「血塗られたダイヤモンド」の真実
ジェニファー・コネリー、新作映画「ブラッド・ダイヤモンド」をPR - 東京
【東京 4日 AFP】7日から全国公開される新作映画「ブラッド・ダイヤモンド(Blood Diamond)」のPRのため来日中の出演女優のジェニファー・コネリー(Jennifer Connelly)ら関係者が都内のホテルで会見を行った。写真は、カメラに向け手を振るコネリー。(c)AFP/KAZUHIRO NOGI

画像は、私(右)とアムネスティ・インターナショナル日本の寺中誠事務局長(左)。ワーナー エンターテイメント ジャパン株式会社の試写室の外で。
先週7日に公開された映画『ブラッド・ダイヤモンド』が好評だ。Yahoo!の映画レビューでも、劇場公開中の作品の満足度ランキングで3位につけている。レオナルド・ディカプリオやジャイモン・フンスー達の熱演ぶりや、迫力ある映像も高評価の理由だろうが、なんといっても、この映画の最大の見どころは、「血塗られたダイヤモンド」の真実だろう。不正なダイヤモンド貿易がいかにアフリカの内戦を支えてきたか、そして現地で何が起きてきたのかを、映画は視覚的に明らかにしていく。フィクション映画でありながら、描かれる内容は事実に非常に忠実で、下手な報道よりも観た者に真実を伝え、そして心を揺さぶるのではないだろうか。
続き)
■映画の舞台とあらすじ
映画の舞台は、1999年、内戦下のシエラレオネ。他のアフリカ諸国がそうであるようにシエラレオネは最貧国の一つであり、平均寿命は34~36歳と「世界で最も命の短い国」として知られている。一方で、世界でも有数のダイヤモンド原石の産出国であり、同国政府と反政府武装勢力RUF(統一革命戦線)は、ダイヤモンド採掘権をめぐり激しく衝突。1991年から2002年までの内戦の犠牲者は約5万人以上、国内外へ避難を余儀なくされた人々は、およそ70万人にも上るとされている。
映画は、ジャイモン・フンスーが演じる漁師ソロモン・バンディーの村が、RUFの襲撃を受けるところから始まる。RUFによって無差別に殺される村民達。ソロモンの息子ディア(カギソ・クイパーズ)もRUFに連れ去られてしまう。ソロモンも拘束され、ダイヤモンド採掘所で、強制労働を強いられる。そこで発見したのは、巨大なピンク色のダイヤモンドの原石。ダイヤモンドの密売人で武器商人でもあるダニー・アーチャー(レオナルド・ディカプリオ)は、ソロモンに「息子を助けるから、ダイヤのありかまで案内しろ」と持ちかける。ダイヤの密貿易を追うアメリカ人ジャーナリストのマディー・ボウエン(ジェニファー・コネリー)の協力も得て、RUFの勢力圏へ向かっていくのだった。
■370万人を殺した「血塗られたダイヤモンド」
『ブラッド・ダイヤモンド』はフィクションでありながら、描かれている内容は、実際にアフリカの国々で起きてきた事実を忠実に再現している。映画の主人公であるアーチャーは、ダイヤと引き換えに武器を供給していた。こうした紛争に直接関係するダイヤモンドは「紛争ダイヤモンド」、または「ブラッド(血塗られた)・ダイヤモンド」と呼ばれ、1990年代にはダイヤモンドの国際流通の内、最大で15%が紛争ダイヤモンドだった。映画の舞台であるシエラレオネの他、コンゴ、アンゴラ、リベリアの国々で、ダイヤモンドは、各国の軍指導者や武装勢力の資金源となり、紛争ダイヤモンドによって得られた武器で虐殺は行われた。これらの国々の犠牲者総数は約370万人にも上るという。
その後、「紛争ダイヤモンド」に対する国際的な批判の高まりによって、紛争ダイヤモンドの取引を防ぐための認証制度「キンバリープロセス」が導入され、紛争ダイヤモンドの流通量は大幅に減った。しかし、反政府軍支配地域から紛争ダイヤモンドが近隣諸国へ密輸され国際市場に出回っているなど、今なお、ダイヤモンドの国際貿易の約1%は紛争ダイヤモンドだとされている。公開に先駆けて行われた試写会でスピーチを行った、国際的な人権団体「アムネスティ・インターナショナル」の日本支部の寺中誠事務局長は、「たった1%とはいえ、現地への与える影響は非常に大きい。国際的な監視を強めて、紛争ダイヤモンドを完全になくさなくてはいけない」と語った。
*Amnesty International 紛争ダイヤモンドアクション
■RUFと少年兵
シエラレオネでも、ダイヤモンドの密貿易で急速に力をつけたRUFが、凄まじい蛮行を繰り広げていく。名に「革命」を冠しているが、その実態は最悪の殺人・略奪集団だった。
「Operation No Living Thing(皆殺し作戦)」を掲げ、武器を持たない人々を情け容赦なく殺し、数千人もの人々の腕や足を切断した。これは、RUFへの恐怖を植えつけるためであり、また、働けなくすることにより人々を支配し、シエラレオネ政府の力を削ぐためでもあった。女性達は皆レイプされ、特に少女達は連れ去られた後、RUF兵士の性奴隷とされる。少年達は、恐怖と麻薬による徹底的な洗脳を経て、人間としての感情を持たない殺人マシーンに仕立てられた。RUFの兵力のうち、実にその半数がこうした「子ども兵士」であり、映画でも、ディアや他の少年達がいかに洗脳され、RUFの兵士になり、そして人を殺していくかが、描かれている。
*映画のエンディングテロップでも紹介されたが、「子ども兵士」はシエラレオネの他、世界各地に存在しており、現在も世界に20~30万人いるとされる。
■暗躍する民間軍事企業
勢力を拡大するRUFに対し、シエラレオネ政府と世界のダイヤモンド原石の7割を独占するデビアス社は、南アフリカの民間軍事企業「エグゼクティブ・アウトカムズ社」を雇う。その報酬はやはりダイヤモンドの採掘権だった。南アフリカでは、少数の白人が黒人を支配するアパルトヘイト(人種隔離政策)が終わった時、さまざまな人権侵害を行っていた軍人たちが、その職を追われた。その受け皿となったのが民間軍事企業であり、エグゼクティブ・アウトカムズ社や、イラクで殺された日本人傭兵・齊藤昭彦氏が所属していたことで日本でも知られるようになった、「ハート・セキュリティー社」だったのである。映画では、アーチャーは元傭兵で、アンゴラ内戦で戦ったという設定になっているが、前出のエグゼクティブ・アウトカムズ社はアンゴラ内戦にも参加している。アーチャーの古巣であるコッツィー大佐の軍団は、エグゼクティブ・アウトカムズ社をモデルとしているのだろう。映画の中でも、コッツィー大佐の軍団は、政府軍とRUF双方に通じていたが、エグゼクティブ・アウトカムズ社は、アンゴラ内戦では、政府軍側につきながら、反政府軍もサポートしていたといわれ、シエラレオネ内戦でも、武器の密輸に関わっていたことが疑われている。
■日本のマスコミ関係者こそ観る映画
劇中、やり手女性ジャーナリストのボウエンに批難されたアーチャーは「アメリカの紛争ダイヤモンドを買っている連中にも責任はある」とやり返す。密貿易に手を染めているアーチャーの反論は詭弁と言えば、詭弁だが、紛争ダイヤモンドを買うという行為が、アフリカ内戦を煽ってきたことも、また事実だ。映画で槍玉にあげられたのは世界最大のダイヤモンド購買国である米国だが、日本も米国についで世界第二位の購買国。だから、今回『ブラッド・ダイヤモンド』が日本で公開された意味は大きい。これまで日本では紛争ダイヤモンドの問題はほとんど知られていなかったし、そもそもアフリカの問題自体が絶望的なまでにマスメディアで取り上げられてこなかった。私自身、アフリカに関して雑誌で記事を書きたいと思っても、なかなか企画が通らず、悔しい思いをしたことがある。アフリカで何百万人死のうが、日本のマスコミは芸能人の下らないゴシップの方が余程重要なのだ。日本もアフリカの問題に関わっており、日本の人々の意識が変われば、アフリカの人々の運命も変わるかもしれないにも関わらず。だから、一般の人々も勿論だが、私は機能不全に陥っている日本のマスコミ関係者にこそ、本映画を強くお勧めしたいのである。
カテゴリー[ 隠れた注目すべき事件・問題 ], コメント[4], トラックバック[0]
登録日:2007年 04月 13日 15:45:07
コメント
マスコミというより、人が真実より夢想を好むからだと思います。マスコミの話題は大衆の嗜好に合わせているのです。
先進国の一般人は、そういう性質の人たちが圧倒的多数であり、真実を求めていないのです。 彼らの考えることは、世俗的な関心事。自分の周り(直接関係する世界)であり、それが大衆の定義といえます。
yuu @ 2007年 07月 01日 00:10:15
ダイヤモンドや金やあるいは石油が問題なのではない。なによりの悲惨は、そこに武器があることだろう。世界はこの「武器の蔓延」を止めなければならない。そのためには市民の銃器所持を公然と認めているどこかの馬鹿な国をまず説得しなければならないのだけれど。しかし、その馬鹿な国=アメリカの映画人ががこういう映画を商業映画としてちゃんと作れるというのもおかしなものだ。といっても登場する唯一のアメリカ人がジャーナリストというのもなんだなぁ。
カインの末裔 @ 2007年 09月 18日 12:10:37
温故知新として、松本清張の「日本の黒い霧」中の「征服者とダイヤモンド」もお薦め。
征服者は略奪がお好き。
田仁 @ 2007年 09月 18日 13:16:25
その石を身に付ける事に何の意味があるんだろう。「高価なモノ」を身に付けるのがステイタスだとして、だからナンだって言うんだろう。 結局は人の「欲」が人を殺しているのかな?
d5 @ 2008年 05月 24日 19:47:08
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- プロフィール

- 志葉 玲(シバレイ)
- (男)
- HP:志葉玲Official Web Site
- ■1975年生まれ。番組制作会社を経て2002年からフリーに。イラク、レバノンなどの紛争地での現地取材の他、地球温暖化などの環境問題、共謀罪など国内政治まで幅広く取材している。
■志葉関係の本が相次いで出版されました!二冊とも、御一読いただければ幸いです。
『川田龍平 いのちを語る』 (川田龍平 著 志葉玲 写真/明石書店)
『たたかう!ジャーナリスト宣言 ボクの観た本当の戦争』(志葉玲 著・写真/社会批評社)
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