車に食わせるメシはない!? バイオ燃料普及で環境破壊や食糧危機の恐れアリ

第100回LAオートショー、GMの目玉は代替燃料車 - 米国

【ロサンゼルス/米国 1日 AFP】ゼネラル・モーターズ(General Motors、GM)は、29日から開催されている第100回「ロサンゼルスオートショー(Los Angeles Auto Show)」にエタノールなど代替燃料を使った車種を展示している。
≫続きを読む…
(c)AFP/General Motors/Steve Fecht

AFPBB News


 「環境に優しいガソリン」として、先月27日、首都圏50箇所のガソリンスタンドで試験販売が始まった、「バイオガソリン」。新聞やテレビで報道されることも多いので、読者の皆さんもご存知だろうが、これは植物から作られたアルコールの一種、バイオエタノールを3%、ガソリンに混合したものだ。
 「CO2(二酸化炭素)を吸収する植物を原料とする燃料なら、燃やしてもプラスマイナスゼロ」と、日本政府と石油業界はバイオガソリンを「地球温暖化対策」として位置づけており、石油関連大手による業界団体・石油連盟は、平成22年度に全国4万8000店全てのガソリンスタンドでの販売を予定している。
 だが、果たして車の燃料の「バイオ化」は、本当に環境にやさしいのか。識者やNGOなどからは、バイオエタノールやバイオディーゼルが車の燃料として普及することで、むしろ環境や社会に重大な悪影響を与えるのではとの懸念の声も上がっている。

続き)
■バイオ燃料って何?

 そもそも、バイオ燃料とは何なのか。車の燃料のバイオ化がもたらしうる問題について触れる上でも必要なので、簡単に説明しよう。バイオ燃料とは、バイオマス(生物資源)を元とする燃料の総称で、主だったものとしては以下のようなものがある。

・ バイオエタノール 
サトウキビやトウモロコシなどの作物の糖分を発酵させ、エタノールを抽出。ガソリンに混合して、車の燃料とする。 
・ バイオメタノール
 草木を燃焼しガス化させ、さらにメタノール合成装置で、メタノールにする。バイオメタノール同様に、車の燃料として使用可能。エネルギー効率はいいが、燃焼時に発生するホルムアルデヒド(人体に有害)の低減が課題。
・ バイオディーゼル 
ナタネやアブラヤシ、大豆などの植物油にメタノールを加えて合成したもので、既存のディーゼルエンジン車に使える。日本では各地で自治体や市民団体などが使用済み食用油をバイオディーゼルとしてリサイクルを行っている。
・バイオガス
家畜の糞尿や生ゴミなどから発生するメタンガスを燃やし、発電や冷暖房等に使う。
・薪、おが屑など
そのまま燃やして使える。最近では木を細かく砕いて、練り固めたペレットにして、暖房や発電に使うことも。


■車の燃料の「バイオ化」で、森林破壊が進む?!
 
 日本で排出されるCO2の内、自動車などの「運輸」が占める割合は全体の約2割と大きなもので、これを削減すること自体は重要なことだ。だが、バイオエタノールにしても、バイオディーゼルにしても、その供給は海外からの輸入頼みなのだ。

 バイオエタノールに関しては、日本は現在はフランスから輸入しているが、今後はブラジルから輸入を予定している。同国は世界最大のサトウキビ生産国であり、米国に次ぐ世界第2位のバイオエタノール生産国だ。ブラジルでは、バイオエタノールのみで走る車や、様々な比率でガソリンとバイオエタノールを混合して走れる「フレックス車」が広く普及している。さらに、「バイオエタノール」を輸出品として世界に売り出し始めている。

 だが、バイオエタノールの需要増加によって、サトウキビ畑が拡大していくことが、現地の生態系に重大な悪影響を与えるかもしれない。現在のところ、サトウキビ畑は、アマゾンの熱帯雨林を直接破壊してはいないものの、国際環境NGO FoE Japan で森林問題を担当する中澤健一氏は「サトウキビ畑がダイレクトに熱帯雨林を破壊しなくても、農地として利用する土地が広がれば、結局、熱帯雨林の破壊につながる恐れはある」と懸念する。
 NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク(BIN)理事の福代孝良氏も「大豆生産による熱帯雨林破壊を教訓とするべき」と指摘する。世界一、二を争う大豆生産国であるブラジルは、当初、「セラード」と呼ばれる草原地帯で大豆畑の開発を始めたが、大豆畑はセラードの半分を多いつくし、さらにはアマゾンの熱帯雨林もその2割が破壊されてしまった*。確かに、サトウキビ畑の開発で同じことが起きないとは、誰も保障できないだろう。そもそも、セラード自体が貴重な生態系でもあり、保全の必要があるのだ。

*バイオ燃料への教訓 ~ブラジルの森林開発の歴史から
http://www.fairwood.jp/printdoc/prdc_mel19_01.shtml

 
 バイオディーゼルの原料となるパーム油の輸入拡大も深刻な影響をもたらすだろう。パーム油生産のためのアブラヤシ畑開発は、マレーシア、インドネシア共に森林破壊の主要原因だ。マレーシアでは1985~2000年の森林減少の9割近くが、アブラヤシ畑の開発によるものとされ、インドネシアでもアブラヤシ畑の少なくとも7割が森林を破壊して作られたものだとされている。さらに、アブラヤシ畑の開発・運営は、地域住民との土地を巡る紛争、畑で働く労働者の人権侵害(児童労働や農薬汚染etc)といった問題も引き起こしている。少し環境問題に詳しい人々にとっては、「パーム油は環境にやさしくない」ということは、もはや常識となっているのだ。


■車VS人間の食料の奪い合いが始まる!?

 サトウキビやトウモロコシなど、本来、食用として生産されている農産物を車の燃料にしてもいいのか?というのもバイオ燃料導入の大きな問題点だ。それでなくとも、世界人口を養いうる量の食料があるにも関わらず、約8億5200万人、つまり世界人口の7人の1人が飢餓に苦しんでいるという(世界食料計画の発表)。これでさらに農産物が車のために使われるのであれば、世界の「食料格差」の拡大に拍車をかけることになるだろう。

 米環境シンクタンク「アースポリシー研究所」所長のレスター・ブラウン氏も、著書『フード・セキュリティー』で、「食料か車の燃料かで、農産物の奪い合いになる」と警鐘を鳴らしている。実際、世界のトウモロコシ輸出の7割を占める米国は、今年1月、ブッシュ大統領が「10年間でガソリンの国内消費量を20%削減し、バイオエタノールなどの代替燃料の使用量を引き上げる」という政策を発表。今年1月にブラウン氏が発表した見通しによれば、2008年までに、米国で収穫されたトウモロコシの約半分がバイオエタノール生産に使われる可能性もあるという。その場合、影響はトウモロコシだけに止まらず、代替穀物の需要の高まりで、穀物全般の価格が高騰する。さらに穀物の多くが家畜の飼料となっているため、肉や乳製品の価格も上がるというのだ。

 もし、ブラウン氏の予測通りになれば、世界的な食糧危機に発展するかもしれない。その時に非常に困るのは、他でもない我々日本人である。日本の穀物自給率が3割を切っていることは有名だが、トウモロコシにいたってはその9割を米国から輸入しているからだ。さらに、12億人の国民を抱える中国が、2004年に穀物の輸入国に転落した。農地の水不足や土壌劣化による農産物生産高の減少や、経済発展に伴い人々が肉を多く食べるようになり、家畜飼料としての穀物需要が高まっていることが原因だが、今後、中国の穀物輸入量が増えれば、日本にとっては、米国のバイオエタノール推進とのダブルパンチとなるだろう。日本としては、バイオ燃料の導入よりも先に、穀物の輸入先を確保する、或いは自給率を高める方が先なのではないか。車にメシを食わせる余裕はないのだ。


■環境・社会的に正しい地球温暖化対策を

今年2月、FoE Japan、BIN、地球・人間環境フォーラムの3団体が「持続可能性に配慮した輸送用バイオ燃料利用に関する共同提言」を発表した。提言は、

「輸送用(つまり、車などの運輸)エネルギー削減の抜本的な対策の実施」、
「国内・地域資源の活用」、「食用需要と競合しない資源の優先的活用」、
「生産から消費までのトータルな温暖化防止効果」、
「原料生産における法令順守や環境・社会的な責任を果たす事」

 などをあげ、環境団体や有識者など24団体3個人が賛同している。そもそも地球温暖化対策として、始めたバイオ燃料導入だが、CO2を吸収する森林の破壊や、世界の食糧危機を引き起こしては、本末転倒なのである。何のためのバイオ燃料なのか、日本政府を始め、各国の政府も関連業界も、改めて肝に銘じておくことが必要だろう。

カテゴリー[ 環境 ], コメント[4], トラックバック[1]
登録日:2007年 05月 17日 23:49:21

コメント

ついでにもう1つ、付け加えてイイです?
戦後の米国発農業により、石油由来肥料で荒れた耕地から表土流出、ってのも上記と同様な「資源関連」と言えなくもないのでははいか。
ソレもやっぱり、解決しようと思えば、植物性繊維等、腐葉土とか持って来るより他に方法が無い様に思うんですね。

田仁 @ 2007年 05月 20日 13:24:48

まあ批判するだけなら楽なんですが、そこに「具体的な」知恵がないと単なる空論ですね。
「肝に銘じる」じゃ何の解決にもなりませんよ。

匿名 @ 2007年 05月 25日 17:27:26

お邪魔します。

>バイオ燃料普及で環境破壊や食糧危機の恐れアリ

 それ以前にバイオ燃料は「普及」するのでしょうか。「自然が"濃縮"してくれたもの
を使っている」石炭や石油と違いバイオ燃料は人間が"濃縮"しなければなりません
が、そのコストはどうなるのでしょう(ひょっとしたらバイオ燃料から得られるエネル
ギー<バイオ燃料を作るために必要なエネルギー)。もし普及するとすれば「石油や
石炭の価格に二酸化炭素撒き散らしの対価が上乗せされた」場合でしょうけど、そう
なれば「石油が安く使える事を前提にした」今の文明は成り立たなくなるかも(少なく
とも自家用車は無くなる?)。

ブロガー(志望) @ 2007年 06月 02日 08:09:51

燃やすものであってもその原料が植物でその成長過程では炭酸同化作用により、空気中の二酸化炭素を取り込んで酸素を吐き出すから、地球温暖化に関係しないが、その植物を大量に栽培するには、大量の水や肥料が必要でその後燃料にする過程で、大量の二酸化炭素を消費することを忘れている。

yuu @ 2007年 07月 06日 23:14:01

コメントを追加

Trackback

この記事に対するトラックバックURL:

石油業界・産油国VSバイオ燃料 新たなエネルギー戦争始まる

  原油価格高騰、地球温暖化問題の深刻化に伴い、植物原料を用いるクリーンなバイ...

date:2007年 10月 30日 01:44:23

プロフィール
志葉 玲(シバレイ)
志葉 玲(シバレイ)
(男)
HP:志葉玲Official Web Site
■1975年生まれ。番組制作会社を経て2002年からフリーに。イラク、レバノンなどの紛争地での現地取材の他、地球温暖化などの環境問題、共謀罪など国内政治まで幅広く取材している。

■志葉関係の本が相次いで出版されました!二冊とも、御一読いただければ幸いです。

『川田龍平 いのちを語る』 (川田龍平 著 志葉玲 写真/明石書店)

『たたかう!ジャーナリスト宣言 ボクの観た本当の戦争』(志葉玲 著・写真/社会批評社)
最近のトラックバック
お気に入りリンク
検索