PFIの導入目的がBPRであることが一般的に認識されていなかったことのショック
ここのところ、ブログの更新をしていませんでしたが、最終記載内容に、内閣府のセミナーのタイトルか重なったせいか、PFI侍さんから次のようなコメントをいただきました。
>この間、内閣府のセミナーを傍聴してきました。
>経団連ホールは超満員。
>そのなかでも、自治体代表のパネリストが目に留まりました。
>堂々とした受け答え、整理された説明、びっくりしました。
>何よりも、PFIを導入する理由を、BPR的に説明するという提言には、頭を打ち抜
>かれたような衝撃を覚えました。
>それが「公共サービスの品質向上」とコスト縮減の両立を図るメカニズムだったので
>すね。
>もう少し時間をかけて聞きたい気もしましたが、駆け足気味だったのが少々気の毒
>でした。別の機会に聞いてみたいと思います。
>熊谷さんと同じようなことを言っていましたが、お知り合いですか?
>PFI侍 @ 2007年 03月 17日 17:33:39
実は、あのセミナーは、私も傍聴していました。
自治体代表の方とは仙台市の白岩さんのことですね。良く存じ上げていますよ。
同セミナーのPPTにも記載されていましたが、2月21日と28日の2日にわたり、合計で15時間のPFI事業者研修を仙台市でやったばかりです。
さて、
>何よりも、PFIを導入する理由を、BPR的に説明するという提言には、頭を打ち抜
>かれたような衝撃を覚えました。
とのこと。
PFIの導入目的がBPRであるということが一般的に理解されていないのだとすると、私にとっては、そっちの方が衝撃的です。
誰が最初にいったのかは知りませんが、わが国のPFI事業には、「ハコモノPFI事業からはVFMが生まれにくいという誤解」があります。そもそも、「PFI事業とは、ハコモノに付随するさまざまな公共リスクを民間に移転することからVFMを生み出す仕組」であるからです。
もちろん、この仕組を構築するためには、要求水準とモニタリングシステムと支払メカニズムが連動している必要があります。しかも、この連動したリスク移転の基本的な考え方は、公共が策定し提示しなければならない仕組です。
この要求水準、モニタリングシステム、支払メカニズムが現在連動していないPFI案件がほとんどです。
要求水準が「やってもらいたい事リスト」になっており、「モニタリング」は「そのやってもらいたい事リストの実施状況を確認するしくみ」であり、事業者の報告書は、「やったものリスト」になっています。
やってもらいたい事とそのモニタリングと、やったことリストが合致するのは、従来の手法です。
ところが、PFI手法で不可欠といわれる、アウトプット仕様書「達成してもらいたい成果」を仕様書に加え始めたため、「達成してもらいたい成果」と「やったこと」が連動しなくなってしまったのです。
また、減額の仕組は、起きたら困ることがおきたら、減額する仕組になっており、これは、やってもらいたいことにも、達成してもらいたい成果にも連動していません。
別に改まって言うほどのことではないのですが、要求水準を、モニタリングシステムと、支払メカニズムに準じたもので策定し、モニタリングシステムと、支払メカニズムに連動させてやればよいのです。この仕組は、世界的に標準化されつつあります。
この仕組の標準化について、2007年3月号の法律文化に記載しました。興味のある方は、法律文化のURL http://www.lec-jp.com/h-bunka/ にアクセスの上、会員登録をすれば、PDFファイルで読むことが可能です。
また、PFI事業でなぜVFMが生まれるかについては、国家会計監査局(NAO:National Audit Office)が1999年8月に出した「PFI手法による取引のVFMの検証」と、同じくNAOが2006年5月に出した「PFI事業の実施を評価するための枠組み」という報告書が参考になります。前者で繰り返し言っていますが、PFI事業のVFMは、公共が示したアウトプットを達成するための手段や手法を民間事業者が提案する(すなわちBPRする)ことによって生まれるものであるということが繰り返し述べられています。
そもそも、いくらゼネコンが談合で予算上限満額いっぱいで落札しても請負高の数%程度しか利益が出ないはずです。そのような中から、公共のVFMを生み出し、事業者の利益を向上させようとすれば、BPR以外に方法はありませんよね。
リスク移転型BPRによるPFI手法は、日本型PFIとは、全く異なる手法です。
わが国のPFI事業には、施設整備とサービスや運営を二つに分けて、施設整備費を割賦払いで支払うものが多いようですが、例えば英国では、このような手法はPFI事業としては分類されません。英国では公共調達に割賦払いを利用することはVFMを悪化させるため禁止されており、PFIの補助金であるPFIクレジットが受け取れなくなるため、PFIとして成り立たなくなるのです。本来なら、わが国にも、補助金を出す中央省庁と財務省が関与した自治体PFIの民間資金利用の適切性を評価する機関が存在してしかるべきです。
英国では、PFI手法を前提として民間資金を利用した事業を計画する場合、FRS5と呼ばれる「取引の実態を会計報告するための基準」が適用され、十分なリスク移転が出来ているかどうかのリスク移転検証が行われます。十分なリスク移転が出来ている場合には、その実態を反映して当該公共施設は民間資産とみなされ、その結果PFI事業としてみとめられることになりますが、取引の実態に十分な民間へのリスク移転がない場合は、その取引は、「割賦払いを代表とするリース支払いに適用される」SSAP21(一般会計実務規定21)に基づいて会計処理されるためPFI事業としては認定されません。PPPとしての認定になります。
十分なリスク移転が出来ているかどうかは、事業者の投資額を回収するための支払分に到るまで、パフォーマンスと連動させているかどうか、すなわち、支払が0になる可能性があるかどうかで検証が可能です。
繰り返しになりますが、わが国のPFI事業で一般的なスキームになっている「施設整備費」と「維持管理運営サービス費」の分離スキームは、施設整備費が割賦払いとなっているため、民間資金の利用が税金の無駄遣いになっています。この施設整備費の部分まで、減額対象としている事業で公表されているものは、いまのところ仙台市のPFI事業しかないはずです。
カテゴリー[ 日本版PFI ], コメント[2], トラックバック[0]
登録日:2007年 03月 19日 23:21:23
コメント
なるほど。そういうことなんですね。それにしても、当たり前のように思えることが、なぜ、市販の文献なんかを見ても書いていないんでしょうかね。自治体の現場の人が気づくのも面白いですが、本来、ガイドラインにも明確な記載があってしかるべきではないかと思いますが。単なる支払い平準化可能な便利な手法との認識しか持っていない人、多いと思いますよ。
PFI侍 @ 2007年 03月 23日 07:04:45
施設整備部分までを減額対象とすることですが、日本型PFIの大きな課題です。
あるPFI事業では、サービス対価は「施設整備費」と「維持管理運営サービス費」を構成要素としており、支払いはサービス対価として一本化して支払う仕組みです。つまり施設整備費を減額対象とすることは可能です。
しかし、減額範囲は維持管理運営サービス費の範囲と規定しています。
これは、PFI事業への民間事業者の参入意欲を向上させるためです。
良いとは思いませんが、現実的に事業者側にとってはリスクが大きくなる事業には入札に参加しません。
施設整備費まで減額を可能とするような事業はよほどの高収益が期待できるものでなければ難しいのではないでしょうか。
とし @ 2007年 06月 02日 18:01:05
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- プロフィール

- Hiroshi Kumagae
- (男)
- 1959年05月06日
- アビーム コンサルティング㈱ ディレクター
- 著書:脱「日本版PFI」のススメ 相模書房 ISBN978-4-7824-0705-9
- ESADE大学院 国際経営修士
慶應義塾大学院 特別招聘講師(非常勤)
三田図書館・情報学会会員、PMFJ会員 公益事業学会会員
平成18年度内閣府PFI事業の総合評価検討委員会委員
平成19年度自治体PFI推進センター専門家委員会委員
日刊建設工業新聞 所論/緒論コラムニスト
東京LEC 法律文化 連載中
剣道3段、居合道3段(夢想神伝流)
福岡県生まれ横浜市在住
連絡先:
hkumagae-mobile@softbank.ne.jp
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