2011年 06月
サービス購入型官民連携手法で震災復興を
地震発生の3月11日午前中に、PFI法の改正案が閣議を通った。法改正が実現すれば、対象となる施設の範囲が広がり(住宅、輸送施設及び人工衛星を追加)、施設の所有権を公共が保有したまま、事業の運営権を民間に長期間付与する公共施設等運営権(コンセッション権)が設定される。
この公共施設等運営権により、PFI事業の対象範囲が拡大する一方で、弊害が生まれると筆者は懸念する。それは、同権を“物権”とみなし(第十条の十一)、不動産に関する規定を準用することが記載されているからだ。
今回の法改訂では、公共施設等運営権を物権と設定しただけであるため、同権が適用されないPFI案件についてまで、施設整備費分の負債を物権として定義したわけではない。しかしながら、わが国で締結されたほとんどのBOT方式のPFI事業(契約期間中は民間が施設を所有し、契約期間終了後に官に施設を譲渡する方法)において、PFI事業費の「施設整備費相当分」は発注者のリース資産として認識されている。つまり、不動産に対する物権であり、「不動産が適切に利用できることを前提としたサービス契約」に基づいた債権としては認識されていない。筆者は、公共施設等運営権は、諸外国におけるコンセッション権と同様に、サービスの適切な履行を条件とした債権として認識すべきであり、不動産に関する規定の準用は適切ではないと考える。
このまま、法案が通ると、施設に生じる不具合リスクを民間へ移転しない日本版PFIの概念が固まってしまう。そして、これは、世界的なPPPの潮流である「公共が今まで取っていた施設不具合リスクを民間事業者へリスク移転する流れ」に逆らう動きとなる。つまり、この改訂は、リスク分担の観点から発注者と事業者の望ましい官民連携の構築を阻害しかねない。
まちの復興に精力を傾けたい被災自治体にしてみれば、今後、長期間に渡って、公共施設に生じる不具合リスクは民間事業者が適切に取ってくれることが望ましい。そもそも官民連携をおこなう意味は、民間事業者のリスク管理能力によって官のライフサイクルコストを低減しつつ、事業者利益を確保することにある。
筆者は、3月24日の所論緒論に東日本大震災復興のための官民連携のアイデアとして、「包括的な道路保全サービスPFI事業手法」と、「PFI手法による施設サービス調達を組み込んだ包括的な地域開発提案競争手法」を紹介した。このような海外におけるPFI手法では、コンセッション権は、サービス契約に基づいた債権である。そして、サービス品質が十分でなければ、コンセッション権が剥奪される仕組みが組み込まれている。つまり、ここには、融資対象として不動産に対する物件の考え方は用いられていない。
通常の震災復興計画手順では、国の関与の元に、県が都市計画区域の見直しを行ない、市町村が順都市計画区域を設定し、市町村マスタープランが策定されるはずだ。
既に、東日本大震災の被災地で発生した大量のがれき処理について、被害が甚大な自治体に対して、全額政府が費用負担することを決めた。今検討されているのは、一括交付金の特別枠、家財損失に応じた所得税減税、被災企業への税還付、住宅再建基金等であるといわれる。確かに、復興施策を一元化し、強力な推進体制が必要ではあるものの、それは、必ずしも政府機関である必要はない。
国、県、市町村が共同で、前述したサービス購入型PFI手法を活用すれば、民間事業者に都市計画提案から市町村マスタープラン策定まで含めた包括的な復興計画を提案させることが出来るはずである。このような革新的な復興手段として「サービス購入型官民連携手法で震災復興をする方法」を提案する。
2011年4月25日付け 日刊建設工業新聞 所論緒論より
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登録日:2011年 06月 01日 20:41:15
- プロフィール

- Hiroshi Kumagae
- (男)
- 1959年05月06日
- アビーム コンサルティング㈱ ディレクター
- 著書:脱「日本版PFI」のススメ 相模書房 ISBN978-4-7824-0705-9
- ESADE大学院 国際経営修士
慶應義塾大学院 特別招聘講師(非常勤)
三田図書館・情報学会会員、PMFJ会員 公益事業学会会員
平成18年度内閣府PFI事業の総合評価検討委員会委員
平成19年度自治体PFI推進センター専門家委員会委員
平成20年新宿区立図書館指定管理者選定委員
平成21年横浜市立山内図書館指定管理者選定委員
日刊建設工業新聞 所論/緒論コラムニスト
剣道3段、居合道4段(夢想神伝流)
福岡県生まれ横浜市在住
連絡先:hkumagae@yahoo.co.jp
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