安倍政権や経団連に不都合な真実
【東京 11日 AFP】世界中で地球温暖化への懸念が高まるなか、気象庁は11日、東京で「最も遅い初雪の記録」が更新されたと発表した。
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(c)AFP/KAZUHIRO NOGI
いよいよ、地球温暖化の影響が出始めている・・・今年は世界の人々がそう認識し始めた年だと言えるだろう。今月始めに公開された国連による「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)の第4次報告書は、05年に米国を襲い未曾有の被害を出したハリケーン「カトリーナ」など大規模自然災害の増加が、「地球温暖化の影響である可能性が高い」と初めて認めた。
こうした中、EU各国は自国の温室効果ガス削減目標を大幅に上方修正。さらに、これまで二酸化炭素等の温室効果ガスの削減義務付けに強硬に反対してきた国々も、全く不十分だとはいえ、その態度を軟化させつつある。さんざん世界の地球温暖化防止への努力を妨害してきたブッシュ大統領ですら、先月23日の一般教書演説で「ガソリン消費を10年以内に20%削減させる」という数値目標を発表。米国議会でも、温暖化対策の法案が次々に提出されている。中国も今月6日、姜瑜報道官が「地球温暖化防止への可能な限りの貢献する」との意向を明らかにし、また同日、国連と協力しての排出権市場*の創設計画が発表された。
*排出権取引:二酸化炭素の排出枠を決め、それをオーバーすれば「排出権」を買わねばならず、逆に下回った場合には余った排出量を売ることができるという制度。市場のメカニズムを利用して全体の二酸化炭素の排出を抑えることが期待されている。
ひるがえって我が国はどうかというと、全く呑気なものだ。京都議定書で定められた、温室効果ガスの削減目標をクリアするどころか、排出量を大幅に増加させてしまっているというのに、「チーム・マイナス6%」といったかけ声ばかりで、日本国家全体としての、地球温暖化対策の国家戦略がない。 地球温暖化は日本の国家存亡にかかわる、安全保障上の重大危機だ。それにもかかわらず、小手先の「対策ごっこ」に終始している日本政府は、国民全体の命や財産よりも、(一部の)産業界の声を重んじていると批判されるべきだろう。
続き)
■日本の温室効果ガス排出量は大幅増加
「環境は世界が取り組むべき大きな課題。当然、G8(主要8カ国)でも取り組む」「日本も主導的役割を果たしたい」(19日の安倍首相の発言)等と、日本の政府関係者たちは口では調子のいいことを言っているものの、日本の温暖化対策の実態は、「破綻」していると言っても過言ではないだろう。昨年10月、環境省の発表によれば、日本は-6%の温室効果ガス削減目標をクリアできなかっただけでなく、逆に8.1%*も排出量を増加させてしまっているのだ。元々、他国に比べ、省エネ化が進んでいたため、大幅な削減は容易ではないとの意見も少なくないが、目標値を大幅に上回るなど論外だ。これでは、「京都議定書」の名が泣く。
*基準年である1990年の排出量と比較しての、05年度の排出量速報値。
■「チーム・マイナス6%」の弊害
環境省の肝いりで進められているキャンペーン、「チーム・マイナス6%」も問題だ。全否定はしないものの、その「弊害」も小さくないのでは、と私は思う。確かに、同キャンペーンの特設サイトに書かれている「室温の調節」「水道節約」などの6つの取り組みそれ自体は悪くはないし、私としても積極的にやるべきことだとは思う。ただ、これらの「自主的な取り組み」だけでは、やはり限界がある。
例えば、話題になったクールビズにしても、これに取り組んで削減できる温室効果ガスは、最大300万トン。これに対して、現在の日本の二酸化炭素排出量は、13億6400万トン*だ。勿論、少しでも温室効果ガスの排出量を抑えることは大切なので、全くムダだとは言わない。だが、「チーム・マイナス6%」の最大の弊害は、そのあまりに低い目標設定とキャンペーンのネーミング自体にある。そもそも「6%削減すればそれでいい」という発想自体が間違っているのだ。地球温暖化の進行を止めるためには、世界全体で約50%の削減、先進国は60~80%もの削減が必要とされている。つまり、「マイナス6%」などという、あまりに低い目標設定では、正に「焼け石に水」なのだ。
*05年度の速報値。
■「アンチ地球温暖化対策」?経産省と経団連の妨害
ただ、環境省はまだいい。環境省自体は地球温暖化対策には真面目であり、最近、同省が主導してまとめられた報告書「脱温暖化2050プロジェクト」には、 「2050年までに主要な温室効果ガスである二酸化炭素の排出を70%削減することが可能」*とうたわれている。
*[環境省:「脱温暖化2050プロジェクト」成果発表のお知らせ~2050日本低炭素社会シナリオ:温室効果ガス70%削減可能性検討~
http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=8032
問題は、経済産業省(以下、経産省)や日本経済団体連合会(以下、経団連)が協力するかどうかだ。これまで経産省も経団連も、環境省が主張する環境税(炭素税)や、排出権取引**の導入が議論される度に、猛烈に反対し、特に経団連前会長の奥田碩氏は、これらの地球温暖化対策を批判するコメントを執拗なまでに繰り返した。そのため、環境税や排出権取引は今なお実現しておらず、結局、「チーム・マイナス6%」など「国民一人一人の節約」に頼るような中途半端な対策しかできていない。
だが、05年度の温室効果ガスの排出量の内訳を見てみると、家庭部門の40%に対し、事業部門は8%と、伸び率自体は抑えられているものの、排出量全体では79%を占めている。やはり事業部門をいかに削減するかは大きな課題なのだ。地球温暖化対策に関しては、経団連はあくまで「自主行動計画が重要」だと主張しているが、「自主行動計画」で大幅な削減が望めない以上、政治が主導して対策を促すべきなのではないだろうか。
**環境税:二酸化炭素の排出量に応じ課税することによって、排出量を減らそうというもの。炭素税とも言われる。既にオランダや北欧諸国で導入され、日本でも導入が検討されている。
■早ければ2026年には大惨事に???
経産省や経団連の意向がどうであれ、日本の国民にとって地球温暖化を止めることは死活問題であることは変わらない。このまま世界の国々が対策をとらなければ、2026年には地球の平均気温が2度上昇してしまう。「2度くらい大したことないんじゃないの?」と思われる読者もいるかと思うが、その世界的な影響は正に甚大なものだ。例えば、イギリスのマーティン・パリー教授らの研究報告によれば、
・1000万人が飢餓で苦しむ
・3000万人が洪水に襲われる
・2.3億人がマラリアに悩まされる
・27億人が水不足に苦しむ
といわれている。このような事態になれば、穀物自給率が3割以下と、食料を海外からの輸入に頼る日本の食卓が大きな打撃を被ることは間違いないだろう。頼みの綱の米も、気温上昇や異常気象で栽培が難しくなり、収穫量も品質も落ちるとされ、既に日本酒の原料となる「山田錦」といった品種では、収穫量・品質の低下が見られるという。
■政治は地球温暖化防止の責任を果たせ
地球温暖化防止のため、日本には優れた技術があるが、欠けているのは、「断固たる決意」である。重要なのは、政府が思い切った政策を打ち出し、新たな日本の社会像を指し示すことである。既にEUを取りまとめる欧州委員会は、「ポスト京都議定書」*をにらみ、「2020年までに少なくとも20%削減する」という目標を掲げた。また、フランスは2050年までに、温室効果ガスの排出量を4分の1にまで削減すると定めている。こうした中で、日本政府が今のように手をこまねき、リーダーシップを発揮しないのであれば、ブッシュ政権下の米国のように「地球温暖化防止のお荷物」と国際的な信用を失い、新しい時代の経済の担い手にもなれずに落ちぶれていく一方かもしれない。
地球温暖化対策が人類共通の課題であることは間違いないが、一方で下世話な言い方をすれば、経済大国としての発展が目覚しい中国やインドに対し、日本が対抗しうる最後の切り札でもある。経済という視点から言っても、短期的な利害なんてチンケなことではなく、「環境立国」としての日本のあり方をどれくらい具体化できるかが、重要なのであろう。
*京都議定書で定められているのは、2012年までの温室効果ガス削減の目標であるため、それ以後の削減計画をどうすすめていくかが、今後の大きなイシューとなる。
カテゴリー[ 環境 ], コメント[2], トラックバック[0]
登録日:2007年 02月 21日 23:29:18
コメント
全く持ってその通りで、日本でエコと言えば何故か?個々の家庭の話か、それとも夜間電力などの低価格の話に持って行かれ、一番沢山ガスを出してる産業界の規制がスルー。ゴミ分別の程度でさえ、それですから。
今ようやく、「ゴアに習え」してますが、虎視眈々と骨抜きが企まれてるのでしょうね...。
田仁 @ 2007年 02月 22日 14:36:11
http://ime.nu/www.yomiuri.co.jp/science/news/20070216i406.htm
本当に大変なことですね @ 2007年 02月 22日 15:50:04
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- 志葉 玲(シバレイ)
- (男)
- HP:志葉玲Official Web Site
- ■1975年生まれ。番組制作会社を経て2002年からフリーに。イラク、レバノンなどの紛争地での現地取材の他、地球温暖化などの環境問題、共謀罪など国内政治まで幅広く取材している。
■志葉関係の本が相次いで出版されました!二冊とも、御一読いただければ幸いです。
『川田龍平 いのちを語る』 (川田龍平 著 志葉玲 写真/明石書店)
『たたかう!ジャーナリスト宣言 ボクの観た本当の戦争』(志葉玲 著・写真/社会批評社)
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