私の視点 ◆PFI/民間の知恵生かす改革を 2008年1月16日 朝日新聞 朝刊
英国で開発されたPFI(プライベート・ファイナンス・イニシアチブ)という手法に倣い、日本でも300近い事業が進行中だ。だが、わが国では財政難の自治体が民間資金で公共施設を整備するという側面ばかりが注目され、民間のノウハウを公共サービスの向上に生かすという本来の狙いがかすんでいる。
英国のPFIは民間資本で施設を整備させ、そこで提供される「サービス」を官が購入する仕組みだ。発注にあたっては(1)要求するサービスの水準(2)サービスの水準を監視する方法(3)未達成の場合の罰則――の3点を詳細に定めた契約書を交わす。民が適切なサービスを提供できなければ支払いは受けられず、契約が解除されることもありうる。
ところが、日本ではこうした仕組みがない例が目立つ。たとえばPFIで民間事業者が建設した仙台市のスポーツ施設「スポパーク松森」は、05年8月の宮城県沖地震でプールの天井が落ちて使用不能となったが、市は事業者への支払いを停止できなかった。
PFI事業の効果として、多くの自治体は「従来より低コストで施設を整備できた」と言うが、安普請になっているだけのこともある。民間資金の調達コストは公債より高いので、むしろ差額分だけ税金が無駄遣いされたともいえる。
日英では銀行の役割も違う。英国では、民間事業者に資金を融資している銀行は、提供サービスの対価として官から事業者に支払われる料金の受給権を担保にとっている。この場合はサービスが要求水準を満たさなくなり、官から民への支払いが止まると融資が焦げつくので、銀行は積極的に事業に介入し、立て直しのために知恵や労力を出す。
ところが、日本の銀行は施設を担保に取っており、事業の運営が悪化しても困らない。これでは、サービスの向上に携わろうという意識は生まれない。
日本版PFIからの脱却には、仕様書の改革と銀行の役割の明確化が必要だ。
仕様書の改革とは、施設の形状やサービス提供の方法ではなく、サービスの要求水準を仕様書に明確に書き込むことだ。たとえば病院ならば「手術室など重要区画の電球は絶対に切れないように、廊下などは切れたら3時間以内に付け替える」といった具体的な要求水準と、達成度を監視する方法、未達の場合の罰則ルールを書き込むのだ。
こうした改革により、事業者は施設やサービス手法の制約に縛られず、自由な発想で高いサービスを追求できるようになる。
一方、銀行の役割の明確化とは、銀行にも一定のリスクを負ってもらい、サービスの向上に知恵を出さざるを得ない仕組みに改めることだ。そのためには、官と事業者と銀行の3者で契約を結び、銀行は施設ではなくサービス料金の受給権を担保とする代わりに、官と事業者は銀行が事業に介入することを認めるのだ。
こうした改革は、民間のノウハウを十分に活用し、本来のPFIを実現するには避けて通れない道だ。
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登録日:2008年 01月 22日 12:50:15
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- プロフィール

- Hiroshi Kumagae
- (男)
- 1959年05月06日
- アビーム コンサルティング㈱ ディレクター
- 著書:脱「日本版PFI」のススメ 相模書房 ISBN978-4-7824-0705-9
- ESADE大学院 国際経営修士
慶應義塾大学院 特別招聘講師(非常勤)
三田図書館・情報学会会員、PMFJ会員 公益事業学会会員
平成18年度内閣府PFI事業の総合評価検討委員会委員
平成19年度自治体PFI推進センター専門家委員会委員
平成20年新宿区立図書館指定管理者選定委員
平成21年横浜市立山内図書館指定管理者選定委員
日刊建設工業新聞 所論/緒論コラムニスト
剣道3段、居合道4段(夢想神伝流)
福岡県生まれ横浜市在住
連絡先:hkumagae@yahoo.co.jp
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