がそれだけ詳細なデータを市場に提示すること自体、もし、日本で行うとしたら、革命的なことだと思いますが、実際のところはどうなんでしょうか。発注者も当然、技術アドバイザーを雇っているわけですから、両者の技術アドバイザーが存在して、それぞれチェックを行い、その結果を元に交渉したうえで、発注者と事業者、そして金融機関の三者間契約が成立する、と理解すればいいのでしょうか。
ここでは、発注者が適切な条件を設定することが前提として記載しました。
革新的かどうかは、わかりませんが、発注者が事業の枠組みを設定することが必要だと思います。実際の事業内容を最も理解しているのは、担当者なのですから、あまり技術アドバイザー頼みにならないようにする必要があります。
少なくとも、事業契約と、融資契約と、三者間の直接契約を同時に締結しないと官にとって不利な状況になることだけは確かです。
2.サービスの品質に関するモニタリングは、事業者がまず自ら行い、公共が事業者からの報告に基づいて行ったうえで、サービスフィーを払うことになりますが、レンダーが技術アドバイザーを雇って行う「モニタリング」は、これとは別のものではないのでしょうか。運営開始まではともかく、運営が始まってから行うモニタリングは、公共と事業者の間の話だと理解している人は、少なくないと思いますが、もし違うのであれば、ご教示ください。(たとえば、Independent engineerが、運営開始後も、定期的に、金融機関に技術評価レポートを送り、CFが変動する兆候がないかどうか等、情報を提供する。金融機関はこれを元に、事業をモニターすることが可能になる等)
サービスの品質といっても、要求水準には、アベイラビリティに関する要求と、サービスの品質に関連する要求、そして、KPIの変動に対しての対処に関連する要求など、さまざまな要求が含まれています。
したがって、事業者は、それぞれの要求のモニタリングをどのような仕組みで構築するのかを示す必要があります。モニタリングシステムを構築することは、事業者にとって、発注者の主観的な判断によって減額がなくなるというメリットにつながります。
ただし、要求水準が「ススメ」にも記載したように
1.要求水準を満たさない事象がヘルプデスクを通して認識されること(この場合は、発注者が示した重要度割合に基づいた減額が適用されます。ヘルプデスクの結果報告によって、自動的に出てくるものです。)
2.事業者提案が提案どおりに実施されないこと(提案が実施されない場合は、ペナルティポイントの適用が適切化と思われますが、ペナルティポイントの発動の仕組みを事前に合意しておく必要があります。発注者が確認できるものです。)
3.類似施設のベンチマークよりも下回っていること(この場合もペナルティポイントが適切だと思われます。特別なベンチマークの場合には、技術アドバイザーが関与する可能性があります。)
4.セルフモニタリングによって問題が発覚したり、セルフモニタリングが機能しない場合〔これらは、アベイラビリティと、パフォーマンスのどちらにも適用される可能性があります。事業者が一義的に確認したものを、発注者が確認します。)
5.サブコンの担当している業務の実態の実態をSPCの管理者が認識できていない場合(アベイラビリティとパフォーマンスの両方のケースがありえますが、それにプラスしてペナルティポイントが発生します。抜き打ち検査などによっての確認が一般的です。)
6.満足度調査の結果が悪化している場合に適切な対応がとられない場合(満足度調査そのものの結果ではなく、その結果が悪化している場合の対応に対するペナルティポイントが発動されます。運営委員会に対して、事業者からの改善プロポーザルが出てくるはずです。一義的には事業者の担当ですが、発注者の許可が必要な項目です。)
7.法令順守ができていない場合。(ケースによっては、法令順守が達成できるまでアベイラビリティの対象になることがあります。ペナルティポイントの対象です。定期的な法定検査の結果を確認するのは、発注者の役割です。)
8.監査の結果、不適切な運営が行われていることが発覚した場合。(これもペナルティポイントの対象です。監査は、監査法人が行うのが一般的です。)
このように見ていけば、技術アドバイザーが関与しなければならないモニタリングはほとんどないことがお分かりになるのではないでしょうか。
技術アドバイザーは、事業契約の内容を変更する場合など、もっと別のケースで関与してもらう必要があります。
理想的な姿であり、現在実施されていないかもしれませんが、実施できない仕組みではありません。
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登録日:2007年 12月 27日 01:28:45
モニタリングは官だけの責任ですか?銀行はモニタリングしないの?(その2)
オーキーさん曰く
金融機関に「事業」をモニタリングできる「能力」があるなら、今の日本の金融をめぐる問題の多くは解決しているはずです。
別に日本に限ったことではありません。
一定の基準を設けて、誰かにモニターさせて、それに基づき決定を下すことならできるでしょう。
英国においてもレンダーは事業に関し、技術アドバイザーを雇うなどして「モニタリング」をしているはずですが、いずれにしても一義的な責任など負えるはずもありません。
わたしはここにわが国のPFIの問題の核心があると思います。英国でPFI事業に関わったものとして、その考え方は間違っていると断言できます。
金融機関が、技術的な判断をすることは、本来の専門性から外れた行為であり、当然すべきではありません。しかしながら、英国においてレンダーは、事業に関して技術アドバイザーを雇いますが、技術アドバイザーにモニタリングをまかせきっているわけではありません。技術アドバイザーを活用して、客観的なモニタリングが行えるような仕組みをつくり、金融機関としてのリスクを取っているのです。
確かに、技術上の問題点があるかないかを判断するためには、技術アドバイザーが必要です。しかし、それを技術アドバイザーの分野だから、金融機関はモニタリングすることが出来ないとは考えるべきではありません。
英国では、技術アドバイザーに、客観的にサービスの質をモニタリングする枠組みを設定をさせ、具体的なモニタリングシステムの構築は、民間事業者に競争させて構築する仕組みがとられています。
残念ながら、わが国のモニタリングのガイドラインには、このモニタリング構築の方法が明確に記載されていないため、発注者がモニタリングをしなければならないと思い込んでいるのだと思います。つまり、公共事業であるので最終的に公共が責任を取らざるを得ないという部分が協調されすぎているように思われます。
モニタリングのガイドラインの記載を見てみましょう。
モニタリングの内容を説明する部分では、モニタリングは次の3つの確認となっています。
① 報告書等による履行内容の確認
ⅰ)取り決められた業務報告書が契約に定めた期限等で提出されているかの確認
ⅱ)報告書の具体的内容が要求水準を満たしたものとなっているかの確認
② 事実の確認
報告書の内容自体が事実行為として行われているかの確認。
ⅰ 測定機器による計測(電源装置など計測機器による処理量等の計測)
ⅱ サンプルの抽出による検査(安全基準、衛生基準等定めがあるもの)
ⅲ 現場での抜き打ち検査(選定事業者の仕様書等内容を抜き打ちで検査)
ⅳ サービス受益者等からの苦情等の連絡(受益者等からの苦情により情報を把握)
③その他:顧客満足度調査
これだけでは不十分です。誰が水準をきめるのか、そして、その水準の達成手段や手法を決めるのは誰か、どの水準が機械で測定するものであるのか、どの水準がサンプル抽出の対象であるのか、顧客満足度調査の対象は何か、もしくは、その決め方について、これらのルールの枠組みと具体的なシステムの構築をどのように官民で分担するのかが、記載されなければならないのです。実は、そこに技術アドバイザーの活躍の余地があります。ここで上手に技術アドバイザーを使って、客観的にサービスの質を評価する仕組みを構築することが出来れば、金融機関がモニタリングの結果を評価することが出来るようになるからです。
また、モニタリングの頻度については、わが国のガイドラインには次の3種類が記載されています。
1. 日常的に行うもの、
2. 一定の期間を定め定期的に行うもの、
3. 随時の抜き打ち等非定期的に行うもの等
日常的の中には、機械などを使って24時間継続して行うものと、窓口がオープンの時間帯だけ受付けるもの、通常の作業や巡回で発見するもの、連絡によって緊急に対応するもの、状況に応じて日常とは異なる方法で対処するものがあります。
一定の期間は、毎日、毎週、毎月、4半期、半年毎、毎年、3年毎、や5年毎等が考えられます。
抜き打ち等は、監査の時や、何らかの重要な問題が発生したり、発生する可能性があるときに実施します。
それぞれのモニタリング指標やモニタリング手法は、要求水準と同時に発注者が策定し、事業提案を求める際に事業枠組みとして示します。そして、それらの水準を達成する手法や手段及び、その要求水準を達成しているかどうかをモニタリングするシステムは、事業者に提案させることが重要です。これは、モニタリングはただで出来るものではないからであり、たとえば機械などを使って、兆候を発見したら対処する仕組みを組み込むことによって、リスクの顕在化を防ぐことが可能になったりするからです。そして、このような仕組みが構築できれば、金融機関が事業リスクを判断できるようになるのです。
この仕組みを構築するためには、どのようなリスクがどのような過程で顕在化する可能性があるかについて事前に、技術アドバイザーを交えて深く検討することが重要です。そして、導入可能性調査の段階から、問題が最小限で済む最善のケースから、問題が最大化する最悪のケースまでを、3種類もしくは5種類程度にわけ、どのようなリスクが顕在化するのかについてのコスト算定をするのです。
このリスク算定で示したリスクを民間に移転するために、事業検討の初期の段階ではシナリオ分析によるリスク分析を行います。そして、入札の段階では、事業者の提案によって公共が保持するリスクに対してどのような影響が発生するかについても算定要素の中に組み込めるような、モンテカルロシミュレーション手法などが用いられるのです。このリスク分析が行われていないのが問題なのです。
これらの算定は技術アドバイザーなしでは簡単に出来るものではありませんが、その結果を活用して、発注者が示したままの条件で融資をするか、それとも、事業契約の条件を緩和しなければ、資金調達コストが跳ね上がることを事業者と一緒に発注者と交渉するのが金融機関の役割です。
少なくとも、このようなプロジェクトファイナンスの考え方で、外資系の銀行は融資の検討をします。わが国のメガバンクも、海外のPFI事業には、このような対応をしています。もし、このような対応が出来ないという銀行があるのであれば、その銀行はPFI事業に参加する資格はありません。
いま、日本の銀行の格付けが改善していますが、やはり、このようなプロジェクトファイナンスができるようになってもらわないと、本来の銀行の役割は果たせないのではないかと思います。
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登録日:2007年 12月 24日 23:32:19
モニタリングは官だけの責任ですか?銀行はモニタリングしないの?
オーキーさんからの次のコメントには驚いています。
金融機関は与信審査はできても事業の中身をモニターすることなどできません。モニタリングはやはり官の責任においてすべきでしょう。PFIとは言え公共事業なのですから。
金融機関の与信審査って何ですか?
"ススメ”にも書きましたが、金融機関が事業価値を評価する項目として①事業用地の適切性、②事業に必要とされる技術と設計条件、③EPCコントラクター(ゼネコン)の経験と適切性、④EPC(設計施工)契約の技術面に関する事項、⑤建設費と予備費の配分の適切性、⑥建設スケジュール、⑦建設と運営に関する許認可、⑧事業の特殊要素(例えば原料供給事業協定)の適切性、⑨マネジメント体制・人事評価、⑩運営上の前提条件の将来予測、⑪運営および維持管理コスト予測 ― 等 の項目があげられます。
これって、事業の中身ですよね。
PFIは施設整備費を支払うのではなく、施設を利用して提供するサービスに対しての支払いです。少なくとも、事業がサービス業績に連動視する仕組みになっていて、金融機関が事業リスクを取る以上、これらの事業の中身を当然モニターする必要があるわけです。
上記の考え方は、割賦支払いになっているので、建物さえ出来れば、後は知りませんよといっているように感じてしまいます。
モニタリングは、サービスの品質が要求どおりに提供されているかを確認する仕組みであって、主観的にならずに、客観的にするために、”ススメ”では、8種類のモニタリング手法を示しました。
品質が悪いと、発注者が感じるのは、
①要求したサービス水準が満たされていないとき
②事業者が入札段階で実施提案をしておきながらそのとおりに実施しないとき
③他の類似施設の比較可能なサービスと比べて明らかに品質水準が低いとき
④セルフモニタリングで悪いことがわかったとき、または、セルフモニタリングが機能しないとき
⑤専門業者と管理者(SPC)のサービス提供内容の理解に整合性が取れていないとき
⑥顧客満足度調査、従業員満足度調査などが改善されないとき
⑦法律を遵守していないとき
⑧監査によって、不適切であることが判明したとき
このようなモニタリングをすることを前提として、要求水準をこれらのモニタリング手法で評価できるように設定することが重要です。
したがって、そのモニタリングを行うのは、官であったり、事業者であったり、機械であったり、監督省庁や監督機関であったり、公認会計士であったり、要求水準に基づいて異なるわけであり、これを官の責任であるとすることは、乱暴すぎるように思われます。
PFIの基本理念を整理しなおしてみました。
【対象となる事業】
長期的な契約によって、公共サービスの質を確保する民間ノウハウが存在し、イノベーションが活用可能で、より安く、より品質の高いサービスを提供することが出来る事業が、PFI手法の活用に適切な事業である。
【サービス購入契約】
官は公共サービスの質の設定と提供が重要なのであって、そのために施設所有する必要はない。かえって、その公共サービスの質を達成する手段や手法は民間の自主性、創意工夫を尊重しつつ、出来るかぎり民間事業者にゆだねて実施することことによってプロセスの見直しやイノベーションの導入が進む。ただし、公共サービスの性格上、適切なサービス提供ができなかった場合の責任は最終的に官が取らざるを得ない。
【官が事業枠組みを設定】
そこで、官は、民にサービス提供の手段や手法を任せる条件として、官が適切な要求水準をきめ、その業績をモニタリングし、要求したサービス水準を達成できない場合にはペナルティを課する事業枠組みを設定する。民は、事業枠組みの範囲内で、従来の仕組みを大幅に見直したり、サービスの質を達成するためのイノベーション手法を活用して、ペナルティをかけられないような事業管理システムを構築し、サービスを提供する。
【役割分担の仕組み】
このような新事業手法は失敗する可能性があるので、金融機関に精査させる。金融機関にとって、事業の失敗は不良債権につながることから、確実に融資が回収できるように民間の事業提案を改善させる。 実績のある事業者の提案を金融機関が精査した事業であれば、民間事業者は収益を十分上げながらも、財政資金の効率的利用を図る提案をすることが出来ると考えられる。
【成功を確保する仕組み】
ただし、万が一であっても事業破綻は、官にとっても好ましくない。そのため、民の事業契約上の債務不履行が発生した場合には、契約解除する前に金融機関に事業介入させ、事業の建て直しができるように、官、民、金融機関の三者が合意する。このような、直接の契約関係になかった官と金融機関が民を介在して結ぶ三者契約を「直接契約」と呼ぶ。「官と民の事業契約」、「民と金融機関の融資契約」、「官と民と金融機関の直接契約」の3つを同時に締結し、三者のリスクバランスを最適化し、安定した事業を継続的に行う。このような安定した高品質のサービス提供は、サービス利用者にとってのメリットにもなる。
【パートナーシップの源泉】
以上のような適切なPFI手法の活用ができれば、利害関係者の全てがマルチプルWINの状態となり、官民の適切な役割分担に基づく新たな官民パートナーシップが形成されていくものと期待される。
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登録日:2007年 12月 23日 23:57:38
わが国独特のPFIの5原則3主義
そもそも、ハコモノPFIは成り立つのかという質問が、日本特有の質問です。
なぜなら、そもそも、PFIとはサービスの購入であって、ハコモノに対する支払いをするのではないからです。
ハコモノが生み出すサービスに水準を設定し、その水準が達成できなければ、支払いを減額するという仕組みです。従って、ハコモノPFIと同等の表現であるAcommodation PFIは一般的なPFIのひとつであり、施設整備費を支払うという要素がそもそもないのです。
【わが国に特有なPFIの5原則と3主義】わが国では【PFIの5つの原則】と【PFIの3つの主義】がよく引用されます。
【PFIの5つの原則】
1 公共性原則: 公共性のある事業であること
2 民間経営資源活用原則:民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用すること
3 効率性原則: 民間事業者の自主性と創意工夫を尊重することにより、効率的かつ効果的に実施すること
4 公平性原則: 特定事業の選定、民間事業者の選定において公平性が担保されること
5 透明性原則: 特定事業の発案から終結に至る全過程を通じて透明性が確保されること
【PFIの3つの主義】
1 客観主義: 各段階での評価決定について客観性があること
2 契約主義: 公共施設等の管理者等と選定事業者との間の合意について、明文により、当事者の役割及び責任分担等の契約内容を明確にすること
3 独立主義: 事業を担う企業体の法人格上の独立性又は事業部門の区分経理上の独立性が確保されること。
これらは、PFIの基本指針に書かれているものですが、具体的に民間資金を使うことと連動したものではありません。これらの考え方は従来の仕組みでも導入可能なものばかりです。
それでは、代表的な例として英国とオーストラリア(ビクトリア州)では、PFIには、どのような特徴があると定義しているでしょうか?
1998年に、無理なリスク移転によって、民間事業者の試算として施設を持たせることに拘ると、Best VFMを達成することが出来なくなるという考え方が確立され、FRS5(Financial Reporting Standard No.5)「取引の実態を財務報告書で報告するための指針」が公表されました。
ここには、次のような内容が示されています。
契約は、公共セクターから民間事業者に発注されたものであること。
契約によって、契約期間にわたって要求されるサービスレベルが明確に設定されること。
一般的に、契約は期間毎に定額支払い(Unitary Payment)され、その支払いは、施設が利用可能であること(Availability)および、業績(Performance)、従量料金(Levels of usage)に連動する。
法的に事業者によって所有されるか、事業者にリースされた不動産が、サービスを提供するために必要とされるのが一般的である。
不動産には、建物(刑務所や病院)、道路、鉄道、端、車両、ITシステムが含まれる。
典型的なPFI契約では、事業者はDBFO(設計・施工・資金調達・運営)をおこなう。
契約は、必要な不動産の特性や水準を規定する。例えば、購入者の法定義務を満足させることがある。資産は、第三者によって利用されてもかまわないし、そうでなくてもかまわない。PFI契約は、契約期間の最後に資産をどのように処理するかについて規定する。(これには、片方もしくは双方のさまざまな選択肢が含まれる。法的な所有権が定額(名目上の額)にて引き渡されるかもしれない。また、新しい事業者に対して資産を引き渡すためのPFI事業の再入札の条件となっているかもしれない。
これらの双方のケースの場合には、PFI契約は、資産を最低水準で維持するか、契約期間の終了時に利用可能な耐用年数が規定されているかもしれない。
それ以外の可能性としては、事業者がPFI契約の終了時に資産の所有権を持ち続けたり、発注者が契約終了時の市場価格で資産を購入することがある。
公共セクターの発注者は、それ以外のサービス提供方法に比べて民間提案によってVFMが生まれることを証明しなければならない。
一般的にVFMは公共から民間セクターへのリスク移転によって達成される。
日本式に言うのであれば、つぎの5つの原則にでもなると思います。
1.サービス購入原則:
施設の購入ではなく、施設が手依拠するサービスを購入すること
2.契約分離に該当しない原則および業績連動原則:PFIの支払いは、①Availability、②Performance、③Levels of usageの3要素に連動したUnitary Paymentであること
3. 官の条件設定と民の主体的管理原則:サービス提供に必要な不動産を民がコントロールするために、事業者が施設を所有 または、事業者に施設を長期リースし、事業者がDBFOで整備すること、その際官は、条件を設定するのみであること(不動産特性や水準は官が規定、官がが資産の第三者利用の可否を判断する)
4. ライフサイクルコスト原則:
契約期間終了後の資産処理を規定すること
5. リスク移転原則:
発注者は、PFI以外の手法と比べてVFMを証明(×過去と比較)VFMは一般的に公共リスクの民間移転によって達成すること
オーストラリアのビクトリア州では、次のような7つの原則が示されています。
1. 大規模プロジェクトの原則(約10億円以上)
2. 測定可能なサービス結果の原則
3. ノンコアサービス委託の原則
4. リスク移転の原則
5. 長期契約の原則
6. イノベーション導入の原則
7. 市場の反応重視の原則
ハコモノPFIがもし、施設整備費を支払うことを前提に考えられているひとつの仕組みであるならば、そのような仕組みに、公債よりも資金調達コストの高い民間資金を使うことは税金の無駄遣いであり禁止されるべきものです。
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登録日:2007年 12月 23日 22:53:19
ブログで話題になっているテーマ
わたしが、ちょっと更新をサボっている間に”脱「日本版PFI」のススメ に関しての質問(その3)”のコメント欄において、閲覧者間によるいくつかの議論が進んでいるようです。
1. ハコモノPFIが成り立つのかどうか(オーキーさん”以下「OKさん」”)
2. 融資債権の証券化について(しきのぴいちゃん”以下「Pちゃん」”)
3. モニタリングは官の役割なのか?(PFI侍さん”以下「侍さん」”とOKさん)
4. リスク移転からどうしてバリューが生まれるのか?(Pちゃんと侍さん)
それぞれ、別々のエントリーを作りますので、そこで議論を進めましょう。
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登録日:2007年 12月 23日 22:36:34
所論諸論 PFI事業のあるべき姿 2007 年 12 月 13 日 日刊建設工業新聞
PFI手法によって整備された高知医療センターは、収賄事件にまきこまれただけでなく、「病院本体の赤字問題のなかで、企業との契約というベールに包まれ、赤字の原因がわかりにくいのが一番の問題」と、運営上にも問題があるといわれているらしい。
しかしながら、病院本体の赤字は予想できたことで、民間事業者の運営とは関係ない。また、企業契約のベールに包まれているのは、海外のPFI事業では当たり前の会計帳簿の開示を発注者が事業者に要求しなかったからだ。
この病院の抱える最も重要な課題は、病院の赤字や民間の情報開示問題ではなく、移転可能な公共リスクを民間移転しておらず、民間に移転できないリスクを無理に民間に移転していることである。
英国でも、病院PFI事業の医療行為を含んだ運営は公共が担う部分であり、医療行為の赤字は公共責任だ。明確な業務とリスクの分担が原則であるPFI事業において、「公共が損をしているのに、民間がもうけているのはけしからん」という根拠のない責任転嫁論は望ましくない。
それでは、いったい官民の業務分担やリスク分担はどうあるべきなのか。英国の病院PFI事業と比較しながら、このあるべき姿を検討してみた。
まず、英国では、医療関連業務は公共の業務であるので民間には委託しない。医療関連業務とは、診療行為だけではなく、薬剤・診療材料・医療機器の購入、電子カルテの調達から運営まで一連のものである。民間に委託するのは、建物の建設維持管理、清掃、ケータリング、医療機器の維持管理、駐車場の運営など、民間ノウハウを活用し、民間にリスクをとらせ、効率的に運営することが可能な分野のみである。
たとえば、建物の建設維持管理のリスクを民間移転するので、民間は施設整備費、大規模修繕費等を民間資金調達し、施設提供サービス料の受け取りによって、融資額を返済する。建物に不具合が出て使えなくなると、事業者は施設提供サービス料を受け取れなくなるので、不具合がない状態を維持しようとする。合理的である。
一方、高知医療センターはBTO方式であり、施設が老朽化して、適切な状態を下回っても、契約時に確定した債務を払い続けなければならない。また、公共が施設を所有し、大規模修繕も、自らの判断で行うため、今後老朽化してくると、追加コストを支払って修繕せざるを得なくなるであろう。
さらに、一連の医療行為の一部、たとえば、医薬品の調達や診療材料の購入を安易に民間に委託している。新たな薬品や診療材料の登場で、既存の価格が変動した場合、どのようにして価格を調整するのであろうか。また、医者がコスト意識なしでこれらの消耗品を使ったり、事業者が高価な契約外の薬剤や診療材料を医者に売りつけて、これを事業者収入にしたりすると、確かに病院の赤字が増え、事業者がもうけることになる。しかしながら、それは、発注者の作った事業枠組みの特性が生む必然であって、いくら、事業者の経理情報を公開しても改善されるようなものではない。
PFIは、公共のリスクを民間移転することからVFM(バリュー・フォー・マネー)を生み出す仕組みであるといわれる。そのため、事業計画の段階で、リスク分析を行い、官民のどちらがリスクをとれば、より廉価にしかも高い品質でサービスが提供できるかの判断をしなければならない。
診療業務がコア業務であり、重要なのであれば、診療業務は民間に委託すべきではない。これは、リスク分担の観点から考えれば明白である。不適切なリスク分担はVFMの低下につながる。
民間にできることを民間に任せたいのならば、極端な例であるが、米国ジョージア州のサンディ・スプリングス市のように、警察、消防、緊急医療を除いてすべてを民間委託する方法もある。
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登録日:2007年 12月 23日 18:11:47
- プロフィール

- Hiroshi Kumagae
- (男)
- 1959年05月06日
- アビーム コンサルティング㈱ ディレクター
- 著書:脱「日本版PFI」のススメ 相模書房 ISBN978-4-7824-0705-9
- ESADE大学院 国際経営修士
慶應義塾大学院 特別招聘講師(非常勤)
三田図書館・情報学会会員、PMFJ会員 公益事業学会会員
平成18年度内閣府PFI事業の総合評価検討委員会委員
平成19年度自治体PFI推進センター専門家委員会委員
日刊建設工業新聞 所論/緒論コラムニスト
東京LEC 法律文化 連載中
剣道3段、居合道3段(夢想神伝流)
福岡県生まれ横浜市在住
連絡先:
hkumagae-mobile@softbank.ne.jp
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