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わが国における官製市場開放について④-2 東京LEC 法律文化 07年3月号より

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最新のアウトプット仕様書とはどのようなものか

ア)なぜ標準化が始まったのか
 ブレア政権になり、「PFI事業の促進のためには、契約書の標準化や事業分野毎のガイドラインの作成が必要である」という提言が「ベイツ報告書」によってなされた。標準化が必要な理由のひとつに、事業ごとにアドバイザーのノウハウや仕様書、契約書等がばらついていたことが含まれていた。
 英国財務省は、この提言を受け、PFI契約の標準化を行い、1999年(第1版)、2002年(第2版)、2004年(第3版)と更新を続けている。また、英国から、数多くの事業別PFI調達ガイドラインが公表されており、PFIの国際標準となっている。アジア各国の公共調達アドバイザーにとっては既に常識的なことであるが、わが国もこれらのガイドラインを標準化書類として取り扱う必要があると考える。

イ)PFIの財務報告書基準の国際化の動き
 PFI事業では運営期間中に公共から民間へリスク移転するため、従来のリース会計や既存の取引のルールとは仕組みが異なっている。PFI/PPP手法の発展に伴い、諸外国のPFI/PPP事業には、国際的なPFI/PPP実績を持つ国際的な企業が数多く参画している。  そのため、事業実施国の財務報告基準と国際的企業の本社の存在する国の財務報告基準が異なることがある。そうなると2重課税問題に発展しかねない。そこで、現在、国際財務報告基準解釈指針委員会(IFRIC)は、このような今まで明確な解釈のなかったPFI/PPP事業を財務報告書上にどのように記載すべきかについての世界標準のルールを検討しているところである。わが国のPFI事業には、ほとんど日系企業しか参画していないことに加え、既存の法律の範囲内で事業を行うことが前提となっているため、このような財務会計上の問題は今のところ生じていないが、これは、WTO案件に該当する大型事業であるPFI事業が避けて通れない課題である。

ウ)急速に進んでいるPFIの国際的な標準化導入の動き
 紙面の関係上紹介できないが、私の手元に、1997年に英国で作成された二つのPFI事業の仕様書と、2002年にそれぞれオーストラリアと英国で作成された二つのPFI/PPP事業の仕様書の、計4種類がある。前者はどちらも英国で作成されたものであり、後者はそれぞれ異なった国(英国とオーストラリア)で作成されたものである。ところが、前者の二つの仕様書の構造は随分と異なっているのに対して、後者の二つは共通の構造を持つ。   2000年当時に前者の二つを見たときには、それぞれ素晴らしい仕様書だと思ったが、どちらにも使い勝手の悪い部分が残っていた。これが、最近の仕様書では解決されている。このように、PFI事業の仕様書の標準化は急速に進んでおり、わが国もこの動きを取り入れる必要がある。

エ)最新のアウトプット仕様書の事例
 さて、PFI事業には数多くの品質評価要素や、事業管理の仕組みが組み込まれているので、ここで触れる内容がすべてではないが、資料3は、仕様書の全体構造を示しており、資料2は、その仕組を使ってサービスの評価を支払いに連動させる仕組みを表している。
 資料3に記載した、仕様書の構成どおりに次の7つの手順を踏めば、発注者が求めるサービスのアウトプットを明確に示すことができる。

1)ファシリティー・サービス(建設関連サービス、支援サービス)を分類し、業績評価基準(KPI)を洗い出す。KPIという言葉を使わずに、「パフォーマンス要素の洗い出し」と呼ぶ場合もある。
2)モニタリング手法を設定する(英国の病院では8種類が標準)。
3)どのKPIをどのくらいの頻度でモニターするかを設定する。
4)サービス不履行に関連する事象が生じた場合の報告の内容を品質低下、不具合、苦情ごとに設定する。
5)それぞれのファシリティーサービスの要素を「KPI&業績モニター表」で連動させる。
6)必要に応じて施設のエリア別重要度や、不具合時の対応時間などの条件を設定する。
7)サービス不履行に関しての規定
(ア)不履行の種類:サービスの要素ごとにサービス不履行を品質低下もしくは不具合のどちらかに分類する。
(イ)品質低下の規定と対応:品質低下によるサービスの不履行に適用するポイント減額制度を事前に設定する。
(ウ)不具合規定と対応:不具合の重要度をレベル(A~D等)で設定し、係数を利用して不具合時の減額割合を設定する。
ちょっと面倒な仕組みではあるが、運営段階のサービス水準を評価する基準を含んだアウトプット仕様書を利用することによって、従来の公共リスクを民間に移転する仕組みが構築されていることをご理解いただけただろうか。次回からリスクとVFMの関係について説明をしよう。

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登録日:2007年 07月 31日 22:24:22

わが国における官製市場開放について④-1 東京LEC 法律文化 07年3月号より

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官製市場開放の歴史と仕様書の発展の歴史(3)

-改革を促す「アウトプット仕様書」-
 前回は、欧州では、価格だけで競争する一般競争入札から「発注者の観点から最も経済的に有利な提案」を選定する入札にシフトしていることと、その背景にアウトプット仕様書の普及があることを紹介した。また、「価格が最も安い」から「経済的に有利」にシフトするために、例えば英国では経済的有利性を判断する価格以外の11項目の評価要素を利用して総合評価していることに触れた。
 この総合評価の潮流は世界的なものであるが、わが国では逆に価格だけの一般競争入札が増加している。それは、ここのところ続けて発覚した談合事件に対する反動のためとも言われるが、このことは「経済的に有利な提案を選択すること」の放棄と同じなので留意する必要がある。
 今回は、欧米のNPM先進諸国において、従来のインプット仕様書からアウトプット仕様書へ移行していった歴史およびその背景を説明しよう。

インプット仕様書からアウトプット仕様書への発展の歴史

ア)インプット仕様書 
 従来の公共事業の発注方法は、国内外を問わず、工事に使用する材料・機材・工法・試験・基本設計図等のすべてを発注者が策定し、金額だけで競争させていた。この発注方式は、発注者が公共事業運営に「投入するもの(インプット)」を事前に規定することから、「インプット仕様書」に基づく発注方式という。この方法は発注者が最良のインプットが何であるかを知っている場合には、入札価格という最も客観的な要素で事業者を比較選定することから、競争上の公平性を担保できる最適な手法である。

イ)BPR※1の導入
 ところが、技術の複雑化と特殊化が進み、公共の今までの発注ノウハウだけでは、革新的な解決手段を含んだ最適なインプットを見付け出すことが困難になってきた。そこで外部の専門的ノウハウを利用した改革の手段であるBPRの考え方が公共セクターでも導入された。欧米において、この見直しが行われたのは1990年ころである。
 BPRは、本稿の第1回目で述べたように既存の仕組みの改善ではなく、プロセスをゼロベースで見直す改革である。

ウ)アウトプット仕様書誕生の背景 
 一般の企業ではBPRを社内の業務改革に利用する場合、特定のコンサルティング会社や企業を選定しパートナーシップを組むことが可能である。しかしながら公共は、事業者選定上の公平性を担保しなければならないため、特定の企業を任意に選ぶことが難しい。そこで、民間のノウハウを活用するために、発注者として達成したい結果(アウトプット)を明確に示し、民間事業者にその手法や手段を自由に提案させる方法が導入された。このような背景から誕生した公共調達手法は「アウトプット」を事前に規定することから、「アウトプット仕様書」に基づく発注方式と呼ぶ。

エ)アウトプット仕様書を最初に導入したCUPガイダンスNo.30
 従来は、暗黙の前提として「公共が公共施設を所有して公共事業を運営すべきだから、その施設の設計や施工管理も公共が責任を持って行うべきである」という考え方と「品質と価格の間にはトレードオフ(一方を追求すれば他方を犠牲にせざるを得ないという二律背反)の関係があり、価格を下げるためには品質を下げざるを得ない」という考え方があった。
 この従来の考え方をBPRの発想で打ち破ろうと、英国のサッチャー首相は、公共調達のベストVFMを達成するための基本的な考え方を「CUPガイダンス」として公表した。このガイダンスの30番目のものが1991年に公表された「仕様書の書き方※2」である。このガイダンスは、仕様書のあるべき姿を概念的に述べた上で、資料1(右頁参照)のように、仕様書は①機能仕様、②パフォーマンス仕様、③技術仕様――の3つで記載可能であること、そして、これらの仕様の組み合わせも可能であるが、「技術仕様書」では提案が制限される為、「機能仕様書」と「パフォーマンス仕様書」を利用することが望ましいと示した※3。

オ)アウトプット仕様書とPFI手法
 このガイダンスはすべての公共調達に適用されたため、「アウトプット仕様発注」が普及し、それに伴い「サービスの提供方法を見直せば、より廉価にサービスを購入しつつ、従来と同様の成果が達成可能である」ことが実証された。そして、この考え方は「公共による施設所有は目的ではなく、(施設を利用した)公共サービスの提供が目的」なのであるから、「不具合なく施設が利用できる機能」と、「施設に付随したサービスの適切な品質(パフォーマンス)の維持」さえ満たすことができれば、「公共は施設を所有する必要はない」というえ方につながった。従来、不具合やサービスの品質低下のリスクは、施設調達後に発生する問題であるので、当然のこととして施設を所有している公共が取っていた。ところが、要求する機能とパフォーマンスを適切に設定し、民間資金を使って事業者に施設整備をさせ、その施設提供サービスを購入するPFI手法の考え方を使えば、従来公共が責任を取っていたこれらのリスクを施設調達段階で従来のコスト以下で事業者に移転できるため、
コスト削減できる。PFIがサービス購入型調達と呼ばれ、VFMはリスク移転から生まれると言われる理由はここにある。

カ)PFI手法における民間資金利用の条件
 このように、それまで公共が抱えていた公共施設に付随したさまざまなリスクを民間移転できると、事業のライフサイクルコスト(LCC)が下がり、民間資金を使ってもVFMが生まれる可能性がある」ということが分かってきた。民間資金を使う手法は、収益を生まない公共施設の整備にはそれまで認められなかったが、1992年以降は、民間資金を利用してVFMを最大化することができる場合に限り、民間資金を使って公共事業施設整備
をしても良いことになった。ただし、従来通り「公共が民間資金を利用して施設整備費用を延べ払いすることは禁止」したままである。このように、公共調達に民間資金を使えるようにしたPFI手法は、従来の施設調達手法とは異なったサービス購入手法であり、このPFIの導入はアウトプット仕様書の普及と、民間への施設に関連したリスク移転なくしてはあり得なかったものである。

キ)アウトソーシングと同じ考え方のPFI手法による事業者へのリスク移転
 専門性の高い業務をアウトソースするのと同じ理由で、不動産に付随するリスクの管理は、公共よりも「施設運営ノウハウ」を持つ民間の方がうまい。このような専門性のある業務を、民間に委託してその結果削減されたリスク管理コストを官民で分配して、公共のVFMの向上と民間の収益の向上を同時に達成するのがPFIWIN-WINの考え方である。

ク)施設の整備と施設提供サービスの違い
 わが国のPFI事業は、施設整備の一環として導入された。そのため、施設整備に焦点が当たりすぎ、運営開始後の不具合や品質低下の評価の仕組みが後回しになる傾向がある。そして、客観的な減額の仕組みが構築できないので、サービス開始後に発注者の主観で減額せざるを得ない。しかし、整備費の債務は確定しているため、不具合が生じてもこの部分からの減額ができない――という問題を抱えている。
 これに対して、海外のPFI手法は、民間の施設提供サービスを公共が購入する仕組みである。この仕組みは、不具合のない条件で施設提供サービスを購入するものであるため、不具合が生じた場合には支払いを減額できる。不具合の支払いの減額の仕組みは、事業枠組みとして入札公示前に設定されており、事業者はその枠組みの中で提案を行い、品質の確保をセルフコミットする。したがって、減額発動に発注者の主観が入る余地はなく、事業者はリスクをとる範囲を限定できる――というメリットを持つ。

※1 BPR(Business Process Re-engineering):企業改革において、既存の組織やビジネスルールを抜本的に見直し、プロセスの視点で職務、業務フロー、管理機構、情報システムを再設計(リエンジニアリング)するというコンセプト。「ビジネス・リエンジニアリング」「リエンジニアリング」ともいう。この考え方は、1990年に元マサチューセッツ工科大学教授のマイケル・ハマー(Michael Hammer)氏がHarvard Business Review誌に発表した論文で紹介され、1993年に同氏と経営コンサルタントのジェイムス・チャンピー(JamesA. Champy)氏の共著で出版された「Reengineering the Corporation: A Manifesto for Business Revolution」が世界的なベストセラーとなることで、広く知られるようになった。
※2 ちなみに、このガイダンスは1988年前後に出されたCUPガイダンスNO.9 を差し替えたものである。BPRの考え方は1990年以降であるため、1988年のガイダンスの中にアウトプット仕様書の考え方が含まれていなかったと考えられる。この点を確認しようとOGCに問い合わせたが、当時の担当部署は既に存在せず、担当者が誰であったかもわからないし、差し替えられた古いガイダンスを保管する仕組みがないため、ガイダンスの内容はわからないという返答を受けた。結局NO.9は「なぞのガイダンス」となってしまったが、問い合わせてから1両日でOGCの丁重な返答を受け取ることができたことから政府の公共調達エージェントであるOGCのサービスの高さを実感することができた。
※3 このガイダンスでは、「アウトプット仕様」と言う言葉は用いられていないが、まさにVFMを生み出す仕組みの一つである「アウトプット仕様の概念」が、「機能仕様」と「パフォーマンス仕様」の中に記載されている。

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登録日:2007年 07月 31日 22:18:09

わが国における官製市場開放について③ 東京LEC 法律文化 07年1月号より

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官製市場開放の歴史と仕様書の発展の歴史(2)

-公共調達のパラダイムシフト-
 これまで、官民協働事業の現状把握および国内外の官製市場開放の流れを概説し、英国のNPMの考え方や適用されているルールを説明してきた。今回から、官民協働事業で利用される入札方式の発展の歴史とその具体的な仕組みを紹介していく。従来の公共調達の手法では、公共調達の具体的な手法や手段であるインプットを公共が設定し、民間に価格で競争させた。これに対して、NPMの進んだ国の公共調達では、公共は達成したい結果(アウトプット)を示し、その解決手段や手法であるインプットを民間事業者に提案させる※1。この公共調達手法の変化は、パラダイムシフトと呼ぶにふさわしい。今回は、わが国とEU諸国の公共入札手法の違いを、このアウトプット仕様書の概念を利用して説明する。

公共事業調達の枠組みの日英比較
 アウトプット仕様書利用の有無に関連した次の3つの観点から、わが国と、NPMの浸透したEU諸国の公共調達に関する法やガイドラインの比較を行ってみよう。
 ①従来の公共調達手法とPFI手法等のNPM新手法の関係
 ②事業のライフサイクル(検討・発注・整備・運営)での官民の役割分担
 ③新手法に用いられるコスト削減の仕組みや要素

(ア)従来の公共調達手法とPFI手法等のNPM新手法の関係
 まず、わが国の場合、PFI手法は「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律」に基づく特別な手法である。そして、法的に認められた一般的な契約は、国の事業は会計法第29条「契約」に基づいて、地方自治体の場合は地方自治法の第234条(契約の締結)に基づいて①一般競争入札、②指名競争入札に基づいた契約、③随意契約の3種類に分類されている。どのケースも、インプットを公共が設定し価格で事業者を選定する従来の公共調達の典型例であり、アウトプット仕様の観点からの抜本的な改善検討は行われていない。
 これに対して、2004年のEU公共調達指令に基づいて2006年1月に改定された英国の公共調達条令では、公共事業の入札の手続きの種類を①開放手続き、②制限手続き、③競争的対話手続き、④交渉手続きの4つに分類している。PFI等のNPMの新しい手法は、競争的対話手続きや交渉手続きで用いられるが、仕様書の書き方や事業者の評価の仕方は公共調達すべてに共通して適用されており、NPM手法の特有のものではない。 具体的に条令の「仕様書の書き方」と「事業者評価の仕方」を見てみよう。
 仕様書の書き方は、まさにアウトプット仕様書とはどのようなものであるかを示している。「サービスもしくは物品の購入の場合に仕様書が規定するもの」は、「材料、品物、サービスの特徴、すなわち、品質や、環境パフォーマンスレベル、すべての要求を満たす設計、適合性評価、パフォーマンス等を含んだもの」である。そして「工事の場合に仕様書が規定するもの」は、「工事、材料、物品の特徴、すなわち、それらの許認可、環境パフォーマンス、全ての要求を満たす設計、適合性評価、パフォーマンス、設計、見積もり、検査等に関連したルール、およびその他の技術的な条件」である。仕様書に特定の技術や性能を示すことは適切ではない。選定方法は「発注者の観点から最も経済的に有利な提案」もしくは「最も低価格の提案」を選定するためのものである。前者の定義は「品質、価格、技術的メリット、美的および機能的特徴、環境特性、運営コスト、コスト効率、アフターセールサービス、技術支援、配送日、配送期間、完成(組立)期間を含んで検討した結果から判断されるもの」であり、総合評価であることが分かる。

(イ)事業のライフサイクル(検討・発注・整備・運営・終了時)での官民の役割分担
 次に、検討段階から最終的な契約終了時に至る事業のライフサイクルにおいての
官民の役割分担について見てみよう。
 わが国の場合、国の公共調達では、民間事業者の改善提案(VE)を評価するために「総合評価落札方式による一般競争入札」を導入した。ただし、公共調達の主要な部分を事業者に価格で競争させるという原則は変わっていない。また、価格で競争させるためには、提案内容が大幅に異なると合理性に欠けることから、提案内容が一定の仕様の範囲で収まるように、特定の手法に基づいた技術的な性能を記載する「性能発注仕様書」が用いられている。この性能をアウトプットととらえ、アウトプット仕様書と分類する文献もあるが、筆者は、前提となるインプットの性能を規定していることからインプット仕様書として分類する。
 地方自治体の場合は、既に行政改革によって仕様書を作成する職員まで削減してしまっているところが多く、国のように基本的な仕様書を独自で策定することが困難である。そのため、仕様書作成業務も含めた「設計施工一括発注方式」を民間事業者に求める傾向にある。このような状況の中で自治体はインプット仕様書の策定をやめ、民間提案の制限を撤廃した日本版アウトプット仕様書※2を策定する傾向にあるが、日本版アウトプット仕様書では、異なった提案内容の客観的な評価が困難なので改善する必要がある。
 EU諸国では、第1回でも説明したように、発注者は達成したい結果(アウトプット)を示し、手段や手法を民間事業者に提示させる。資料は、インプット仕様書とアウトプット仕様書の違いによって公共調達のパラダイムシフトが起こり、官民の役割分担が変わったことを示している。

(ウ)新手法に用いられるコスト削減の仕組みや要素
 最後に、NPMの仕組みについて述べておく。わが国でも、NPM先進国の考え方が導入され、公共調達における費用のバリュー・フォー・マネー(VFM:お金の生み出す価値)を向上させることが重要であると認識されている。ただし、わが国特有の談合制度による競争を阻害する要因が、業界の異なるメンバーによって構成されたコンソーシアム同士が競合することによって取り除かれたり、分割発注で生じていた不明確な責任分担部分をカバーするための管理費や予備費等を設計施工運営の一括発注によって取り除けたりできる場合、このような要因によるコスト削減は、PFI手法による民間資金の利用によるコスト削減とは関連していないので留意する必要がある。
 EU諸国では、PFI事業のVFMは民間資金を利用することによって従来公共がとっていたリスクを民間に移転できる場合に大きくなると認識されており、競争によるコスト削減や分割発注を一括発注にすることで達成可能なコスト削減とは区別して、官から民へのリスク移転によるコスト削減のVFM算定を行う。NPMにおけるVFM算定には、この官から民へのリスク移転は不可欠な要素である。リスクの算定については、別途述べることにする。
 以上から、NPMの導入が進んでいるEU諸国では、価格だけで評価する一般競争入札のような公共調達は既に存在しておらず、アウトプット仕様書に基づく新たな公共調達の仕組みへとパラダイムシフトしたことをご理解いただけただろうか。次回は、このアウトプット仕様書の発展の歴史を振り返ってみよう。

※1 2004年の公共調達に関するEU指令で、このアウトプット仕様を利用することが決められたため、欧州諸国ではアウトプット仕様が標準化されている。
※2 この背景には、「民間のノウハウを活用するためには規制を撤廃する必要があるとする完全民営化や経済活性化の考え方」と、「公共調達においてアウトプット仕様書の範囲内で自由に民間ノウハウを活用し提案するという考え方」が混同されている可能性がある。アウトプット仕様書は、異なった民間ノウハウに基づいた提案を公平に評価する基準として機能する必要があるため、民間提案の範囲を規定する必要がある点に留意しなければならない。日本版アウトプット仕様書は、提案の評価項目や評価項目ごとの配点表が簡略化されているケース(専門性の必要な分野であっても専門部会を開催せず、評価委員会が短時間で評価するケース)や、「主観を点数化して」後付けで優劣の説明をするケースがある。

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登録日:2007年 07月 31日 21:44:34

わが国における官製市場開放について② 東京LEC 法律文化 06年11月号に加筆

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官製市場開放の歴史と仕様書の発展の歴史(1)

-ブレア政権のNPMの枠組み-

1. はじめに
 前回は、官民協働事業の現状把握と、国内外の官製市場開放の流れを概説した。そして、わが国の公共サービスは改善だけでは不十分なので改革が必要であることについて述べた。今回から、改革を促進する仕様書の変遷について述べる。現在、英国で使われることが奨励されている仕様書は「アウトプット仕様書※1」、または、「機能・パフォーマンス仕様書」と呼ばれ、事業者が提供するサービスの機能や実績(パフォーマンス)に焦点を当てたものである。この仕様書は、要求項目を結果で示し、その結果の達成手法や手段を民間に任せる。このような仕様書は、わが国ではまだ馴染みが浅く、その概念を理解するためには、ブレア政権のNPMの枠組みを知ることが役に立つ。なぜなら、ブレア政権で導入されたNPMの数多くの仕組みがこのアウトプットアウトプット仕様書と連動しているからである。

2. ブレア政権のNPMの枠組み
 サッチャー保守党政権とサッチャリズムを継承したメジャー政権のNPMへの取り組みと、労働党のブレア政権のNPMへの取り組みを同一視する向きもあるが、ブレア政権でNPMは大きく見直された。特に保守党政権ではコスト削減に焦点を当て過ぎていたので、サービスの質を評価する仕組みが見直された。

(ア)コスト削減だけでなく、「ベストバリュー」を目指す
 労働党党首のブレアは、1997年の総選挙におけるマニフェストに、公務員の雇用不安やモチベーションの低下を招く強制競争入札※2の廃止を宣言した。そして、コスト削減に偏重した強制競争入札の代わりに、「ベストバリュー」と呼ばれる4つのC(挑戦、比較、相談、競争)※3に基づくNPMの集大成ともいえる考え方を導入した。
 この考え方は、コスト削減偏重の政策を修正したものであり、コスト削減は、品質が確保された上で達成されなければならないという考え方である。
 ベストバリューを確保するため、予算管理の目的を明確にし、財務ルールを設定し、資源会計に基づいて包括的な資源配分計画を設定した。この資源配分計画の進捗状況を「コミットした具体的な目的および指標」と比較し管理するシステムが導入された(資料1はシステム全体のイメージ図である)。

(イ)公共サービス合意(PSA)
 ブレア政権では、公共セクターの各省庁や部署等の存在目的と業績達成目標を設定した。これを「公共サービス合意(PSA:Public Service Agreement)」と呼ぶ。PSAは中央省庁と地方自治体の両方に適用されている。
 PSAを導入する前には、予算額そのものや、予算算定の根拠となる「医師等の専門家の数」のインプットが議論の対象であったが、PSAの導入以来、効果的に資源投入ができているか、「病院の待ち時間の減少」のような定量化可能なサービスの質がどの程度改善されているかが議論の対象となってきたという。

(ウ)主要業績指標(KPI)の設定
 メジャー政権時に導入したベンチマークの考え方に基づいて、サービスの質を評価するさまざまな指標が定量化された。ブレア政権では、このような指標を発展させ、官民が共同で適切なサービス水準を合意するという主要業績指標(KPI:Key PerformanceIndicator)を導入した。

(エ)予算管理の目的を明らかにする
 英国では、国と地方自治体を連結し「一般政府」としての包括的な予算管理を始めた。この連結予算を策定するためのガイドライン※4で、予算管理の目的を次のように設定している。
 ①財務ルールが機能するように公共支出の管理を行い、公共支出の管理を確実にすることによってマクロ経済を安定させること。
 ②納税者にとってのバリューフォーマネーが高く、品質の高い公共サービスを提供することを目的とし、その公共サービスの支出を管理する部署が適切に支出したくなるようにインセンティブを与えること。

(オ)二つの基本的な財務ルール
 上記の目的達成のために、次の二つの基本的な財政ルールを導入している。
 ①ゴールデンルール:政府は投資のためにのみ借り入れを行うことができ、年度会計の赤字を補填するための借り入れをしてはならない。
 ②継続投資ルール:公共の累積債務は対GDP比率で算定し、健全なレベルで安定した景気循環ができるようにに維持すること。
 同様に、ネット債務は景気循環を考慮して対GDP比率で設定した基準(40%)以下に保つ。最初のゴールデンルールは、健全な財政状況を維持するためには、投資のために借り入れをすることは認めるが、投資を除いた歳出は歳入(公債による入金は含めない)以内に抑えなければならないというルールである。二番目の継続投資ルールは、健全な財政を維持するために、投資であってもその借り入れが増え過ぎないように限度を設定するというルールである。

(カ)資源会計および予算(RAB)
 資源会計および予算(RAB:Resource Accounting and Budgeting)は、政府の公共支出について計画し、管理し、報告するための会計システムである。資源会計は、中央政府の支出を報告するための発生主義会計の導入であると同時に、省庁の目的や目標と結果を結び付け、支払いを分析するための枠組みでもある。

(キ)省庁別支出限度額と年度管理費用
 省庁別支出限度額(DEL)は、将来3年間の事業計画に基づいて策定された予算である。3年間の予算であるため、中期的に予算を管理することができる。例えば、事業の進捗が遅れ年度末までに予算を使い切れない場合、翌年度にその予算を先送りすることができる。この仕組みによって、翌年度の予算が削減されることを恐れ無理に予算消化しようとするインセンティブをなくすことができる。
 年度管理費用(AME)は、社会保障関連支出額のように支払額が大きく、しかも需要に応じて変動する支出の予算である。この種の予算は長期的に予測することが困難なだけでなく、短期的な予測も難しい。そのため、同じ年度内に2回予算見直しを行っている。

(ク)投資予算
 投資予算(Capital Budget)は、前述のDEL(中期予算)とAME(短期予算)とは別に管理される。固定資産の価値を損なわないように長期的に不動産を所有するためには、継続した適切な投資が必要である。ちなみに、予算と財務ルールの関係は資料2のようになる。

(ケ)包括的支出見直し白書(CSR)
 前述のPSAで設定した目的や目標の達成が順調に進んでいるか、目的や目標を達成するためにはどのような資源配分をすればよいのかを検討したのが「包括的支出見直し白書(CSR1998)※5である。2年ごとの「支出見直し(SR)」によって今まで見直されてきたが、最初のCSRの作成から10年近くが経ったので、現在、ゼロベースで今後の目的や目標に合わせて資源配分の再検討を行っている。これは「CSR2007」として来年公表されるが、この中間報告※6が今年7月に公表された。
 ベストバリューの考え方に基づき、民間の企業管理運営手法に類似した前述のような仕組みが公共セクターにも導入されていることがお分かりいただけただろうか。次回は、10年以上かけて「アウトプット仕様書が発展した経緯」について述べることにする。


※1 従来の仕様書は工事の仕様の基本となる設計図をすべて発注者が用意していたので、このアウトプット仕様書に対してインプット仕様書と呼ばれる。
※2 わが国の「市場化テスト」の検討および導入に際して参照された英国の民営化手法のひとつ。強制競争入札の名前の通り、その対象となる当
該公共サービスの実施を官民のどちらが行うか、競争入札によって強制的に決めさせられてしまう。
※3 4つのCとは、挑戦(Challenge)、比較(Compare)、相談(Consult)、競争(Compete)の頭文字をとったもの。
※4 Consolidated Budgeting Guidance from 2006-2007 by HM Treasury December 2005
※5 Modern Public Services for Britain:Investing in Reform Comprehensive Spending Review:New Public Spending Plans
1999-2002 by the Chancellor of the Exchequer July 1998
※6 Releasing the resources to meet the challenges ahead: value for money in the 2007 Comprehensive Spending Review by
HM Treassury July 2006

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登録日:2007年 07月 29日 15:43:28

わが国における官製市場開放について(1回目) 東京LEC 法律文化 06年9月号掲載に加筆

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改善だけでは不十分! 改革が必要な官民協働事業

はじめに
 第1回目は、官民協働事業の現状の概要把握を行う。具体的には、国内外の官製市場開放の流れを比較し、その違いを明らかにすることによって全体像を把握したい。

世界の官民協働事業の進展状況
 まず、筆者自身の英国での体験を紹介する。筆者が英国でPFI業務に関与したのは1998年であったが、当時はブレア政権になってから既に1年経過していた頃であった。当時官民協働事業に関連するガイドラインは入手困難であり、しかも、英国の公共調達ガイドラインは英国内の利害関係者のためだけのものであった。ところが2000年ぐらいから、過去のガイドラインを含めて公共調達に関連するガイドラインがインターネットで公表され始め、英国のガイドラインの影響を受けたオーストラリアやニュージーランドなどの英語を母国語とした公共改革先進国のガイドラインとともに瞬く間に世界標準へとなっていった。
 1999年当時、親しくなったPFI事業に関与する複数の英国人弁護士からPFI契約の標準化に関して関係者の間で回覧見直しされていた草稿(現在のSoPC:Standardisation of PFI Contracts)を入手したが、受け取るたびにその厚さが増していったことが記憶に残っている。現在、英国では会社法改定草案(Company law reform Bill)が策定されているが、すでに何回かの書き直しが行われており、改善されるたびに厚さが増しているのを見ると当時を思い起こす。(2006年11月8日付でThe Companies Act 2006として成立(追記))
 アジア・太平洋諸国における官民協働事業にはさまざま要素があるため、各国の官民協働事業の進捗状況を客観的に比較することは困難だが、上記の公共改革先進諸国の英文で記載されたガイドラインをバイブルにしている国と、これらのガイドラインには頼らず独自の考え方で公共改革を進めている国の二つに大きく分類できる。調査を行って検証したわけではないが、わが国と台湾とタイを除いたアジア諸国は前者である。これらの国では公共セクターの官僚になるために英語教育を受けることが必須になっていることが多く、また、英国もしくはオーストラリアから経験のあるアドバイザーを受け入れている。そのため、英語を母国語とした公共改革先進国のガイドラインがインターネット上で公表されると同時に、これらの実績のあるアドバイザーが標準ガイドラインとして共有するため、タイムラグ無しにこのような最新情報がバイブルとなって公共改革が進められている。この事実は、当該国の公務員やアドバイザーとの会話から確認できる。ところが、わが国では、他のアジア諸国では一般的になっている先進的な官民協働の考え方が普及していない。(なお、2007年7月に内閣府が公表した「PPP Web Tokyo Conference 2007」に、わが国のPFIの仕組が、標準化された諸外国のPFIの仕組とは異なっていることが記載されている。(追記))

改善と改革の違い
 現在の世界標準の官民協働事業の基本理念が「官民の持続可能なパートナーシップの構築」であることに疑いの余地はなく、これは、「発注者である官」と「請け負い業者である民」の関係からの改革である。
 ブレア政権発足当時は、この官民のパートナーシップによる公共事業改革は、保守党のサッチャー・メジャー政権の政策を踏襲したと論じられることもあったが、現在では、「公共コストを削減するために民間に徹底して競争させた保守党の考え方」と、「官民が持続可能なパートナーシップを構築するために協働するという新労働党考え方」には、改善と改革という大きな違いがあったことが明らかになっている。この違いは、ブレア政権のブレーンであるアンソニー・ギデンスの提唱する「第三の道」の政治から生まれたものであると考えられる。
 「公共コスト削減のために民間競争をさせる」手法は、改善手法であり、その前提として基本的に従来のやり方はそのままにして、従来のやり方のコストを下げるという目標を設定する。これに対して、「官民の持続可能なパートナーシップ構築」は、根本的な部分から見直しを行う改革であり、コスト削減が前提となって設定された目標である。そのため、従来のやり方によってコストを下げることに限定する必要がなくなり、最もコストパフォーマンスの高い手法を見つけ出すという選択肢の選定が可能になる。また、改善の場合は改善結果についてのリスクを民間に移転することは困難であるが、改革の場合は改革提案を民間に提示させることにより、パフォーマンスが出ないリスクを提案者である民間に移転できる。この官から民へのリスク移転が民間資金を使うことによって得られる新たなメリットである。

わが国の改革の遅れと官民のサービス品質格差
 わが国では、この改善から改革へのパラダイムシフトについて深く論じられてはおらず、「公共コスト削減のために民間競争をさせる仕組み」と「官民の持続可能なパートナーシップ構築のための仕組み」をどちらも財政改革の手法であるとして一緒に論じる風潮がある。民間企業は市場競争にさらされているので、勝ち残るためには図表1のように業務改革によるサービスの向上が求められる。これに対して、競争意識の低い公共では既存のシステムを壊しかねない改革を嫌うリスク回避癖があり、財政悪化に伴いITを中心とした改革導入が遅れており、図表2のように業務効率化の遅延と、過去の公共サービスレベルからアップグレードすることの遅延につながっている。すなわち、過去のレガシーシステムの改善だけでは社会の技術変革に対応することは困難であり、前述した改革提案を民間に任せれば得られる可能性のあるサービス向上のメリットを得ることができないので、優良民間企業 とのサービス品質の格差が広がっているのである。

英国の官民共同事業の最新動向
 最後に、EU指令 に基づく英国の官民協働事業は今後のわが国のパラダイムシフトのための参照に値するので、この動向について少し触れておこう。詳細はここでは触れないが 、EUでは公共調達の仕組みの見直しに関してのEU指令が2004年に発令されており、それに基づき、英国では公共調達条例が本年1月末に施行された。この法改正により、いままで分かれていた物品調達、サービス調達、工事発注が一本化され、民間事業者にアウトプット達成の手段を提示させるために公共が機能やパフォーマンスを示す仕様書(パフォーマンス仕様書)の利用が促進された。このパフォーマンス仕様書によって、民間のノウハウを利用する仕様変更提案を認めた時に、物品購入を意図していたのに事業者が経済的にメリットのある(レンタル)サービス提案を提示したり、サービス購入を意図していたのに逆に物品購入の提案がなされたりした場合には、そのような理由では提案を拒絶することができなくなった。「民間のノウハウを最大限に活用するルール」の導入である。

 英国でこのようなルールが導入された背景には、公共から民間への業務発注に関する改革の歴史があるので、この公共調達に組み込まれた官民協働の仕組み発展の歴史を紹介する。次回は、公共調達の仕様書の書き方の変遷について紹介する。
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登録日:2007年 07月 29日 12:36:07

プロフィール
Hiroshi Kumagae
Hiroshi Kumagae
(男)
1959年05月06日
アビーム コンサルティング㈱             ディレクター
著書:脱「日本版PFI」のススメ 相模書房 ISBN978-4-7824-0705-9
ESADE大学院 国際経営修士
慶應義塾大学院 特別招聘講師(非常勤)
三田図書館・情報学会会員、PMFJ会員 公益事業学会会員
平成18年度内閣府PFI事業の総合評価検討委員会委員
平成19年度自治体PFI推進センター専門家委員会委員
日刊建設工業新聞 所論/緒論コラムニスト
東京LEC 法律文化 連載中 
剣道3段、居合道3段(夢想神伝流)
福岡県生まれ横浜市在住
連絡先:
hkumagae-mobile@softbank.ne.jp
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