イラク戦争が招いた北朝鮮の核実験、そして日本の危機

<北朝鮮核実験>米国、容赦ない北朝鮮に対する経済制裁 - 米国

【ワシントンD.C./米国 15日 AFP】核実験実施を発表した北朝鮮に対する経済制裁について、米国は容赦がない。
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(c)AFP/US DEPARTMENT OF THE TREASURY

AFPBB News


「イラクに先制攻撃が行われたら、北朝鮮が暴発するかもしれない」 ―イラク戦争開戦直前、メディアのインタビューや講演会で、私は幾度も警告してきた。イラクは国連安保理に従い、大量破壊兵器の査察を受け入れ丸裸になった。それにもかかわらず、国連安保理の承認もなく米国が勝手に戦争を始めてしまうのならば、「イラクの次はウチかも…」と懸念する国々が出てくるだろう。当然、イラクやイランと共に「悪の枢軸」と米国から名指しされていた北朝鮮もパニックに陥ったはずだ。「対話は無意味、自存自衛のためなら、手段を選ばず」となり振り構わない行動に出ることは充分予想できた。だから、罪のないイラク市民のためだけではなく、日本の安全保障のためにも、私はイラク戦争に反対してきた。

あれから3年半。「核実験を行った」と北朝鮮が先週9日に発表したのを聞き、やはり来るべき時が来てしまったな、と思った。考えたくないことだが、このままでいくと「極東戦争」が始まるのかもしれない。もし本当に戦争を避けようとすれば道がないこともないが、問題は各国の指導者達にその気があるかどうか、ということだ。

続き)
■最初に制裁ありき?

 昨日15日未明、国連安保理で北朝鮮への制裁決議が採択された。内容は、「核などの大量破壊兵器関連物質の移転阻止」「金融制裁」「ぜいたく品の流入防止」などで、経済制裁などを定めた国連憲章7章41条に基づくもの。9日の「核実験」宣言から一週間余りという、異例のスピードでの採択だが、肝心の「北朝鮮は本当に核実験を行ったのか?」ということは未だに明らかになっていない。地震計の数値から推察されるに、爆発の規模は核兵器にしてはかなり小さく、実験に伴い検出されるハズの放射能も「調査中」で、米中の政府筋の「放射能は検出されなかった」との発言も漏れ出ている(関連情報)。TNT火薬を使った「偽装」の可能性も否定できず、米国や日本政府も「北朝鮮が核実験を行った」とは公式に確認できていないのだ。挑発行為を繰り返す北朝鮮も北朝鮮だが、事実関係の確認もまだなのに、「まず制裁ありき」の日米の動きには、やはり危ういものを感じる。 
 
 制裁決議を受けて、案の定、北朝鮮の朴吉淵国連大使は「安保理は中立性を完全に失った」「宣戦布告と見なし、物理的対抗措置を取る」と逆ギレ。テレビでその様子を見ていた私は、かつて1933年、傀儡国家「満州国」が承認されなかったことを受け、日本が国際連盟を脱退した事を思い起こした。その後、日本は無謀な戦争へと暴走し、東京大空襲や「ヒロシマ」「ナガサキ」、そして沖縄戦と、国民に多大な犠牲をもたらすことになる。制裁が発動した後、北朝鮮が核廃絶に向かえば万々歳だが、果たしてそうなるのか。金正日体制はもはや自爆覚悟での強硬路線を突き進むだけなのではないか?そんな気がしてならない。


■もし戦争になったらどうなるか?

 では、不幸にして「極東戦争」が勃発してしまった場合、どうなるのか。今月12日付けの豪州ヘラルドサン紙の記事によれば、北朝鮮に米軍が侵攻した場合の人的被害は、最初の90日間だけで米軍5万9000人が負傷、民間人100万人が死亡するとされ、一昨年にこれらの推計を初めて報告された時、あのブッシュ大統領ですら震え上がったのだという。同記事では、日本が受けるであろう被害には言及されていないが、対米国用長距離ミサイル「テポドン2号」が未完成である今、攻撃の標的となるのは在韓、在日米軍だろう。言わば、「米軍基地」というマトが日本各地にある状態なのだ。その上、「ノドン」など北朝鮮のミサイルの性能は低く、例えば基地が集中する沖縄などは、ミサイルが米軍基地をそれて市街地に着弾、ということにもなりかねない。東京も横田基地があるから、やはり被害を被る可能性が高い。日米共同で進めるミサイル防衛システムも未だ研究中であり、既に開発されている改良型パトリオット迎撃ミサイルも信頼性には疑問視する声が少なくない。つまり、いざ戦争になった時には、日本の民間人死傷者をゼロにするということは、極めて難しいということだ。北朝鮮の核実験以降、日本の政治家やマスコミのコメンテーターは威勢のいい主張を繰り返しているが、もし本当に戦争になってしまった時、国民の命や財産に対して一体誰が責任を取れるのか、という疑問は持たざるを得ない。北朝鮮が恐れているのは米国であり、求めているのは米国との二国間協議だ。ならば、北朝鮮と米国にやらせればいいのであって、「集団的自衛権の行使」などと言って日本がわざわざ危険の中に飛び込むのは賢くないだろう。
 
 
■身勝手で卑屈な論理が危機を招く

 もし北朝鮮が今回、本当に核実験を行ったとすれば批難されてしかるべきだろう。だが、核を持っているからといって戦争をしかけていいか、となると話はまた別だ。そもそも、安保理の5大国が皆核保有国であり、米国は1万発、ロシアは1万7800発、中国は400発、フランスは350発、英国は200発もの核兵器を所有しているのだ。米国なんぞは「使える核」としての小型核兵器の開発を公言しているし、CTBT(包括的核実験禁止条約)の抜け穴をつくかたちでの臨界前核実験をこの8月末にも行っている関連情報)。これで他の国に「核開発をするな」と言っても全く説得力がない。日本の政治家や一般市民の間にも「他の国ならダメでも(日本を守ってくれる)米国なら何をやってもOK」という身勝手で卑屈な発想があるが、そのような発想こそが、北朝鮮の核開発を止められない要因の一つであり、結果的に日本の危機を招いていることに気がつくべきであろう

カテゴリー[ ホットトピックス ], コメント[17], トラックバック[1]
登録日:2006年 10月 16日 10:34:49

コメント

真相の一つの可能性として「核燃料棒を中性子線照射などで核分裂させた」ものが、自称「地下核実験」だったのではないか、と指摘されてる方があるんですが...。
私も、割と可能性高いかなと思うんですが、ドクトルKaetzchen氏です。
それが仮に正しければ「ダーティ・ボムなら造れるけど、核兵器はまだ」という北朝鮮の情況に変化は全く無かった事になりますね?!

田仁 @ 2006年 10月 19日 13:44:27

米英は、日露戦争で日本に火の中から熱い栗を拾わせた。 米国は同じ事を又繰り返している。今度は北朝鮮との核戦争だ。 日本は米国の手先になって怪我をするな。

John Kim @ 2006年 10月 19日 18:28:34

>本の政治家や一般市民の間にも「他の国ならダメでも(日本を守ってくれる)米国なら何をやってもOK」
「米国なら駄目でも中国・北朝鮮・イラクなら何やってもOK」というダブルスタンダードの人がこんな事言う資格はありません…

人の振り見て我が振り直せ @ 2006年 10月 21日 17:10:38

北が6者に復帰と報道された直後に、曽我さんが随分前に話した拉致実行犯を、警察が「近々逮捕」とリークしてトップ・ニュースに。
元外交官の原田武夫氏が面白い事を言っていて、米英の狙いは北のアングラ・マネー・ロンダリングのスキルだから、決して北は潰されずに、ニクソン訪中の二の舞で日本は梯子を外される筈という説がある。
まあ、此処んトコずっと、国連の議場では似たような「梯子外され」の連続な訳だけれども。

田仁 @ 2006年 11月 02日 21:03:25

>最初の90日間だけで米軍5万9000人が負傷、民間人100万人が死亡するとされ
キタにそれば無理だろう、どうひっくり返しても。

※最初の90日間だけで北朝鮮軍5万9000人が逃亡、民間人100万人越境亡命するとされ

こんなもんでしょう。

上田敦雄 @ 2006年 12月 02日 21:16:23

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プロフィール
志葉 玲(シバレイ)
志葉 玲(シバレイ)
(男)
HP:志葉玲Official Web Site
■1975年生まれ。番組制作会社を経て2002年からフリーに。イラク、レバノンなどの紛争地での現地取材の他、地球温暖化などの環境問題、共謀罪など国内政治まで幅広く取材している。

■志葉関係の本が相次いで出版されました!二冊とも、御一読いただければ幸いです。

『川田龍平 いのちを語る』 (川田龍平 著 志葉玲 写真/明石書店)

『たたかう!ジャーナリスト宣言 ボクの観た本当の戦争』(志葉玲 著・写真/社会批評社)
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