カテゴリー [東日本大震災からの復興にむけて]
東日本大震災復興のための官民連携について
東日本大震災は、被災の規模からも、エネルギー・インフラの再構築の範囲からも、阪神・淡路大震災の復興対策をはるかに上回っている。復興費用においても、阪神・淡路では、当時のGDPの2%相当であったが、今回の復興費用はGDPの5%であるという試算もある。
復興事業を円滑に、かつ、迅速に行うためには、民間による事業開発部分に民間資金を使うだけでなく、公的施設やインフラ整備においても、如何に上手に民間資金を活用するかを検討することが重要である。特に、津波の被害が大きい場所では、社会基盤の整備と民間投資の促進を同時に実施しなければならない。そのため、民間のノウハウを最大限に活用し、官民の適正な連携を行うことができるように、PFI/PPP手法を活用する事業枠組みを整備することが緊急の課題であることを指摘したい。
この長期的な対応策に既存の我が国のPFI手法は不適切である。それは、既存の日本版PFI手法は、「公共施設の整備費を割賦払いするだけの手法」だからである。したがって、事業から長期的に生み出される付加価値を最大限にすることができるような新しい制度改革が必要であり、この検討にあたっては、諸外国で進められている「サービス調達としてのPFIやPPPの手法」を積極的に活用すべきである。
その手法として、「包括的道路保全サービスPFI事業手法」と、「PFI手法による施設サービス調達を組み込んだ包括的な地域開発提案競争手法」を紹介する。
最初の「包括的な道路保全サービスPFI事業手法」は、車道だけでなく歩道、街灯、信号機等の新旧含めた全ての道路関連施設のパフォーマンスを保証するサービス購入契約である。
具体例としては、ポーツマス市の道路PFI事業がある。この事例では市全体の480kmに及ぶ車道と歩道および19,000本の街灯等のサービスパフォーマンスを25年間に渡り保障するために民間資金を活用している。
2005年に締結された同市の包括的な道路PFIの契約の締結から既に5年以上経過し、その効果は検証されており、英国では既に新たな包括的な道路PFI事業が動いている。(ワイト島は25年間・12億ポンド(約1572億円)、エセックス州は10年間・30億ポンド(約3930億円)、ロンドンホーンスロー地区は25年間・14億ポンド(約1834億円)の包括的道路PFI事業が推進中)
二番目の「PFI手法による施設サービス調達を組み込んだ包括的な地域開発提案競争手法」とは、被害を受けたエリア全体を開発対象エリアとして認定し、公共として整備する最低限必要な公共サービスの投資コストは、公的が負担することを確約したうえで、その配置や、具体的な提供手法については、民間事業者に提案させるものである。つまり、民間ノウハウの競争手法である。
具体例としては、英国のブライトン&ホーブ市における“市街地再開発計画と図書館整備のPFI手法の複合事業”の例がある。この事例では、市は30年間のサービス調達手法によって、図書館サービスを民間調達したが、開発における2万㎡以上ある延床面積の中に、どのように図書館を配置するかにの提案は民間事業者に任せている。
ただし、このようなサービス購入の仕組みをわが国に導入するには、施設整備費の補助金しか給付できない既存の補助金の仕組みを改正する必要がある。また、震災復興にPFI手法を含んだ開発事業手法を活用できるものとすると、諸外国においての新興都市の設計(例えば砂漠に新しい街をつくり出す等)を行った経験を持つ世界的に有名な建築家を数多く抱える我が国においては、公共とこのような建築家が共同作業で町を復興させることも可能である。
大震災への対応として、現在政府が行わなければならないことは、目先の対応だけでなく、長期的視野における緊急の制度改革の検討である。
日刊建設工業新聞 2011年3月24日 所論緒論 より
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登録日:2011年 03月 30日 23:21:16
- プロフィール

- Hiroshi Kumagae
- (男)
- 1959年05月06日
- アビーム コンサルティング㈱ ディレクター
- 著書:脱「日本版PFI」のススメ 相模書房 ISBN978-4-7824-0705-9
- ESADE大学院 国際経営修士
慶應義塾大学院 特別招聘講師(非常勤)
三田図書館・情報学会会員、PMFJ会員 公益事業学会会員
平成18年度内閣府PFI事業の総合評価検討委員会委員
平成19年度自治体PFI推進センター専門家委員会委員
平成20年新宿区立図書館指定管理者選定委員
平成21年横浜市立山内図書館指定管理者選定委員
日刊建設工業新聞 所論/緒論コラムニスト
剣道3段、居合道4段(夢想神伝流)
福岡県生まれ横浜市在住
連絡先:hkumagae@yahoo.co.jp
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