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所論諸論 民主党にPFI事業の世界標準化による改善を期待する09年12月18日 日刊建設工業新聞 

 民主党がPFI手法を見直している。官民がLose-Loseになる可能性が含まれている既存のPFI事業をWIN-WINとなるように世界標準に再構築することを民主党に期待したい。
 PFI事業に実際に関与した英国人弁護士達によって策定された「PFI契約の標準化モデル」が公表されたのが1999年の7月。この標準化モデルにおけるPFIとは、民間に施設を所有させ、その施設が生み出すサービスのみを購入する仕組み。従来官が施設を所有していたことから、官がとらざるを得なかったリスクを民間に移転する為に、サービスの水準と、その評価の考え方を明確化し、具体的な手段は民間に任せる。そして、事業者が要求水準を充足することが出来なかった場合にペナルティによって対処する仕組みである。
 この「施設購入をサービス購入に転換」する新たな発想と、シティオブロンドンの得意とする金融工学の技術を用いて、「政府の債務を増やさない仕組み」が高く評価され、2000年以降に、多くの国がPPPという名称でPFIの仕組みを導入した。
 本家の英国では、PFI契約の標準化が進み、交渉的対話方式を用いたPFI手法が標準モデルとなっており、官民の責任分担を明確にしつつ、契約内容を柔軟に変更する仕組みが機能している。
 また、PFIのモデル事業として、病院、小中学校、公営住宅、警察、消防、スポーツ・レジャー施設、複合施設、窓口業務関連施設、高速道路、外灯、廃棄物処理施設毎に、ガイドラインが策定されており、計画立案の段階、入札段階、契約締結段階、施設整備段階、初期運営段階、成熟段階における事業毎の管理運営上の留意点が示されており、それぞれの事業特性を反映させたPFI契約の雛形モデルも公表済みだ。
 この傾向は2000年以降にPPPを導入した国々においても共通しており、情報の共有化が行われている。
 ところが、わが国では、英国が標準化モデルを公表した同じ1999年の7月に、高額投資事業の長期にわたる分割払いの仕組みとして「日本版PFI」という公的なファイナンスリースを行う日本独自の仕組みが導入された。そのため、このような標準化された海外の英知を活用することが出来ない。
 たとえば、わが国のPFI 案件は、その評価の仕組みが世界標準のモデルと異なる。具体的には、異なる提案比較を避けるためか、発注者が特定の手段や手法に基づいた性能を決め(性能発注)、施設を官が所有(BTO方式)する傾向にあるため、民へのリスク移転が出来ない。また、事業者も価格競争に走り、利益向上が期待できない。つまり、官民がLOSE-LOSE の関係となっているのだ。また、民間事業者の提案内容が発注者の当初計画と異なっていたとしても、調整なしに直接価格を比較している。
 国際標準では「発注者要求と異なる提案」はPSC(VFM算出時の公共が事業を直接実施した場合のコスト内訳)を使って間接的に比較する。事業者提案にあたっての官民の役割分担は以下の通り。
 【発注者】施設の用途、容量、利用の頻度等の要素についての許容範囲を「要求水準」として示し、自ら施設調達した場合の具体的な方法、モニタリング手法、調達と運営の価格(PSC)を示す。
 【事業者】要求水準と同等またはそれ以上の水準を達成している提案内容及び、PSC と同様の提案をした場合の見積り(参照価格)と事業者提案に基づいた入札価格の関連性を示すために、入札価格と参照価格の違いの内訳や提案のメリット等の比較内訳を提示する。
 PSC という官民共通の比較対象を設定し、異なった提案内容を間接的に比較できるため、官のコストを下げ、事業者利益を向上させるWIN-WIN の解決策を見つけ出す手段や手法を見つけ出すことが出来る。
 PFIは既に国際標準化されており、海外の英知を集結させた各種ガイドラインを各国が共有化できる状態である。日本版PFIを世界標準に転換させ、PFI事業からより大きな付加価値を生み出すことが望ましい。

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登録日:2010年 01月 19日 10:27:43

所論諸論  PFI事業のあるべき姿  2007 年 12 月 13 日 日刊建設工業新聞

PFI手法によって整備された高知医療センターは、収賄事件にまきこまれただけでなく、「病院本体の赤字問題のなかで、企業との契約というベールに包まれ、赤字の原因がわかりにくいのが一番の問題」と、運営上にも問題があるといわれているらしい。

しかしながら、病院本体の赤字は予想できたことで、民間事業者の運営とは関係ない。また、企業契約のベールに包まれているのは、海外のPFI事業では当たり前の会計帳簿の開示を発注者が事業者に要求しなかったからだ。

この病院の抱える最も重要な課題は、病院の赤字や民間の情報開示問題ではなく、移転可能な公共リスクを民間移転しておらず、民間に移転できないリスクを無理に民間に移転していることである。

英国でも、病院PFI事業の医療行為を含んだ運営は公共が担う部分であり、医療行為の赤字は公共責任だ。明確な業務とリスクの分担が原則であるPFI事業において、「公共が損をしているのに、民間がもうけているのはけしからん」という根拠のない責任転嫁論は望ましくない。

それでは、いったい官民の業務分担やリスク分担はどうあるべきなのか。英国の病院PFI事業と比較しながら、このあるべき姿を検討してみた。

まず、英国では、医療関連業務は公共の業務であるので民間には委託しない。医療関連業務とは、診療行為だけではなく、薬剤・診療材料・医療機器の購入、電子カルテの調達から運営まで一連のものである。民間に委託するのは、建物の建設維持管理、清掃、ケータリング、医療機器の維持管理、駐車場の運営など、民間ノウハウを活用し、民間にリスクをとらせ、効率的に運営することが可能な分野のみである。

たとえば、建物の建設維持管理のリスクを民間移転するので、民間は施設整備費、大規模修繕費等を民間資金調達し、施設提供サービス料の受け取りによって、融資額を返済する。建物に不具合が出て使えなくなると、事業者は施設提供サービス料を受け取れなくなるので、不具合がない状態を維持しようとする。合理的である。

一方、高知医療センターはBTO方式であり、施設が老朽化して、適切な状態を下回っても、契約時に確定した債務を払い続けなければならない。また、公共が施設を所有し、大規模修繕も、自らの判断で行うため、今後老朽化してくると、追加コストを支払って修繕せざるを得なくなるであろう。

さらに、一連の医療行為の一部、たとえば、医薬品の調達や診療材料の購入を安易に民間に委託している。新たな薬品や診療材料の登場で、既存の価格が変動した場合、どのようにして価格を調整するのであろうか。また、医者がコスト意識なしでこれらの消耗品を使ったり、事業者が高価な契約外の薬剤や診療材料を医者に売りつけて、これを事業者収入にしたりすると、確かに病院の赤字が増え、事業者がもうけることになる。しかしながら、それは、発注者の作った事業枠組みの特性が生む必然であって、いくら、事業者の経理情報を公開しても改善されるようなものではない。

PFIは、公共のリスクを民間移転することからVFM(バリュー・フォー・マネー)を生み出す仕組みであるといわれる。そのため、事業計画の段階で、リスク分析を行い、官民のどちらがリスクをとれば、より廉価にしかも高い品質でサービスが提供できるかの判断をしなければならない。

診療業務がコア業務であり、重要なのであれば、診療業務は民間に委託すべきではない。これは、リスク分担の観点から考えれば明白である。不適切なリスク分担はVFMの低下につながる。

民間にできることを民間に任せたいのならば、極端な例であるが、米国ジョージア州のサンディ・スプリングス市のように、警察、消防、緊急医療を除いてすべてを民間委託する方法もある。

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登録日:2007年 12月 23日 18:11:47

所論諸論   市場化テストに必要なガイドライン  日刊建設工業新聞 2007 年 10月 31 日

2008年度以降の市場化テストの対象事業数が、16事業追加され41事業になるという。

内閣府による市場化テストの定義は、「ある公共サービスの提供について、官と民が対等な立場で競争入札に参加し、価格・質の両面で最も優れた者が、そのサービスの提供を担う仕組み」であり、総務省による定義は、「公共サービスの質の維持向上及び経費の削減を図る観点から、透明かつ公正な競争の下で地方公共団体と民間事業者との間または民間事業者の間において、これを実施する者を決定するための手続き(公共サービス改革法に規定する官民競争入札及び民間競争入札=以下『官民競争入札等』という)を含む=以下『市場化テスト』という)」である。

そもそも市場化テストの目標は、公共サービスの効率化、質の向上、担い手の多元化、行政府の生産性の向上と規模の最適化等を、民間ノウハウを使って達成させることであり、コスト削減をするために、高い人件費の公務員を、安い人件費の民間スタッフに置き換えることでコストを削減するための仕組みではない。ベストな改善案を見つけることが目標であり、それを採用するためには、現在解決しなければならない課題を見つけ出し、それを業務水準規定書(Performance Work Statement=PWS)に落とし込む作業が必要である。



以下は、米国の「適切なPWS作成のためのガイダンス」が示したPWS作業手順の概要である。

まず、市場化テストを適切に行うためには、現状分析を行い、現在の手段や手法がなぜそうなっているかを明らかにした上で、民間事業者が同じ目的でプロセスの見直しを行った場合には、どのようなプロセスで実施するかについての情報を収集し整理する。

このとき、複数の民間事業者を集めて意見を聞くよりも、事業者ごとに会合を持ち情報を収集する方が大きな効果が生まれるといわれる。これは、事業者のノウハウを公共に対してアピールしたいという民間の営業活動と、ノウハウを競争相手に開示したくないという知的財産保護のニーズがあるからだと思われる。また、この情報収集の段階で、どの程度のレベルのリスク移転が可能であるかについて、事業者から情報を得ることが次のステップの情報収集にもなる。

情報収集後には、まず、要求を満足させるものは何なのかを分析し、要求する成果を設定する。つぎに、その結果を達成するために必要な業務を分析する。そして、どのような結果であれば満足できるのか、その結果には許容範囲があるのか、あるならばそれはどの程度であるかを分析する。

これらの分析は、業務の特殊性や、事業ごとの特殊性を反映させた形で分析することが重要である。

これらの分析の結果、次の三つの詳細目標を設定する。

〈1〉結果、成果、機能、容量等による要求の記述(手段や手法は用いない)
〈2〉測定可能な業績指標の選定
〈3〉受け入れ可能な品質レベルの設定

そして、いったん設定した三つの詳細目標が適切かどうかを『So What?』テスト(PWSの適切性検証方法)等を利用して検証する。

以上のように、民間事業者に業務を委託して、今まで公共が達成できなかった目標を達成してもらうには、達成可能で、満足のいくレベルで、しかも、モニタリングによってその達成が確認できるようにPWSを設定する作業を行うことが不可欠となる。

このようなPWSの構築によって、民間委託業務のモニタリングが可能になるし、事業者が業績を達成出来なかった場合の対処が検討可能になる。また、このPWSは、公共が競争に勝って、業務を推進する場合に、公共サービスが適正に行われていることを検証するための指標ともなるので、自らが達成することも十分に考慮した上で、その業務水準を設定する必要がある。

わが国もこのようなガイドラインを策定してはいかがであろうか。
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登録日:2007年 11月 01日 20:25:46

所論緒論/日本型PFIの特異性と日本版PFIの改善の方向性  日刊建設工業新聞 05-12-08

◇EUROSTAT基準では100%公共債務となる

わが国の国と地方自治体をあわせた累積債務は増え続けており、既にGDPの150%を超えている。健全な財政状況の定義は、国によって違うが、累積債務額が、G8の4カ国を含む25カ国の上限基準値の2・5倍に達しているわが国のPFI/PPPの民間資金調達の100%が公共債務となる状況は世界的なPFIの導入目的から考えると異常である。財政状況の悪化している中での日本版PFIの見直しが必要な理由はここにある。

EUメンバー国は、マーストリヒト条約の合意に基づき、健全な財政状態を保つ義務を負っており、年度財政赤字はGDPの3%を超えてはならず、総債務残高もGDPの60%以内に保たなければならない。そのため、欧州単一通貨EUROを導入した諸国の中では、フランス・ドイツ・イタリアの年度赤字が3%を超えて問題化している。また、拡大EUメンバー諸国のひとつであるハンガリーの財政赤字が急拡大しており、予定していた欧州単一通貨EURO導入を先延ばしにしなければならなくなっている。

このマーストリヒト条約の健全性を示す財政健全基準は、PFI手法を生みだした一つの要因であった。すなわち、政府が施設整備をするために国債を発行すると政府の累積債務となるが、民間事業者が民間施設を整備するために資金調達をした場合には、その民間債務は公共の債務ではない(公会計から債務をオフバランスできる)という考え方からPFIが生まれたのである。このようにPFI導入の初期の段階では、公会計からの債務のオフバランスが強調されたが、今では、オフバランスにするために、本来の目的である最大の価値(ベストバリュー)が生まれなくなるのはナンセンスであるという考え方に変わっており、ベストバリューが生まれるのであれば、民間資金調達の債務が結果的に官民どちらの債務になるかは重要ではなくなっている。

EUも、PPPガイドラインを作成し、ベストバリューの考え方からPPP/PFI手法を推進している。しかしながら、拡大EUメンバー国のうち、特に財政的に苦しい東欧諸国では、ユーロ通貨圏に入りたいため、「施設整備に投資はしたいが、債務を増やすわけにはいかないというジレンマ」に陥っており「公共債務をオフバランスにするためのPPP手法」の積極的な導入が検討されている。

このような背景から、EUROSTAT(欧州統計局)は、加盟国政府の財政状況を正確に統計するために、昨年メンバー各国に次のようなPPPの財務処理基準を示した。

*−民間の資金を使って施設整備を行う場合、次の条件の両方を満たしている場合にのみ、公共セクターは、その投資を民間事業者の投資としてみなすことが可能であり公共セクターの債務としない形で会計処理できる。〈1〉民間のパートナー企業が建設リスクをとっていること〈2〉民間パートナー企業が少なくともアベイラビリティーリスク(注)もしくは需要リスクをとること−*

二つの要件をまとめると、いくら民間が施設を所有していても民間が建設リスクをとっていなかったり、建設リスクをとっていたとしてもアベイラビリティーリスクもしくは需要リスクをとっていなかったりすると、民間の資金調達であっても公共セクターの債務とみなして会計処理をしなければならないというルールである。

英国には、このEUROSTATのルールが導入される前から、官から民へのリスク移転度合いを評価し、官民どちらの債務にするかを判断する基準(財務報告基準FRS−5)があった。そのため、EUROSTATのルールの適用による影響は、英国の財務報告基準上では、民間債務であるものの一部をEU統計上は公共債務として認識しなければならなくなっただけである。既に、PFIの導入目的は、公会計からの債務のオフバランスではなく、ベストバリュー(VFMの最大化)の達成にシフトしており、04年の公会計からオフバランスされているPFI事業関連の債務の割合は全体の43%であったため、EUROSTATのルールの導入による大きな影響はなかった。

ところが、この基準に基づくと、割賦払いで施設整備費をしている日本型PFIは、BTO方式(公共が施設を所有するPFI)は当然のことながら、BOT方式(民間が施設を所有する形態)であっても、割賦払いの部分は公共の債務として認識しなければならなくなる。

債務のオフバランスを目的としたPFIの導入は本末転倒ではあるものの、わが国の財政状況を考えるとオフバランスにすることが可能なリスク移転型のPFI手法を検討する必要があるのではないだろうか?

注=アベイラビリティーリスク=施設の一部が何らかの理由で利用できなくなった場合には、その重要度と事業者の対応の仕方に応じて支払いが減額されるという考え方。施設はエリアごとに重要性に基づいて、利用できない場合の減額割合や、不具合が生じても減額が免除される許容時間が設定されており、全ての施設が利用可能(Available)な状態の場合にのみ全額支払いが行われるという考え方。施設に不具合が多い場合には支払いがゼロになるという条件がつく。

この記事は、ちょっと古いものですが、今でも十分当てはまるトピックですので遅ればせながら載せました。

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登録日:2007年 10月 11日 18:44:53

所論諸論/リスク移転で解き明かすPFIの真の姿  日刊建設工業新聞07年10月10日

内閣府が先日行ったPFIのインターネット会議に参加した各国(日本を含む八つの国および組織)の課題、問題意識はかなりの部分で共通する一方、入札における総合評価のあり方、資金調達の方法等、日本が異なるアプローチをしている分野が明らかになった。公共リスクの民間への移転も国内外では大きく異なっている。

また、筆者も委員をしている自治体PFI推進センター専門委員会も、今年のテーマを「リスク認識共有化に向けた新たなプロセス形成」としており、既に第2回委員会が9月26日に開催された。

このように、今年はPFI事業におけるリスクが注目されそうである。実際のところ、PFI事業のVFM(使ったお金が生み出す価値)を生み出す要素の多くは、公共リスクを民間に移転することに関連するといわれている。

ところが、既存のリスクガイドラインでは、リスクの定義が、「選定事業の実施に当たり、協定などの締結の時点ではその影響を正確には想定できない。このような不確実性のある事由によって、損失が発生する可能性をリスクという」となっている。これは、公共が認識しているリスクであって、民間のリスク認識ではない。リスクをネガティブにとらえることしか出来ないと、リスク移転はリスクプレミアム要因にしかならない。なるべく民間にリスクを移転しないように発注するという、世界標準のPFI手法では考えられない日本版PFIが生まれてしまう原因はここにありそうだ。

英国財務省のリスク管理指針には、「リスクとは行動や常時の伴う将来の成果の不確実性であり、ポジティブなチャンス(機会)もネガティブな脅威のどちらも含まれたものであり、そのリスクは、何かが起きる可能性ともしそれが実際に起きたときの影響の組み合わせによって評価することができる」と示されている。これこそが、PFIに限らず、世界的に認識されている官民が共有するリスクの概念であり、このようなリスクの共有概念があるからこそ、公共リスクを民間に移転することからVFMが生まれるという考え方が生まれるのである。

例えば、30年の耐用年数を持つ施設に含まれる設備更新のリスクを民間に取らせることを避けて、15年間のPFI事業を締結することは適切ではない。なぜなら、事業の不具合リスクや品質低下リスクが事業契約期間の後に急上昇する可能性があるからである。

自治体は、施設を整備したり所有したりすることがコア業務ではない。従って、施設の不具合リスクを公共がとるよりも、施設の不具合リスクをとることが上手なものに委託した方が、より高いコスト削減効果が生まれるのではないかと直感的に分かるのではないだろうか。

世界標準のPFI事業手法が示されており、民間にリスクを移転するためのさまざまな仕組みがパブリックドメインとなっている。リスク移転をせずに、民間資金を利用して割賦支払いをすることは、税金の無駄遣いであり禁止すべき行為である。わが国で、この原則に反するPFI事業が行われるのは、世界標準のPFI事業の仕組みがわが国に紹介されていないことに原因がある可能性が高い。この課題を解決するためには、
▽公共のリスクのうちどのようなものをどのようにして民間に移転するのか
▽移転されたリスクを管理するためのモニタリングの仕組みとはどのようなものか
▽要求を満たすことが出来なかった場合にはどのような対処がとられるのか
−の三つを連動させた事業枠組みを公共が設定しなければならない。割賦支払いをよしとする日本版PFIから脱皮して、世界標準のPFI事業のレベルに昇華させるためには、民間資金を活用したこのようなリスク移転の仕組みを理解することが必要である。

これらのしくみの詳細解説を『脱「日本版PFI」のススメ』(日刊建設工業新聞発行)として出版したのでご紹介しておく。

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登録日:2007年 10月 11日 18:17:05

PFI手法と米国生まれのPBC(業績連動契約)の共通点

米国の06年連邦政府サービス調達総額は1472億ドル(約16・9兆円)、そのうち約半分の722億ドル(約8・3兆円)がPBC(業績連動契約)で調達されたという。米国連邦政府は、政府調達のうち、1件が2万5000ドル(約280万円)以上の契約の40%以上をPBCにする目標を立てて取り組んでいる。これに対して、05、06年ともに目標を上回り、約50%の契約がPBCで締結されたことが分かった。

PBCは、サービスの業績と支払いを連動させる仕組みであるため、発注の段階で、PWS(業績業務仕様書)、定量可能な業績水準、業績インセンティブを設定し、事業者に業績を達成させるインセンティブ(業績を達成することが出来ない場合には、契約額を満額受け取ることが出来ない仕組み)を組み込む。この仕組みは、英国のPFIの仕組みに類似しており、一見、民間事業者に業績変動リスクを移転していることから、従来の契約よりも厳しい条件になっているように見えるものの、実際には、政府が民間に既存の仕組みでは解決できない問題を解決するための費用を支払うことから、事業者にとって見ればこの公共からの課題解決要求に含まれる不確実性が収益を生み出す源泉となる。

一方、政府にとって見ても、従来公共では、解決できなかった問題の解決を民間に特定のコストで移転できることから、従来公共が試行錯誤していたときのコストに比べて、公共コストの削減(VFMの向上)となる。つまり、公共のVFM向上と民間の収益向上を同時に達成するWIN−WINの関係が構築できるのである。世界の公共調達の流れを俯瞰すると、PFIやPBCのように官民が平等の立場に立ちWIN−WINの関係を構築しようとする動きが見えてくる。

このような流れに対して、わが国では、談合問題の反動から、公共が事前に入札参加者を選定する指名競争入札がとりやめられ、誰でも参加できる一般競争入札が増えている。その結果、下落した落札額は、公共コスト削減の観点から、一見望ましいようにも見えるものの、落札額の下落分は、二次請けや三次請けの会社に転嫁されているだけだという見方もある。落札額の下落分が下請けに転嫁される背景には、発注者−元請け−下請けと、上位が下位を管理するルールを決めるというWIN−LOSEの関係に原因がある。また、WIN−LOSEの関係となるのは、ひとつの解決方法に限定し、価格だけで競争するからである。

これをWIN−WINの仕組みにするためには、公共が明確なビジョンを持ち、長期的な事業戦略を立て、事業提案を評価するための評価基準の設定をした上で、同じ成果が出るのであれば、自由な解決方法を提案できるような調達の仕組みにすればよい。そうすれば、安くてより良い提案を提示した場合には、公共は発注コストを削減しながら、事業者は利益を上げることができるようになる。このような安くてより良い解決策を提示するためには、イノベーションが必要である。また、発注枠組みも、イノベーションを引き出すようになっている必要がある。

米国では、法的にも、組織的にもPBCを活用するためのインフラが整っており、数多くのガイドラインが整備されている。この米国のNPM(新しい公共経営手法)であるPBCと英国のPFI手法に共通なキーワードはリスク移転とイノベーションとパフォーマンス・モニタリングである。

ちなみに、米国のPBCの効率化のガイドラインには、次の6つの規律が示されている。

①文化の転換=政策を成功させるために不可欠な組織的、文化的な転換を事前管理すること
②戦略連動=組織的な戦略ゴールを反映させた望ましい成果を得るために組織全体に矛盾のないビジョンを提供すること
③組織管理=プロジェクトを実施するための、役割、責任、意思検定の権限を確立すること
④コミュニケーション=すべての利害関係者に対する、流通情報の内容、手段、頻度を決めること
⑤リスク管理=リスクを特定し、評価し、モニターし管理すること
⑥パフォーマンスモニタリング=事業の実施期間中に定期的なスケジュールに基づいて、コスト、スケジュール、パフォーマンスに関する分析を行い報告すること。

このようなNPMに共通する仕組みを見ていくと、従来型では資金が廻らないからという理由で、割賦払いを利用してキャッシュフローを改善する日本版PFIの考え方は、税金の無駄遣いにつながる禁断の手法であり、NPMとして分類できそうもないことがわかる。

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登録日:2007年 09月 17日 10:59:02

所論緒論/PFI事業において「SPCの調整機能」は本来不要なもの 日刊建設工業新聞 07-04-04

<日本PFI協会の誤解>
日本PFI協会が「SPCによる入札・提案方法」を提示した。「発注者は事業者(SPC)を選ぶのであって、構成員を選ぶのではない。(中略)SPCは契約のためのペーパーカンパニーであり、構成員を選んでいるような誤解がある」という考え方に基づいたものらしい。

この根拠の一つとして英国のPFI事業との比較を持ち出しているが、英国をはじめ、既に世界で標準化されようとしているPFI事業においては、「SPCは契約のためのペーパーカンパニーであり、構成員を選ぶこと」は常識となっている。

<PFI事業とPM業務>
PFI事業は、施設の整備と施設の維持管理を含めた長期にわたる事業契約であり、建設会社や、管財会社のみでは事業を請け負うことが難しい。そこで、建設、維持管理、警備、清掃等のさまざまなノウハウを持った企業を構成員としたバーチャルな組織を構成し、SPCが契約のためのペーパーカンパニーとなり、SPCがいったん請け負ったすべての契約内容をBack To Backでそれぞれの専門性を持った事業者に委託する。

つまり、SPCの業務を建設業務、維持管理業務、警備業務、清掃業務、と分担していけば、PM(プロジェクトマネジメント)業務はSPC内に残らないはずである。

<誰のための入札提案方式か>
同協会の提案は、一見、事業者のための提案に見えるが、実際に指名停止を受けたいくつかの建設会社へヒアリングしてみると、談合問題の罰則をこのような入札方式によって有名無実化することを建設業者としては求めていないことがわかる。すなわち、この提案は、事業者のための提案ではなく、発注しようとしても発注できる相手がいなくなることで困る発注者のための提案であると考えられる。

<問題はどこにあるのか>
以上から、二つの問題点が見えてくる。一つは、構成員間で適切な業務分担ができていないために、わが国のPFI事業にPM業務が残っているという問題であり、もうひとつは、発注できる相手がいなくなると発注者が困ってしまうという問題である。

<構成員間の適切な業務分担に必要な発注方式の改善>
構成員間で適切な業務分担ができない原因には、発注者の発注の仕方の悪さがある。PFI事業で民間資金を使う目的は、民間資金を使うことによって、従来公共がとっていたリスクを民間に移転するためである。

この目的を達成するためには、PFIの仕組みとして国際的に標準化された仕組みの導入が不可欠である。その仕組みとは、要求水準書とモニタリングシステムと支払いメカニズムの連動である。

現在のわが国の多くのPFI事業は、発注者のやってもらいたいことリストである要求水準書に対して、事業者が提案することで成り立っているが、施設整備が終わり、運営が開始されると発注者の要望と、事業者の運営内容が必ずしも一致しないため、PM業務が必要になってくる。本来必要のないPM業務が行われている背景には、このような発注形態の不備がある。

もしPM業務に2000万円程度の価値があるのであれば、発注者が、発注方法を世界標準に変更するだけで、2000万円を官民で折半することができる。これは、民間利益が1000万円アップし、公共のVFM(バリュー・フォー・マネー)が1000万円向上することを意味する。いわゆるWIN−WINの関係の構築である。

<事業者の事業参画意欲をなくす仕組みを排除することの必要性>
発注できる相手がいなくなる原因には、指名停止によって発注できる事業者が制限されることもあるが、商社や製鉄会社等が代表企業になっている現状から判断すると、指名停止自体は発注者の事業参画意欲にそれほど大きな影響は与えていないと思われる。むしろ問題なのは、指名停止になった時に要求される違約金の額があまりにも巨額であるために、事業者が応募できなくなっているという課題にある。事業者として、構成員の誰かの責任で契約が締結できなくなったときに、巨額のペナルティーが発動する条件がついていたら、応募できるわけがないことは明らかである。

この問題の解決方法として、「何らかの理由により契約締結できない場合には、契約不締結の原因となった側が、事前に合意した違約金を支払うか、もしくは、それまでかかった相手の費用を実費精算で負担する」という考え方が適用できることは既に本コラム(過去データの整理3を参照)で指摘したとおりである。

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登録日:2007年 04月 06日 21:59:46

所論緒論/札幌市・新定時制高校PFI事業、応募者なし 日刊建設工業新聞 07年3月7日

談合問題に起因する過大な事業者リスク負担で成り立たなくなるPFI事業

<入札不成立の理由の誤解:>
札幌市の新定時制高校PFI事業に応募者がなかった。
「市の計画課は、その理由を“企業の間では、予定価格の安さや事業期間の長さ、違約金の高さへの懸念が強く、『大きな利益が見込めないのにリスクが高いと判断されたから』”と認識しており、『市教委はその対応策として事業期間の短縮など条件を緩和して再募集する方向で調整している』と報道された。この報道内容の真偽確認は行っていないが、事業者が指摘しているリスクは、少なくとも事業期間が長いことから生じる大規模修繕リスクではない。

<札幌市だけではないPFI事業の入札不成立:>
公表されているPFI関連資料を読み込んだ上で、民間事業者およびいくつかの自治体にヒアリングしてみたところ、この基本協定書の条件が理由でPFI事業入札が成立しない問題は、札幌市だけでなく、ほかの市でも発生していることが分かった。
事業者が嫌っているリスクとは、基本協定書の中にある違約金の額が大きすぎる点である。

<基本協定書の談合防止条項に絡む入札不成立問題:>
基本協定書の違約金条項は、談合問題が発覚した以降に導入されたらしく、複数の自治体で共通して二つの違約金が規定されている。ひとつは、「当該事業で談合等の不正を働いた場合の違約金(当該事業談合ペナルティ)」であり、もうひとつは「当該事業に関係なく、事業者事由により契約締結できなかった場合の違約金(一般契約不成立ペナルティ)」である。事業者から当該事業の談合ペナルティが高すぎるというコメントはあるが、この条項が入札を取りやめる理由になるとの指摘は無い。入札不成立の原因となっているのは、一般契約不成立ペナルティである。このリスクは事業者としてコントロールしきれないという。
さらに、これらの協定書には、違約金問題以外にも共通している不合理な点がある。それは、「協定書の締結目的」は、「契約が締結されるまでの市及び事業者の双方の義務について定める」ものと規定されており、しかも「実際に、首長交代や、議会の承認が得られない為に契約締結できなかった例が過去にあった」にもかかわらず、発注者側の理由で契約締結できなかった場合の違約金について触れられていない点である。

<札幌市はどのような対処を取るべきか:>
当該事業では、民間事業者の基本協定書に関する全ての意見書が違約金の削除を求めた。また、基本協定書に関する質疑応答でも、23の質問のうち18(約8割)は、この違約金に関連するものであった。特に、一般契約不成立ペナルティは原因特定が難しく、入札額の10%にもおよぶ違約金を払うという条件は事業者として飲めないという明確な意思表示が見て取れた。
解決策の展望がありそうなのは、基本協定書に関する質疑応答の中で「10%」としていた違約金を「10%を限度として」と市が緩和した点である。一般に、大規模事業で契約締結に時間がかかる場合、作業を止める訳にはいかないので、契約当事者が、「お互いの契約締結の意思を示す同意書(基本協定書に該当するLOI : Letter of Intent)」を結ぶ。海外のPFI事業でも、公共である以上、議会の承認が得られなければ契約を締結できないし、民間事業者も取締役会の承認を得られなければ契約を締結することが出来ないためLOIを結ぶ。何らかの理由により契約締結出来ない場合には、契約不締結の原因となった側が、事前に合意した違約金を支払うか、もしくは、それまでかかった相手の費用を実費精算で負担する。契約締結できなくなる可能性はお互い様であり、ここには一方的なペナルティの発想は無い。札幌市の再募集では、是非この考え方を用いてもらいたい。

<その他の問題点:>
最後に、今回の紙面の関係上、詳しくは述べないが、当該事業は、PSC算定根拠問題や、修繕リスク分担問題等、基本協定書問題以外にも、さまざまな問題を抱えていると思われる。圧巻なのは、当該事業は市が市債で資金を調達して、施設整備後に市がゼネコンに施設整備費を一括支払いするため、民間資金が必要ない点である。民間資金を利用としないのに何故PFI事業と呼ぶのか理解に苦しむのは私だけではないはずだ。

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登録日:2007年 03月 27日 22:29:48

所論緒論/株式会社の学校設立の解禁に伴うサービスの品質低下の危険性 日刊建設工業新聞 070210

求められるサッチャー政権での失敗のフィードバック
構造改革特区推進本部の下にある有識者評価委員会で「構造改革特区で認めた規制緩和について全国展開できるかどうかを検討することになっており、株式会社の学校設立の解禁や、校舎やグラウンドなどの自己所有を義務付ける通知を見直すという。この手法は、発注者にとっては制度の見直しだけで済む安易なものであって、サッチャー政権時の民営化手法と類似している。サッチャー政権での民営化手法では、サービスの品質が管理できなかったことから、わが国においてもこの手法では公共支出の削減とサービスの品質の改善の同時達成がうまくいかない可能性があるので留意する必要がある。

サッチャー政権では、まず民営化可能な公共事業は民営化し、官民の競争によって公共支出の削減とサービスの品質の向上を同時に達成しようとした。しかしながら、短期的なコストの削減は達成することができたものの、民営化するために民間に事業運営の独立性を持たせたことから、サービスの品質を管理することができなくなった。サービスの品質が落ちるのであれば、コストが削減されるのは当たり前であることから、サービスの品質を管理するための改善が求められた。このサッチャー政権の民営化の失敗を是正した手法がメジャー政権時代に導入されたサービスの品質を管理する仕組みを組み込んだPFI手法である。このPFI手法は、わが国の施設整備費の割賦払い型のPFI手法とは異なり、施設を所有する民間は公共が求めるサービス水準を満たした場合にのみ、契約で合意した施設提供のサービス料金を受け取ることができる「(官から民への)リスク移転型PFI手法」である。そのため、サービス水準を満たすことができない場合には、民間はサービス料金を受け取ることができなくなり、施設整備費を回収することさえできなくなる。ただし、サービスの品質を評価する手法は公共が提示した事業枠組みに基づいて事業者が設定するものであるため品質管理可能な指標が設定されており、しかも、その事業安定性は金融機関によって精査されることから、民間への無理なリスク移転にはなっていない。

現在、わが国が検討しようとしている校舎やグラウンドの所有の義務付けを見直すことによって、民間事業者の教育事業参入を促進する方法は、サッチャー政権でおこなわれた民営化と同様に民間の事業運営の独立性を認めている。言い換えると、公共がサービスの品質を管理する事業枠組みを設定していない。このような方法を導入すると、サッチャー政権で起きたように公共サービスの品質を管理できなくなる可能性が高くなる。過去の失敗をいたずらに繰り返すのは税金の無駄遣いであるので、サッチャー政権での失敗のフィードバックをする必要がある。

NPM(新しい公共管理手法)の世界的な潮流は、民営化ではなく、校舎やグラウンドなど学校運営の主体が自己所有することを見直し、施設の維持管理を得意とする民間事業者に公共施設を所有させ、適切な維持管理をすることによってサービスの品質を向上させるというものである。そして、このような公立の学校の施設運営を委託するためには、「株式会社に初期投資させ施設に関連したリスクを移転することによって公共支出を削減しサービスの品質を向上させる手法」が有効であることが実証されている。

世界中の公共セクターが、世界中のベストプラクティスを参照して事業改善の努力をしている。わが国においても同様に、海外の公共セクターにおけるNPMのベストプラクティスを参照して、NPMを改善するための検討をおこなうよう有識者評価委員会に要望する。

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登録日:2007年 03月 27日 22:26:36

プロフィール
Hiroshi Kumagae
Hiroshi Kumagae
(男)
1959年05月06日
アビーム コンサルティング㈱             ディレクター
著書:脱「日本版PFI」のススメ 相模書房 ISBN978-4-7824-0705-9
ESADE大学院 国際経営修士
慶應義塾大学院 特別招聘講師(非常勤)
三田図書館・情報学会会員、PMFJ会員 公益事業学会会員
平成18年度内閣府PFI事業の総合評価検討委員会委員
平成19年度自治体PFI推進センター専門家委員会委員
平成20年新宿区立図書館指定管理者選定委員
平成21年横浜市立山内図書館指定管理者選定委員
日刊建設工業新聞 所論/緒論コラムニスト
剣道3段、居合道4段(夢想神伝流)
福岡県生まれ横浜市在住
連絡先:hkumagae@yahoo.co.jp
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