PFI契約の標準化第4版について(SoPC4)

今年3月末に、PFI事業におけるバイブル的存在である英国のPFI契約の標準化の第4版が公表された。わが国のPFI事業も、このガイダンスを参考にしながら進めていくことが望ましい。

SoPCの変遷
1-1 SoPC(Standardisation of PFI Contracts=PFI契約の標準化書類)とは:PFI事業は公共施設の施設整備と事業の運営の一部を民間に長期間(25年から30年程度)委託し、その委託した部分に含まれる「従来公共がとっていたリスク 」を民間に移転する方法により、公共は従来よりも安い費用で、民間は継続的に収益を生み出す事業として契約を締結することで成立する。この様な関係が成り立つ理由は、公共として専門性を持たない、または、持つ必要の無い業務を、公共の責任で実施するよりは、専門性を持った事業者にアウトソースして、事業者にリスクをとってもらったほうが、コスト削減の面からも、品質向上の面からもバリューが生まれるからである。
しかしながら、リスクを事業者に移転する以上、事業者がリスクを取れるように、官民双方にとって公平な条件で契約を締結する必要がある。SoPC(PFI契約の標準化書類:「ソプシー」と読む)が策定された背景には、そのような官民にとって公平な契約によってWIN-WINの関係を構築するという目的がある。

1-2 SoPCの策定目的:PFI事業の前述の目的を達成するために活用されるSoPCは、次の3つの目的で策定された。
1. 標準的なPFI事業における主なリスクを共通認識とするため。
2.  類似した事業に対して普遍的な取り組みと普遍的な価格設定をするため
3.  関係者が長い交渉すること無く標準的なアプローチが取れるエリアを合意することによって、交渉のための時間とコストを削減するため

1-3. SoPC発展の歴史:
ア) PFIとSoPC 英国でPFIが導入されたのは、メジャー政権の1992年であり、当初はマーストリヒト条約で決められたユーロ参加のための財政安定条件(年度財政赤字はGDPの3%以下、累積債務はGDPの60%以下でなければならないこと)をクリアするために、公共施設の整備投資が公共の債務とならないように、民間に資金調達させ債務を民間に移転することが目的であった。筆者がはじめて英国でPFI事業に関与した1998年には、このような背景から「PFI手法は政府債務のオフバランス化のツール である」といわれていたことを思い出す。
 ところが、オフバランスを目的化してPFI事業を推進すると、税金の無駄遣いに繋がることが分かってきた。それは、事業者にとれないリスクを移転しようとするとリスクプレミアムが必要となるため、結果的にはリスクを移転しない方がコストが安くなるからである。
 SoPCは、公共がベストバリューを生み出すために、官民はどのような契約を締結することが望ましいかという観点に基づき、1999年7月に 最初のバージョン (バージョン0:SoPC0)がバターワース社によって発行された。そして 2002年9月の第2版(SoPC2)以降は、英国財務省が改定を行うことになった。この流れに乗って、第3版(SoPC3)は2004年4月に、最新版の第4版(SoPC4)は2007年3月に発行されている。

イ) SoPC2の改定時にPFI契約とICT契約を分離SoPC2が発行されたのは、2002年であるが、SoPC2の公表と同時にICTの標準契約約款も公表された。それは、1996年5月にスタートし1999年5月に失敗が確定して取りやめになったPFI事業「郵便貯金および年金支払マルチカード事業」(Pathway Benefits Payment Card Project)をフィードバックしたからである。
SoPCは一般的な施設整備のPFI事業の契約の標準化であるため、施設の耐用年数が長く、比較的技術変動が小さい施設整備事業には適しているが、ICTの様に、その対象となる機器の耐用年数が短く、技術変動が大きい事業には適していない。そのため、ICT契約の標準化書類(以下「ICT契約」と呼ぶ)はSoPCとは契約内容を区別して策定すべきだという考え方に基づいて構築された。
図表1は、SoPC0とICT契約を比較したものであるが、SoPCの項目とICT契約の項目は、その内容が全くといってよいほど異なっていることが分かるであろう。

ウ) SoPC3までの追加的改定とSoPC4の抜本的改定
図表2はSoPC0とSoPC3を比較したものであり、図表3はSoPC3とSoPC4を比較したものである。図表2からSoPC0とSoPC3の基本的な構成が変わっていないことが分かるはずだ。ところが、図表3から分かるように、SoPC4の改定はこのような見直しとは明らかに異なっている。SoPC4の構成内訳は、SoPC3の構成内訳と異なり、抜本的に見直されていることが分かる。中でも最も大きな変更は、7章の見直しである。SoPC3の「7章 サービス提供の必要条件とアベイラビリティ(利用可能状態)」では、「アベイラビリティ」が支払における重要な唯一の要素であることを示していたのに対して、SoPC4の「7章 価格と支払メカニズム」では、価格は「施設が利用であることの要求」と「サービスのパフォーマンスの要求」に連動したユニタリーペイメントであるというように支払に二つの重要な要素があると変更した。
この変更は、従来の「定性的なサービス品質の変動」は支払に連動させることは困難であるという考え方が変わったことを反映している。つまり、「サービスの品質はパフォーマンス変動リスク」として定量化可能となり、支払に連動させることが出来るようになったことを意味しており、PFIの支払の仕組における大きな変革として認識することができる。

この勉強会は、国際商事法研究所において今年の5月6月と2回にわたって行った。その詳細については、同研究所の機関紙である国際商事法にて解説する。

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登録日:2007年 07月 05日 23:17:26

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プロフィール
Hiroshi Kumagae
Hiroshi Kumagae
(男)
1959年05月06日
アビーム コンサルティング㈱             ディレクター
著書:脱「日本版PFI」のススメ 相模書房 ISBN978-4-7824-0705-9
ESADE大学院 国際経営修士
慶應義塾大学院 特別招聘講師(非常勤)
三田図書館・情報学会会員、PMFJ会員 公益事業学会会員
平成18年度内閣府PFI事業の総合評価検討委員会委員
平成19年度自治体PFI推進センター専門家委員会委員
日刊建設工業新聞 所論/緒論コラムニスト
東京LEC 法律文化 連載中 
剣道3段、居合道3段(夢想神伝流)
福岡県生まれ横浜市在住
連絡先:
hkumagae-mobile@softbank.ne.jp
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