PFI手法と米国生まれのPBC(業績連動契約)の共通点
米国の06年連邦政府サービス調達総額は1472億ドル(約16・9兆円)、そのうち約半分の722億ドル(約8・3兆円)がPBC(業績連動契約)で調達されたという。米国連邦政府は、政府調達のうち、1件が2万5000ドル(約280万円)以上の契約の40%以上をPBCにする目標を立てて取り組んでいる。これに対して、05、06年ともに目標を上回り、約50%の契約がPBCで締結されたことが分かった。
PBCは、サービスの業績と支払いを連動させる仕組みであるため、発注の段階で、PWS(業績業務仕様書)、定量可能な業績水準、業績インセンティブを設定し、事業者に業績を達成させるインセンティブ(業績を達成することが出来ない場合には、契約額を満額受け取ることが出来ない仕組み)を組み込む。この仕組みは、英国のPFIの仕組みに類似しており、一見、民間事業者に業績変動リスクを移転していることから、従来の契約よりも厳しい条件になっているように見えるものの、実際には、政府が民間に既存の仕組みでは解決できない問題を解決するための費用を支払うことから、事業者にとって見ればこの公共からの課題解決要求に含まれる不確実性が収益を生み出す源泉となる。
一方、政府にとって見ても、従来公共では、解決できなかった問題の解決を民間に特定のコストで移転できることから、従来公共が試行錯誤していたときのコストに比べて、公共コストの削減(VFMの向上)となる。つまり、公共のVFM向上と民間の収益向上を同時に達成するWIN−WINの関係が構築できるのである。世界の公共調達の流れを俯瞰すると、PFIやPBCのように官民が平等の立場に立ちWIN−WINの関係を構築しようとする動きが見えてくる。
このような流れに対して、わが国では、談合問題の反動から、公共が事前に入札参加者を選定する指名競争入札がとりやめられ、誰でも参加できる一般競争入札が増えている。その結果、下落した落札額は、公共コスト削減の観点から、一見望ましいようにも見えるものの、落札額の下落分は、二次請けや三次請けの会社に転嫁されているだけだという見方もある。落札額の下落分が下請けに転嫁される背景には、発注者−元請け−下請けと、上位が下位を管理するルールを決めるというWIN−LOSEの関係に原因がある。また、WIN−LOSEの関係となるのは、ひとつの解決方法に限定し、価格だけで競争するからである。
これをWIN−WINの仕組みにするためには、公共が明確なビジョンを持ち、長期的な事業戦略を立て、事業提案を評価するための評価基準の設定をした上で、同じ成果が出るのであれば、自由な解決方法を提案できるような調達の仕組みにすればよい。そうすれば、安くてより良い提案を提示した場合には、公共は発注コストを削減しながら、事業者は利益を上げることができるようになる。このような安くてより良い解決策を提示するためには、イノベーションが必要である。また、発注枠組みも、イノベーションを引き出すようになっている必要がある。
米国では、法的にも、組織的にもPBCを活用するためのインフラが整っており、数多くのガイドラインが整備されている。この米国のNPM(新しい公共経営手法)であるPBCと英国のPFI手法に共通なキーワードはリスク移転とイノベーションとパフォーマンス・モニタリングである。
ちなみに、米国のPBCの効率化のガイドラインには、次の6つの規律が示されている。
①文化の転換=政策を成功させるために不可欠な組織的、文化的な転換を事前管理すること
②戦略連動=組織的な戦略ゴールを反映させた望ましい成果を得るために組織全体に矛盾のないビジョンを提供すること
③組織管理=プロジェクトを実施するための、役割、責任、意思検定の権限を確立すること
④コミュニケーション=すべての利害関係者に対する、流通情報の内容、手段、頻度を決めること
⑤リスク管理=リスクを特定し、評価し、モニターし管理すること
⑥パフォーマンスモニタリング=事業の実施期間中に定期的なスケジュールに基づいて、コスト、スケジュール、パフォーマンスに関する分析を行い報告すること。
このようなNPMに共通する仕組みを見ていくと、従来型では資金が廻らないからという理由で、割賦払いを利用してキャッシュフローを改善する日本版PFIの考え方は、税金の無駄遣いにつながる禁断の手法であり、NPMとして分類できそうもないことがわかる。
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登録日:2007年 09月 17日 10:59:02
コメント
久しぶりの更新、拝見しました。アメリカでも同じような考え方が、既にガイドラインに整理されているのですね。合理的でわかりやすい考え方だと思います。なぜに日本にこのような考え方が理解されにくいのでしょうか。正しくガイドする責任のある政府が、メカニズムを本当に知らないことが、原因ではないかと思います。総論で言葉を書き連ねることは簡単ですが、本当は各論をほとんど知らないのでは。政府がPFIをどのように理解しているか(自治体職員の場合も同じことがいえますが)、図解させてみれば、どこが根本的にわかっていないのか、一目瞭然ではないでしょうか。(一部にどうも、英国の考え方を導入するのは、複雑な案件ならいいが、一般の箱物には複雑すぎるから、日本型で、簡易なPFIにすればいいのでは、とする向きもいまだにありますが、PFIでないものを「簡易・・・」とか「・・・的」とか言うから、かえってややこしくなるのではないでしょうか。言葉の定義と、その内容をいい加減に扱ってはならないと思います。民間がやりやすいように、政府が事業を促進しやすいように、面倒くさいことはさておく、という発想が根底にあるとしたら、壮大な税金の無駄遣いであり、いつか来た道です。
PFI侍 @ 2007年 09月 17日 18:01:53
はじめまして。
本件とても興味があります。よろしければこのガイドラインのURLを教えていただけないでしょうか。よろしくお願いいたします。
自治体職員 @ 2007年 11月 27日 22:27:13
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- プロフィール

- Hiroshi Kumagae
- (男)
- 1959年05月06日
- アビーム コンサルティング㈱ ディレクター
- 著書:脱「日本版PFI」のススメ 相模書房 ISBN978-4-7824-0705-9
- ESADE大学院 国際経営修士
慶應義塾大学院 特別招聘講師(非常勤)
三田図書館・情報学会会員、PMFJ会員 公益事業学会会員
平成18年度内閣府PFI事業の総合評価検討委員会委員
平成19年度自治体PFI推進センター専門家委員会委員
日刊建設工業新聞 所論/緒論コラムニスト
東京LEC 法律文化 連載中
剣道3段、居合道3段(夢想神伝流)
福岡県生まれ横浜市在住
連絡先:
hkumagae-mobile@softbank.ne.jp
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