サダムの後、裁かれるべきはラム爺ではなくMr.Freedom!!

<米中間選挙>民主党、下院で過半数獲得、上院でも過半数の勢い - 米国

【ワシントン/米国 8日 AFP】7日投票の中間選挙で、民主党が下院で過半数を獲得して圧勝した。開票作業中の上院でも過半数を獲得する公算が高い。そんな中、ジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)大統領は8日、ドナルド・ラムズフェルド(Donald Rumsfeld)国防長官の辞任を発表した。写真は8日、ホワイトハウスで記者会見を開くブッシュ大統領。(c)AFP/TIM SLOAN

AFPBB News


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 ここ数日、風邪で体調が芳しくなかったもので、この件に関してのエントリが遅れてしまった。体力には自信のある方だったのだが、油断禁物、ということだねぇ(ーー;
 さて、フセイン死刑判決、米中間選挙で共和党敗北/ラムズフェルド国防長官更迭、とイラクがらみの大きなニュースが相次いだので、やはり本ブログでも、触れておかない訳にはいかないだろう。

続き)
■イラク情勢には影響ナシ

 フセイン元イラク大統領の死刑判決については、某新聞の記者からもコメントを求められたが、結論から言うと、イラク情勢への大きな影響はないと言える。米軍と交戦している武装勢力は、そのほとんどが自分たちの地域から米軍を追い出そうとする地元抵抗勢力であり、フセイン元大統領のために戦っている訳ではない。米軍への抵抗が最も激しいとされるラマディやファルージャといった街でさえ、フセイン政権崩壊当初はそれ自体には歓迎の声すらあったくらいだったのだが、米軍が学校を占拠したり、非武装のデモ隊に対し実弾で銃撃したりするなど無茶苦茶をやっている内に反米感情がもはや後戻りできないところまで高まってしまったのだ。また、現在のイラク情勢では、米軍の駐留に加え、なおも続くスンニ、シーア両派の宗派間衝突こそが深刻な問題だ。公表されているだけでも、先月も1300人近くもの人々が犠牲になっている。虐殺には、イラク警察や軍が関わっていることは、もはや周知の事実であるのに、米軍もイラク政府も口先だけで何ら有効な対策がとられていないのだ。


■「民主主義の手本」にはならず

 では、フセイン裁判の意義は何か、ということであるが、旧政権における人権問題を明らかにすることであろう。旧政権が自国の国民に対して苛烈な人権侵害を行ったことは、もはや説明無用かと思うが、確かにフセイン元大統領が行ってきたことは、人道上許されない。私は死刑制度には反対の立場だが、フセイン元大統領は厳しく罰せられるべきかと思う。ただ、問題なのは、フセイン元大統領らを裁く、イラク特別法廷の公正さの問題だ。 「暴君による支配を法の支配にかえるイラク人の努力のなかで画期的な出来事だ。(判決は)若いイラクの民主主義と政府にとって、偉大な成果だ」とのブッシュ大統領の自画自賛とは裏腹に、

・最初の裁判長は「法廷へのイラク政府の過剰な干渉」を理由に辞任
・元大統領に「同情的」とされた人物は裁判から除外された
・再三の要求にも関わらず、元大統領側の弁護士や証人に十分な警護がつけられず、結局、三人が暗殺された
 

 など、お世辞にも裁判が公正に進められたとはいえない。そもそも、本裁判はイラク国内での法廷であるが、公正さを帰すならば、国際刑事裁判所のような、国際法廷にするべきだった。現在のイラクの議会での最大会派はシーア派連合であり、参加している政治家たちは、ほとんどは旧政権時代に亡命していた者達ばかり。つまり、フセイン政権の闇を暴く、というよりも、「報復」としての色合いが濃いのであるが、重大な人権侵害を裁く法廷だからこそ、公正さが重要だろう。


■ラムズフェルド追放くらいで満足するな

 判決が米中間選挙の直前にでたこと、ブッシュ大統領が「偉大な成果」と手放しで賞賛したことから、イラク人ブロガーの間には、フセイン元大統領の死刑判決を「選挙対策」と見る向きもある。実際に「選挙対策」だったのか否かは定かではないものの、結果的にはブッシュ大統領も認める共和党の大敗北。かねてから米軍関係者から批判が強まっていた、ラムズフェルド国防長官は事実上の更迭となった。
 だが、この更迭劇もフセイン裁判と同じく、批判をかわすためのパフォーマンス的な色合いが濃いと思われる。イラク戦争開戦、そして占領の継続を推し進めてきたのは、他でもない大統領その人なのだから。民主党も選挙向けのリップサービスでなく、本当にブッシュ政権の責任を問うならば、ラムズフェルド氏を追放するくらいで満足せず、諸悪の根源であるブッシュ大統領を弾劾裁判にかけ、罷免するくらいの気概を見せてもらいたいものだ。何しろ、かつてクリントン大統領(当時)はモニカ・ルインスキー女史と不倫した、という程度のことで、弾劾裁判を受けているのである。大儀なき戦争で最大65万5000人のイラク人*と米兵2800人を犠牲にしたブッシュ大統領は、弾劾されるに十分な資格があるはずだ。さらに、罷免されたブッシュ氏が国際法廷の場で「人道に対する罪」で裁かれれば、完璧である。その時、米国は「民主主義の底力」を世界に示すことができるだろうし、それこそブッシュ政権が世界中で煽ってきた憎悪をクールダウンさせ、本当の意味での「テロ対策」になるだろう。

*英医学誌「ランセット」に掲載された、ギルバート・バーンハム教授らの調査による03年3月の開戦以来の犠牲者数の推計(関連記事)。一方、イラク保健省は今月10日、「15万人」という推計を発表している。


■実は民主党も不安定要因?

 だが、今のところ民主党は弾劾のそぶりは見せていないようだ。イキナリ弾劾を叫ぶのではなく、党内の意見の取りまとめも必要なのだろう。だが、新しく新下院議長となり、9日にブッシュ大統領と選挙後初の直接対決に臨んだ民主党のナンシー・ペロシ議員は「大統領と信頼を熟成し、共に働く」と発言、民主党支持層からは早くも失望の声も漏れ出てきている。もし、民主党がブッシュ政権と共に協調路線を歩もうとするならば、正にイラクの泥沼に道連れとなる上、期待していた支持層からもソッポを向かれることは避けられないだろう。

 民主党と言えば、もう一つ気になるのは、上院外交委員長に就任する予定のジョゼフ・バイデン氏だ。彼は今年5月1日、米外交政策専門家のレスリー・ゲルブ氏と共同で、「自治によるイラクの統一(Unity through autonomy in Iraq)」という論文をニューヨークタイムズ紙に寄稿している。つまり、イラクをシーア、スンニ、クルドの三大勢力の勢力圏ごとに三分割し、自治を行わせることによって、イラク問題の収拾を図ろう、というものだ。
 だが、実際には各勢力が混在している地域も多い上、何よりもスンニ派勢力が猛反発することが予想される。石油大国イラクにあっても、スンニ派の多いイラク西部・中部では有望な油田がない。これに対し、南部の勢力圏に油田を抱えるシーア派勢力が、やはり中北部の油田を抱えるクルド人勢力と共に、石油利権の独占を図っていることが、宗派・民族間の軋轢の一因なのだ。血で血を洗う宗派間衝突の中で、シーア派有力政党の民兵やイラク警察・軍が虐殺に関わっているのは、もはや隠しようのない事実なのに、イラク政府が有効な対策を取っていないのは、イラク政府の与党はシーア派会派とクルド人会派であり、彼らが「イラク分裂」を望んでいるから、なのかも知れない米国としても、欲しい石油がなく、反抗的なスンニ派が多いイラク中部・西部は必要ない。イラクが分裂してくれれば、比較的従順なシーア派勢力やクルド人勢力と安心してビジネスができる、というわけだ。

 実は、バイデン氏らの主張は目新しいものではなく、ネオコンの大物たち、そしてイスラエルの論客達がこれまでずっと主張してきたことだった(関連情報)。ブッシュ政権自体は、声高にイラク分割を主張してはいないものの、これまでの対イラク政策を見ていると、シーア派主体の新イラク軍をスンニ派地区に攻め込ませるなど、宗派間対立を煽るようなことばかりをやってきた感がある。穿った見方をすれば、今までのイラク情勢の大混乱は、イラクを分裂させる地ならしだったのかもしれない。そこへバイデン氏ら民主党の有力者が満を持して「イラク三分割論」をブチ上げてくれれば、万々歳なのだ


■イラクでも米国でも望まれていない米軍のイラク占領
 
 結局のところ、イラクの今後がどうなるかは、最終的には、イラクの人々がどうしたいか、ということにかかっている。さまざまな意見があるだろうが、唯一確かなことは、イラクの人々が共通して求めているのは平和であり、圧倒的多数のイラク国民が米軍の駐留こそが混乱の元凶だと感じている、ということだ。今年9月にメリーランド大学によって実施された世論調査によると、回答者の71%が「米軍の一年以内の撤退を望んでいる」と回答したという関連情報)。もはや、イラクの人々も、米国の人々も、そして米兵達すらも、米軍のイラク占領の継続を望んでいない。すでに十分すぎるくらい血は流された。そして民主党は勝ったのだ。やるべきことは決まっている。ブッシュ大統領にケジメをつけさせるのだ。彼がいるべきところは、もはやホワイトハウスではなく、フセイン元大統領と同じ牢獄なのである。その時こそ、イラクにも、米国にも、自由がやってくるのだろう。

カテゴリー[ イラク・中東 ], コメント[5], トラックバック[0]
登録日:2006年 11月 11日 02:24:54

コメント

ついでに、ブッシュのイラク侵略を支援した(今もしている)小泉-安倍政権の戦争責任を裁く、第二次東京裁判の開廷を!(@∀@)

九郎政宗 @ 2006年 11月 11日 12:44:02

そうなんですが、更にオマケに、兵器の製造者責任も、問えないものですかねぇ。名付けて、兵器PL法とか。

田仁 @ 2006年 11月 12日 13:19:26

SPA!読んだですよ。民間からのイラク支援方法についてもっと知りたいと思いました。しかしイラク空自の動向がわからないのは実に業腹ですね。

九郎政宗 @ 2006年 12月 28日 02:28:17

アメリカ(先進国)の軍事産業に気づいてない人が多すぎる。
世論なんて関係ないのです。兵器消費だけが仕事。

yuu @ 2007年 07月 03日 23:56:53

真実を見据えた素晴らしい記事ばかりです。
ご健闘を祈ります。

とみ新蔵 @ 2007年 07月 17日 22:30:06

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プロフィール
志葉 玲(シバレイ)
志葉 玲(シバレイ)
(男)
HP:志葉玲Official Web Site
■1975年生まれ。番組制作会社を経て2002年からフリーに。イラク、レバノンなどの紛争地での現地取材の他、地球温暖化などの環境問題、共謀罪など国内政治まで幅広く取材している。

■志葉関係の本が相次いで出版されました!二冊とも、御一読いただければ幸いです。

『川田龍平 いのちを語る』 (川田龍平 著 志葉玲 写真/明石書店)

『たたかう!ジャーナリスト宣言 ボクの観た本当の戦争』(志葉玲 著・写真/社会批評社)
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