2008年 03月

PFIでは官が民民のプロファイにおける金融機関の考え方をする必要はないこと

しきのぴいちゃんから面白いコメントをもらいました。

>1.担保とは、通常の債務履行がなされないときに債権を確保するためにある
>2.PFI事業によるキャッシュ・フローは、金融機関からの債務を弁済する原資で
>あるのは当然である。
>3.このキャッシュ・フローが担保であるというのは、通常の債務履行の手段を
>担保に取っているということになり、担保にならないのではないか

>ということになると、担保として機能する(担保権ではない)はステップ・イン
>する権利であり、これを円滑に行うための手段の一つとしてフローティング・
>チャージがある、ということなのかなと思うのですが、変でしょうか。


PFI事業における公共側の発想としては変だと思います。
もちろん私が一般的な民民のプロジェクト・ファイナンスのアドバイザーとして金融機関側にたてばそのように主張すると思います。ただし、PFIの場合には一般的な民・民のプロジェクト・ファイナンスとは異なります。

官側の発想に立って考えて見ましょう。

1.担保とは、通常の債務履行がなされないときに債権を確保するためにある。
官と民間事業者は、事業契約を締結しているだけなので、官側には債権はありません。民の債権はサービス提供後に、サービス提供分の債権を生じるだけです。
民と金融機関が融資契約を結ぶ場合には、金融機関には債権はありますが、それを直接契約でどのように締結するかは、三者の合意によるものですから、金融機関の債権を担保するために、公共施設を民が担保とすることを認める必要はありません。

2.PFI事業によるキャッシュ・フローは、金融機関からの債務を弁済する原資で
>あるのは当然である。

事業契約の内容は、民が民の所有する施設を活用して官に提供したサービスの対価を支払うことであり、民が金融機関に対して持っている債務を弁済するのは、民と金融機関の融資契約に基づくものです。極端な場合、金融機関から融資を受けずに、全額出資する事業者がいた場合に、官にとって問題のない事業であったならば、明らかにこの場合には金融機関からの債務を弁済する原資ではありません。

3.このキャッシュ・フローが担保であるというのは、通常の債務履行の手段を
>担保に取っているということになり、担保にならないのではないか

そもそも、プロジェクト・ファイナンスの場合には債務不履行の場合、貸手は担保資産の売却により回収をはかり、それ以上に借り手に償還請求権を持ちません(ノンリコース)。しかしながら、PFIの場合には、官は不動産を売却してもらっては困るので、一般的には不動産を担保に取らせません。ただし、金融機関は直接契約を締結することによって、キャッシュ・フローが生み出すバリューを毀損しないような手続き(担保の代わりにステップインする権利の行使)が取れるので、その権利を直接契約で締結することによって融資していると考えられます。

前述の考え方をフローティング・チャージに絡める必要性はないと思います。ただしフローティング・チャージを活用することが官にとってメリットがある場合に、官がフローティング・チャージを認めることを否定するものではありません。

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登録日:2008年 03月 31日 21:38:25

世界標準のPFIについての解説及び議論を行うという前提の確認

いろんなコメントをいただいております。ありがとうございます。
ただし、若干、私の意図していた方向とずれた形で、コメントが出てきているようですので、ここでルールの設定をしておきます。

【ブログ開設目的の確認とコメントのルールの明確化】
このブログを開設した趣旨は、世界標準のPFI/PPPの仕組みがどのようなものであるかを説明するためです。私は、日本版PFIが持つさまざまな問題点は、世界標準の仕組みであるSoPC4の考え方を用いることによって、かなりの部分解決できると考えます。そのため、SoPC4のPFI手法の考え方をどのようにして活用するかを解説したうえで、その該当部分を提示しています。
私は、日本版PFIの仕組みがおかしいと批判をしているわけですから、おかしくないと日本版PFIを擁護または推進する人からの反論があれば、喜んで議論します。議論はしますが、感情的な言い争いをするつもりはありません。そのため、議論をする場合の最低のルールとして、主観的な表現は避け、議論の内容のみに焦点を当てて議論は行うことを原則とします。
私は、おかしな点が、なぜおかしいのかについて解説した上で、そのおかしな日本の仕組みを改善する一つの考え方として、体系的にまとめられたSoPC4を活用しながら合理的に説明しているつもりです。もし、私の説明が不十分であるならば、私の不徳の致すところかもしれませんが、その方法がだめかだめでないかは、議論の対象ではありません。議論が白熱することは望みますが、議論が感情的になることは私の望むとするところではありません。
私はオーキーさんと日本版PFIの問題点についての議論をしているつもりでしたが、私が施設整備のPFI(どうも日本版PFIらしい)を否定していることに対して、オーキーさんから感情論的なコメントが返ってきました。少なくとも、具体的にどの部分がどのように納得できないのかを示さないまま、「めちゃくちゃ」、「信用をなくす」、「支離滅裂」、「駄目」という表現で反論するコメントは議論の原則から外れています。今後、このような表現を使う方が出てきた場合には、その時点から、一切のコメントを即刻ブログから削除します。自分の名前を公表せずに中傷するという行為は、ネット社会における明らかなルール違反です。
SoPC4の考え方に基づいたPFIと、一般的なプロジェクト・ファイナンスを比較することに意義がないわけではありませんが、主観的主張や、感情的な批判なしに、SoPC4とプロジェクト・ファイナンスの比較について、明確な再開の提議がされない限りは、この議論は打ち切ります。
再開の提議をする場合には、少なくとも次の前提に基づいて提議するように要望します。

【日本版PFIと世界標準のPFIの違い】
日本版PFIでは、金融機関の事業加入なしに事業破綻が生じたり(タラソ福岡)、事業採算性がおかしくなっているのに官側だけが実質的な被害を被っている(近江八幡病院)等、さまざまな問題が生まれています。
本来、次のようないくつかの前提条件が前提としてPFIは成り立っています。
① 公共施設の運営が悪化することを官は望んでいないこと
② 金融機関は、キャッシュフローが生み出すバリューに対して融資をしているのであって、処分する価値のない(可能性の高い)公共施設そのものを担保としては求めていないこと。
③ 官民の事業契約の条件は、民間事業者の施設に対する支払いを保障するのではなく、施設を活用した包括的なサービスに対する支払いに対して、そのパフォーマンスが満たされるという条件で支払いを行っていること。(施設整備費の全額もしくはい一部が無条件で支払われるという条件が含まれていないこと。すなわち、パフォーマンスが悪ければ支払いは0になるという条件であること)
④ 事業契約の権利(事業のキャッシュフローが生み出すバリュー)を担保にすることは官として認めるものではあるが、それ以外のものを担保にすることは前提としていないこと。
⑤ 契約は、官と、民と、金融機関の3社が、官民の事業契約と、民と金融機関の融資契約と、官民金融機関の3者による直接契約が同時に締結されることを前提としており、しかも、前述の条件に基づいて契約が締結されることが原則であるが、それよりもよい提案が出せる場合には、その限りではないこと。

1998年に公表された財務報告基準NO.5(FRS5)には、PFI契約の5つの原則が記載されています。
① PFIとはサービス購入契約であって、施設を購入する契約ではないこと。
② 契約内容が施設整備とサービス提供のように分類できるものであってはならないこと、
③ サービスの業績に連動した支払いが行われなければならないこと、
④ 官恥行の枠組みを設定するが、事業を主体的に管理するのは民間事業者であること、
⑤ ライフ・サイクルにおいてそれ以外の手法よりも高いVFMを生み出さなくてはならないこと、
つまり、明らかに施設整備費を支払う仕組みもしくは、施設整備費を支払うことを補償する仕組みであってはならないことを意味しています。

この原則は、SoPCの最初のバージョンを策定した99年の段階から07年のSoPC4の段階まで変わっていません。そもそも、1998年にFRS5を公表したのは、1992年にPFIを導入した際には、従来は官の債務であった施設整備費に対する長期負債を民間事業者の債務にすることで、官のバランスシートからオフバランスにするという考え方に基づいて導入されたものの、オフバランスすることは目的ではなく、あくまでもVFMを最大化することの結果としてありうるものであるという位置づけに変えられたからです。オフバランスにする目的を重視する比率がどんどん低下してきていることは事実ですが、原則としてサービスの購入であり、民の資産であれば、その資産をファイナンスリースによって購入する契約をしたり、民の資産を担保にすることを官が認めることによって間接的に官が保障したりすることは、PFIの本来の目的ではありません。そもそも、PFIがプロジェクト・ファイナンスであれば、別にPFIなどという名称をつける必要など全くないことになります。

さらに、前述したように、わが国のPFIと英国のPFIの違いの大きな点として、わが国では官の条件設定が絶対的なものであるのに対して、英国では官の条件設定よりもよい提案を民間がする際にはそれを受け入れるという原則もあります。

【施設整備が前提となっている日本版PFI】
日本版PFIは、その法律の名称が「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律」であることからわかるように、そもそも公共施設等の整備を前提としています。整備という名称が入っていること自体が、PFIの原則を理解していないことであり、PFIの契約を、「施設を整備して・・・」という前提で考えることそのものが、担保を取ることを前提として考えており、適切な定義の仕方ではありません。
SoPC4に基づくPFI契約は、民間が整備し所有する施設、もしくは、公共が所有する施設を長期にわたって民間にリースしたものを活用し、包括的な施設関連サービスを提供するものです。従って、施設整備費を払っているのではないのです。サービスが要求水準に基づいて提供された場合に、合意されたとおりにサービス料金が支払われることが前提です。SoPC4に基づく、PFI契約に用いられる直接契約は、資産の担保を前提に融資を行っていません。
PFI/PPPのアドバイザーは、アジア諸国でも増え続けています。世界標準でISO9000、ISO14000といえば、誰もがそれが何であるかわかるように、日本以外のアジアパシフィックエリアのPFIのアドバイザーは、SoPC4やProcurement Packとは何であるかを前提として議論をしています。

コメントされる場合には、ご理解と、ご協力の程よろしくお願いします。

カテゴリー[ リスク移転型PFI ], コメント[9], トラックバック[0]
登録日:2008年 03月 02日 23:19:00

プロフィール
Hiroshi Kumagae
Hiroshi Kumagae
(男)
1959年05月06日
アビーム コンサルティング㈱             ディレクター
著書:脱「日本版PFI」のススメ 相模書房 ISBN978-4-7824-0705-9
ESADE大学院 国際経営修士
慶應義塾大学院 特別招聘講師(非常勤)
三田図書館・情報学会会員、PMFJ会員 公益事業学会会員
平成18年度内閣府PFI事業の総合評価検討委員会委員
平成19年度自治体PFI推進センター専門家委員会委員
日刊建設工業新聞 所論/緒論コラムニスト
東京LEC 法律文化 連載中 
剣道3段、居合道3段(夢想神伝流)
福岡県生まれ横浜市在住
連絡先:
hkumagae-mobile@softbank.ne.jp
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