2者間契約のプロジェクト・ファイナンスと3者間契約のPFIの違い
私とオーキーさんの議論が白熱してきました。
私が、「英国のPFIにフローティング・チャージが活用されている事例があることは認めるものの、フローティング・チャージありきが前提ではありませんよ」とコラムに書いたのに関して、オーキーさんが反論したことから発展した議論です。
オーキーさんの論理展開は次のように、「プロジェクト・ファイナンス=PFI」で一貫しているようですが、私はそう考えていません。ここが議論の食い違いが生じる原因かと思われます。
確かにPFI事業には、プロジェクト・ファイナンスの要素が含まれていますが、「プロジェクトファイナンス=PFI」ではありません。公共サービスを提供するための資産は、公共施設であることから転売が困難であるという特殊要素と、PFI事業の契約は三者間の契約であるというSoPC4の考え方に私は基づいています。
今までの議論を簡単に整理してみました。
最初の議論は、PFI事業では、公共の資産を担保に取るのではなく、事業のキャッシュ・フローが生み出すバリューを担保に取るのですよという「英国のPFI事業における基本的な考え方」に対して、オーキーさんが反論したところからスタートしました。
オーキー> PFIにしろ、他のプロファイ等のノンリコースにしろ、不動産も担保に
取るのですよ。むしろ、ボロワーの資産という資産は全部担保に取るというのが正しいです。英国ではこれをフローティング・チャージ(不動担保)という包括的な担保によって押さえます。
これは貸し金の回収のためではなく、第三者などが一部でも権利を取得することにより、資産の譲渡を行う必要が生じた際に権利関係が複雑になり、結局譲渡がうまく行かなくなるのを避けるためです。したがって、PFIのローン契約でもSPCの資産は不動産も含めて全部担保に取ります。 (1月21日)
この意見に対して、私は、英国の直接契約の雛形を事例として示し、フローティング・チャージを活用したPFI事業を否定はしないものの、標準的なPFIでは、事業のキャッシュ・フローから生まれるバリューを担保にして融資が行われるので、わが国のPFI事業においても、官が直接契約の雛形を策定し、英国型のように事業のキャッシュフローの担保に切り替えるべきですよという意見を「官が示す必要のあるPFI事業の直接契約の雛形」(2月11日付け)で示しました。
これに対してのオーキーさんのコメントは、次のようなものでした。
オーキー> 英国のPFIでフローティング・チャージを利用していないものがあると
したら、フローティング・チャージを用いなくても同様の効果が得られるか、単純にコーポレート・ファイナンスの手法を用いているからですよ。
熊谷> この断定的な意見の根拠は何なんでしょう?
オーキー> 簡単です。包括的な担保を取らないファイナンスはプロジェクト・
ファイナンスとは呼べないからです。何故、包括的な担保が必要かはおって説明します。
熊谷氏もプロジェクト・ファイナンスは、事業のキャッシュ・フローに依拠するファイナンスだと言っています。で、本気で、事業契約のみがキャッシュ・フローの源泉とお考えですか?
それはそもそも熊谷氏が提唱するユニタリー・チャージの考えとも矛盾します。熊谷氏によれば、施設のアベイラビリティとサービスは一体なんですよね?それなら何故、担保を不動産と事業契約に分けるのですか?
プロジェクト・ファイナンスは特定の事業にかかる全ての資産をもって成り立つものです。施設とサービスは不可分であり、だからこそユニタリー・チャージの考えが成り立つのです。
熊谷> PFI事業とは、不動産の担保を取って融資しているのではありません。
事業のキャッシュフローから生まれるバリューを担保にとって融資しているのです。
オーキー> ここに熊谷氏のプロファイへの無理解がある意味凝縮されています。
そもそも、プロジェクト・ファイナンスで不動産を担保に取るのはその換価価値に着目しているからではありません。事業の継続から資金の回収をはかるからこそ、不動産の担保も必要なのです。
熊谷氏もPFIで事業者が破綻した場合は、レンダーが事業を継承するものを探してくる、ことに触れていますよね。事業契約の担保だけで本気でワークするとお思いですか?じゃあ、施設はどうするのですか?公共が新たに入札をかけるのですか?そうではないでしょう。施設も一体として、新たな事業者に継承させるんですよね?それには、事業を包括的に担保する仕組みが必要なのです。
公の施設を担保に取ることは、公物管理の観点から難しい側面もありますが、英国にはわが国のような公物管理の概念はありません。フローティング・チャージで事業者の資産の一切を担保に取ることに障壁は少ないはずです(無いとは言いませんが。)。
熊谷> さらに、SoPC4で規定しているような直接契約が存在しなければ、事業者は公共とレンダーが勝手に決めたステップイン、ステップアウトの取り決めに従う必要はありません。利害が衝突しているからです。
オーキー> 直接協定の存在と事業者の義務は関係ありません。何故ならステップインにかかる事業者の義務は融資契約に書かれるからです。それが証拠に、海外のPFIではないプロジェクト・ファイナンスでは直接協定がないものも結構あります。無くてもステップ・インはワークするのです。PFIで公共性が問題となるから直接協定が必要となるのです。
もうこれは反論とか何とかではなく、プロジェクト・ファイナンスにおけるコモン・センスです。
さて、それでは、反論しましょう。
まず、私は前述のように公共施設整備と関連したPFI事業のことについて述べているのであって、一般的なプロジェクト・ファイナンスについて述べているのではありません。オーキーさんがプロジェクト・ファイナンスとPFIが同じであるという前提に立って、私の説明(PFIのSoPC4に基づく一般的な考え方であって、別に私の個人的な見解ではありませんが・・・)に矛盾があると指摘している部分を見てみましょう。
>熊谷氏もプロジェクト・ファイナンスは、事業のキャッシュ・フローに依拠する
>ファイナンスだと言っています。で、本気で、事業契約のみがキャッシュ・フロー
>の源泉とお考えですか?
「キャッシュ・フローの源泉」という意味がよくわかりませんが、SoPC4に基づいたPFI事業で行われる資金調達は、「事業契約のキャッシュフローが生み出すバリュー」を担保として金融機関が融資をすることが原則であると考えます。
>それはそもそも熊谷氏が提唱するユニタリー・チャージの考えとも矛盾します。
>熊谷氏によれば、施設のアベイラビリティとサービスは一体なんですよね?
>それなら何故、担保を不動産と事業契約に分けるのですか?
私は、民間資金の融資契約における担保はプロジェクトのキャッシュ・フローが生み出す価値であるとのべましたが、担保を不動産と事業契約に分けると述べた記憶はありません。
>プロジェクト・ファイナンスは特定の事業にかかる全ての資産をもって成り立つもの
>です。施設とサービスは不可分であり、だからこそユニタリー・チャージの考えが
>成り立つのです。
そもそも、ユニタリー・チャージとプロジェクト・ファイナンスを連動させなければいけない理由が何かあるのでしょうか。ユニタリー・チャージによる支払いをするのは、担保のためではなく、施設の不具合リスクとサービスの品質低下のリスクを包括的に民間事業者に移転するためのものであり、担保とは直接的な関係があるものではないことを指摘しておきます。
>ここに熊谷氏のプロファイへの無理解がある意味凝縮されています。
議論の対象となっているのはPFIです。一般的なプロジェクト・ファイナンスの話をしているのではありません。
>そもそも、プロジェクト・ファイナンスで不動産を担保に取るのはその換価価値に
>着目しているからではありません。事業の継続から資金の回収をはかるからこそ、
>不動産の担保も必要なのです。
公共の所有する土地の上に立っている建物を担保にするものではありませんよというPFI事業の雛形をどのように考えて、不動産の担保が必要といっているのか理解できません。不動産を担保にしないとお金を貸さないという金融機関がいたとしたら、官はそれなら結構ですというだけであって、不動産を担保にしないという官に対して、不動産の担保が必要だといっていったい何になるのでしょう。
>熊谷氏もPFIで事業者が破綻した場合は、レンダーが事業を継承するものを探してくる
>ことに触れていますよね。事業契約の担保だけで本気でワークするとお思いですか?
>じゃあ、施設はどうするのですか?公共が新たに入札をかけるのですか?
>そうではないでしょう。施設も一体として、新たな事業者に継承させるんですよね?
>それには、事業を包括的に担保する仕組みが必要なのです。
プロジェクト・ファインナンスは事業そのものが生み出すバリューが担保となる融資契約です。金融機関が事業契約のキャッシュ・フローが生み出すバリューを担保に融資を行うという決断をすれば成り立つものですから、フローティング・チャージのように事業にかかるすべての資産を担保に入れる必要はありません。
>公の施設を担保に取ることは、公物管理の観点から難しい側面もありますが、
>英国にはわが国のような公物管理の概念はありません。フローティング・チャージで
>事業者の資産の一切を担保に取ることに障壁は少ないはずです(無いとは
>言いませんが。)。
英国には、わが国のような公物管理の概念はありませんが、前述の幹部用住宅のような用途を転用することが可能な資産を除き、公共施設を転売するのは簡単ではありません。だだし、公物管理の概念の有無の観点からフローティング・チャージを公共施設に適用できるかどうかの論点は、PFIプロジェクトに対する融資の担保が事業のキャッシュ・フローから生まれるバリューであるということを否定することの根拠にはなりませんよ。
私は、PFIではない一般的なプロジェクト・ファイナンスにおいて金融機関が融資に際して事業者の資産の一切を担保に取ること(フローティング・チャージの活用)を否定しているわけではありません。たとえば、石油の精製施設のように、自治体のような発注者が存在せずに、SPCが自ら事業を行い、事業のキャッシュ・フローからバリューが生まれるプロジェクト・ファイナンスの場合に、金融機関が資産のみならずSPCの石油精製品の売買契約まで含めた事業全体を担保に取るフローティング・チャージの合理性は認めます。
しかしながら、契約とは契約当事者が合意しない限り締結できないものであり、一般的なプロジェクト・ファイナンスのように、金融機関と事業者との2者間はなく、官という発注者の存在するPFI契約においては、フローティング・チャージを活用することが官のメリットにならない限り、官はフローティング・チャージの活用を認める根拠がないはずです。この疑問は、フローティング・チャージの代わりに、公共施設としての不動産を担保としているわが国のPFI事業においても浮かんでくるものです。
官にとって、金融機関にフローティング・チャージの適用を認めたり、金融機関に公共施設を担保としてとらせることにどんなメリットがあるのでしょうか。私は、メリットは何もないと思います。ですから、このような契約は、官は結ぶべきではありません。
ただし、例外の事例としては、たとえば、上級公務員の住宅をPFI事業で整備し、事業契約終了段階に高額な資産の残存価値が期待できる場合に、SPCに対してのフローティング・チャージを活用すれば、活用しない場合に比べて大幅に融資コストを下げることができるという民間からの提案が出てきた場合に、官がそれを認める可能性があることを否定するものではありません。
オーキーさんSoPC4をまず読んでみてください。フローティング・チャージを用いずに事業を包括的に担保する仕組みがNovation(契約更改)条項に記載されています。
PFIの考え方は次のようなものです。
①官民のPFI事業契約:要求を満たしさえすれば、利益を生み出す支払いを受けることができるもの。
②事業者と金融機関の間の融資契約:①の事業契約のキャッシュフローを担保とした資金融資契約
③官と民と金融機関の三者による次のような3つの要素を持つ直接契約。
要素1:民間事業者が事業契約の債務を履行している限りにおいては、事業者は事業に干渉されないこと。
要素2:事業契約の債務が不履行となった場合には、事業契約は解除され、事業者は資産を市場価値で清算した金額を受け取ること。
要素3:事業契約が解除される場合には、事業者は金融機関が選定した新たな事業者に事業契約から得られる全ての権利を移転すること。
これらの3つの契約を同時に締結することによって、明らかにフローティング・チャージでもありませんし、コーポレートファイナンスでもありませんが、金融機関にとって、フローティング・チャージと同じ効果を生み出すことができるのです。
直接契約のNovationの部分は次のとおりです。参照して下さい。
8 NOVATION
(a) Subject to Clause 8 (b), at any time:
(i) during which an Event of Default is subsisting; or
(ii) during the Step–In Period, the Agent may, on [30] days’ prior written notice to the Authority and any Appointed Representative, procure the transfer of the Contractor’s rights and liabilities under the Contract to a Suitable Substitute Contractor.
(b) The Authority shall notify the Agent as to whether any person to whom the Agent proposes to transfer the Contractor’s rights and liabilities under the Contract is a Suitable Substitute Contractor, on or before the date falling [30] days after the date of receipt of all information reasonably required by the Authority to decide whether the proposed transferee is a Suitable Substitute Contractor.
(c) The Authority shall not unreasonably withhold or delay its decision on whether the proposed transferee is a Suitable Substitute Contractor.
(d) On any transfer referred to in Clause 8(a) becoming effective:
(i) the Contractor shall be released from any obligations arising under or in
connection with the Contract from that date and the new Contractor shall become liable for obligations arising on or after that date;
(ii) any accrued [performance points and/or warning notices] incurred under the
Contract shall, for the purposes of termination only, and without prejudice to the rights of the Authority to make financial deductions, be cancelled;
(iii) any then subsisting ground for termination of the Contract by the Authority
shall be deemed to have no effect and any subsisting Termination Notice shall
be automatically revoked; and
(iv) the Authority shall enter into a direct agreement with the Senior Lenders
lending to the new Contractor on substantially the same terms as this Agreement.
カテゴリー[ PFI事業の資金融資 ], コメント[5], トラックバック[0]
登録日:2008年 02月 22日 00:49:18
コメント
素人くさいコメントをご容赦ください。
なぜ金融機関はプロファイを名乗っていながら事業者の資産に対して担保を付けるのでしょうか(付けたがるのでしょうか。)。もちろん事業用資産としての一体性を確保するという意義を否定するものではありません。でも、本来、担保は事業が破綻した場合に融資した資金の回収を図るために付けるものですよね。通常の事業における事業用資産に対する担保であれば、担保権を実行して換価し、優先的に資金の回収を図ることになります。しかし、PFI事業では担保を付けた事業用資産(生産物などの動産は別としても)の売却、換価は困難です。狙いは何なのでしょうか。例えば、公共性に若干疑問のある事業において、金融機関によるステップインが万一効を奏さない場合に、公共側による買取りを促し、公共側からの支払いに対する優先権を確保するためでしょうか。(もちろん、買い取り条項が公共側にとって義務なら質権設定で十分かもしれませんが。)少なくともそうした場合に、公共側からのステップインに対して主導権を与えないための、事実上の影響力の保持が狙いなのでしょうか。
PFI初心者 @ 2008年 02月 22日 19:36:39
PFI初心者さんへの回答にもなるので熊谷氏への反論をします。
というより、熊谷氏の主張はもうめちゃくちゃです。こんなことは言いたくないですが、熊谷氏も専門家を名乗っていますからね。ちゃんと反論しておかないと。でも熊谷氏はいい加減に自分の知らないことをしらないと認めないと本当に信用をなくしますよ。
必ずしも、PFI=プロジェクトファイナンスではない、とのことです。確かにPFIだからプロファイでなくてはならないということはありません。でもプロファイでないなら直接協定は必要ありません。熊谷氏が直接協定の雛形をたてに主張していることは論理矛盾です。
そもそも、包括的な担保を取っていないPFIはプロファイの手法ではない、という私の主張に何を根拠に断定するか、と熊谷氏は聞いてきたわけですが、包括的な担保を取らないものはプロファイではない、という私の主張に、今度はPFI=プロファイではない、と言い出すのは支離滅裂です。しかも最後に、
>プロジェクト・ファインナンスは事業そのものが生み出すバリューが担保となる融資契約です。金融機関が事業契約のキャッシュ・フローが生み出すバリューを担保に融資を行うという決断をすれば成り立つものですから、フローティング・チャージのように事業にかかるすべての資産を担保に入れる必要はありません。
と断定してしまっているのですから論旨がめちゃくちゃです。
事業のキャッシュ・フローに依拠して融資する手法はプロファイのほかにアセット・ベースト・レンディングという手法があります。こちらは基本的に単体の担保、主に集合動産譲渡担保や売掛金債権譲渡担保です。プロファイと何が違うかと言えば、破綻時に事業の継続に力を入れない点です。単体の担保なのでレンダーのコントロールはその範囲でしかなく、事業の継続云々までは力を行使できません。したがって担保には換金性が求められます。アメリカではこれ専門のアプレイザーが存在します。
これに対してプロファイは破綻時に事業を継続させることに主眼をおきます。したがってプロファイの担保は換金目的ではありません。破綻時、レンダーは介入権(ステップ・イン・ライト)を行使し、事業を継承するものを探します。もちろん、場合によっては単にサブコントラクターを代えるだけで治癒できる場合もあるでしょうが、その場合にしても、事業全体を新たな事業者に継承させるにしてもレンダーのコントロール下になければ不可能です。プロファイの事業の施設、各種契約などボロワーの資産全てを有機的一体に捉えることで、初めて事業の継承が可能になります。もう気づいた方もいると思いますが、アセットベーストレンディングではいわば単体の契約などの譲渡、プロファイは事業全体の譲渡があって初めて成り立ちます。だからこそ、公共の利益を守るためと、レンダーに一定の権限があることを承認するために直接協定を結ぶのです。
熊谷氏は盛んに直接協定の雛形を持ち出して、フローティングチャージの不必要を訴えていますが無意味です。事業のキャッシュ・フローの審査とフローティング・チャージ、あるいは不動産を含めた包括的な担保は全く矛盾していません。不動産担保と事業のバリューうんぬんを対比させること自体が完全に間違っています。
ここまで言えばPFI初心者さんの質問、
>なぜ金融機関はプロファイを名乗っていながら事業者の資産に対して担保を付けるのでしょうか(付けたがるのでしょうか。)。
への答えが、プロファイだからこそ資産の全てを担保に取る、ということになるのがお分かりでしょう。
>でも、本来、担保は事業が破綻した場合に融資した資金の回収を図るために付けるものですよね。
プロファイでは違います。事業の有機的一体性を確保した上で、事業の継承を行うためです。公共事業でサービスをストップさせないためには絶対的に必要なものとなります。
さて、PFIがプロファイである必要がない、はその通りですが、少なくとも施設を整備し、その維持管理、運営を一体に捉えるならばプロジェクト・ファイナンスが最適というよりも、プロジェクト・ファイナンス以外では成り立たないでしょう。PPPでサービス契約の比重が高いものであればプロファイである必要はないかもしれません。
>そもそも、ユニタリー・チャージとプロジェクト・ファイナンスを連動させなければいけない理由が何かあるのでしょうか。
事業契約には何が書いてあるのですか?施設の整備、維持管理、事業の運営、そしてその質が悪い場合のペナルティですよね?破綻時に事業契約だけ譲渡した場合に、このユニタリー・チャージはどうなるのですか?
オーキー @ 2008年 02月 22日 22:44:17
http://www.r-i.co.jp/jpn/news_topics/detail/200011/j00-c-512.pdf
添付は金町浄水場の案件で、行政財産である施設に担保権を設定できなかった事例です。
でも、熊谷氏のように取る必要がない、あるいは取ってはならないというようなニュアンスのことはどこにも出てきていません。
この辺は同じR&Iのリポートにも説明が出てきます。
http://www.r-i.co.jp/jpn/news_topics/detail/200005/j00-a-028.pdf
不動産担保を取らない、と言い切るのと取る必要性を認めながら取れない、というのでは全然話が違います。
英国においても、公共施設の上に民間の担保権が設定されることが受け入れられないことがあるのでしょう。で、その場合、まさに直接協定が重要になるはずです。
英国のPPPなどプロジェクト・ファイナンスの専門家であるE.R.Yescombe氏は、著書「Public Private Partnership」の中で、公共施設を担保に取ることの難しさに言及しながら、それでも施設に対するレンダーのコントロールの観点が重要だと述べています。
おそらく、実務的には、レンダーの介入権行使の期間中は、公共は破綻したボロワーの施設の接収を行わない、もしくは一定の認められた手続きにより、レンダーが代替事業者を連れてきた場合には、施設の使用権(というかPFI期間中の所有権ですが)を認める旨のことを直接協定に落とし込むのでしょう。
熊谷氏のようにはなから不動産は担保に取らない、などと言い切ってしまってはこうした交渉も成り立たなくなり、ディールをブレークさせるだけです。
不動産を担保に取らない、ではなく原則取る、取れないときもボロワーの他の資産の一体性を保持しながら、第三者の介入を不可能とするために、フローティング・チャージを含めた包括的な担保の仕組みを維持し、極力レンダーのコントロールによる事業の継承が可能なように契約を作りこむ、というのがPFIにおけるプロジェクト・ファイナンスのあり方です。
これは誰にも否定できません。
もう一つ、これだけは言わせてください。熊谷氏は根拠を尋ねられたときに、自分の論ではなく、英国の雛形に書いてあるのだから、などという言い方をしますが、これは駄目です。公共の担当者と議論になった時に何一つ説得できません。
外国の事例は、それが何故そうなっているかを論じ、それと日本に実情を踏まえて自分の腹に落とし込んで主張するのでなくては説得力を持ちえません。
それをするのがアドバイザーの役目のはずです。
オーキー @ 2008年 02月 24日 12:24:02
白熱していますね。熊谷さんが全て正しいかどうか、オーキーさんのコメントが正しいのかどうか、いまひとつ良く分かりませんね。どんなんでしょう、ここは一つ、英国のHMTとか、NAOとか、PUKとかの担当者に、背景も含めて、実際はどうなんだと質問してみてはどうでしょうか?それから、熊谷さんが紹介されたSOPC4に、SPVの施設(real estate)への担保設定をするのかしないのか、どちらの方法もあるのかなど、ここで展開されている議論に、明確な答えが出せるような、記述があれば紹介してください。引用されている「事業契約に基づいて事業者が保有する権利」には、不動産の所有権も含まれているように解釈できなくもないとは思いますが。
PFI侍 @ 2008年 02月 25日 23:15:09
コメントします。
1.「事業から生まれるCFを担保にする」「事業から生まれるバリューを担保にする」という記述が時々見られますが、実務的には、SPVが有するいわゆる「サービス購入対価支払い請求債権」への譲渡担保設定という形で整理されています。これには何の違和感もありません。
2.SPVの施設に担保権を設定しなくとも、事業介入が必要な際に、第三者が勝手に権利義務を設定してしまうことのないような方法があるのでしょうか。実務経験者としてはここが一番気になるところです。民間資産(上もの)に担保権を設定するという、ごく普通のことに対して、公共サービスを提供するための施設だからということで、事業契約の段階、そして直接協定案の段階で、公共の承諾事項と一応は整理されている(ただし、公共は合理的理由がなければ拒否しない、というフレーズが必ず入りますが)ことから、形の上では、交渉でdealされていることといえると思います。はじめからありきとか、なし、とかいう考え方では自治体の実務の現場では理解されていません。この点は少なくとも海外のガイドラインや実務の実態を調べたうえで、内閣府が考え方を整理すべきだと私は思います。
3.なお、2については、そういう考え方も実務も成り立つし、全て押さえてしまうという考え方も実務も成り立つということだと思いますが、そのような理解でいいのでしょうか。確か、あのUSJへのプロジェクトファイナンスによる融資は、不動産を担保には取っていないのではなかったか。(事業が順調だったかどうかはともかく)
PFI侍 @ 2008年 03月 02日 23:27:15
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- プロフィール

- Hiroshi Kumagae
- (男)
- 1959年05月06日
- アビーム コンサルティング㈱ ディレクター
- 著書:脱「日本版PFI」のススメ 相模書房 ISBN978-4-7824-0705-9
- ESADE大学院 国際経営修士
慶應義塾大学院 特別招聘講師(非常勤)
三田図書館・情報学会会員、PMFJ会員 公益事業学会会員
平成18年度内閣府PFI事業の総合評価検討委員会委員
平成19年度自治体PFI推進センター専門家委員会委員
日刊建設工業新聞 所論/緒論コラムニスト
東京LEC 法律文化 連載中
剣道3段、居合道3段(夢想神伝流)
福岡県生まれ横浜市在住
連絡先:
hkumagae-mobile@softbank.ne.jp
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