所論緒論/PFI事業において「SPCの調整機能」は本来不要なもの 日刊建設工業新聞 07-04-04

<日本PFI協会の誤解>
日本PFI協会が「SPCによる入札・提案方法」を提示した。「発注者は事業者(SPC)を選ぶのであって、構成員を選ぶのではない。(中略)SPCは契約のためのペーパーカンパニーであり、構成員を選んでいるような誤解がある」という考え方に基づいたものらしい。

この根拠の一つとして英国のPFI事業との比較を持ち出しているが、英国をはじめ、既に世界で標準化されようとしているPFI事業においては、「SPCは契約のためのペーパーカンパニーであり、構成員を選ぶこと」は常識となっている。

<PFI事業とPM業務>
PFI事業は、施設の整備と施設の維持管理を含めた長期にわたる事業契約であり、建設会社や、管財会社のみでは事業を請け負うことが難しい。そこで、建設、維持管理、警備、清掃等のさまざまなノウハウを持った企業を構成員としたバーチャルな組織を構成し、SPCが契約のためのペーパーカンパニーとなり、SPCがいったん請け負ったすべての契約内容をBack To Backでそれぞれの専門性を持った事業者に委託する。

つまり、SPCの業務を建設業務、維持管理業務、警備業務、清掃業務、と分担していけば、PM(プロジェクトマネジメント)業務はSPC内に残らないはずである。

<誰のための入札提案方式か>
同協会の提案は、一見、事業者のための提案に見えるが、実際に指名停止を受けたいくつかの建設会社へヒアリングしてみると、談合問題の罰則をこのような入札方式によって有名無実化することを建設業者としては求めていないことがわかる。すなわち、この提案は、事業者のための提案ではなく、発注しようとしても発注できる相手がいなくなることで困る発注者のための提案であると考えられる。

<問題はどこにあるのか>
以上から、二つの問題点が見えてくる。一つは、構成員間で適切な業務分担ができていないために、わが国のPFI事業にPM業務が残っているという問題であり、もうひとつは、発注できる相手がいなくなると発注者が困ってしまうという問題である。

<構成員間の適切な業務分担に必要な発注方式の改善>
構成員間で適切な業務分担ができない原因には、発注者の発注の仕方の悪さがある。PFI事業で民間資金を使う目的は、民間資金を使うことによって、従来公共がとっていたリスクを民間に移転するためである。

この目的を達成するためには、PFIの仕組みとして国際的に標準化された仕組みの導入が不可欠である。その仕組みとは、要求水準書とモニタリングシステムと支払いメカニズムの連動である。

現在のわが国の多くのPFI事業は、発注者のやってもらいたいことリストである要求水準書に対して、事業者が提案することで成り立っているが、施設整備が終わり、運営が開始されると発注者の要望と、事業者の運営内容が必ずしも一致しないため、PM業務が必要になってくる。本来必要のないPM業務が行われている背景には、このような発注形態の不備がある。

もしPM業務に2000万円程度の価値があるのであれば、発注者が、発注方法を世界標準に変更するだけで、2000万円を官民で折半することができる。これは、民間利益が1000万円アップし、公共のVFM(バリュー・フォー・マネー)が1000万円向上することを意味する。いわゆるWIN−WINの関係の構築である。

<事業者の事業参画意欲をなくす仕組みを排除することの必要性>
発注できる相手がいなくなる原因には、指名停止によって発注できる事業者が制限されることもあるが、商社や製鉄会社等が代表企業になっている現状から判断すると、指名停止自体は発注者の事業参画意欲にそれほど大きな影響は与えていないと思われる。むしろ問題なのは、指名停止になった時に要求される違約金の額があまりにも巨額であるために、事業者が応募できなくなっているという課題にある。事業者として、構成員の誰かの責任で契約が締結できなくなったときに、巨額のペナルティーが発動する条件がついていたら、応募できるわけがないことは明らかである。

この問題の解決方法として、「何らかの理由により契約締結できない場合には、契約不締結の原因となった側が、事前に合意した違約金を支払うか、もしくは、それまでかかった相手の費用を実費精算で負担する」という考え方が適用できることは既に本コラム(過去データの整理3を参照)で指摘したとおりである。

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登録日:2007年 04月 06日 21:59:46

コメント

ときどきPFI協会は、不思議なことを言いますね。
何よりも協会の主張が、発注者側の議会で受け入れられるかどうか。とりもなおさず、それは、一般の市民の健全なバランス感覚に適合するかどうかという、基本的な問題ではないでしょうか。PFIのシステムの特徴であるSPCが、協会が主張するようなロジックのもとで成立するのであれば、談合などの不祥事は、永久になくならないと思います。(SPCがあったから、通常の公共工事では受注できなくとも、PFIには参加できてよかった、ということが起こりえるということです。)

PFI侍 @ 2007年 05月 08日 01:55:46

事業者の指名停止の件ですが、PFI事業に携わる身としては、事業者の参入意欲を大きくそぐものだと思います。
実際入札の直前になって代表企業が指名停止措置となり、入札辞退となったケースや、契約締結直前に談合により契約が不成立となったケースがあります。
鉄鋼メーカーなど数社へヒアリングしましたが、大規模な会社ほど全国的に仕事をしているため、談合だけではなく、受注工事中での軽易な事故などでも指名停止となってしまいます。
PFIはその契約までに長期間がかかることと、提案までに多額の費用が必要であることから、指名停止リスクは事業者にとって少なくないと思います。
当然行政側にとっても、最適な入札参加者が辞退することも考えられるため、指名停止によるリスクは決して軽くはないと思います。

また、SPCとその構成員の件ですが、僕も構成員を選ぶことが重要な点だと思います。
実際のPFI事業では、昨今の経済状況から会社の分社化が盛んに行われています。分社化により当初契約会社より、分社化されるため、その資金調達能力や実施能力が低下する場合もあります。
構成員を選ぶだけではなく、永続的にその構成員の状況が担保できるようにとりきめておくことも重要な点ではないでしょうか。

とし @ 2007年 06月 02日 17:50:16

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プロフィール
Hiroshi Kumagae
Hiroshi Kumagae
(男)
1959年05月06日
アビーム コンサルティング㈱             ディレクター
著書:脱「日本版PFI」のススメ 相模書房 ISBN978-4-7824-0705-9
ESADE大学院 国際経営修士
慶應義塾大学院 特別招聘講師(非常勤)
三田図書館・情報学会会員、PMFJ会員 公益事業学会会員
平成18年度内閣府PFI事業の総合評価検討委員会委員
平成19年度自治体PFI推進センター専門家委員会委員
日刊建設工業新聞 所論/緒論コラムニスト
東京LEC 法律文化 連載中 
剣道3段、居合道3段(夢想神伝流)
福岡県生まれ横浜市在住
連絡先:
hkumagae-mobile@softbank.ne.jp
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