カテゴリー [リスク移転型PFI]
世界標準のPFIについての解説及び議論を行うという前提の確認
いろんなコメントをいただいております。ありがとうございます。
ただし、若干、私の意図していた方向とずれた形で、コメントが出てきているようですので、ここでルールの設定をしておきます。
【ブログ開設目的の確認とコメントのルールの明確化】
このブログを開設した趣旨は、世界標準のPFI/PPPの仕組みがどのようなものであるかを説明するためです。私は、日本版PFIが持つさまざまな問題点は、世界標準の仕組みであるSoPC4の考え方を用いることによって、かなりの部分解決できると考えます。そのため、SoPC4のPFI手法の考え方をどのようにして活用するかを解説したうえで、その該当部分を提示しています。
私は、日本版PFIの仕組みがおかしいと批判をしているわけですから、おかしくないと日本版PFIを擁護または推進する人からの反論があれば、喜んで議論します。議論はしますが、感情的な言い争いをするつもりはありません。そのため、議論をする場合の最低のルールとして、主観的な表現は避け、議論の内容のみに焦点を当てて議論は行うことを原則とします。
私は、おかしな点が、なぜおかしいのかについて解説した上で、そのおかしな日本の仕組みを改善する一つの考え方として、体系的にまとめられたSoPC4を活用しながら合理的に説明しているつもりです。もし、私の説明が不十分であるならば、私の不徳の致すところかもしれませんが、その方法がだめかだめでないかは、議論の対象ではありません。議論が白熱することは望みますが、議論が感情的になることは私の望むとするところではありません。
私はオーキーさんと日本版PFIの問題点についての議論をしているつもりでしたが、私が施設整備のPFI(どうも日本版PFIらしい)を否定していることに対して、オーキーさんから感情論的なコメントが返ってきました。少なくとも、具体的にどの部分がどのように納得できないのかを示さないまま、「めちゃくちゃ」、「信用をなくす」、「支離滅裂」、「駄目」という表現で反論するコメントは議論の原則から外れています。今後、このような表現を使う方が出てきた場合には、その時点から、一切のコメントを即刻ブログから削除します。自分の名前を公表せずに中傷するという行為は、ネット社会における明らかなルール違反です。
SoPC4の考え方に基づいたPFIと、一般的なプロジェクト・ファイナンスを比較することに意義がないわけではありませんが、主観的主張や、感情的な批判なしに、SoPC4とプロジェクト・ファイナンスの比較について、明確な再開の提議がされない限りは、この議論は打ち切ります。
再開の提議をする場合には、少なくとも次の前提に基づいて提議するように要望します。
【日本版PFIと世界標準のPFIの違い】
日本版PFIでは、金融機関の事業加入なしに事業破綻が生じたり(タラソ福岡)、事業採算性がおかしくなっているのに官側だけが実質的な被害を被っている(近江八幡病院)等、さまざまな問題が生まれています。
本来、次のようないくつかの前提条件が前提としてPFIは成り立っています。
① 公共施設の運営が悪化することを官は望んでいないこと
② 金融機関は、キャッシュフローが生み出すバリューに対して融資をしているのであって、処分する価値のない(可能性の高い)公共施設そのものを担保としては求めていないこと。
③ 官民の事業契約の条件は、民間事業者の施設に対する支払いを保障するのではなく、施設を活用した包括的なサービスに対する支払いに対して、そのパフォーマンスが満たされるという条件で支払いを行っていること。(施設整備費の全額もしくはい一部が無条件で支払われるという条件が含まれていないこと。すなわち、パフォーマンスが悪ければ支払いは0になるという条件であること)
④ 事業契約の権利(事業のキャッシュフローが生み出すバリュー)を担保にすることは官として認めるものではあるが、それ以外のものを担保にすることは前提としていないこと。
⑤ 契約は、官と、民と、金融機関の3社が、官民の事業契約と、民と金融機関の融資契約と、官民金融機関の3者による直接契約が同時に締結されることを前提としており、しかも、前述の条件に基づいて契約が締結されることが原則であるが、それよりもよい提案が出せる場合には、その限りではないこと。
1998年に公表された財務報告基準NO.5(FRS5)には、PFI契約の5つの原則が記載されています。
① PFIとはサービス購入契約であって、施設を購入する契約ではないこと。
② 契約内容が施設整備とサービス提供のように分類できるものであってはならないこと、
③ サービスの業績に連動した支払いが行われなければならないこと、
④ 官恥行の枠組みを設定するが、事業を主体的に管理するのは民間事業者であること、
⑤ ライフ・サイクルにおいてそれ以外の手法よりも高いVFMを生み出さなくてはならないこと、
つまり、明らかに施設整備費を支払う仕組みもしくは、施設整備費を支払うことを補償する仕組みであってはならないことを意味しています。
この原則は、SoPCの最初のバージョンを策定した99年の段階から07年のSoPC4の段階まで変わっていません。そもそも、1998年にFRS5を公表したのは、1992年にPFIを導入した際には、従来は官の債務であった施設整備費に対する長期負債を民間事業者の債務にすることで、官のバランスシートからオフバランスにするという考え方に基づいて導入されたものの、オフバランスすることは目的ではなく、あくまでもVFMを最大化することの結果としてありうるものであるという位置づけに変えられたからです。オフバランスにする目的を重視する比率がどんどん低下してきていることは事実ですが、原則としてサービスの購入であり、民の資産であれば、その資産をファイナンスリースによって購入する契約をしたり、民の資産を担保にすることを官が認めることによって間接的に官が保障したりすることは、PFIの本来の目的ではありません。そもそも、PFIがプロジェクト・ファイナンスであれば、別にPFIなどという名称をつける必要など全くないことになります。
さらに、前述したように、わが国のPFIと英国のPFIの違いの大きな点として、わが国では官の条件設定が絶対的なものであるのに対して、英国では官の条件設定よりもよい提案を民間がする際にはそれを受け入れるという原則もあります。
【施設整備が前提となっている日本版PFI】
日本版PFIは、その法律の名称が「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律」であることからわかるように、そもそも公共施設等の整備を前提としています。整備という名称が入っていること自体が、PFIの原則を理解していないことであり、PFIの契約を、「施設を整備して・・・」という前提で考えることそのものが、担保を取ることを前提として考えており、適切な定義の仕方ではありません。
SoPC4に基づくPFI契約は、民間が整備し所有する施設、もしくは、公共が所有する施設を長期にわたって民間にリースしたものを活用し、包括的な施設関連サービスを提供するものです。従って、施設整備費を払っているのではないのです。サービスが要求水準に基づいて提供された場合に、合意されたとおりにサービス料金が支払われることが前提です。SoPC4に基づく、PFI契約に用いられる直接契約は、資産の担保を前提に融資を行っていません。
PFI/PPPのアドバイザーは、アジア諸国でも増え続けています。世界標準でISO9000、ISO14000といえば、誰もがそれが何であるかわかるように、日本以外のアジアパシフィックエリアのPFIのアドバイザーは、SoPC4やProcurement Packとは何であるかを前提として議論をしています。
コメントされる場合には、ご理解と、ご協力の程よろしくお願いします。
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登録日:2008年 03月 02日 23:19:00
自治体がもっとキャッシュフローを改善したいのならリスク移転型PFIの活用が可能

去る2月1日に、地域総合整備財団(ふるさと財団)と総務省の共催で行われたPFIセミナーの講師をしました。今年のPFIセミナーのテーマはPFI事業におけるリスクでした。
私は、今年ふるさと財団の傘下の自治体PFI推進センターの専門委員に就任していることから、ふるさと財団から依頼を受け「リスク管理の総論と実務」というタイトルでセミナーを行いました。近日中にそのPPTはふるさと財団か、自治体PFI推進センターのURLにアップされると思われます。
さて、セミナーのなかでPFIが生み出すメリットのひとつとして次の点を説明しました。
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現在のわが国の分割払いのPFI手法を国際標準のリスク移転の考え方に基づくPFI手法に変えれば、現在のPFI処方で整備している施設よりも、より耐用年数が長く、威厳のある施設をより少ないキャッシュフローで作ることができるというメリットがあります。
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【現状の分割払いPFIの背景】
いま、自治体はキャッシュフロー上の問題から、施設整備費を分割払いするためにPFI手法を使っています。ファイナンスの関係もあり、もっとも長い契約期間は約30年です。
このような30年間の分割払いは、施設整備費の30分の1と民間貸付の利息を毎年支払うという仕組みです。公債によって資金調達をすることができる公共にとってはこのような分割払いは、確かにキャッシュフローの改善には貢献するものの、従来よりも民間資金を使うことによって支払いが増えているのが実態です。民間資金を使うのだから、利息分の支払いが増えるけれども、従来よりは、支払いが少なくなるのだから、仕方がないという考え方だと思われます。
【従来型よりも年度負担コストが悪化している可能性】
しかしながら、30年間の支払いが減ったとしても、投資を削減することと30年の耐用年数さえあればよいという考え方で、民間事業者が施設整備をすると、たとえば、従来の官の設計で45年の耐用年数が合ったとすれば、1年間あたりのコストでは、PFI手法のほうが高くなっている可能性があります。
【200年住宅、200年公共施設の仕様】
このところ、住宅や、公共施設の100年の耐用年数は常識であり、200年住宅等が施策として取り上げられています。
この背景には、品質の高い施設投資を行い、耐用年数を延ばせば単年度あたりのコストを意図的に下げ、しかも、品質の高い住宅整備により付加価値も生まれ、経済の活性化にも繋がるという考え方があります。
【30年PFIと100年PFIの比較】
たとえば、PFI事業も100年施設、200年施設を作れば、初期投資を下げることが目的の30年計画よりも、より高い品質の施設整備が可能になります。この場合、30年施設と100年施設の施設整備費の支払いを30年間の契約期間中に同じように比較することはナンセンスです。30年の耐用年数のある施設を30年間かけて支払うのであれば、100年の耐用年数のある施設は100年かけて支払うのがイーコールフッティングの考え方のはずです。
このような支払いにするためには、100年施設であるといって契約しておいて実際には30年しかもたないような施設整備をされてしまうことが問題となります。ここにPFI事業のリスクがあるのです。
そこで、このようなリスクを、民間に移転するためには、民間に施設を所有させ、30年分の施設提供サービスの対価として施設整備費の100分の30を支払い、残りは、残存価値が残っていれば支払うという仕組みやオプションで100年まで契約を延長する仕組みを活用することができます。
いくつかの前提条件がありますが国際標準のPFI手法とは、このような現在のわが国のPFI手法よりも、よりよい施設をより少ないキャッシュフローで達成できる手法です。
割賦払いを前提にしてしまうと、このような本来のPFIの仕組みによる支払いが理解できなくなる可能性があります。ハコモノPFIとは、このような仕組みによって成り立っているのであり、成り立つべきものです。
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登録日:2008年 02月 11日 17:44:14
脱「日本版PFI」のススメ プレスリリース
本日、アビームコンサルティングから、プレスリリースしました。
PFI事業に限らず公共調達には、業績連動契約の考え方が導入されつつあります。
このような世界的な潮流に乗り遅れた割賦払いのPFI手法は税金の無駄遣いです。
詳しくは、本書をご参照ください。
http://www.bk1.jp/product/02926033
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登録日:2007年 10月 03日 22:35:19
脱「日本版PFI」のススメ 出版しました。
本日、出版社から、本が私の手元に届きました。
たぶん、10月3日か、4日ぐらいまでは、書店には並ばないと思います。
出版部数は、それほど多くありませんが、
相模書房からの発売ですので、有名書店には並ぶ予定です。
仙台市の白岩さんに書いていただいた「出版に寄せて」から、一部を引用します
「PFIに関わる全ての関係者はすべからく本書に目を通すべきである。「本物」のPFIのメカニズムを、海外の実務担当者がいつも参照し、活用しているガイダンスや実際の契約書類を読み込み、それを日本語で分かりやすく説明しており、過去に例がない貴重な文献である。特に自治体職員に一読を薦めたい・・・」
まだ、Amazonで検索しても、引っかかってこないぐらい、新しい本です。(?)
タイトル: 脱「日本版PFI」のススメ ―リスク移転で解き明かすPFIの真の姿―
アビームコンサルタティング(株)社会基盤サービス統括事業部 熊谷弘志 著
【出版社のプロモーション】
わが国のPFI事業には民間資金を利用する意義が組み込まれていない。
そのため民間資金利用が税金の無駄遣いにつながっている。
PFI事業では当然の様に割賦払いが利用されている。
これはわが国特有のものだ。
民間資金を使うことでどのようなメリットを生み出すことができるのかを、
公共のPFI担当者は十分に理解していなければならない。
本書で、そのメリットを生み出す仕組みが解かれていく。
第1章 PFI事業とは
第2章 理想的なPFI事業とはどのようなものか
第3章 本来のPFI導入の目的と作業の役割分担
第4章 公共、事業会社、金融機関の三位一体
第5章 それぞれの構成メンバーの後有無分担
第6章 PFI契約の標準化
第7章 サービス品質のモニタリングと品質変動リスク移転の仕組み
第8章 連動すべき要求水準・モニタリング・支払メカニズムの全体像
第9章 モニタリング可能なサービス品質を記載した要求水準書とは
第10章 サービス品質のモニタリング
第11章 サービス業績に連動した支払メカニズムとは
第12章 パフォーマンス要素表で要求水準、モニタリングシステム、支払メカニズムを連動
第13章 演習
添付資料 仕様書事例
定価1500円(税別)
A5判 196p
お求めは専門書コーナのある有名書店か、下記まで
発行 日刊建設工業新聞社
発売 相模書房
ISBN 978-4-7824-0705-9
お申し込みはお早めに。
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登録日:2007年 09月 21日 15:21:20
2万ヒットを超えました。
おかげさまでアクセス数が2万ヒットを超えました。
脱「日本版PFI」のススメ というタイトル〔仙台市の白岩さんに命名してもらいました)で「世界標準のPFIの仕組みを解説する拙著」も、近々出版される予定です。
今年は、地域総合整備財団(ふるさと財団)の自治体PFI推進センター専門家委員会委員にも任命され、リスクについて検討をすることになっています。
PFI事業とリスクについて一言まとめておきましょう。
本来ハコモノ部分に生じる不具合リスクを移転するのがPFIの仕組みです。
どうも誰かが、ハコモノ部分からはVFMが出ないという説を唱えて、それが独り歩きを始めてしまったようですが、PFI手法の本来の姿を理解してもらうためには、このハコモノ部分に生じるリスクをハザードとしてではなく、将来の不確実性として捉えることからはじめる必要がありそうです。
リスクとは、「何らかのアクションをとったときの将来の結果の不確実性」ですので、不確実性があることが問題なのであって、結果だけを見ると、良い結果となるか、悪い結果となるかは、時間が経過してみないとわからないのです。
爆弾処理の専門家がいて、爆弾が爆発しないように処理をするか、爆発しても影響が小さくて済むような処置をとると申し出ているとします。
その専門家に対して支払う費用は、爆発するかどうかわからない爆弾を自分で抱えて爆発したときの代償(多分死んでしまうでしょうが・・・)よりも安いコストだとします。
そのような状況において、あえて爆弾を抱えているということが将来の自分の命に対してのリスクなのです。
PFI事業の数も、276件です。そろそろ、自転車操業のための割賦払いPFIをやめて、本来のVFMの源泉となるリスク移転を本気で考える時期にさしかかっていると思われます。
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登録日:2007年 07月 26日 01:32:14
PFI契約の標準化第4版について(SoPC4)
今年3月末に、PFI事業におけるバイブル的存在である英国のPFI契約の標準化の第4版が公表された。わが国のPFI事業も、このガイダンスを参考にしながら進めていくことが望ましい。
SoPCの変遷
1-1 SoPC(Standardisation of PFI Contracts=PFI契約の標準化書類)とは:PFI事業は公共施設の施設整備と事業の運営の一部を民間に長期間(25年から30年程度)委託し、その委託した部分に含まれる「従来公共がとっていたリスク 」を民間に移転する方法により、公共は従来よりも安い費用で、民間は継続的に収益を生み出す事業として契約を締結することで成立する。この様な関係が成り立つ理由は、公共として専門性を持たない、または、持つ必要の無い業務を、公共の責任で実施するよりは、専門性を持った事業者にアウトソースして、事業者にリスクをとってもらったほうが、コスト削減の面からも、品質向上の面からもバリューが生まれるからである。
しかしながら、リスクを事業者に移転する以上、事業者がリスクを取れるように、官民双方にとって公平な条件で契約を締結する必要がある。SoPC(PFI契約の標準化書類:「ソプシー」と読む)が策定された背景には、そのような官民にとって公平な契約によってWIN-WINの関係を構築するという目的がある。
1-2 SoPCの策定目的:PFI事業の前述の目的を達成するために活用されるSoPCは、次の3つの目的で策定された。
1. 標準的なPFI事業における主なリスクを共通認識とするため。
2. 類似した事業に対して普遍的な取り組みと普遍的な価格設定をするため
3. 関係者が長い交渉すること無く標準的なアプローチが取れるエリアを合意することによって、交渉のための時間とコストを削減するため
1-3. SoPC発展の歴史:
ア) PFIとSoPC 英国でPFIが導入されたのは、メジャー政権の1992年であり、当初はマーストリヒト条約で決められたユーロ参加のための財政安定条件(年度財政赤字はGDPの3%以下、累積債務はGDPの60%以下でなければならないこと)をクリアするために、公共施設の整備投資が公共の債務とならないように、民間に資金調達させ債務を民間に移転することが目的であった。筆者がはじめて英国でPFI事業に関与した1998年には、このような背景から「PFI手法は政府債務のオフバランス化のツール である」といわれていたことを思い出す。
ところが、オフバランスを目的化してPFI事業を推進すると、税金の無駄遣いに繋がることが分かってきた。それは、事業者にとれないリスクを移転しようとするとリスクプレミアムが必要となるため、結果的にはリスクを移転しない方がコストが安くなるからである。
SoPCは、公共がベストバリューを生み出すために、官民はどのような契約を締結することが望ましいかという観点に基づき、1999年7月に 最初のバージョン (バージョン0:SoPC0)がバターワース社によって発行された。そして 2002年9月の第2版(SoPC2)以降は、英国財務省が改定を行うことになった。この流れに乗って、第3版(SoPC3)は2004年4月に、最新版の第4版(SoPC4)は2007年3月に発行されている。
イ) SoPC2の改定時にPFI契約とICT契約を分離SoPC2が発行されたのは、2002年であるが、SoPC2の公表と同時にICTの標準契約約款も公表された。それは、1996年5月にスタートし1999年5月に失敗が確定して取りやめになったPFI事業「郵便貯金および年金支払マルチカード事業」(Pathway Benefits Payment Card Project)をフィードバックしたからである。
SoPCは一般的な施設整備のPFI事業の契約の標準化であるため、施設の耐用年数が長く、比較的技術変動が小さい施設整備事業には適しているが、ICTの様に、その対象となる機器の耐用年数が短く、技術変動が大きい事業には適していない。そのため、ICT契約の標準化書類(以下「ICT契約」と呼ぶ)はSoPCとは契約内容を区別して策定すべきだという考え方に基づいて構築された。
図表1は、SoPC0とICT契約を比較したものであるが、SoPCの項目とICT契約の項目は、その内容が全くといってよいほど異なっていることが分かるであろう。
ウ) SoPC3までの追加的改定とSoPC4の抜本的改定
図表2はSoPC0とSoPC3を比較したものであり、図表3はSoPC3とSoPC4を比較したものである。図表2からSoPC0とSoPC3の基本的な構成が変わっていないことが分かるはずだ。ところが、図表3から分かるように、SoPC4の改定はこのような見直しとは明らかに異なっている。SoPC4の構成内訳は、SoPC3の構成内訳と異なり、抜本的に見直されていることが分かる。中でも最も大きな変更は、7章の見直しである。SoPC3の「7章 サービス提供の必要条件とアベイラビリティ(利用可能状態)」では、「アベイラビリティ」が支払における重要な唯一の要素であることを示していたのに対して、SoPC4の「7章 価格と支払メカニズム」では、価格は「施設が利用であることの要求」と「サービスのパフォーマンスの要求」に連動したユニタリーペイメントであるというように支払に二つの重要な要素があると変更した。
この変更は、従来の「定性的なサービス品質の変動」は支払に連動させることは困難であるという考え方が変わったことを反映している。つまり、「サービスの品質はパフォーマンス変動リスク」として定量化可能となり、支払に連動させることが出来るようになったことを意味しており、PFIの支払の仕組における大きな変革として認識することができる。
この勉強会は、国際商事法研究所において今年の5月6月と2回にわたって行った。その詳細については、同研究所の機関紙である国際商事法にて解説する。
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登録日:2007年 07月 05日 23:17:26
*連載 PFI事業導入可能性調査のポイント(下)成功には「当たり前のこと」を確認すべし

2007年(平成19年)5月17日(木) 地方行政
─6段階で6つの管理項目を検証─
前回(5月14日号)は、英国の国家会計監査局(NAO)が示す、最良の選択肢を得るための要素などについて述べた。最終回である今回は、PFI手法の採否を判断するための導入可能性調査の在り方や、VFM(Value For Money=金額に見合う価値)の算定方法について説明する。
導入可能性調査とは一体何か
導入可能性調査とは、「PFIを適用することを検討している事業について、①市場の意見を反映させ、②公共の要求するサービスの品質が確保されつつVFMが生まれると同時に、③民間事業者の得意分野で競争が働き、優れた事業者が利益を生み出す可能性の有無を確認し、④その民間事業者の利益の源泉となる業務委託の適切性を評価するための調査」である。
わが国では「PFI手法ではVFMが出ないことが分かったので、従来型手法で事業を実施することに決定した」という新聞記事をしばしば目にするが、VFMが出る根拠と同様に、VFMが出ない根拠も示されないことが多い。VFMが出る理由、もしくは出ない理由を明らかすることを発注者が求めなかったから明らかにしなかったのか、参照した過去のPFI導入可能性調査でVFMの算定根拠が明らかに示されていなかったから明らかにする必要はないと横並びで判断したのか、それともVFMを算定する術すべを知らなかったのか──その理由は定かではないが、VFMを算定する根拠を示すことができない調査を導入可能性調査と呼ぶことはできないはずである。
導入可能性調査に基づいて事業にPFI手法を導入するかどうかの判断をする以上、VFMの算定根拠を示す必要がある。
それでは、VFMが出るか出ないかは、どのように検証すべきなのであろうか。
導入可能性調査の位置付け
まずVFMを算定する前に導入可能性調査の位置付けについて考えてみる。事業の初期段階で最も重要な点は「事業目的が明確に設定できたかどうか」を検証することである。
前回説明した英国の国家会計監査局(NAO)報告書から作成した図表1(「NAOの適切事業取引監査の視点」5月14日号3㌻)のうち、「A:事業目的を明確にすること」で示した四つの要素を思い出し、注目していただきたい。
第一の要素は「優先度の高い事業に取り組むこと」である。事業を統括する当局はさまざまな施策を実施していると考えられるが、施策に優先順位を付け、優先順位の高いものだけを実施対象として選定することが重要である。
第二の要素は「達成可能な事業結果(注10)の明確化」である。発注者は、求める結果(アウトプット)を表現し、その結果を出すために必要なノウハウにおいて公共セクターよりも民間が優れているものを見つけ出す。その民間のノウハウを使って問題が解決できた場合の便益を暫定的に評価するためには、公共サービスに特有な条件(安定性や公平性)下でも民間事業者のノウハウが発揮できるかどうかを確認する必要がある。
第三の要素は「パートナーシップの最良の形態の設定」である。発注者は、事業の特性を反映した適切な支払いメカニズムを示した上で、事業者のイノベーションを制限する可能性のある条件の理由付けを明確に示す。同様に最も上手にリスクを処理できるものがリスクをとる最適リスク配分を設定しなければならない。
そしてこれらの要素に基づいて第四の「導入可能性調査によるケース分析」を行う。ケース分析には ①目的の明確化、②選択肢の種類と事業特性を考慮したそれぞれの評価結果、③事業スケジュールの概略、④事業提案を評価する分野の検討結果、⑤発注者としての財務上のコミットメント範囲、などが含まれていることが望ましい。
VFMの算定の仕方
VFMは、民間事業者にヒアリングしたら出てくるという単純なものではなく、ある程度の準備をした上で民間事業者にヒアリングしながら導き出すものである。
それではどのような準備が必要であろうか。前述の「NAOの適切事業取引監査の視点」と前回図表4として掲載した「OGC(英国政府取引事務所)のアウトプット仕様書の全体枠組みの事例」をもとにその進め方を説明しよう。
導入可能性調査において最も重要なのは、事業目的を明確にすることである。そのためには、第一に「優先度の高い事業に取り組むこと」が重要である。PFI事業に限らず、事業を推進するための趣意書を記載する場合に最初に必要なのは、「何故そのプロジェクトを実施するかについての背景」を記載することである。この背景に、①事業の歴史や、②ニーズの認識、③放置すると悪化する問題点、④上位計画および、⑤並行して動いている他の施策とのバランス、等を含めると発注者がどのようにその事業に取り組もうとしているかの考え方がよく分かる。
第二に「達成可能な事業結果の明確化」をすることが重要である。この達成可能な事業結果を明らかにする手法が「アウトプット仕様書」である。英国における最近の仕様書の標準化の流れでは、求める結果を「投資に関連する建物関連要求」と、「投資に関連しない支援サービス」の二つに大きく分類してアウトプットで表現する手法が確立されている(注11)。この仕様書を作成する時点で要求水準書の要素を洗い出す段階から、「モニタリングの手法や頻度」の設定に連動させて仕様書を作成することが望ましい。特に、「公共には十分なノウハウがないためできないけれども、民間であればできる可能性のある業務」については、「民間事業者がとれるリスクの範囲を想定しながら要求を設定」していくことが重要である。
第三に、この作業と並行して「リスク分析」を行う。リスクとは「特定の活動に連動した将来の不確実性」を示すものであり、その振れ幅に応じてリスクコストが変動する。導入可能性調査時には、シナリオ分析を用いるのが一般的である。今まで公共の管理下で発生していたコストに関連する事象を民間に管理させた場合にコスト削減につながる要素がある場合には、それがVFMを生み出す要素となる。
第四に「PFI事業が理想的に機能した場合に構築できるであろうパートナーシップの最良の形態を事前に設定する」ことが重要である。ここでは、事業の特性を反映させた支払いメカニズムを検討する必要がある。詳細は後の調達段階で検討するにしても、例えば不具合が生じた場合の緊急対応のレベルを何段階に分けるか、サービスの品質が低下した場合の支払い減額の仕組みをどの程度に設定するかなどを検討しておく。また、民間収益事業を導入できる可能性がある場合には、民間提案を制限しないような条件設定にすることが重要である(注12)。また、最適リスク配分を模索するためにも、ステークホルダー(利害関係者)や専門家を交えて議論する「リスクワークショップ」を開催し、早い段階からリスクを包括的に認識しておくことも必須である。
このような準備をした上で、民間事業者から、概算見積もりをもらったり、VFMを生み出す仕組みについてのヒアリングを実施したりする。この場合、アウトプット仕様書の概要や、リスク分担、モニタリング、減額の仕組みなどを含めて事業の概要をまとめた後で、概算見積もりへの協力と民間ヒアリングを行い、アウトプット仕様書を含めた事業の前提条件の適切性を確認し、必要に応じて前提条件を調整する必要がある。
最後に、「 導入可能性調査の位置付け」の章の最後でも触れた、「導入可能性調査によるケース分析」の留意点について示しておく。発注者である公共サイドは、前記のようなヒアリングなどの結果をまとめ、民間事業者(特定目的会社=SPC=も含む)の見積もり内容やリスクの比較などを行い、VFMを算定し、必要に応じて仕様書の内容、モニタリング、減額の仕組みを見直し、VFMを調整する。導入可能性調査の報告書には、①事業の目的(調査の過程でより明確化したもの)、②選択肢の種類と事業特性を考慮した各選択肢への評価結果、③事業スケジュールの概略、④事業提案評価分野の検討結果、⑤発注者としての財務上のコミットメント(関与・責任)範囲──といった要素も含めることが望ましい。ただし、最も重要なのは、①民間資金を利用することと連動可能な要素から、②従来の事業コストよりも安く、③しかも従来よりも品質の高いサービスを、④確実にする仕組み──の構築が可能であることを報告書によって証明することである。
英国の「PFIプロジェクトの実施を評価するための枠組み」
NAOは、二〇〇六年五月にそれまでのPFIの考え方(前述のPFI事業のVFM評価方式と
同様の考え方)に追加する形で、「PFI事業の実施を評価するための枠組み」を公表した。この事業評価枠組みはプロジェクトを、①戦略分析、②入札、③契約締結、④運営前の業務推進、⑤運営の初期、⑥運営成熟──の六段階に分けると同時に、すべての段階に共通する六つの重要な事業管理テーマを確認をするというものである。ちなみに、六つのテーマ(管理項目)とは、①発注者が求めた通りの事業となっているか、②PFI手法が業務実施の適切なメカニズムであるか、③ステークホルダーが事業推進を支援しているか、④プロジェクト管理の品質は高いか、⑤コスト、品質、柔軟性のバランスは最適か、⑥効果的なリスク配分と管理が行われているか──である。
PFIの導入可能性調査は、①の「戦略分析段階」であるから、この段階で、前述の六つのテーマにどのように取り組んだかを検証することになる。具体的な検証の要素を図表5として示す。この図表5は、縦軸にテーマを置き、横軸に各段階を置いたマトリックス(行列)のうち、「戦略分析段階」だけを示したものである。
ここからVFMは、ブラックボックスから生まれるのではなく、一見当たり前の項目をひとつずつ確認することで、政策的に事業から生み出すものであることが分かる。副次的要素である民間収益事業等はVFM算定に含めないことが望ましい。
おわりに
このように、PFI手法には民間資金を利用することによってVFMを生み出す要素が数多く含まれている。そしてPFI手法の導入可能性を検討する段階から、それらのVFMを生み出す要素を活性化させるための仕組みの構築が求められる。
PFI手法は単なる割賦払いの手法として認識すべきではない。公共事業調達の手法を根本的に転換させるイノベーションやブレークスルーを見つけ出すために、民間事業者にBPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング=意欲的かつ測定可能な目標を設定し、それに達する過程をリデザインすることで革新的な効率化とコスト削減を達成すること)を提案させる方法としてとらえ、導入可能性調査段階では、そのイノベーションやブレークスルーを生み出すための「要求水準」と「サービスのモニタリング」と「業績に連動した支払いの仕組み」によって構成される「三位一体の基本的な仕組み」を構築することに焦点を当てる必要がある。この三位一体の基本的な仕組みが構築できたときに、民間事業者へのリスク移転が完成する。世界標準PFIと日本版PFIの一番大きな違いは、この三位一体の有無にある。
要求水準、モニタリング、支払いの仕組みを連動させ、その仕組みの中で、柔軟な運営をすることによって事業の継続改善が可能になる。このPFIの仕組みは、分離分割発注が基本であった外国企業が、日本企業が得意としていたフルターンキー(設計から工事完成までのすべてを請け負う方式)による一括発注を、合理的に、しかも柔軟に遂行するために構築したルールである。ルールを決めずに柔軟に対応する日本のやり方と、ルールを決めて合理的にしかも柔軟に対応する世界標準のどちらを採用するかは発注者の自由である。しかし、政権交代に伴って管轄部署が頻繁にかわる諸外国の公共セクターと、担当者が頻繁にかわるわが国の公共セクターの共通点は多く、ルールが明確で柔軟性のある長期契約を締結することのメリットはわが国でも大きいはずである。
PFI事業のアドバイザーは、PFIが本来生み出すべき付加価値提供のため、世界標準PFIの仕組みを習得し、実行すべきであると筆者は自戒も込めて確信している。読者はいかにお考えであろうか。ご批判を待ちたい。
◇ ◇ ◇ ◇
(注10)NAOの報告書の原文では「Make the project deliverables clear」で「事業を通して達成可能なものを明らかにすること」である。 (注11)「法律文化」07年3月号P46〜p49
(注12)例えば、一階に民間収益施設を入れることが技術的には可能でも、「公共施設だから公共窓口の一階設置が絶対条件」だとすると、本来生み出されるはずの利益が出なくなってしまう可能性があるので留意する必要がある。
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登録日:2007年 06月 17日 00:52:06
- プロフィール

- Hiroshi Kumagae
- (男)
- 1959年05月06日
- アビーム コンサルティング㈱ ディレクター
- 著書:脱「日本版PFI」のススメ 相模書房 ISBN978-4-7824-0705-9
- ESADE大学院 国際経営修士
慶應義塾大学院 特別招聘講師(非常勤)
三田図書館・情報学会会員、PMFJ会員 公益事業学会会員
平成18年度内閣府PFI事業の総合評価検討委員会委員
平成19年度自治体PFI推進センター専門家委員会委員
平成20年新宿区立図書館指定管理者選定委員
平成21年横浜市立山内図書館指定管理者選定委員
日刊建設工業新聞 所論/緒論コラムニスト
剣道3段、居合道4段(夢想神伝流)
福岡県生まれ横浜市在住
連絡先:hkumagae@yahoo.co.jp
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