カテゴリー [日本版PFI]
セミナー情報 「日本版PFIのガラパゴス化の是非について」 6月17日16:00 於 尚友会館
このところ、わが国のPFI事業にコンセッションの要素を取り込もうとしていますが、日本版PFIは、わが国特有のケータイ電話のように、ますますガラパゴス化していっているのではないかと心配しています。
以下のセミナーを開催する予定です。
「第20回 公共調達のあり方を考える講演会」開催のお知らせ
(財)港湾空港建設技術サービスセンター(SCOPE)では、公共調達にかかるシステムについてさまざまな見直しが進められている状況のもと、現在の公共調達について何が問題でどのように変革していくべきかを改めて考えていくために、「公共調達のあり方を考える講演会」の開催を企画し、これまでに19回の講演会を行っております。
今回の第20回講演会では、アビームコンサルティング株式会社 社会基盤・サービス統括事業部 ディレクター「熊谷 弘志」様に講師をお願いし、「日本版PFIのガラパゴス化の是非について」と題してご講演をいただくことといたしました。
皆様方にはご多忙のことと存じますが、是非ご参加いただきますよう、ご案内申し上げます。
主催:(財)港湾空港建設技術サービスセンター
講師 アビームコンサルティング株式会社 社会基盤・サービス統括事業部
ディレクター 熊谷 弘志 氏
講演テーマ 「日本版PFIのガラパゴス化の是非について」
日時 平成22年6月17日(木)
16時00分~18時00分
場所 尚友会館8F会議室(〒100-0013東京都千代田区霞が関3-3-1)
(※) (財)港湾空港建設技術サービスセンターは尚友会館3階
定員 80名(定員になり次第受付を締切させていただきます。)
参加費 無料
参加申込 参加ご希望の方はお手数ですが、下記お申込みフォームから、6/10(木)までにお申込みください。
(財)港湾空港建設技術サービスセンター(SCOPE)
建設マネジメント研究所
担当: 吉田、入部
〒100-0013 東京都千代田区霞が関3-3-1 尚友会館3階
FAX:03-5512-7515 / TEL:03-3503-2803
その他 今回の講演会は、土木学会継続教育(CPD)プログラムの認定をうけております。参加証明書をご希望の方は、講演会当日に会場受付でお申し出下さい。
土木学会継続教育(CPD)制度
参加申込書フォームはこちら
カテゴリー[ 日本版PFI ], コメント[0], トラックバック[0]
登録日:2010年 05月 24日 21:41:39
2009/07/01 PFIセミナー PFI事業における適正な解除条件と解約時支払額を考察する
下記のセミナーを開催いたします。
参加を希望される方は、下記申し込み先に直接お申し込みください。
【 講義概要 】
PFI手法を活用し2006年10月に開業した近江八幡市立総合医療センターが、開業後2年半でPFI契約を任意解除し市の直営に戻った。このPFI契約の任意解除時に際し、近江八幡市は民間事業者に20億円の違約金を支払った。
このPFI契約の解除は、「リポート 民間手法の罠」 “民間幻想に踊った8年間 近江八幡市民が支払った20億円の授業料”として日経ビジネス(2009年5月4日号)で大々的に取り上げられた。世界基準のPFI手法と大きく乖離しているわが国特有のPFI手法(日本版PFI手法)は、民間資金を使った公共サービス調達手法として適切なものであったのか。そして、契約解除時に支払われた違約金は適切な金額であったのかを講義で検証したい。
まず、施設整備およびその付随サービスの購入手法である“日本版PFI手法”と世界標準である“PFI契約の標準契約書第4版(SoPC4)に基づいたサービス購入手法”の違いを明らかにした上で、その契約の違いが任意解除規定の違いにどのように影響するのかを確認する。
次に、契約任意解除時の契約書規定の違いから遡って、日本版PFI手法と世界標準PFI手法の違いが及ぼす、官民の適切な業務分担とリスク分担の違いを比較し、あるべき姿を確認する。
そして、日経ビジネスも指摘した「民間に移転できていないリスク」とはどのようなものであり、2種類のPFI手法の違いの根底にある「民間資金を活用する根拠の違い」が何を意味しているのかを再確認することによって、今後のPFI事業における官民交渉の際に参考となる合理的な考え方を整理したい。
【 講義項目】
1.日本版PFIと世界基準のPFIの違い
2.PFIの定義の違いに伴う契約解除時における支払の違い
3.世界標準PFIの任意契約解除における一般的検討課題
4.定義の違いに伴う任意解除規定の違い
5.官民にとって新たなメリットを生み出すPFI手法の見直し方
6.関連質疑応答
《 日本ナレッジセンター セミナー NO.090703 》
開催日時 2009年7月1日(水) 13時30分~15時30分(開場:13時15分)
会 場 銀座フェニックスプラザ(紙パルプ会館内) 東京都中央区銀座3-9-11
(会場へのアクセスにつきましては、お申込後、会場アクセス地図をご案内致します)
℡(03) 3543-8118
参 加 費 1名 19,782円(18,840円+消費税) 2名(同一法人)同時申込 31,920円(30,400円+消費税)
1名 15,960円(15,200円+消費税)/09.4月以降開催の弊社セミナーに参加されている場合(個人)
注1) 2名同時申込料金は、同時申込以外の場合は適用されませんのでご了承下さい。
注2) 3名以上でお申込みの際は、上記2名料金を適用いたします。(2名料金 ÷ 2×参加者人数)
注3) 振込手数料はご負担願います。
Eメールにてお申込をされる場合は、①会社・団体名、②所在地、③TEL,④FAX、⑤参加者ご氏名、フリガナ、⑥所属部署・役職名、⑦請求書のご送付先、⑧(開催後のお振込みの場合)お振込み予定日、⑨セミナー案内希望の場合のEメールアドレス、をご送信
下さい。(フォームはご自由にて結構です)
【申込み先】
株式会社日本ナレッジセンター 〒105-0001 東京都港区虎ノ門1-11-14 第二ジェスペールビル TEL:03-5511-8668 FAX :03-5511-0707 Eメール: info@jkcc.jp
キャンセル(お申込み後の取消しについて)
お客様のご都合でキャンセルをされる場合は、 FAX又はEメールにてご連絡下さい。また、キャンセルに際しましては下記の通り適用致しますので、お申込前に十分にご確認下さいます様お願い致します。
〈キャンセル料〉①開催日より4日前まで(土日及び祝日を除く)・・・無料(6月26日迄)
注)お客様の御都合によりキャンセルされる場合、返金時の振込費用をご負担下さいます様お願い致します。
②開催日より3日前から(土日及び祝日を除く)・・・参加費の全額(6月29日以降)
注)②の場合はセミナー資料の送付または代理人の出席をもって参加とさせて頂きますので、ご了承下さいますようお願い申し上げます。
◆個人情報についてのお問合せ先:
〒105-0001 港区虎ノ門1-11-14 第二ジェスペールビル 株式会社日本ナレッジセンター 電話 03-5511-8668 info@jkcc.jp
カテゴリー[ 日本版PFI ], コメント[0], トラックバック[0]
登録日:2009年 06月 16日 18:36:34
日本型PFIの課題
前回のブログのエントリーに対してのPFI侍さんのコメントを参照します。
>なるほど。そういうことなんですね。それにしても、当たり前のように思えることが、
>なぜ、市販の文献なんかを見ても書いていないんでしょうかね。自治体の現場の人が
>気づくのも面白いですが、本来、ガイドラインにも明確な記載があってしかるべきでは
>ないかと思いますが。単なる支払い平準化可能な便利な手法との認識しか持って
>いない人、多いと思いますよ。
市販の文献にPFIの本質が記載されていない点について
市販の文献といっても、日本の文献は、日本の法律にのっとって、過去の日本のPFI事業と呼ばれるものに関してのもの、いわゆる日本型PFIについてのものが多いのでそういう風に思われるのだと思います。
この点については、このブログの下にもリンクを張っていますが、私が前職のときに公表した下記の連載論文に記載しています。ちょっと古いものですので、一部修正変更などが必要な部分も含まれていますが、大筋においては現在でも通じる考え方です。
PFI事業のあるべき姿「地方行政」(2004年3月1, 4, 8, 11日号/時事通信社)
日本型PFI改善への具体策「地方行政」(2004年8月2, 5, 9, 23, 26, 30日号/時事通信社)
ただし、この2004年以降のPFI事業の世界的な標準化とガイドライン化のスピードには目覚しいものがありますので留意する必要があります。
わが国のPFIガイドラインに明細な記載がない点について
前述のPFI事業のあるべき姿にも記載しましたが、日本のPFI法は、1998年5月に当時の与党三党により衆議院に草案が提出され、修正が加えられた上で1999年6月に衆議院建設委員長提案の法案として改めて提出されたものです。このPFI法案は同月には衆議院で可決され、7月には参議院で可決・成立し、公布されました。
しかしながら、日本のPFI法が検討及び交付された時期には英国のPFIのガイドラインはまだ出来上がっていませんでした。99年当時の英国では、それまでにPFI事業に関与した弁護士たちがPFIのあるべき姿を現在のSoPC(ソプシーと発音されるPFI契約書の標準化書類)の下書きを検討していたところで、私も、その検討原稿を2度ほど手に入れて、その官民のリスク分担に感銘を受けたことをよく覚えています。(わたしは、その当時、英国で民間事業者としてPFI事業に関与していました。)
これに先立つ97年に誕生したブレア政権は、保守党の「出来る限り民間部門に任せる」というPFIの考え方を「官民の長所が生かせるような官民の役割分担のもとでのパートナーシップで事業を推進する」というPPP(パブリックプライベートパートナーシップ)の考え方に変更しました。そして、この新しい考え方のもとでPFIタスクフォース(PFI推進専門部隊)を作り、2年の期限を切って「PFIによる公共調達ガイドラインの作成」と「PFI事業支援活動」を行いました。ガイドラインは当初の計画では99年には完成するはずでしたが、実際にその大部分が公表されたのは2000年に入ってからであったことを記憶しています。
このように、わが国のPFI法を起案した段階で、PFIの姿が見えていなかったということが大きな問題だったと思われます。
2006年末から2007年はじめにかけて、PFIガイドラインを策定した内閣府が海外のPFIの実態調査も含めて、わが国のPFIのガイドラインの見直しもしようとしているはずです。
遅かれ早かれ、世界標準の流れに乗るのではないかと思います。
単なる支払い平準化可能な便利な手法との認識しか持っていない人が多いこと
そのうち、日本型PFIの問題点が浮き彫りにされてきますので、PFIが単なる支払い平準化手法ではないことがわかってくるはずです。
今後は英国型PFIという名称を使わずに、BPRリスク移転型PFIにしてみようかなと思っています。
そもそも、このブログを立ち上げたのは、マスコミを含めてPFIの本質を理解していない人が多そうだなと思ったからです。
ただ、目的を十分に達成するほど、ブログの更新ができていない点については、反省しておりますが・・・。
カテゴリー[ 日本版PFI ], コメント[0], トラックバック[0]
登録日:2007年 03月 26日 01:28:43
PFIの導入目的がBPRであることが一般的に認識されていなかったことのショック
ここのところ、ブログの更新をしていませんでしたが、最終記載内容に、内閣府のセミナーのタイトルか重なったせいか、PFI侍さんから次のようなコメントをいただきました。
>この間、内閣府のセミナーを傍聴してきました。
>経団連ホールは超満員。
>そのなかでも、自治体代表のパネリストが目に留まりました。
>堂々とした受け答え、整理された説明、びっくりしました。
>何よりも、PFIを導入する理由を、BPR的に説明するという提言には、頭を打ち抜
>かれたような衝撃を覚えました。
>それが「公共サービスの品質向上」とコスト縮減の両立を図るメカニズムだったので
>すね。
>もう少し時間をかけて聞きたい気もしましたが、駆け足気味だったのが少々気の毒
>でした。別の機会に聞いてみたいと思います。
>熊谷さんと同じようなことを言っていましたが、お知り合いですか?
>PFI侍 @ 2007年 03月 17日 17:33:39
実は、あのセミナーは、私も傍聴していました。
自治体代表の方とは仙台市の白岩さんのことですね。良く存じ上げていますよ。
同セミナーのPPTにも記載されていましたが、2月21日と28日の2日にわたり、合計で15時間のPFI事業者研修を仙台市でやったばかりです。
さて、
>何よりも、PFIを導入する理由を、BPR的に説明するという提言には、頭を打ち抜
>かれたような衝撃を覚えました。
とのこと。
PFIの導入目的がBPRであるということが一般的に理解されていないのだとすると、私にとっては、そっちの方が衝撃的です。
誰が最初にいったのかは知りませんが、わが国のPFI事業には、「ハコモノPFI事業からはVFMが生まれにくいという誤解」があります。そもそも、「PFI事業とは、ハコモノに付随するさまざまな公共リスクを民間に移転することからVFMを生み出す仕組」であるからです。
もちろん、この仕組を構築するためには、要求水準とモニタリングシステムと支払メカニズムが連動している必要があります。しかも、この連動したリスク移転の基本的な考え方は、公共が策定し提示しなければならない仕組です。
この要求水準、モニタリングシステム、支払メカニズムが現在連動していないPFI案件がほとんどです。
要求水準が「やってもらいたい事リスト」になっており、「モニタリング」は「そのやってもらいたい事リストの実施状況を確認するしくみ」であり、事業者の報告書は、「やったものリスト」になっています。
やってもらいたい事とそのモニタリングと、やったことリストが合致するのは、従来の手法です。
ところが、PFI手法で不可欠といわれる、アウトプット仕様書「達成してもらいたい成果」を仕様書に加え始めたため、「達成してもらいたい成果」と「やったこと」が連動しなくなってしまったのです。
また、減額の仕組は、起きたら困ることがおきたら、減額する仕組になっており、これは、やってもらいたいことにも、達成してもらいたい成果にも連動していません。
別に改まって言うほどのことではないのですが、要求水準を、モニタリングシステムと、支払メカニズムに準じたもので策定し、モニタリングシステムと、支払メカニズムに連動させてやればよいのです。この仕組は、世界的に標準化されつつあります。
この仕組の標準化について、2007年3月号の法律文化に記載しました。興味のある方は、法律文化のURL http://www.lec-jp.com/h-bunka/ にアクセスの上、会員登録をすれば、PDFファイルで読むことが可能です。
また、PFI事業でなぜVFMが生まれるかについては、国家会計監査局(NAO:National Audit Office)が1999年8月に出した「PFI手法による取引のVFMの検証」と、同じくNAOが2006年5月に出した「PFI事業の実施を評価するための枠組み」という報告書が参考になります。前者で繰り返し言っていますが、PFI事業のVFMは、公共が示したアウトプットを達成するための手段や手法を民間事業者が提案する(すなわちBPRする)ことによって生まれるものであるということが繰り返し述べられています。
そもそも、いくらゼネコンが談合で予算上限満額いっぱいで落札しても請負高の数%程度しか利益が出ないはずです。そのような中から、公共のVFMを生み出し、事業者の利益を向上させようとすれば、BPR以外に方法はありませんよね。
リスク移転型BPRによるPFI手法は、日本型PFIとは、全く異なる手法です。
わが国のPFI事業には、施設整備とサービスや運営を二つに分けて、施設整備費を割賦払いで支払うものが多いようですが、例えば英国では、このような手法はPFI事業としては分類されません。英国では公共調達に割賦払いを利用することはVFMを悪化させるため禁止されており、PFIの補助金であるPFIクレジットが受け取れなくなるため、PFIとして成り立たなくなるのです。本来なら、わが国にも、補助金を出す中央省庁と財務省が関与した自治体PFIの民間資金利用の適切性を評価する機関が存在してしかるべきです。
英国では、PFI手法を前提として民間資金を利用した事業を計画する場合、FRS5と呼ばれる「取引の実態を会計報告するための基準」が適用され、十分なリスク移転が出来ているかどうかのリスク移転検証が行われます。十分なリスク移転が出来ている場合には、その実態を反映して当該公共施設は民間資産とみなされ、その結果PFI事業としてみとめられることになりますが、取引の実態に十分な民間へのリスク移転がない場合は、その取引は、「割賦払いを代表とするリース支払いに適用される」SSAP21(一般会計実務規定21)に基づいて会計処理されるためPFI事業としては認定されません。PPPとしての認定になります。
十分なリスク移転が出来ているかどうかは、事業者の投資額を回収するための支払分に到るまで、パフォーマンスと連動させているかどうか、すなわち、支払が0になる可能性があるかどうかで検証が可能です。
繰り返しになりますが、わが国のPFI事業で一般的なスキームになっている「施設整備費」と「維持管理運営サービス費」の分離スキームは、施設整備費が割賦払いとなっているため、民間資金の利用が税金の無駄遣いになっています。この施設整備費の部分まで、減額対象としている事業で公表されているものは、いまのところ仙台市のPFI事業しかないはずです。
カテゴリー[ 日本版PFI ], コメント[2], トラックバック[0]
登録日:2007年 03月 19日 23:21:23
BOTにメリットがあるのではなく、リスク移転の仕組にメリットがあること
PFI事業がBOTであることのメリットは特に無いという私のコメントに対して「としさん」から、BOTのメリットが2点あるというご意見/質問をいただきました。
実際に機能した場合に得られるメリットをご指摘いただきました。このメリットを享受するためには民間へリスク移転する仕組の構築が不可欠です。
1.「としさん」のコメント
>第1に、BOTによる大規模リスクの移転です。
>BTOとして施設建設後、公共へ施設を引き渡します。
>施設所有者は当然公共となります。
>BTOでは施設の移転により、債権として確定してしまうため、サービスの水準
>によらず、建設費相当分は支払う義務が生じることになると思います。
>ただ、民間へ移転したい大規模修繕リスクなどは施設所有者が公共になるため、
>移転できないことになります。
>民法上の規定の瑕疵担保も10年となり、PFI事業期間内では対応できません。
>契約書上に修繕リスクの移転条項を盛り込んだとしても、施設所有者は公共で
>あるため、民間が修繕することはできないと思います。
>現実的にBTOで大規模修繕リスクの移転は可能なのでしょうか?
>公共側として民間に特に移転したいリスクは、大規模修繕リスクだと思います。
>特に設備関係の場合には、メーカーである民間が一番リスクを知っています。
>このリスクを移転し適切に管理することによりLCCを下げることが、PFIの大きな
>メリットであると思います。
>第2に、サービス水準に連動した支払いです。
>BTOでも、サービスレベルに連動して建設費相当分まで損害額を請求する規定
>を設けるということも考えられます。
>現実にある自治体ではBTOでも建設費や維持管理費という名称ではなく、
>全て委託費としてサービスにある程度連動した支払いをしているケースもあります。
>ただし、民法に言う遺失利益以上の損害を請求することになる点が気になります。
>BOTであれば、サービスの水準に連動した支払いを行うことに問題はないと思い
>ます。
>また、民間のファイナンス上も施設を担保に入れることにより融資を受けやすい
>などのメリットもあると思うのですが。
2.公共リスクを民間に移転するために業績連動支払いが用いられる。
「としさん」の着眼点はとても重要です。大規模修繕だけではなく、民間事業者が公共よりも管理がうまい分野があれば、そのリスクを民間に移転することが可能ですし、そのリスクは民間に移転すべきものです。「リスクの移転」と「業績連動支払い」は2つの別々のメリットではなく、連動したひとつのメリットです。
ただし、BOTであること、すなわち、これらのメリットを得られることではありません。
以下BOTとリスク移転の仕組の導入の違いについて、としさんの意見を引用しながらコメントします。
3.BOTとリスク移転の仕組は同じではない
としさんのコメントにある「リスクを移転し適切に管理することによりLCCを下げる方法」が構築する必要がありますが、この仕組は、BOTであるだけで構築できるものではありません。
4.現実の二つのケース
実際のケースで見てみましょう。
わが国のPFI事業の中には、以下の二つのタイプがあります。
1) 支払い費目を施設整備費の割賦支払い分と運営費を分離したBOT方式
2) 支払い費目を一括してPFI事業のサービス購入費としているBOT方式
5.割賦で債務を確定するとリスク移転は出来ない
一つ目の支払い費目を分類しているタイプのものは、たとえBOT方式であっても契約締結時に事業者に対しての支払いが確定する点がBTOの割賦支払いと同じです。
すなわち、施設に不具合が生じたとしても、割賦支払いとして確定した債務を削減することは困難です。
6.リスク移転を可能にする業績連動支払いの仕組
二つ目のタイプにリスク移転する仕組がうまく組み込まれたときに、リスク移転が可能になります。ただし、リスク移転が可能な施設の所有形態とリスク移転が出来る仕組が構築されていることは同じではありません。
リスクを移転する仕組とは、コスト削減のために適切な投資をしなかったり、不適切な投資をした場合に生じる不具合などが発生した場合に、適切な投資を行ったとき以上のコストやペナルティの責任をとる仕組みです。投資の部分を大規模修繕に変えてみると、大規模修繕を移転する仕組が分かります。すなわち、大規模修繕リスクを移転する仕組とは、コスト削減のために適切な大規模修繕をしなかったり、不適切な大規模修繕をした場合に生じる不具合などが発生した場合に、適切な大規模修繕を行ったとき以上のコストやペナルティの責任をとる仕組みです。
必要以上の投資や、大規模修繕をする必要はありませんので、最も少ないLCCで事業を行うことが目的です。実は、この仕組がサービス水準に連動した支払いです。
7.サービスの水準に連動した支払いが出来る施設所有形態のみでは不十分
「としさん」が気付いたように、BOTであれば、サービスの水準に連動した支払いを行うことに問題はありません。しかしながら、サービス水準に連動した支払いが出来る施設の所有形態であることと、サービスの水準に連動した支払いの仕組を構築することは同じではありません。
8.発注者がリスク移転の仕組の枠組みを設定する
サービスの水準に連動した支払いの仕組を構築するためには、まず、発注者が明確な事業枠組みを設定しなければなりません。
このような事業枠組みの設定が出来ないまま事業者に自由な提案をさせると、事業提案の水準が異なり、相互比較することが出来なくなったり、主観的な判断が働きやすくなるため非合理的な判断を招きやすくなったりします。
9.リスク移転の枠組みと事業者提案の関係
事業者は発注者より提示された事業枠組みの中で提案内容をセルフコミットします。そのセルフコミットした中に民間に移転されたリスクに関連する仕組がすべて含まれ、しかも、その仕組は事業者がコントロールできる仕組であることが重要です。このようなセルフコミットする仕組があるので、その仕組を精査する必要が生まれます。
もし発注者の主観で減額が発動する仕組になっていれば、その発注者の主観部分が融資額に影響を与えないようなNO RISK融資でなければ貸せなくなってしまいます。つまり上記「4.1) 支払い費目を施設整備費の割賦支払い分と運営費を分離したBOT方式」になってしまい、業績連動支払いが出来なくなり、リスク移転が出来なくなってしまいます。
言い換えると、事業者にリスク移転したプロジェクトに金融機関が融資できるケースは、事業者のリスク管理能力に信頼性がおける状態であり、融資が確実に回収できるという実質的な保証、もしくは実績による裏付けが取れる場合のみです。
ところが、事業者のノウハウを利用した異なった事業提案によるセルフコミットメントを比較しなければならないので、比較可能なセルフコミットメントを提示させる必要があります。
10.比較可能なセルフコミットメント作成に必要な発注者が設定する事業枠組み
ここでは、詳細については述べませんが、その解決策として提示された事業提案が比較できるような状態になるようにリスクを移転するためには、発注者は最低以下の7項目を事業枠組みとして設定する必要があります。
1) それを提供するために「施設整備費が必要な施設提供サービス」と「施設整備費が必要でない施設に付随したサービス」の区分
2) 施設提供サービスおよび施設付随サービスのサービス水準
3) それぞれのサービスの要素の洗い出しとそのサービス不履行の定義
4) モニタリングの手法と頻度
5) 不具合や品質低下がモニターされた場合の報告書の内容
6) 不具合や品質低下の減額の度合いや減額の仕組
7) 事業提案の評価基準及び評価水準
結論
PFIの募集要項を開示する段階で上記10で示したような、事業の枠組みを発注者として示し、事業者に、事業者提案及びその提案を評価するための具体的なモニタリングの仕組、モニタリングの結果を支払いに反映させる仕組等を含めたものを提案させ、それを評価することによって始めてリスク移転の仕組を構築することが出来ます。
リスク移転の仕組を構築するためには、事業そのものを分析する必要があります。
事業内容を細かく分析し、事業の要素を洗い出し、それぞれの要素毎に適切なモニタリングの手法と頻度、重要度、修繕許容時間、減額割合等を設定し、事業者提案を想定した上で評価要素や評価基準を設定するのが発注者の役割です。
この役割が十分に出来て初めてリスク移転の仕組を構築する準備が出来ます。
BOTですよと条件設定することは一方的に出来ますが、リスク移転の仕組を構築することは、一方的には出来ません。発注者が事業枠組みを設定し、その枠組み内で事業者に事業提案させセルフコミットさせ、そのセルフコミットを審査して融資させる、そして、その融資条件を発注者が承認するという手順が必要です。この手順が終わって初めて契約締結が出来ることになります。
従って、BOTはメリットを享受するための十分条件とはなりえず、リスク移転の仕組の構築が必要不可欠であることが分かります。
カテゴリー[ 日本版PFI ], コメント[2], トラックバック[0]
登録日:2007年 01月 04日 19:24:01
PFIとDBOを比較することの意義(その2)
PFIとDBOがまだ比較され続けているようです
<某エンジニアリング会社から聞いた某総研(暴走研)のうわさ>
「PFIは公債に比べて金利が高いのでDBOにして公債で資金調達を
すれば、PFIよりもVFMが大きい仕組みができる」と、いままで
PFI事業をアドバイスしていたある総研会社が、最近DBOのよさを
触れ回っているといううわさ。
<某自治体からの某業者についてのうわさ>
>DBO(設計・施工・運営)ならば、
>発注者も受注者も互いのメリットを確認しやすいです。
>DBOで一括発注することにより、
>発注者側は受注者が請け負った施設を運営しやすいように設計して
>しかも期間内はトラブルも起きにくいような施工もするだろう
>という期待は大きいですし、
>受注者側のメリットとしては、
>ファイナンスで苦労しなくてすむ分、設計・施工・運営に集中できるし、
>工期が圧縮できる分のメリットも大きいと感じるようです。
とも聞きます。
DBOとPFIを比較することの意義
従来分割発注していた、設計と施工と運営をDBOのように一括発注するのは最近の公共発注の世界的な流行です。
そういう意味では、DBOを推奨することにはなんら問題ありません。むしろ遅すぎたくらいです。
しかしながら、PFIよりもDBOが良いという比較にはあまりにも無理があります。
PFIは、民間のファイナンスを利用する仕組みであることから、DBFOです。しかしながらDBOFはすべてPFIではありません。
民間の場合DBOとDBFO(ファイナンスリースが一般的)を比較することがあります。それは、自分で資金調達するか、第三者に資金調達を依頼するかの違い程度であり、比較することに意味があるからです。
しかしながら、公共の場合には、公債という民間資金調達よりもコストの安い資金調達方法がある以上、簡単にDBOとDBFOを比較することはできません。民間資金を使ってDBFOにする場合には、民間資金を使うことで民間資金調達コストによってコストが増加する以上のプラスの要因が民間資金を利用することから生じる必要があります。
今後の動向
民間資金を使ってVFMを生み出す要素は官から民へのリスク移転です。
リスク移転のない民間資金の利用はVFMを悪化させるだけであり、本来許してはならないものです。行政訴訟の対象にならないように、コンサルタント、行政職員、議員、首長は気をつけなければなりません。
PFIとDBOの比較はナンセンスです。そろそろやめにして、リスク移転の仕組みの是非や、公共施設を利用して行った民間事業が予想以上の利益を生み出した場合の予測を上回る利益の配分などに議論を移していく必要があると思います。
カテゴリー[ 日本版PFI ], コメント[0], トラックバック[0]
登録日:2006年 12月 03日 22:17:00
PFI事業のBOT方式のメリットって何?

次のようなPFIに関しての質問を受けました。
************************************************************************
>現在地方自治体でPFIの担当をしています。
>事業の実施にあたり、国庫補助の導入を検討していますが、
>現在の日本型PFIの限界を強く感じます。
>現在の日本型のPFIでは、国庫補助を受けた場合には、
>BTOとして事業化されているケースが多くなっています。
>BTOでは、建設費相当分は間違いなく支払われるという、
>建設費の繰り延べ型の典型的な日本型PFIとなります。
>BTOでは、建設費相当分の支払いが担保されること、
>大規模修繕リスクのリスク移転をリスク管理ができる民間側に
>移転できないこと、建設固定費の割合が大きく、
>現実的にサービス連動型の支払いが難しいことから、
>今後できるだけBOTに近い事業スキームでの事業実施が
>必要であると考えています。
>BTOのメリットととして、税制面での議論がよくされていますが、
>BOTについては具体的なものはなく、サービスに連動した支払いが
>できるなどの簡単な記述しかありません。
>BOTのメリットについて、具体的に議論された事例はあるのでしょうか?
>イギリスではBTOは無いとよく聞くのですが、理由(税制面や国の補助など)
>は何かあるのでしょうか?
>よろしくご教授ください。
*************************************************************************
当たり前の質問のようですが、なぜ同様の質問を日本中のPFI担当の人すべてが
抱かないのかとても不思議に思われます。
この疑問は、PFIの本質的な部分に触れています。
従来の公共調達の常識はどこに行ったのか?
PFI法が導入されるまでは、「公共には公債という資金調達手段があるので、民間資金を使うことによって資金調達コストを増やすことは税金の無駄遣いである」という常識がありました。
それがPFI法の導入によって「民間資金を使っても、今までのコストよりも安くなるのであれば、使っても良い。」という風になってしまったところに問題があります。
なぜこれが問題なのでしょうか。
それは、本来ならば、「公共セクターのVFMを向上させるように民間資金を使うことができる場合には、民間資金を使っても良い」であるべきだったからです。
この二つの違いはとても大きなものです。
実はわが国のほとんどのPFI事業は、それがBTO方式であれ、BOT方式であれ、発注者が事業者に対して支払う費用が
• 施設費
• 割賦手数料
• 維持管理費・運営費
• その他
という風に分類されています。
施設を誰が保有していようが、支払いを確約してしまえば、それや利用者の債務として確定してしまいます。つまり、施設を整備するのに利用した民間資金は、割賦で返済されるだけであるため、民間資金を使うことによってVFMが向上していないことになります。
民間資金を使ったリスク移転がされているか?
「公共セクターのVFMを向上させるように民間資金を使う」ためには、民間が民間資金を投じることによって、今まで公共リスクであったものが民間リスクに転換される必要があるのです。
「日本版PFIだって今まで公共のリスクだったものを民間に移転しているよ」という人があるかもしれませんが、それが本当に、「民間の資金を投じること」と連動したリスク移転になっているでしょうか?
たとえば、日本版PFIで一般的に用いられている
①施設利用者が業務を行う上で明らかに重大な支障がある場合
②施設利用者が業務を行うことはできるが、明らかに利便性を欠く場合
に減額をするという考え方があります。
施設利用者が業務を行う上で生じる支障や利便性と民間資金の利用には一体どのような関連性があるのでしょうか
公共がとりたくないリスクを民間に移転するのがPFIではありません。
PFI事業とは、民間が取れるリスクを民間に移転するものであり、リスクを民間に移転することによって、今まで公共がそのリスクをとっていた場合に比べてコストを削減することができるように、公共の支払いと民間の資金利用を連動させるものです。
具体的な事例を挙げるとすれば、刑務所で自殺者が出たとします。
今まで、このような場合には、公共の管理上の責任が問われました。
この責任を民間に移転して、自殺者が出たら事業者へのサービス料金を減額するという仕組みを入れることは適切な考え方でしょうか?
民間の資金と連動させずに、公共のリスクを民間に移転するのは理不尽であり、合理的な考え方ではありません。
世界標準のPFI/PPPに組み込まれている仕組み
世界標準のPFI/PPPでは、公共側が発注するに先立ち、次の要素を含んだ事業提案の枠組みを設定します。
1) アウトプットで設定した要求水準書
2) 要求水準の内容に応じたモニタリングの手法
3) (モニタリングで報告する)不具合の定義(不具合の重要度および減額対象としない修繕の許容時間を含む)
4) (モニタリングで報告する)品質の低下の定義(減額ポイントの仕組みを含む)
5) モニタリングの結果を反映させた業績連動支払いの仕組み
これらはすべてが連動しており、しかも民間の資金利用と連動しています。
英国では、このような仕組みを導入するために特に法律を作ったわけではありません。
公債の変わりに民間資金を使うことはずっと禁止されてきています。
民間資金の利用と連動していない日本版PFIは、BOTであれ、BTOであれ、民間資金の利用と民間へのリスク移転が連動していないことから、リスク移転テストを通過することができないため、少なくともNPMの先進国では認められない仕組みです。至急改善する必要があります。
回答
質問に戻りますと、答えは次のようになります。
BOTのメリットが特にあるわけではありません。
BOT BTOの事業方式によってメリットがあるのではなく、事業者がとることができるリスクを事業者にとらせることでLCCを下げるのがPFIの仕組みでありメリットです。公共が施設を所有することが適切であれば、BTOでもかまいません。リスク移転の議論はたくさんありますが、BTOかBOTかという議論はほとんどないと考えてください。
あまり、BTOかBOTかという議論はないため、英国にBTOがないとは断言できませんが、少なくともオーストラリアには、BTOによるPFI案件が存在しています。
そして、オーストラリアのBTO案件には、リスク移転の仕組みはしっかりと導入されています。
ご質問に対してのお答えになっていれば幸甚です。
カテゴリー[ 日本版PFI ], コメント[1], トラックバック[0]
登録日:2006年 11月 29日 00:02:56
PFIとDBOを比較することの是非
PPPに関して次の3つの質問がありました。(質問は汎用性があるように、ある程度一般化しています。)
1. DBOは設計・建設のための資金を予め用意できないと可能性は薄いのか、それとも公的資金は長期債務の形で調達できる仕組みをつくっておけばいいのか
2. (DBOは)PFIよりなぜVFMが出るのか、
3. DBOはPFIより規模の小さい事業でも導入が可能であるようにも見えるが、どのくらいの規模の事業(中略)で導入されているのか、
この質問は、日本版PFIの現状をあらわしている質問であり、回答者によって、返答は相当変わってくると思われます。日本版PFIと世界標準のPFIの比較を交えながら、この質問に取り組んで見ましょう。
まず、このような質問が出てくる背景には、議会から類似の質問が出てくることが想定され、その場合に、行政として合理的に返答する必要があるのだと想定します。
わが国の現状のPFI手法とDBO手法の考え方を前提としてPFIとVFMの論点を整理してみました。
<前提条件>
上記の質問には、PFIとはどのようなものであり、DBOとはどのようなものであるかの定義が明確になされていませんが、それはPFIとDBOを周知のものとしているからだと思われます。つまり、「PFIとは、民間資金を使って長期的に割賦払いをするという手法」であり、「DBOとは(民間資金を使わずに)設計施工運営を委託する」という考え方です。
<従来からあった類似の論点>
PFIよりもDBOのほうが、資金調達コストが安いのに、なぜPFIを利用するのかという論点は、わが国でのPFI導入の初期の段階からありました。
かつての返答は次のようなものでした。
「たとえ公共の資金調達コストのほうが安くても、公共が調達した場合にかかると想定される総事業費よりも、民間の資金調達コストを含めた総事業費が安くなるのであればVFMが出る」というものでした。
この場合、なぜ、公共が調達した場合にコストが高くなるかという理由は明確にしないまま、今までと同様の手法で発注すると公共調達コストは変わらないという前提と、PFIを利用するとなぜかわからないがコスト削減が達成できるという考えに基づいたものでした。
一方、PFIで調達するとなぜコストが下がり公共のVFMが生まれるのかという民間事業者からの理由は次のようなものでした。
「従来は、設計と施工と運営を別々に発注していたので、管理コストが重複したり、それぞれの事業者がリスクコストを重複させて見積もるために、無駄なコストが発生していた。PFIによってひとつにまとめることによって、無駄であったコスト削減が可能になりVFMが生まれる。」というものでした。
<従来の論点整理の矛盾>
上記の論点は、一つ一つ、独立して捉えた場合には合理的な答えのように見えますが、二つを一緒にしてみると矛盾しています。なぜなら、公共が資金を公債によって資金調達し、設計施工運営をまとめて民間に委託するという手法があるからです。
そうすると公債よりも資金調達コストの高い民間資金を使う理由はなくなってしまいます。
<民間資金を使う理由はどこにあるのか?>
PFIを利用する価値がないという結果になったのは、PFIを全否定しているわけではありません。前提条件とした割賦払いを前提とした日本版PFIは利用する価値がないということを意味しています。
すなわち、PFIの定義が間違っていたのです。
PFIの正しい定義は、「PFIとは、民間に資金を調達させ資産を持たせ、その資産の所有権に連動したリスクを民間に持たせることによって付加価値を生み出す手法です。そしてその付加価値が、公共の資金調達コストと民間の資金調達コストの差よりも大きくなるので、民間資金を利用する価値がある」というものです。
<BOT方式によるプロジェクトファイナンスとPFIはまったく異なる手法>
PFI手法は1990年以降に、リスク移転コストが資金調達コストの差を上回ることが証明されて始めて公共に導入されたものです。PFIとは、そもそも民間資金を利用することによって付加価値を生み出すことができる仕組みであり、1980年代に「投資する資金を持っていなかったアジア諸国」で利用された「うちでの小槌のようなBOT方式によるプロジェクトファイナンス」とはまったく異なった仕組みであることを理解しておく必要があります。いま、アジア諸国では世界標準のPFIの導入が検討されており、日本版PFIのような割賦払いを検討している国は、私の知る限り日本以外のどこにもありません。
<DBOとは何か>
米国では、欧州で発展したPPP(PFI)手法の導入が遅れています。そのかわりに、従来型の公共調達のベストプラクティスが追及されました。従来の公共調達手法はDBB(Design Bid Build)設計発注建設型しかありませんでしたが、公共調達の発注形態のひとつにDBOという発注形態があることが、コロンビア大学のMichael J. Garvin, Ph.D., P.E.の論文から分ります。
アメリカでの公共施設の供給方法の分類の仕方:
コロンビア大学のMichael J. Garvin, Ph.D., P.E.*は、2003年の建設リサーチコングレスにおいて、施設の供給方法を次のように分類しています。http://www.civil.columbia.edu/imerc/publications/downloads/RoleofProjectDeliverySystems.pdf#search=%22DB%20DBO%20DBFO%22
1. DBB, Design Bid Build 設計、入札、建設
2. DB, Design Build 設計施工
3. DBO, Design Build Operate 設計施工運営
4. BOT, Build Operate Transfer 建設運営移転
5. O&M Services; Operate & Maintenance Service 運営維持管理サービス
従来はDBBしか存在しませんでしたが、いまでは、施設の所有者は、インフラのコスト、サービス、技術など、どのバリューを高めたいかの選択に応じて、適切な供給方法を選択することができるようになりました。しかしながら、その違いを理解していなければ適切なバリューを生み出すことはできません。
詳細については、論文に述べられているので繰り返しませんが、発注者が内容を自由に設定することができ、価格という明確な評価軸で事業者を選定できる従来型のメリットも大きいものです。
DBにすることにより、設計と建設を統合することができるようになり、設計と建設を合わせたコストでの競争が可能になり、発注から完成までの期間も短くできるようになりました。
DBOにすることで、ライフサイクルコストでの競争が可能になり、維持管理の期間のコスト変動を抑えることが可能になりました。その背景にはイノベーションの導入があります。
BOTにすることにより、さらに収益変動リスクまで民間に移転することができるようになりました。
<PFIとは何か>
EUにおける官から民へのリスク移転の違いによる分類の仕方:
EUが2003年3月に発行した PPPを成功させるためのガイドライン(GUIDELINES FOR SUCCESSFUL PUBLIC – PRIVATE PARTNERSHIPS)では、
http://www.bdi-online.de/download/Guidelines.pdf#search=%22EU%20PPP%20GUIDELINES%22
PPPの発展形態に応じて調達の形態は異なることが示されています。
この報告書の18ページのFigure1には、DBOは示されていませんが、DBBとDBFOの間の形態であることは明白であるため、左から右に第1段階から第4段階というふうに分類することができます。つまりDBOは、第1段階と第2段階の間であることが分かります。
ちなみに、わが国のBTO方式や、BOT方式であっても割賦払い形態のPFI手法は、従来型の著立つ手法である第1段階であることが分ります。日本版PFIを欧州で導入されているPFIと同様に扱うことは適切ではありません。
回答
以上から、最初の質問をもう一度繰り返すと次のような答えが出てきます。
1. DBOは設計・建設のための資金を予め用意できないと可能性は薄いのか、それとも公的資金は長期債務の形で調達できる仕組みをつくっておけばいいのか
A1:DBOとは、設計建設運営を一括して発注する仕組みであり、公共が支払保証さえできれば、長期債務の形であってもかまいません。ただし、この仕組みを機能させるためには、アウトプット仕様による発注(米国では機能的仕様書“Functional Description”という用語が使われている)が必要になります。
2. (DBOは)PFIよりなぜVFMが出るのか、
A2:日本版PFIの場合、民間資金調達コストが公債による公共資金調達コストよりも高い分だけ、DBOのVFMが高いことになります。ただし、日本版PFIを前提としていることがナンセンスであり、民間資金を利用する合理的な理由が見当たりません。
3. DBOはPFIより規模の小さい事業でも導入が可能であるようにも見えるが、どのくらいの規模の事業(中略)で導入されているのか、
A3: この比較をすることは困難です。まず、DBOとPFIの定義が適切でないこと。事業によってリスク移転できる内容が異なるため、単純に規模だけで判断することが困難であることなどの理由をあげることができます。
カテゴリー[ 日本版PFI ], コメント[0], トラックバック[1]
登録日:2006年 09月 26日 00:36:11
- プロフィール

- Hiroshi Kumagae
- (男)
- 1959年05月06日
- アビーム コンサルティング㈱ ディレクター
- 著書:脱「日本版PFI」のススメ 相模書房 ISBN978-4-7824-0705-9
- ESADE大学院 国際経営修士
慶應義塾大学院 特別招聘講師(非常勤)
三田図書館・情報学会会員、PMFJ会員 公益事業学会会員
平成18年度内閣府PFI事業の総合評価検討委員会委員
平成19年度自治体PFI推進センター専門家委員会委員
平成20年新宿区立図書館指定管理者選定委員
平成21年横浜市立山内図書館指定管理者選定委員
日刊建設工業新聞 所論/緒論コラムニスト
剣道3段、居合道4段(夢想神伝流)
福岡県生まれ横浜市在住
連絡先:hkumagae@yahoo.co.jp
- 最近のエントリー
- [06/01] サービス購入型官民連携手法で震災復興を
- [03/30] 東日本大震災復興のための官民連携について
- [03/30] アジアのPPP投資と国家的戦略 まずは民間資金活用した国内投資を
- [02/16] PFI/PPPセミナー②【VFMの源泉となる官から民へのリスク移転の仕組み発展の歴史】
- [02/14] PFI/PPPセミナー①【物品購入をサービス購入に切り替えることで生み出されるVFMとは何か】
- [02/14] TPPにおいて政府は不作為によるリスクを顕在化させてはならない
- [05/24] セミナー情報 「日本版PFIのガラパゴス化の是非について」 6月17日16:00 於 尚友会館
- [01/19] 所論諸論 民主党にPFI事業の世界標準化による改善を期待する09年12月18日 日刊建設工業新聞
- [10/07] セミナー情報 顧客指向の官民共同事業構築について整理する
- [06/16] 2009/07/01 PFIセミナー PFI事業における適正な解除条件と解約時支払額を考察する
- 最近のコメント
- [08/03] PFI関係者必読書の2冊の Public Private Partnerships ホワイトロック
- [05/18] PFI関係者必読書の2冊の Public Private Partnerships PFI侍
- [04/14] PFIでは官が民民のプロファイにおける金融機関の考え方をする必要はないこと しきのぴぃちゃん
- [04/10] PFIでは官が民民のプロファイにおける金融機関の考え方をする必要はないこと PFI侍
- [03/31] 世界標準のPFIについての解説及び議論を行うという前提の確認 しきのぴぃちゃん
- [03/27] 世界標準のPFIについての解説及び議論を行うという前提の確認 原田義昭
- [03/25] 世界標準のPFIについての解説及び議論を行うという前提の確認 熊谷弘志
- [03/25] 世界標準のPFIについての解説及び議論を行うという前提の確認 熊谷弘志
- [03/23] 世界標準のPFIについての解説及び議論を行うという前提の確認 オーキー
- [03/21] 世界標準のPFIについての解説及び議論を行うという前提の確認 オーキー
- 最近のトラックバック
- 月別アーカイブ
- 2011年 06月 [1]
- 2011年 03月 [2]
- 2011年 02月 [3]
- 2010年 05月 [1]
- 2010年 01月 [1]
- 2009年 10月 [1]
- 2009年 06月 [1]
- 2008年 05月 [1]
- 2008年 03月 [2]
- 2008年 02月 [5]
- 2008年 01月 [2]
- 2007年 12月 [7]
- 2007年 11月 [4]
- 2007年 10月 [8]
- 2007年 09月 [3]
- 2007年 07月 [7]
- 2007年 06月 [6]
- 2007年 04月 [1]
- 2007年 03月 [6]
- 2007年 01月 [1]
- 2006年 12月 [1]
- 2006年 11月 [1]
- 2006年 09月 [4]
- 2006年 08月 [4]
- お気に入りリンク
- 4回連載 PFI事業のあるべき姿(最終回)
- 4回連載 PFI事業のあるべき姿(3)
- 4回連載 PFI事業のあるべき姿(2)
- 4回連載 PFI事業のあるべき姿(1)
- 6回連載 日本型PFI改善への具体策(最終)
- 6回連載 日本型PFI改善への具体策(5)
- 6回連載 日本型PFI改善への具体策(4)
- 6回連載 日本型PFI改善への具体策(3)
- 6回連載 日本型PFI改善への具体策(2)
- PFI手法から見た図書館への指定管理者制度の導入
- 図書館へのPFI手法と指定管理者制度の導入
- PFIによる公共図書館整備のあり方について
- 6回連載 日本型PFI改善への具体策(1)
- 英国でのPFI誕生の背景とその導入の意義
- 検索