ブラッド・アイボリー~買わなければ殺されない
【6月15日 AFP】アフリカ諸国がワシントン条約(絶滅のおそれがある野生動植物の国際取引に関する条約、CITES)事務局に提出した報告書によると、1940年代にはアフリカに最大500万頭いたゾウは現在までに約10分の1の40万-60万頭に減少。毎年2万頭のゾウが密猟者に殺されているという。(c)AFP
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ゾウにとっては再び受難の時代になるかもしれない。14日、絶滅の恐れがある動植物の国際取引を規制する「ワシントン条約国際会議」(CITES)で、ボツワナや南アフリカなど南部アフリカ4カ国が抱える象牙が、日本に輸出されることが決まった。
他の大型哺乳類、例えばトラやサイにとってそうであるように、アフリカゾウにとってその生存を脅かすのは、生息地の破壊だけではなく、「高価な商品」として、その体の一部を売買しようとするマーケットである。
アフリカでは生息地の破壊の他、象牙目的の乱獲で、1970年代末には、132万頭いたアフリカゾウが、たった10年ほどで62万頭まで半減してしまった。そのため、1989年に象牙の国際取引が全面禁止されたが、日本政府代表団は、国内の象牙加工業会の意向を受け、国際会議の度に象牙取引の解禁を求めてきた。
今回の決定は、国際的な象牙取引の凍結を9年間延長するかわりに、南部アフリカ4カ国に備蓄された象牙200トンの在庫から、日本への限定輸出を行うというもの。だが、実際に何トンが輸出されるかは、明かされていない上、例え在庫分のみの限定輸出でも、ブラックマーケットを活性化させ、象牙の密貿易を促進してしまう恐れがある。
続き)
■血まみれのハンコ
日本の象牙需要の高まりは、アフリカでのゾウ虐殺と連動してきた。1980年代、日本の象牙需要はピークに達し、特にハンコは機械化された工場で大量生産され、輸入された象牙の約6割がその材料となった。野生生物保全論研究会の坂元雅行事務局長によれば、1980年代、日本は年間270トンの象牙を輸入していたが、これはゾウ1万~1万5000頭に相当する量だという。
しかも、犠牲になっていたのは、ゾウだけではない。アフリカでは各地で悲惨な内戦や紛争が起きてきたが、象牙は貴金属や、ダイヤモンドと並び、武器購入の資金源とされたのである。最近でも、チャドでの内戦で、密猟された象牙が武器の資金源となっているという。
以前、このブログで『ブラッド・ダイヤモンド』という映画を紹介したことがあったが、象牙のハンコもまた、血にまみれているのである。
■象牙の密貿易を防げるのか?
今回、輸出が決まった象牙は在庫分で、新たにゾウを殺して取ったものではない。しかし、合法の取引が行われることで、それに紛れようとする非合法の取引も活発化する。象牙貿易を行う国々がこうした非合法の取引を防ぐことができるかは疑わしいのだ。
今年4月末にケニア、マリ両政府が明らかにした調査結果によれば、2004年末から2006年末までに世界各国で40トン程、約6000頭分の象牙が押収されたという。しかも、押収された象牙は氷山の一角で、実際には年間2万頭ものゾウが殺害されたと推計される。
この調査報告は「企業の自主的な取り組みを重視した密輸監視態勢が、象牙密貿易を横行させている」と日本を名指しで批判している。昨年8月には大阪で3トン近い象牙が押収されるという「史上最大の密輸事件」も発生。逮捕された容疑者2名は、山口組系の暴力団組織の名刺を持ち、同組織の事務所にも出入りしていたことから、象牙密貿易が暴力団の資金源となっている可能性も疑われている。
■買わなければ殺されない
ゾウは、アフリカ諸国にとって重要な観光資源であり、また広範囲に移動し、植物の種を糞と共に撒いていくなど、生態系の要となる生き物でもある。だから、現場の自然保護官達はオモチャのようなライフル片手に、文字通り命がけで、戦争で使うような重武装の密猟者達からゾウ達を守っているのだ。
私達は別に象牙製の工芸品などなくても生きていけるし、ハンコが象牙製でないからといって、特に困ることもない。まして、象牙製品を買うことによって、現地の生態系が破壊されたり、人々の流血を招くのであれば、なぜ、象牙に固執する理由があるだろう?
象牙に限らず、他の希少生物の保護全般に言えることだが、「買わなければ、殺されない」のである。
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登録日:2007年 06月 16日 02:52:58
コメント
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- ■1975年生まれ。番組制作会社を経て2002年からフリーに。イラク、レバノンなどの紛争地での現地取材の他、地球温暖化などの環境問題、共謀罪など国内政治まで幅広く取材している。
■志葉関係の本が相次いで出版されました!二冊とも、御一読いただければ幸いです。
『川田龍平 いのちを語る』 (川田龍平 著 志葉玲 写真/明石書店)
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