高校補修漏れ事件解決方法の考察(過去データの整理)
テーマとしてはちょっと古く、PFIのテーマとは直接関連していない考察であるが、その考え方はNPMに共通したものである。
― 落ち度のない学生に負担をかけない合理的な対処方法を英国のルール作りに学ぶ -
サッカー、ラグビー、ゴルフ等、英国人のルール作りのうまさには定評がある。これに対して、日本人はルール作りがあまりうまくない。
その日本人のルール作りの下手さの典型をあらわしているのが、現在全国の540校で8万4000人の高校生の履修漏れに対して取られようとしている対処の仕方である。
主観的に70時間は多すぎて負担になるから、50時間に減らすというような根拠のない解決策では過去の卒業生との公平性が担保できていない。
もしこのような事件が英国で起きたとしたら、英国人ならどのような対応をとるかについて、英国で弁護士資格をとった日本人弁護士と議論をした。
まず、英国ならば、それぞれの高校が履修カリキュラムを設計する際に、多分このようなルールを逸脱したカリキュラムは組まれないだろうというところから議論をスタートした。
次にもし仮に、ルールに逸脱したカリキュラムをもし組んだとしても、そのカリキュラムに学校がお墨付きを与えた以上、翌年度以降のカリキュラム変更はありえても、当年度のカリキュラムは変更しないだろうということで合意できた。もちろん、カリキュラムとして申請したものと実際のカリキュラムにずれがあるという前提はしていない。
さて、それでは、もし、今回のわが国の事件のように、数年前から間違ったカリキュラムが組まれており、本来なら履修しなければならない科目を履修していなかったことが学期の途中で発覚した場合には、どのように対処するかについて議論した。
その対処方法を決定するに際して、ルール作りの上手な英国人であれば「新しい決め事は過去の事象に対して訴求しないという原則」と、「公平性を担保する原則」は最低限適用するだろうと考えられる。
対処方法を決める前に、まず事実整理からはじめてみよう。
1. この未履修問題は今年から始まったわけではなく、既に卒業証書をもらって卒業した生徒がいる。
2. この過去に未履修で卒業した者が誰かを特定できるが、既に卒業した者の卒業資格は剥奪しない。
3. 学生は学校が提示したカリキュラムを選択しただけで、学生に手続き上の落ち度はない。
4. 授業時間数の3分の2以上出席していれば単位を認定しているという事実がある。
5. この問題が発覚したのが、10月下旬であり、対処の決定は現状を把握した11月に1日以降である。つまり、4月の第1週から3月までの12ヶ月間のうち、決定が下されるまでに既に12分の7は経過していた。
以上から合理的な対処方法として次のような考え方が適用できる。
1. 既に卒業した未履修者と現役生を公平に取り扱う必要がある。
2. 必要な時間数が70時間であったとした場合、その3分の2以上である47時間で単位を認定することができる。
3. 学生には落ち度がないことを考慮すると、今年の4月からこの問題が発覚し対処方法を決定するまでに既に1年間の12分の7が経過している以上、「過去への不訴求の原則」を適用すれば、残りの期間の12分の5を調整のための係数として適用することが合理的である。
このように考えて必要な補修時間を算定すると70時間は、20時間に短縮できる。
70時間 * 2/3(認定可能な最低出席率)* 5/12(卒業までの期間) = 19.4時間
救済策を検討するのであれば、この20時間からどれだけ減らすかを検討すべきではないだろうか。
もし、このような考え方をとらずに、必要な時間数である70時間をどのように調整するかだけについてのみ検討するのであれば、それは今年の学生に対してだけの措置であるため、公平性の観点からから履修しなかった過去の卒業生にも補修させる手立てを別途講じる必要がある。
カテゴリー[ NPM ], コメント[0], トラックバック[0]
登録日:2007年 03月 27日 22:12:46
コメントを追加
Trackback
この記事に対するトラックバックURL:
- プロフィール

- Hiroshi Kumagae
- (男)
- 1959年05月06日
- アビーム コンサルティング㈱ ディレクター
- 著書:脱「日本版PFI」のススメ 相模書房 ISBN978-4-7824-0705-9
- ESADE大学院 国際経営修士
慶應義塾大学院 特別招聘講師(非常勤)
三田図書館・情報学会会員、PMFJ会員 公益事業学会会員
平成18年度内閣府PFI事業の総合評価検討委員会委員
平成19年度自治体PFI推進センター専門家委員会委員
日刊建設工業新聞 所論/緒論コラムニスト
東京LEC 法律文化 連載中
剣道3段、居合道3段(夢想神伝流)
福岡県生まれ横浜市在住
連絡先:
hkumagae-mobile@softbank.ne.jp
- 最近のエントリー
- [05/12] PFI関係者必読書の2冊の Public Private Partnerships
- [03/31] PFIでは官が民民のプロファイにおける金融機関の考え方をする必要はないこと
- [03/02] 世界標準のPFIについての解説及び議論を行うという前提の確認
- [02/22] 2者間契約のプロジェクト・ファイナンスと3者間契約のPFIの違い
- [02/14] 直接契約について金融機関がこんな説明をしていたら要注意
- [02/12] PFI事業の資産残存価値リスクの民間移転
- [02/11] 自治体がもっとキャッシュフローを改善したいのならリスク移転型PFIの活用が可能
- [02/11] 官が示す必要のあるPFI事業の直接契約の雛形
- [01/22] 私の視点 ◆PFI/民間の知恵生かす改革を 2008年1月16日 朝日新聞 朝刊
- [01/05] PFI事業に関与する公共アドバイザーの役割とは?
- 最近のコメント
- [08/03] PFI関係者必読書の2冊の Public Private Partnerships ホワイトロック
- [05/18] PFI関係者必読書の2冊の Public Private Partnerships PFI侍
- [04/14] PFIでは官が民民のプロファイにおける金融機関の考え方をする必要はないこと しきのぴぃちゃん
- [04/10] PFIでは官が民民のプロファイにおける金融機関の考え方をする必要はないこと PFI侍
- [03/31] 世界標準のPFIについての解説及び議論を行うという前提の確認 しきのぴぃちゃん
- [03/27] 世界標準のPFIについての解説及び議論を行うという前提の確認 原田義昭
- [03/25] 世界標準のPFIについての解説及び議論を行うという前提の確認 熊谷弘志
- [03/25] 世界標準のPFIについての解説及び議論を行うという前提の確認 熊谷弘志
- [03/23] 世界標準のPFIについての解説及び議論を行うという前提の確認 オーキー
- [03/21] 世界標準のPFIについての解説及び議論を行うという前提の確認 オーキー
- 最近のトラックバック
- お気に入りリンク
- 4回連載 PFI事業のあるべき姿(最終回)
- 4回連載 PFI事業のあるべき姿(3)
- 4回連載 PFI事業のあるべき姿(2)
- 4回連載 PFI事業のあるべき姿(1)
- 6回連載 日本型PFI改善への具体策(最終)
- 6回連載 日本型PFI改善への具体策(5)
- 6回連載 日本型PFI改善への具体策(4)
- 6回連載 日本型PFI改善への具体策(3)
- 6回連載 日本型PFI改善への具体策(2)
- PFI手法から見た図書館への指定管理者制度の導入
- 図書館へのPFI手法と指定管理者制度の導入
- PFIによる公共図書館整備のあり方について
- 6回連載 日本型PFI改善への具体策(1)
- 英国でのPFI誕生の背景とその導入の意義
- 検索