所論諸論/リスク移転で解き明かすPFIの真の姿 日刊建設工業新聞07年10月10日
内閣府が先日行ったPFIのインターネット会議に参加した各国(日本を含む八つの国および組織)の課題、問題意識はかなりの部分で共通する一方、入札における総合評価のあり方、資金調達の方法等、日本が異なるアプローチをしている分野が明らかになった。公共リスクの民間への移転も国内外では大きく異なっている。
また、筆者も委員をしている自治体PFI推進センター専門委員会も、今年のテーマを「リスク認識共有化に向けた新たなプロセス形成」としており、既に第2回委員会が9月26日に開催された。
このように、今年はPFI事業におけるリスクが注目されそうである。実際のところ、PFI事業のVFM(使ったお金が生み出す価値)を生み出す要素の多くは、公共リスクを民間に移転することに関連するといわれている。
ところが、既存のリスクガイドラインでは、リスクの定義が、「選定事業の実施に当たり、協定などの締結の時点ではその影響を正確には想定できない。このような不確実性のある事由によって、損失が発生する可能性をリスクという」となっている。これは、公共が認識しているリスクであって、民間のリスク認識ではない。リスクをネガティブにとらえることしか出来ないと、リスク移転はリスクプレミアム要因にしかならない。なるべく民間にリスクを移転しないように発注するという、世界標準のPFI手法では考えられない日本版PFIが生まれてしまう原因はここにありそうだ。
英国財務省のリスク管理指針には、「リスクとは行動や常時の伴う将来の成果の不確実性であり、ポジティブなチャンス(機会)もネガティブな脅威のどちらも含まれたものであり、そのリスクは、何かが起きる可能性ともしそれが実際に起きたときの影響の組み合わせによって評価することができる」と示されている。これこそが、PFIに限らず、世界的に認識されている官民が共有するリスクの概念であり、このようなリスクの共有概念があるからこそ、公共リスクを民間に移転することからVFMが生まれるという考え方が生まれるのである。
例えば、30年の耐用年数を持つ施設に含まれる設備更新のリスクを民間に取らせることを避けて、15年間のPFI事業を締結することは適切ではない。なぜなら、事業の不具合リスクや品質低下リスクが事業契約期間の後に急上昇する可能性があるからである。
自治体は、施設を整備したり所有したりすることがコア業務ではない。従って、施設の不具合リスクを公共がとるよりも、施設の不具合リスクをとることが上手なものに委託した方が、より高いコスト削減効果が生まれるのではないかと直感的に分かるのではないだろうか。
世界標準のPFI事業手法が示されており、民間にリスクを移転するためのさまざまな仕組みがパブリックドメインとなっている。リスク移転をせずに、民間資金を利用して割賦支払いをすることは、税金の無駄遣いであり禁止すべき行為である。わが国で、この原則に反するPFI事業が行われるのは、世界標準のPFI事業の仕組みがわが国に紹介されていないことに原因がある可能性が高い。この課題を解決するためには、
▽公共のリスクのうちどのようなものをどのようにして民間に移転するのか
▽移転されたリスクを管理するためのモニタリングの仕組みとはどのようなものか
▽要求を満たすことが出来なかった場合にはどのような対処がとられるのか−の三つを連動させた事業枠組みを公共が設定しなければならない。割賦支払いをよしとする日本版PFIから脱皮して、世界標準のPFI事業のレベルに昇華させるためには、民間資金を活用したこのようなリスク移転の仕組みを理解することが必要である。
これらのしくみの詳細解説を『脱「日本版PFI」のススメ』(日刊建設工業新聞発行)として出版したのでご紹介しておく。
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登録日:2007年 10月 11日 18:17:05
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- プロフィール

- Hiroshi Kumagae
- (男)
- 1959年05月06日
- アビーム コンサルティング㈱ ディレクター
- 著書:脱「日本版PFI」のススメ 相模書房 ISBN978-4-7824-0705-9
- ESADE大学院 国際経営修士
慶應義塾大学院 特別招聘講師(非常勤)
三田図書館・情報学会会員、PMFJ会員 公益事業学会会員
平成18年度内閣府PFI事業の総合評価検討委員会委員
平成19年度自治体PFI推進センター専門家委員会委員
日刊建設工業新聞 所論/緒論コラムニスト
東京LEC 法律文化 連載中
剣道3段、居合道3段(夢想神伝流)
福岡県生まれ横浜市在住
連絡先:
hkumagae-mobile@softbank.ne.jp
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