なぜイスラエルは暴走し続けるのか?
【ベイルート/レバノン 4日 AFP】7月23日にIKONOS衛星から撮影された写真が4日、公表された。ベイルート空港を中心としたこの写真では戦闘の傷跡が見て取れるが、特に高速道路が爆撃を受けた様子がはっきりと写っている。(c)AFP
「被害もなく、違法性もない。ならば何故誰もがそんなに神経質になるのか?)」。先月6日付けの英紙タイムズ紙は、北朝鮮のミサイル実験に大騒ぎした国際社会を皮肉るような論説を掲載した。要は、誰も死んでないし、特に物損もあるわけでもない。国際法上、主権国家がミサイル実験等の軍事演習を行うことは認められた権利…だとのこと。だが、国連安保理は北朝鮮への非難決議を採択した。OK、私もあの変な髪形のショーグンさまは嫌いだし、かばうつもりもない。彼は独裁者で多くの国民を飢えさせ、殺している。彼がことあるごとに批難されるのは、言わば身から出たサビだ。
…しかし、どうにも不思議なのは、900人ものレバノンの人々を爆殺、3000人を負傷させ、しかもこれらの死傷者の3分の1は子どもだというのに、国連安保理はイスラエルに対してロクに非難決議も出せないのか?ということだ。
続き)
レバノン空爆の犠牲者たち↓
From Israel To Lebanon
*非常にショッキングな画像なのでご注意!
先週末30日、国連安保理はイスラエル軍のレバノンへの空爆に対し「罪のない人々の命が失われたことに強い遺憾の意」を表明する声明を採択した。「遺憾」だとは生ぬるさも甚だしい。その上、米国の反対で「即時停戦」の文言も削られたのだ。これに先立ち先月中旬のプーチン露大統領との会談後の記者会見で、ブッシュ米大統領は「ヒズボラが最初に攻撃し、同国兵士を拉致したのが一番の問題」とイスラエルを擁護。プーチン大統領が「テロや拉致は許されないが、他国の領土を侵し過剰な攻撃を行うことも正当化できない」と述べた*のと対照的だった。
*チェチェン共和国の4分1近く殺したお前が言うか、とも思うのだが。
■国連部隊も標的にされる
米国の擁護の元、イスラエル軍はやりたい放題だ。先々週25日には、レバノン南部の平和維持任務に就いている「国連レバノン暫定軍」(UNIFIL)の施設を空爆、4人が殺された国連の職員の話として英BBC放送が報じたところによれば、「ここは国連の施設だ!攻撃しないでくれ!!」と10回もイスラエル軍と連絡を取り、訴えたにも関わらず、爆撃されたのだという。これはもはや「誤爆」と言えるものではない。「小うるさい国連も叩いて置こうか」とでもイスラエル軍は考えたのか?いずれにしても、せいぜいアナン国連事務総長が憤って「これはワザとだ!」と憤る程度で、国連はイスラエルに対して、経済制裁はおろか、ロクに非難決議も出せない。これでは国連の権威も地に落ちるというものであろう。
■暴走は「ユダヤ人迫害の歴史」によるものではない
あえて名指しはしないが、現在のイスラエルの暴走ぶりを「ユダヤ迫害の歴史」がゆえ、と評する人もいる。だが、それこそユダヤ人に対する偏見だろう。世界に散らばるユダヤ人には、イスラエルの非人道的行為に反対するユダヤ人も数多くいる。03年10月、やはりイスラエル軍の猛攻を受けていたパレスチナ自治区ガザを訪れた時に出あった、平和運動家のローラ・ゴードンさんもユダヤ系米国人だった。イスラエルにおいても、「ピース・ナウ」「グッシュ・シャローム」といった反戦団体が存在し、こうしたリベラルな市民はイスラエルの政治にも少なからず影響を与えてきた。イスラエルを暴走させているのは、「ユダヤ迫害の歴史」というよりも、むしろ米国の政策の問題が大きい。
■”Made in USA”に殺されている
パレスチナ自治区で取材した時、よく聞いた言葉は「我々は“Made in USA”に殺されている」というものだ。そして、今レバノンやガザで人々の命を奪っているのも、やはり“Made in USA”だろう。米シンクタンク「外交政策フォーカス」の最新の報告書『誰がイスラエルを武装させたのか』によれば、ブッシュ政権下の01~05年に行われた対軍事支援はイスラエルの軍事予算の2割にあたる約186億ドル、つまり2兆円。しかも、F16戦闘機やM60戦車など、米国が誇る強力な兵器をイスラエルに売りつけている。その売上高は、01~03年の6~8億ドル(約700~900億円)から、04年には13億ドル(約1500億円)、05年には27億ドル(約3100億円)にまで、うなぎのぼりだ(関連情報)。
■イスラエルと米国の共通の思惑は?
確かに、米国がイスラエルを支援する背景には、選挙の際に米系ユダヤ人のご機嫌を伺っておく必要がある、ということもあるだろう。また右派ユダヤ系ロビー団体AIPACは親イスラエル的な政策を取るよう、ワシントンに影響力を行使してきた。だが、より重要なことは、米国にとってもその「対テロ戦争を」進めていく上で、中東にイスラエルという親米国が存在する意味は大きいということだ。
米国としては、反米的な上に核開発を進めるイランを叩きたいところなのだが、イランはシーア派の総本山。米国がイランに手を出そうものなら、イラク国民の6割を占めるシーア派が黙っていないだろう。ただでさえイラクで米軍は苦戦を強いられているのに、この上、現在は比較的協力的なシーア派までが本格的に反米闘争を始めた場合、イラクでの敗北は決定的なものとなる。ヒズボラもシーア派による組織で、イランから財政的・軍事的支援を受けている。無差別な爆撃で新イランのヒズボラを「厄介者」としてレバノンの中で孤立させ、ひいては中東でのイランの影響力を削ぐということは、米国とイスラエルの共通の目的なのではないだろうか。
■誰の得にもならない戦い
だが、恐らく米国とイスラエルの目論見は失敗に終わる。殺されれば殺される程、人々はより強い憤りを持って激しく抵抗するのは、パレスチナやイラクの占領の例を見ても明らかだ。そしてますます世界情勢は緊迫していく。軍事産業が儲かる以外に、誰にとっても―もちろん、米国やイスラエルにとっても―得にはならないのだ。ともかく、この戦争がイランやイラクをも巻き込んだ中東大戦争にならないうち、国際社会は一刻も早い停戦を求めるべきだろう。
カテゴリー[ イラク・中東 ], コメント[12], トラックバック[0]
登録日:2006年 08月 06日 09:13:00
コメント
今すぐにでもレバノンに飛んで真実を見たい限りです。
国連施設も標的にされたのにあまり動きが無いのは・・・。
日本のニュースの報道量も北朝鮮のミサイル発射に比べたら少ない気が・・・。
peaceforearth @ 2006年 08月 06日 21:59:42
これを書いている頃、シバレイ君はちょうど機上の人だろう。
まあ、レバノンに入国できてもベイルートへ入ることは叶わないかも知れない。
非ずぼらのセキュリティ・チェック厳しいからね。
上手くいけば、ベイルートのアメリカン・ユニバーシティで学生インタビューに挑戦してね!って大学閉鎖してるかも…
wattan. @ 2006年 08月 07日 00:04:16
軍事産業が儲かるっていったいいつの時代の話をしているのだ。
第二次世界大戦や冷戦期の話をしているのか?
AS21 @ 2006年 08月 16日 13:35:20
「軍事板常見問題」が詳しいです。
この無知馬鹿は逝ってよし!
軍事オタク @ 2006年 08月 18日 23:24:56
いまどき戦争が始まったからって兵器の発注数が増えるとでも思ってるのかね
むしろ戦闘機などの兵器の発注数は減らさてる一方なのだが
グノタ @ 2006年 08月 19日 09:12:46
戦争になったとき一番儲かるのは新聞社だったりして。
身近な戦争になればなるほど。
いまならレバノンとイスラエルの右翼新聞などは良く売れているはずだ。
・・・・と極論をボヤいて見る。
AS21 @ 2006年 08月 22日 12:29:22
自分は三菱重工の長崎ドッグで働いていますが儲かっていたら55万で買った95年式のCBR250RRではなく最新式のCBR1000RR(124万)、いや、最新式のGOLDWING(325万)に乗っています。先輩に聞きましたが三菱重工は軍事で儲けている割合は25パーセントもないそうです。それに戦争が始まっても弾薬や兵士の食料ぐらいしか発注量が増えません。それどころか貴方たちプロシミンや売国政治家等によりガンガン発注量が削られるため、当初140機の発注があったF-2が100機ほどになり1機120億まで高騰しました。本当に平和を愛する気が貴方にあるのならチベットで行なわれている民族抹殺を止めてきてください。それくらいの覚悟はありますよね?
('A`)<プロシミン @ 2006年 08月 22日 21:16:21
('A`)<プロシミンさんへ
F-2が削られたのは費用対効果の悪い欠陥機だからでしょ。人の所為にしてはいけません。
個人の給与と企業の売上も別物ですし、アメリカのイスラエル支援と三菱の軍需の割合も別の話ですね。
アメリカのイスラエルに対する兵器売上高が急増していることは事実で、それが軍事産業の利益になることも事実。論点がずれた非難は見苦しいです。
市民 @ 2006年 08月 23日 13:32:25
http://www.kojii.net/opinion/col060814.html
>F16戦闘機やM60戦車など、米国が誇る強力な兵器をイスラエ>ルに売りつけている。
別に最新の兵器ってわけじゃないみたいですね。
あと、F-2は仮想敵国を考えれば十分な性能です
一般的なあほ @ 2006年 09月 01日 11:41:10
軍需産業が単純に儲けるためというよりも、
・過去の在庫を処分したい
・B兵器やC兵器などの実験場としてならば、非白人が住む地域での紛争は好ましい
といったあたりが軍需産業にとっての利点だと思う。
企業にとっては、お金になること「だけ」がトクすることじゃない。
電気羊 @ 2006年 09月 11日 19:03:54
確かに平和になれば、軍事産業上がったりだね。
それより、政権維持の道具に利用している面が強いね。
カモノハシ @ 2006年 09月 12日 07:10:35
>過去の在庫を処分したい
戦争がなきゃ在庫処分できないと思っている点で間違い。
>BC兵器の実験
実験したという実例きぼん
名無シエンテ @ 2006年 11月 04日 18:51:22
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- プロフィール

- 志葉 玲(シバレイ)
- (男)
- HP:志葉玲Official Web Site
- ■1975年生まれ。番組制作会社を経て2002年からフリーに。イラク、レバノンなどの紛争地での現地取材の他、地球温暖化などの環境問題、共謀罪など国内政治まで幅広く取材している。
■志葉関係の本が相次いで出版されました!二冊とも、御一読いただければ幸いです。
『川田龍平 いのちを語る』 (川田龍平 著 志葉玲 写真/明石書店)
『たたかう!ジャーナリスト宣言 ボクの観た本当の戦争』(志葉玲 著・写真/社会批評社)
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