イラクでの外国人誘拐は「米軍の作戦の模倣/リベンジ」?
全裸で自慰行為を強要される男性、胸をあらわにされ写真をとられる少女、排泄物を体に塗りたくられた男性、そして多数の死体…。15日にオーストラリア公共放送SBSが公表したアブグレイブ刑務所での米軍によるイラク人虐待事件の「未公開写真」*は正におぞましいものだった。米国政府は「反米感情を煽り、在イラク米軍を危険にさらす」と放映を批判したが、彼らが本当の恐れているのは、イラク人の反発なのか。むしろ自国や同盟国の国民が真実を知ってしまうことなのかもしれない。
*これらの写真を紹介したSBSの番組「デートライン」は下記URLで視聴できる(要Real Player)。
http://news.sbs.com.au/dateline/index.php?page=archive&daysum=2006-02-15
■未だ公開されない虐待問題の全容
今回の放送で明らかにされた写真は極めて衝撃的なものだが、氷山の一角でもある。04年2月にまとめられていた虐待問題に関しての米国防総省の内部調査報告書は6000ページに及び、写真は1800点も存在するとされているが、その全容は現在も公開されていないのだ。SBSの番組の中で、米人権団体「全米市民自由連合(ACLU)」のアムリット・シン弁護士は当局の秘密主義についてこう語る。「私達は情報公開法に基づき関係資料の公開を求めてきましたが、政府は無視してきました。訴訟に持ち込み勝訴しましたが、政府は控訴して資料公開を先延ばしにさせたのです」。
■虐待は組織的
なぜ、米国政府は虐待情報の開示に神経を尖らすのか。その理由の一つは虐待が「一部の愚かな兵士達がしでかした不祥事」ではなく、組織的に行われていた可能性が高いからだ。前述の報告書を作成したアントニオ・M・タグバ少将は04年5月11日の上院軍事委員会の公聴会で「監督責任者は怠慢で、不手際があった。規律、訓練の欠如、管理不行き届きのために起こった」と証言。組織的、構造的要因が虐待の背景にあると指摘している。
■「武装勢力」の家族の女性を人質に取る米軍
だが、より深刻な疑惑は米軍が虐待を加えていたイラク人の中に、明らかに非戦闘員である女性や子どもがいたこと、しかも米軍は彼女たちを「人質」として拘束していたということだろう。現地人権団体「イラク人権モニタリングネット(MHRI)」が私の元に送ってきた報告書には次のような記述がある。
「…2003年12月、あるイラク人女性は、彼女の夫を探しに来た米兵達に拘束された。妻の拘束を知った夫はアブグレイブ刑務所に自ら向かい投獄されたが、米兵達は彼の目の前で妻をレイプした…このイラク人女性は解放された後、自殺した」。
先月末にはACNUも、武装勢力を投降させる目的で、イラク人女性を人質に取るよう指示した内部文書を入手したと発表。米軍側は「この文書だけで何が起きたのか確認することは難しい」と反論しているが、それならば事実関係を調査して公表すべきであろう。
■最初に人質を取ったのは米軍だった!!
米軍による「人質作戦」に関する疑問はまだある。イラクでは武装勢力によって外国人が誘拐される事件が頻発しているが、その発端は米軍の「人質作戦」にあるのではないか。つまり、武装勢力の外国人誘拐は、米軍の作戦を模倣か、あるいはリベンジなのではないか、という疑問である。サダム政権崩壊後、イラクでの初の本格的な外国人誘拐事件は2004年4月の日本人人質事件だが、米軍のイラク人女性への虐待問題に詳しい現地人権活動家エマン・アハマド・ハマス氏は「米軍はサダム政権の残党を拘束するため、占領開始当初から人質を取っていた」と指摘。米軍の人質作戦こそが外国人誘拐事件を引き起こしたのでは、との問いにも「同感だ。実際、外国人を誘拐したいくつかの武装勢力はイラク人女性の解放を要求している」との見解を示した。
■ブッシュ政権は説明責任を果たせ
米軍による虐待事件については、虐待行為そのものも問題だが、米軍が戦術として人質を取っている疑惑とあわせて、考えるべきだろう。「テロとの戦い」を掲げる米国が、テロリストと同様、もしくはそれ以下の行為を行い続けており、それが新たなテロを招いているのだとしたら、全く許されないことだ。米女性記者ジル・キャロルさんが先月7日にイラクで拘束された事件で犯行グループの要求も「全てのイラク人女性を解放せよ」であった。ブッシュ政権としてはイラクで米軍が何をしているか、あまり語りたくないのだろうが、米国や日本を含む同盟国の国民には知る権利がある。事実を知らされないまま、ブッシュ政権のイラク政策の巻き添えになるのは御免なのだ。
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登録日:2006年 02月 20日 15:30:00
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- 志葉 玲(シバレイ)
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- HP:志葉玲Official Web Site
- ■1975年生まれ。番組制作会社を経て2002年からフリーに。イラク、レバノンなどの紛争地での現地取材の他、地球温暖化などの環境問題、共謀罪など国内政治まで幅広く取材している。
■志葉関係の本が相次いで出版されました!二冊とも、御一読いただければ幸いです。
『川田龍平 いのちを語る』 (川田龍平 著 志葉玲 写真/明石書店)
『たたかう!ジャーナリスト宣言 ボクの観た本当の戦争』(志葉玲 著・写真/社会批評社)
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