わが国独特のPFIの5原則3主義
そもそも、ハコモノPFIは成り立つのかという質問が、日本特有の質問です。
なぜなら、そもそも、PFIとはサービスの購入であって、ハコモノに対する支払いをするのではないからです。
ハコモノが生み出すサービスに水準を設定し、その水準が達成できなければ、支払いを減額するという仕組みです。従って、ハコモノPFIと同等の表現であるAcommodation PFIは一般的なPFIのひとつであり、施設整備費を支払うという要素がそもそもないのです。
【わが国に特有なPFIの5原則と3主義】わが国では【PFIの5つの原則】と【PFIの3つの主義】がよく引用されます。
【PFIの5つの原則】
1 公共性原則: 公共性のある事業であること
2 民間経営資源活用原則:民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用すること
3 効率性原則: 民間事業者の自主性と創意工夫を尊重することにより、効率的かつ効果的に実施すること
4 公平性原則: 特定事業の選定、民間事業者の選定において公平性が担保されること
5 透明性原則: 特定事業の発案から終結に至る全過程を通じて透明性が確保されること
【PFIの3つの主義】
1 客観主義: 各段階での評価決定について客観性があること
2 契約主義: 公共施設等の管理者等と選定事業者との間の合意について、明文により、当事者の役割及び責任分担等の契約内容を明確にすること
3 独立主義: 事業を担う企業体の法人格上の独立性又は事業部門の区分経理上の独立性が確保されること。
これらは、PFIの基本指針に書かれているものですが、具体的に民間資金を使うことと連動したものではありません。これらの考え方は従来の仕組みでも導入可能なものばかりです。
それでは、代表的な例として英国とオーストラリア(ビクトリア州)では、PFIには、どのような特徴があると定義しているでしょうか?
1998年に、無理なリスク移転によって、民間事業者の試算として施設を持たせることに拘ると、Best VFMを達成することが出来なくなるという考え方が確立され、FRS5(Financial Reporting Standard No.5)「取引の実態を財務報告書で報告するための指針」が公表されました。
ここには、次のような内容が示されています。
契約は、公共セクターから民間事業者に発注されたものであること。
契約によって、契約期間にわたって要求されるサービスレベルが明確に設定されること。
一般的に、契約は期間毎に定額支払い(Unitary Payment)され、その支払いは、施設が利用可能であること(Availability)および、業績(Performance)、従量料金(Levels of usage)に連動する。
法的に事業者によって所有されるか、事業者にリースされた不動産が、サービスを提供するために必要とされるのが一般的である。
不動産には、建物(刑務所や病院)、道路、鉄道、端、車両、ITシステムが含まれる。
典型的なPFI契約では、事業者はDBFO(設計・施工・資金調達・運営)をおこなう。
契約は、必要な不動産の特性や水準を規定する。例えば、購入者の法定義務を満足させることがある。資産は、第三者によって利用されてもかまわないし、そうでなくてもかまわない。PFI契約は、契約期間の最後に資産をどのように処理するかについて規定する。(これには、片方もしくは双方のさまざまな選択肢が含まれる。法的な所有権が定額(名目上の額)にて引き渡されるかもしれない。また、新しい事業者に対して資産を引き渡すためのPFI事業の再入札の条件となっているかもしれない。
これらの双方のケースの場合には、PFI契約は、資産を最低水準で維持するか、契約期間の終了時に利用可能な耐用年数が規定されているかもしれない。
それ以外の可能性としては、事業者がPFI契約の終了時に資産の所有権を持ち続けたり、発注者が契約終了時の市場価格で資産を購入することがある。
公共セクターの発注者は、それ以外のサービス提供方法に比べて民間提案によってVFMが生まれることを証明しなければならない。
一般的にVFMは公共から民間セクターへのリスク移転によって達成される。
日本式に言うのであれば、つぎの5つの原則にでもなると思います。
1.サービス購入原則:
施設の購入ではなく、施設が手依拠するサービスを購入すること
2.契約分離に該当しない原則および業績連動原則:PFIの支払いは、①Availability、②Performance、③Levels of usageの3要素に連動したUnitary Paymentであること
3. 官の条件設定と民の主体的管理原則:サービス提供に必要な不動産を民がコントロールするために、事業者が施設を所有 または、事業者に施設を長期リースし、事業者がDBFOで整備すること、その際官は、条件を設定するのみであること(不動産特性や水準は官が規定、官がが資産の第三者利用の可否を判断する)
4. ライフサイクルコスト原則:
契約期間終了後の資産処理を規定すること
5. リスク移転原則:
発注者は、PFI以外の手法と比べてVFMを証明(×過去と比較)VFMは一般的に公共リスクの民間移転によって達成すること
オーストラリアのビクトリア州では、次のような7つの原則が示されています。
1. 大規模プロジェクトの原則(約10億円以上)
2. 測定可能なサービス結果の原則
3. ノンコアサービス委託の原則
4. リスク移転の原則
5. 長期契約の原則
6. イノベーション導入の原則
7. 市場の反応重視の原則
ハコモノPFIがもし、施設整備費を支払うことを前提に考えられているひとつの仕組みであるならば、そのような仕組みに、公債よりも資金調達コストの高い民間資金を使うことは税金の無駄遣いであり禁止されるべきものです。
カテゴリー[ ハコモノPFIは成り立つのか? ], コメント[7], トラックバック[0]
登録日:2007年 12月 23日 22:53:19
コメント
ハコモノ(運営の比重が極端に低い、施設整備・維持管理のものと定義させてください)PFIは、まず割賦BTOへのドライブがかかりやすいという話。
熊谷氏は、施設の設計、建設、維持管理の一体化、それに伴うユニタリー・チャージの導入により、民間に適切にリスクが移転されることによりVFMを達成できると考えておられます。
まず、VFMを考えていく場合に、コスト縮減効果については、そもそも事業のその施設部分に関しは、官民で同額と考えるべきでしょう。何故なら従来型においても、民間が民間の工事能力、民間の資材調達能力、民間のコスト管理で行うことには違いが無いはずですから。
定性的な部分では、確かに民間の設計により庁舎の使い勝手が良くなった、ということはあり得ますが、これはそもそも、PFIの問題ではなく、競争入札等、制度の問題ではないですか。つまり、調達の制度を変えれば、PFIでなくても民間の能力を引き出すことはできるはずです。
英国の事業者と話したときに、極論ではありますが、「公共施設の質なんてそんなもの誰が気にするんだよ」というものがありました。また、多くの事業者が「VFMとは人件費だ」とも言い切っていました。乱暴ではあるものの、一定の真理が含まれています。
熊谷氏も施設整備、維持管理、運営の一体化とそのリスクの民間への移転によりBPRが可能となる、つまりPFIとはBPRである、というようなことを仰ってますね。であれば、熊谷氏もより運営部分の大きいものの方がVFMのためのバッファーが大きいことは認めるのではないですか(反論あれば)。
ある公共サービスが労働集約型である場合、民間委託によるBPRによってコストを縮減できる可能性は高いと思います。特に単純労働であれば、公共よりもはるかに安い人件費で人を雇える可能性が高いわけですから。
これこそがPFIでの民間事業者のインセンティブです。コスト縮減のバッファーが大きければ大きいほど、リスク・テイクのうまみが出ますし、そのためにキャッシュ・フロー改善の余地も大きいことからレンダーのリスクテイクも行いやすくなりはずです。いわゆるハコモノにはこれが無い。
そもそもコスト縮減のバッファーの小さい事業で、競争入札によりさらに価格競争に追い込まれる、こうしてさらにバッファーが小さくなります。
このようにぎりぎりのキャッシュ・フロー(DSCRが1.1をきっているものもあるらしいです)で、ユニタリー・チャージの考えなど導入できるはずもありません。さすがにレンダーは金を出せなくなります。そこで、施設整備費を維持管理のフィーに食い込ませない方式、割賦型が生み出される余地が大きくなります。このような状況では、BTOかBOTはどうでも良いようなものとなってしまいます。
さて英国には、ホコモノPFIはあるのでしょうか。英国の事例は熊谷氏の方が詳しいでしょうが、英国でハコモノ型に近い事例で、防衛省の庁舎整備事業があります。これは5棟くらいの防衛省の庁舎を纏めて、建て直しするもので、設計、建設、維持管理まで包括的に民間にリスク移転されています。
さらにこの事業では、公共のいわゆる営繕部門(公共施設の管理を行う部門)が民間に人間を伴って移管されていたはずです。ここまでやればハコモノでもVFMは出るかもしれませんね。
日本のPFIでもこの営繕部門のリスクを民間に移転すればそれはVFMがでる可能性もあります。逆に言えば、営繕部門が公共施設の設計等に責任を持っている限り民間の自由な設計など無理です。
さらに、英国と日本で決定的に異なる部分があります。それは工期管理のリスクです。英国では従来、工期の遅れ、供用開始の遅れのリスクは官が取っていたようです。つまり工事が遅れた場合には、その請負代金を余計に業者に払わなくてはならないというものです。
日本ではこのリスクは官にはありません。もともと工期が遅れようがなんだろうが、決められた事業費しか払えないのです。これは決定的です。
英国のNAOのレポートを見ると、実はこの部分でVFMがでた、としているものが多いです。日本のPFIではそもそもあり得ない話です。
そのようなことを考慮に入れても、設計、建設、維持管理、運営の一体化によって若干でもコスト縮減の可能性はあるかもしれません。しかし、そもそも公共の施設のうち、裁判所、刑務所、大学施設、一部の庁舎も法律の定める要件があって、民間が自由に設計できるとは限らないのです。ここにも大きな制約があります。
このように考えてもいわゆるハコモノはそもそもPFIに適していない、と私は考えます。
オーキー(OK) @ 2007年 12月 24日 13:34:08
オーキーさんのコメントにも一理あると思います。単なるハコモノで維持管理運営サービスの割合も極端に低いようなプロジェクト(たとえば、公務員宿舎の類)は、BPRも何もあったもんではなく、割賦を目的に実施されているだけ、と言っても言い過ぎではありません。PFI法には、公共サービス提供に関する官の関わり方の改革に繋がるようなものを、特定事業として選定すべきことが謳われていますが、現実には、そういう事業は非常に少ない。これからの課題です。地方自治体の事業には、向いているものがたくさんあると思いますが、そもそもアドバイザーが大して考えておらず、リスク調整もせずに、表面的なコスト比較だけでBTOかBOTか結論を出しているので、リスク移転なんてそもそも考慮していない。ひどいのになると、役所内の抵抗で、BTOでも運営を除外し、維持管理の一部は外郭団体にそのままやらせるなんていう事業もあるそうで、これではいくら計算しても、創意工夫の余地もDSCR計算も無意味になります。こういう事業の場合は、残った部分でBPRだなんだとまじめに議論しても時間の無駄です。PFI事業にすること事態、間違っている。
ただ、ハコモノでVFMが出るかどうかは、維持管理フィーがどれほどの割合かにも左右されますよね。運営が公共であっても、施設や設備に特殊なものがかなり含まれていて、高価なもの、維持管理に専門的能力が要求されるものであれば、不具合対処のコストも大きく、創意工夫の余地も広がる。事業によって事情は異なるはずです。一括で委託できるのが、電球交換、電気設備の保守点検と簡単なお掃除程度であれば、別に創意工夫もなにもない。考えること自体無駄です。こういう事業なら、安かろう悪かろうの施設が生み出される危険が高い。オーキーさんがおっしゃるように、かつての英国では、公共施設の質なんて気にする必要ない、なぜならもともとがひどいから、なんて意見があったそうです。NAOの昔のレポートには、特に、学校がひどかったと書いてあるものがある。その反省が、ブレア政権以降のPFIの進化を生んだとも言われています。ニューカッスルのとある中学校の校長先生は、昔勤務していた中学校をPFIで整備したら、昔よりもひどいのができて、保護者にも生徒にも申し訳ない思いをしたとか。その反省で、今の学校をPFIで新しくしたときは、要求水準作成段階から自ら参加し、4Psの管理者向けマニュアルを徹底的に学び、事業者との対話に生かしたと語っていました。ところで、人件費(たとえば、8掛けにするとかいう比較)でVFMを生み出すやり方は、確か、今はEUのTUPEで禁止されているんではなかったでしょうか?
PFI侍 @ 2007年 12月 24日 17:18:01
それから、熊谷さんは、おそらく、維持管理フィーの割合がどんなに小さかろうが、リスク移転だけでVFMが生み出されるとまでは、おっしゃっておられないのではないかと。これは程度の問題ではないでしょうか。一定の条件をおき、市場調査を行い、複数のシミュレーションを行った結果、導かれる数値を比較するわけですから。品質にこだわらず(あるいは、官が設定した品質が最高と考えて)、価格競争に徹するのであれば、一般競争入札がもっとも優れているのは当然のことですよね。
PFI侍 @ 2007年 12月 24日 17:23:33
PFI侍さん、
TUPEは正確に言うと欧州ではなく英国の制度です。但し、もともとがEUの労働者保護指令(既得権指令とか言います。Acquired Right Directive)なので同じようなもんですが。
英国の事業者と話をした時、TUPEによって元々の公共の時と同じ給与条件で公務員を引き受ける。但し、その後のBPRによって配置転換(そのPFIとは関係ない他の事業とか、その事業者内においてPFIを統括するような部門に移動させるそうです)を行うことによって、そのPFI事業での人権費を下げるそうです。TUPEは事業譲渡を理由とした解雇を禁止していますが、本人合意の下に配置転換することは何ら禁じていません。
失業率の低い英国では、公務員は質の良い労働力として捉える事ができるようで、配置転換で他の部門で活躍する率が高いそうです。
オーキー @ 2007年 12月 24日 17:55:43
すいません、舌足らずでした。確かにあれは英国の制度ですね。VFMの想定をするときに、人件費×0.8で計算し、民間ならコストが下がる、なんていう乱暴なやり方が、いまだにまかり通っていると聞いたもので、そもそも人件費削減効果を機械的に見込んで、VFMを出すのは間違っているということが趣旨です。質のよい労働力とはいえ、公共部門から民間部門へ移動するのは、かなり大変なようで、ついていけずにやめていくスタッフも少なくないそうですね。Swindonのある病院では、受託事業者が、公共から受け入れる予定のスタッフを、開院6ヶ月前から、当該事業者が運営を受託している他の病院で研修させ、民間流に慣れてもらうなどの配慮をしているそうです。わが国でも、現業部門では、いずれ、そのような動きが現実になるのでしょうね。
PFI侍 @ 2007年 12月 24日 18:17:37
PFI侍さん、
>公共部門から民間部門へ移動するのは、かなり大変なようで、ついていけずにや>めていくスタッフも少なくないそうですね
まあ、こういう例は結構あるのでしょうね。また英国は職能別組合なので解雇にならなくても、別の職種に転換することに抵抗はあるかもしれません。でも、英国の今の低失業率では、とにかく人を雇うのが大変だ、というのを英国の事業者及びサービス・プロバイダーの協会みたいなところで聞いたことがあります。
募集をしてもクリミナル・レコード、つまり前科者みたいのしか応募してこないとか(笑)。
だからTUPEで公共部門の人間をとりあえず受け入れる、その事業の外では根本的な人材不足があるのですから、どのようなレベルにしても公務員試験(英国の制度は知りませんが)を通るような人材はのどから手が出るほど欲しいらしいです。
オーキー @ 2007年 12月 24日 18:30:27
オーキーさん>
階級社会ならではの事情もありそうですね。英国の中級クラスのホテルにいけば、宿泊客の階層もそうですが、ケータリングスタッフの様子を見ていると、大丈夫かいなと思うくらい、雰囲気があやしい。鉄道の窓口で受付をしているスタッフは、態度が横柄で、よく大声で怒鳴る。駅のつくりがわかりにくいのが問題なのに、間違って入ってきた旅行客と、駅員が怒鳴りあっているのを何度も見ました。低失業率とくれば、なおのこと人材には苦労しているんでしょうね。
PFI侍 @ 2007年 12月 24日 19:56:07
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- プロフィール

- Hiroshi Kumagae
- (男)
- 1959年05月06日
- アビーム コンサルティング㈱ ディレクター
- 著書:脱「日本版PFI」のススメ 相模書房 ISBN978-4-7824-0705-9
- ESADE大学院 国際経営修士
慶應義塾大学院 特別招聘講師(非常勤)
三田図書館・情報学会会員、PMFJ会員 公益事業学会会員
平成18年度内閣府PFI事業の総合評価検討委員会委員
平成19年度自治体PFI推進センター専門家委員会委員
日刊建設工業新聞 所論/緒論コラムニスト
東京LEC 法律文化 連載中
剣道3段、居合道3段(夢想神伝流)
福岡県生まれ横浜市在住
連絡先:
hkumagae-mobile@softbank.ne.jp
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