自治体がもっとキャッシュフローを改善したいのならリスク移転型PFIの活用が可能

画像

 去る2月1日に、地域総合整備財団(ふるさと財団)と総務省の共催で行われたPFIセミナーの講師をしました。今年のPFIセミナーのテーマはPFI事業におけるリスクでした。

 私は、今年ふるさと財団の傘下の自治体PFI推進センターの専門委員に就任していることから、ふるさと財団から依頼を受け「リスク管理の総論と実務」というタイトルでセミナーを行いました。近日中にそのPPTはふるさと財団か、自治体PFI推進センターのURLにアップされると思われます。

 さて、セミナーのなかでPFIが生み出すメリットのひとつとして次の点を説明しました。
*****************************************************************************************
現在のわが国の分割払いのPFI手法を国際標準のリスク移転の考え方に基づくPFI手法に変えれば、現在のPFI処方で整備している施設よりも、より耐用年数が長く、威厳のある施設をより少ないキャッシュフローで作ることができるというメリットがあります。
*****************************************************************************************

【現状の分割払いPFIの背景】
 いま、自治体はキャッシュフロー上の問題から、施設整備費を分割払いするためにPFI手法を使っています。ファイナンスの関係もあり、もっとも長い契約期間は約30年です。
このような30年間の分割払いは、施設整備費の30分の1と民間貸付の利息を毎年支払うという仕組みです。公債によって資金調達をすることができる公共にとってはこのような分割払いは、確かにキャッシュフローの改善には貢献するものの、従来よりも民間資金を使うことによって支払いが増えているのが実態です。民間資金を使うのだから、利息分の支払いが増えるけれども、従来よりは、支払いが少なくなるのだから、仕方がないという考え方だと思われます。

【従来型よりも年度負担コストが悪化している可能性】
 しかしながら、30年間の支払いが減ったとしても、投資を削減することと30年の耐用年数さえあればよいという考え方で、民間事業者が施設整備をすると、たとえば、従来の官の設計で45年の耐用年数が合ったとすれば、1年間あたりのコストでは、PFI手法のほうが高くなっている可能性があります。

【200年住宅、200年公共施設の仕様】
 このところ、住宅や、公共施設の100年の耐用年数は常識であり、200年住宅等が施策として取り上げられています。
 この背景には、品質の高い施設投資を行い、耐用年数を延ばせば単年度あたりのコストを意図的に下げ、しかも、品質の高い住宅整備により付加価値も生まれ、経済の活性化にも繋がるという考え方があります。

【30年PFIと100年PFIの比較】
 たとえば、PFI事業も100年施設、200年施設を作れば、初期投資を下げることが目的の30年計画よりも、より高い品質の施設整備が可能になります。この場合、30年施設と100年施設の施設整備費の支払いを30年間の契約期間中に同じように比較することはナンセンスです。30年の耐用年数のある施設を30年間かけて支払うのであれば、100年の耐用年数のある施設は100年かけて支払うのがイーコールフッティングの考え方のはずです。

 このような支払いにするためには、100年施設であるといって契約しておいて実際には30年しかもたないような施設整備をされてしまうことが問題となります。ここにPFI事業のリスクがあるのです。

 そこで、このようなリスクを、民間に移転するためには、民間に施設を所有させ、30年分の施設提供サービスの対価として施設整備費の100分の30を支払い、残りは、残存価値が残っていれば支払うという仕組みやオプションで100年まで契約を延長する仕組みを活用することができます。

 いくつかの前提条件がありますが国際標準のPFI手法とは、このような現在のわが国のPFI手法よりも、よりよい施設をより少ないキャッシュフローで達成できる手法です。

 割賦払いを前提にしてしまうと、このような本来のPFIの仕組みによる支払いが理解できなくなる可能性があります。ハコモノPFIとは、このような仕組みによって成り立っているのであり、成り立つべきものです。

カテゴリー[ リスク移転型PFI ], コメント[1], トラックバック[0]
登録日:2008年 02月 11日 17:44:14

コメント

熊谷さんに質問があります。
ここで掲げられているテーマは、非常に興味深く、標準的になれば自治体のCF改善に大きく貢献するばかりか、PFIのメリットとして、注目されるものになると思います。

たとえば、15年が標準の給食センター事業のスキームを大きく変える可能性があります。(通常、自治体はハコモノにかかる起債を15年で償還することはほとんどなく、総務省の指導もあり、例えば、市場公募債も、いわゆる縁故債も、10年、10年、10年で2回借り換え、30年で償還します。したがって、単年度あたりの支払額は増えているはずで、CF改善には繋がっていない。
これを、事業者は必要な資金を借りるとして、公共は、それを事業期間中14/30だけ支払い、施設の引渡しを受けるときに、施設を鑑定評価し、残りを改めて起債するか何かで、事業者に残債を一括で支払う。事業者は融資期間30年のプロジェクトファイナンスで資金を調達し、15年目に公共から残存価値分の支払いを受け、一括償還する?)
そこで、質問です。
■100年はともかく、たとえば、耐用年数60年の施設を、事業期間30年+延長オプション付で、自治体が30/60年分だけ払い、最終年度に残存価格を鑑定評価して支払うとした場合、こういう事業にレンダーは信用供与するものなのでしょうか。そこまでのリスクを負うからには、単なるハコモノではだめで、事業への参加と継続を動機付けるものが必要だと思いますが、よくある公務員宿舎や、庁舎整備事業では、なかなかこうはいかないと思うのですが、どうでしょうか?

■PFI、または、PFI以外の事例で、何か類似のものはありますでしょうか。

PFI侍 @ 2008年 02月 11日 20:19:53

コメントを追加

Trackback

この記事に対するトラックバックURL:

プロフィール
Hiroshi Kumagae
Hiroshi Kumagae
(男)
1959年05月06日
アビーム コンサルティング㈱             ディレクター
著書:脱「日本版PFI」のススメ 相模書房 ISBN978-4-7824-0705-9
ESADE大学院 国際経営修士
慶應義塾大学院 特別招聘講師(非常勤)
三田図書館・情報学会会員、PMFJ会員 公益事業学会会員
平成18年度内閣府PFI事業の総合評価検討委員会委員
平成19年度自治体PFI推進センター専門家委員会委員
日刊建設工業新聞 所論/緒論コラムニスト
東京LEC 法律文化 連載中 
剣道3段、居合道3段(夢想神伝流)
福岡県生まれ横浜市在住
連絡先:
hkumagae-mobile@softbank.ne.jp
最近のトラックバック
検索