わが国における官製市場開放について④-2 東京LEC 法律文化 07年3月号より
最新のアウトプット仕様書とはどのようなものか
ア)なぜ標準化が始まったのか
ブレア政権になり、「PFI事業の促進のためには、契約書の標準化や事業分野毎のガイドラインの作成が必要である」という提言が「ベイツ報告書」によってなされた。標準化が必要な理由のひとつに、事業ごとにアドバイザーのノウハウや仕様書、契約書等がばらついていたことが含まれていた。
英国財務省は、この提言を受け、PFI契約の標準化を行い、1999年(第1版)、2002年(第2版)、2004年(第3版)と更新を続けている。また、英国から、数多くの事業別PFI調達ガイドラインが公表されており、PFIの国際標準となっている。アジア各国の公共調達アドバイザーにとっては既に常識的なことであるが、わが国もこれらのガイドラインを標準化書類として取り扱う必要があると考える。
イ)PFIの財務報告書基準の国際化の動き
PFI事業では運営期間中に公共から民間へリスク移転するため、従来のリース会計や既存の取引のルールとは仕組みが異なっている。PFI/PPP手法の発展に伴い、諸外国のPFI/PPP事業には、国際的なPFI/PPP実績を持つ国際的な企業が数多く参画している。 そのため、事業実施国の財務報告基準と国際的企業の本社の存在する国の財務報告基準が異なることがある。そうなると2重課税問題に発展しかねない。そこで、現在、国際財務報告基準解釈指針委員会(IFRIC)は、このような今まで明確な解釈のなかったPFI/PPP事業を財務報告書上にどのように記載すべきかについての世界標準のルールを検討しているところである。わが国のPFI事業には、ほとんど日系企業しか参画していないことに加え、既存の法律の範囲内で事業を行うことが前提となっているため、このような財務会計上の問題は今のところ生じていないが、これは、WTO案件に該当する大型事業であるPFI事業が避けて通れない課題である。
ウ)急速に進んでいるPFIの国際的な標準化導入の動き
紙面の関係上紹介できないが、私の手元に、1997年に英国で作成された二つのPFI事業の仕様書と、2002年にそれぞれオーストラリアと英国で作成された二つのPFI/PPP事業の仕様書の、計4種類がある。前者はどちらも英国で作成されたものであり、後者はそれぞれ異なった国(英国とオーストラリア)で作成されたものである。ところが、前者の二つの仕様書の構造は随分と異なっているのに対して、後者の二つは共通の構造を持つ。 2000年当時に前者の二つを見たときには、それぞれ素晴らしい仕様書だと思ったが、どちらにも使い勝手の悪い部分が残っていた。これが、最近の仕様書では解決されている。このように、PFI事業の仕様書の標準化は急速に進んでおり、わが国もこの動きを取り入れる必要がある。
エ)最新のアウトプット仕様書の事例
さて、PFI事業には数多くの品質評価要素や、事業管理の仕組みが組み込まれているので、ここで触れる内容がすべてではないが、資料3は、仕様書の全体構造を示しており、資料2は、その仕組を使ってサービスの評価を支払いに連動させる仕組みを表している。
資料3に記載した、仕様書の構成どおりに次の7つの手順を踏めば、発注者が求めるサービスのアウトプットを明確に示すことができる。
1)ファシリティー・サービス(建設関連サービス、支援サービス)を分類し、業績評価基準(KPI)を洗い出す。KPIという言葉を使わずに、「パフォーマンス要素の洗い出し」と呼ぶ場合もある。
2)モニタリング手法を設定する(英国の病院では8種類が標準)。
3)どのKPIをどのくらいの頻度でモニターするかを設定する。
4)サービス不履行に関連する事象が生じた場合の報告の内容を品質低下、不具合、苦情ごとに設定する。
5)それぞれのファシリティーサービスの要素を「KPI&業績モニター表」で連動させる。
6)必要に応じて施設のエリア別重要度や、不具合時の対応時間などの条件を設定する。
7)サービス不履行に関しての規定
(ア)不履行の種類:サービスの要素ごとにサービス不履行を品質低下もしくは不具合のどちらかに分類する。
(イ)品質低下の規定と対応:品質低下によるサービスの不履行に適用するポイント減額制度を事前に設定する。
(ウ)不具合規定と対応:不具合の重要度をレベル(A~D等)で設定し、係数を利用して不具合時の減額割合を設定する。
ちょっと面倒な仕組みではあるが、運営段階のサービス水準を評価する基準を含んだアウトプット仕様書を利用することによって、従来の公共リスクを民間に移転する仕組みが構築されていることをご理解いただけただろうか。次回からリスクとVFMの関係について説明をしよう。
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登録日:2007年 07月 31日 22:24:22
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- プロフィール

- Hiroshi Kumagae
- (男)
- 1959年05月06日
- アビーム コンサルティング㈱ ディレクター
- 著書:脱「日本版PFI」のススメ 相模書房 ISBN978-4-7824-0705-9
- ESADE大学院 国際経営修士
慶應義塾大学院 特別招聘講師(非常勤)
三田図書館・情報学会会員、PMFJ会員 公益事業学会会員
平成18年度内閣府PFI事業の総合評価検討委員会委員
平成19年度自治体PFI推進センター専門家委員会委員
平成20年新宿区立図書館指定管理者選定委員
平成21年横浜市立山内図書館指定管理者選定委員
日刊建設工業新聞 所論/緒論コラムニスト
剣道3段、居合道4段(夢想神伝流)
福岡県生まれ横浜市在住
連絡先:hkumagae@yahoo.co.jp
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