モニタリングは官だけの責任ですか?銀行はモニタリングしないの?(その3)

なかなか、面白い話の展開になってきました。

オーキーさんから
熊谷氏はちょっと物事をロマンティックに考えすぎるきらいがあるのではないですか?
というコメントをいただきましたが、合理的に、少なくとも、欧州や、過去に英国植民地であったアジア諸国(シンガポールや香港等)で成り立っている姿を前提に仕組みを考えているだけです。日本の銀行にリスク分析をする能力がないということになると、今、ニーズの高まっているアジアのプロジェクト・ファイナンスも、日本の銀行の欧州支店から対応することはできても、日本からは対応できないことになってしまいます。

さて、侍さんからの質問にお答えします。
1.最後の段落で、「「・・・その結果を活用して、発注者が示したままの・・・」とありますが、「その結果」とは、発注者が事前に提示するものなのか、それとも、金融機関が雇った技術アドバイザーの力を借りて、金融機関が算定した結果なのか。発注者がそれだけ詳細なデータを市場に提示すること自体、もし、日本で行うとしたら、革命的なことだと思いますが、実際のところはどうなんでしょうか。発注者も当然、技術アドバイザーを雇っているわけですから、両者の技術アドバイザーが存在して、それぞれチェックを行い、その結果を元に交渉したうえで、発注者と事業者、そして金融機関の三者間契約が成立する、と理解すればいいのでしょうか。

ここでは、発注者が適切な条件を設定することが前提として記載しました。
革新的かどうかは、わかりませんが、発注者が事業の枠組みを設定することが必要だと思います。実際の事業内容を最も理解しているのは、担当者なのですから、あまり技術アドバイザー頼みにならないようにする必要があります。
少なくとも、事業契約と、融資契約と、三者間の直接契約を同時に締結しないと官にとって不利な状況になることだけは確かです。

2.サービスの品質に関するモニタリングは、事業者がまず自ら行い、公共が事業者からの報告に基づいて行ったうえで、サービスフィーを払うことになりますが、レンダーが技術アドバイザーを雇って行う「モニタリング」は、これとは別のものではないのでしょうか。運営開始まではともかく、運営が始まってから行うモニタリングは、公共と事業者の間の話だと理解している人は、少なくないと思いますが、もし違うのであれば、ご教示ください。(たとえば、Independent engineerが、運営開始後も、定期的に、金融機関に技術評価レポートを送り、CFが変動する兆候がないかどうか等、情報を提供する。金融機関はこれを元に、事業をモニターすることが可能になる等)

サービスの品質といっても、要求水準には、アベイラビリティに関する要求と、サービスの品質に関連する要求、そして、KPIの変動に対しての対処に関連する要求など、さまざまな要求が含まれています。
したがって、事業者は、それぞれの要求のモニタリングをどのような仕組みで構築するのかを示す必要があります。モニタリングシステムを構築することは、事業者にとって、発注者の主観的な判断によって減額がなくなるというメリットにつながります。
ただし、要求水準が「ススメ」にも記載したように
1.要求水準を満たさない事象がヘルプデスクを通して認識されること(この場合は、発注者が示した重要度割合に基づいた減額が適用されます。ヘルプデスクの結果報告によって、自動的に出てくるものです。)
2.事業者提案が提案どおりに実施されないこと(提案が実施されない場合は、ペナルティポイントの適用が適切化と思われますが、ペナルティポイントの発動の仕組みを事前に合意しておく必要があります。発注者が確認できるものです。)
3.類似施設のベンチマークよりも下回っていること(この場合もペナルティポイントが適切だと思われます。特別なベンチマークの場合には、技術アドバイザーが関与する可能性があります。)
4.セルフモニタリングによって問題が発覚したり、セルフモニタリングが機能しない場合〔これらは、アベイラビリティと、パフォーマンスのどちらにも適用される可能性があります。事業者が一義的に確認したものを、発注者が確認します。)
5.サブコンの担当している業務の実態の実態をSPCの管理者が認識できていない場合(アベイラビリティとパフォーマンスの両方のケースがありえますが、それにプラスしてペナルティポイントが発生します。抜き打ち検査などによっての確認が一般的です。)
6.満足度調査の結果が悪化している場合に適切な対応がとられない場合(満足度調査そのものの結果ではなく、その結果が悪化している場合の対応に対するペナルティポイントが発動されます。運営委員会に対して、事業者からの改善プロポーザルが出てくるはずです。一義的には事業者の担当ですが、発注者の許可が必要な項目です。)
7.法令順守ができていない場合。(ケースによっては、法令順守が達成できるまでアベイラビリティの対象になることがあります。ペナルティポイントの対象です。定期的な法定検査の結果を確認するのは、発注者の役割です。)
8.監査の結果、不適切な運営が行われていることが発覚した場合。(これもペナルティポイントの対象です。監査は、監査法人が行うのが一般的です。)

このように見ていけば、技術アドバイザーが関与しなければならないモニタリングはほとんどないことがお分かりになるのではないでしょうか。
技術アドバイザーは、事業契約の内容を変更する場合など、もっと別のケースで関与してもらう必要があります。

理想的な姿であり、現在実施されていないかもしれませんが、実施できない仕組みではありません。

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登録日:2007年 12月 27日 01:28:45

コメント

 「ススメ」やこのブログを読んで、PFIにおける金融機関の役割の重要性を再認識しております。ただ1つだけ、疑問があります。これまでの多くのPFI事業では施設整備費の割賦払いにより、金融機関の融資の回収にある程度確実性があったとすると、熊谷氏が言われるような「要求水準とモニタリングと支払いメカニズムの連動の仕組み」を導入して、金融機関に監視の役割を担わせようとしたときに、果たして「国内の」金融機関がこれに応じて融資を行う可能性があるのでしょうか。海外と国内のダブルスタンダードは早急に改善されるべきものとしても、実際に手を挙げる事業者と金融機関がいなければPFI事業そのものが成立しないという恐怖感が公共側の意識を縛り続けるように思うのですが。

PFI初心者 @ 2007年 12月 27日 11:04:45

PFI初心者さんの質問は、まさにハコモノでそもそもバッファーないところに「要求水準とモニタリングと支払いメカニズムの連動の仕組み」が導入できるのか、という問題ですね。運営の比重が大きく、事業全体でのコスト縮減効果が見込め、金融機関が適切なスプレッドが確保できるのであれば、そうした仕組みも可能ですが、そうでないものには適用できないと考えるべきでしょうね。

熊谷氏は、「リスクが移転されていないのですから、スプレッドは低いのは当たり前です。」と仰ってますが、バッファーの無い中でリスク移転してもスプレッドが確保できるわけはありません。逆に言えば、プロジェクト・ファイナンスとして適切であると考えられる100~200のスプレッドが確保できる、それだけ余計な金利コストを負担してもなおVFMが達成できるものだけPFIとしてやる価値があると言えるのだと思います。

また、熊谷氏の言う「彼らが興味を持てるような仕組みを作ってやればよいだけです。」のところについても、それが可能であるかどうかという点で疑問を持っています。
PFI侍さんが仰っているように、今の日本の金融を取り巻く状況は異常です。おそらく経済学的、経済史的に見ても、過去に他のどの国でも経験のしたことの無いような状況ではないでしょうか。
適切なリスクとリターンが確保できないことについては、日本の過去の護送船団方式の影響は大きいです。昔は、不動産担保さえあればどんな主体にもプライム・レートで資金を提供していたのですが、こうした日本独特の慣習が今にも影響を与えているのも事実ですが、それだけではありません。
現在の日本は、過去歴史に例が無いくらいの異常な金余りです。PFIに限らず、まともなスプレッドが確保できる案件がほとんど無い、資金の需要のあるところにはありとあらゆる金融機関がとんでもない条件で資金を提供してしまう状況です。PFIに限らず、まともなプロジェクト・ファイナンスが成立しなくなっているのもそのせいもあります。
外資が手がける不動産証券化などのストラクチャード・ファイナンスなどでは、日本の金融機関が手を出せないものに外資のノウハウで金を出している例があるのも事実ですが、これとてスプレッドが下がっていますし、そもそもこの手の案件は最初から出口を計算にいれたものが多く(ババ抜きみたいなものもある。。)、PFIと同列には考えられないものです。
(もっとも、PFIにおいても出口をもっと認めても良いとは思います)

このような日本の状況が、そもそも熊谷氏が言うところの英国スタンダード(あるいは世界スタンダード)のPFIの成立を拒んでいる大きな要素です。

ただ、私とて絶望しているのみではありません。PFI侍さんに教えていただいたようなきちんとしたスプレッドを確保した案件を手がけている自治体もあるということなので、そうしたところに望みはあります。となると、アドバイザーの役割はもっともっと大きいですね。
日本のPFIではフィナンシャル・アドバイザーと称する設計屋、技術屋が多くの案件を取り仕切っていますが、ここも改善なれなくてはなりませんね。次の議論はアドバイザーについてですかね?

オーキー @ 2007年 12月 30日 09:44:47

オーキーさんの現状に関する認識には、私も賛同いたします。ご紹介させていただいた例はごく少数派の自治体の例であり、大多数の自治体(国もそうですが)の案件は、おっしゃるように、そもそも工夫の余地が少ない案件、価格競争重視で内容などとってつけたような評価しかしていないと思しき案件など、どうしてこんなものをわざわざPFIとして発注するのか、全く理解に苦しむものが幅を利かせているのが現状ではあります。しかし、それはおかしい、と疑問を持ち、改善に取り組む自治体も現れていること、そこに光明を見出していきたいと思います。
オーキーさんがおっしゃるように、アドバイザーの役割(責任)は非常に重い。アドバイザーを生業とするかたがたは、最後は自治体が自ら考えて判断するんですよ、とは言いながら、適切なアドバイスをしているのかどうか。複雑なCFモデルを作ったり、CFモデルを正確に計算するのは誰でもできます。アドバイザーとは本来、どうあるべきなのか。現実はどうなのか。発注者がアドバイザーについて誤解していることはないか。よい機会なので、少し考えてみませんか。

PFI侍 @ 2007年 12月 30日 16:50:38

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プロフィール
Hiroshi Kumagae
Hiroshi Kumagae
(男)
1959年05月06日
アビーム コンサルティング㈱             ディレクター
著書:脱「日本版PFI」のススメ 相模書房 ISBN978-4-7824-0705-9
ESADE大学院 国際経営修士
慶應義塾大学院 特別招聘講師(非常勤)
三田図書館・情報学会会員、PMFJ会員 公益事業学会会員
平成18年度内閣府PFI事業の総合評価検討委員会委員
平成19年度自治体PFI推進センター専門家委員会委員
日刊建設工業新聞 所論/緒論コラムニスト
東京LEC 法律文化 連載中 
剣道3段、居合道3段(夢想神伝流)
福岡県生まれ横浜市在住
連絡先:
hkumagae-mobile@softbank.ne.jp
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