長井さんの死とミャンマー(ビルマ)と日本
【10月31日 AFP】ミャンマー中部のパコック(Pakokku)で31日、僧侶ら約100人が行進した。
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(c)AFP
ミャンマー(ビルマ)*で、ジャーナリストの長井健司さんが殺害されて、早くも一ヵ月が経った。私は長井さんとは面識が無かったが、同じ紛争地を取材する者として、全く人事だと思えない。長井さんのご冥福を祈るのと共に、彼が命を賭して日本の人々に伝えようとしたことを忘れないようにしたいと思う。現在発売中の週刊SPA!(07年11月6日号)には、私の担当したビルマ特集が掲載されているが、今回の取材でお世話になった、ビルマ事情に詳しいジャーナリストの田辺寿夫さんはこう語っていた。
「皮肉にも、長井さんの死が日本の人々の目をビルマに向けさせた。長井さんの犠牲を無駄にしないためにも、一過性の報道だけでなく、一人でも多くの人々がビルマで何が起きているか、関心を持ち続けてほしい」
およそ40年もの間、ビルマと接し続けた彼は、この一ヵ月という間、かつてない程のメディアの取材攻勢(私も含めて)を受けた。その中で田辺さんが口にした率直な言葉である。各テレビ・新聞がビルマ情勢を取り上げる状況は、長く続かないのだろうが、報道が少なくなったからと言って現地の状況が改善された訳では決してないのである。
*現在、外務省や日本のメディアの中でよく使われるミャンマーという呼称は、1990年の総選挙でアウンサンスーチー氏ら民主化勢力に圧倒的な差で敗北したにも関わらず、権力の座にしがみつく軍事政権が勝手に改称したものであり、同国の民主化を支援する人々は以前からの国名である「ビルマ」を好んで使う。
続き)
■地下を流れるマグマのような軍政への怒り
田辺さんの言葉を思い出しつつ、AFPBBNEWSを見てみると、この写真のニュースを見つけた。そう、軍事政権が「制圧宣言」を発表した後も、現地では民主化運動の火は消えていない。いや、人々の軍政への怒りはより強いものになった、とも言えるだろう。なぜならば、ビルマ国民の9割は仏教徒であり、彼らにとって僧侶は「人」ではなく「神の子」なのだ。その僧侶達を軍政側は情け容赦なく、殴り、撃ち殺した。現在も僧侶達が兵士達によって、僧衣を剥ぎ取られ、強制還俗、つまり僧であることを辞めさせられることが続いているという。ビルマの人々にとって、これは許しがたい暴挙なのである。
■軍事政権下のビルマは究極の格差社会
9月の大規模デモのそもそもの原因となった、経済の低迷も改善されるわけでもなく、やはり人々の不満は鬱積するだろう。ビルマは世界でも最大のコメの輸出国であり、年に3回もコメの収穫できるのにも関わらず、世界食料計画(WFP)の最近の発表によれば、国民の1割、5歳以下の子ども達の3分の1が栄養失調状態にあるという。天然ガスや石油などの地下資源にも恵まれながらも、その利益は国民に還元されることはなく、根本敬教授(上智大学)は「ラングーン(ヤンゴンのこと。ビルマ最大の都市)では、市民のエンゲル係数がアフリカ諸国並の60%台にも上っている。いかに人々の生活が困窮しているかを物語っています」と語る。また、技術協力のため現地に何度も訪れた私の知人も、「国民が苦しんでいるというのに、軍政の幹部連中は、高級車を乗り回し、金銀財宝を豪邸にため込んでいる。まるで、王様か何かのような暮らしだ」と憤っていた。よく、「ミャンマー経済の低迷は欧米の経済制裁のせいだ」という主張を聞くが、それが全くデタラメとは言わないまでも、経済破綻の最大の原因は、軍政による失政と汚職に他ならないだろう。
■軍事政権と日本政府・企業の蜜月
ビルマ国民の苦境は私達日本人とも無関係ではない。中国やロシア等が軍政との結びつきを強化する以前、少なくとも2004年までは、日本政府は軍政にとって最大の支援者だった。そして、03年5月、民主化リーダーのアウンサンスーチー氏を3度目軟禁に処せられたことで、大幅に減りはしたものの、現在でも先進国の中では日本の対ビルマODA額はトップであり続けている。
日本の商社やエネルギー産業も、現地で多大な人権問題を引き起こした事業に関わり、利益をむさぼった。NGO「メコン・ウォッチ」によれば、南部ビルマ沖のイェタグン天然ガス田の権益の内、約19%を日石ミャンマー石油開発*が握っている。このイェタグン田に引かれたパイプラインの建設は、南部ビルマの世界的にも貴重な原生林を破壊し、豊かな自然と共に生きてきた少数民族の土地を奪い、強制労働に従事させた。そして、その過程で軍による住民の殺害や拷問、レイプなどの残虐行為が行われたのである。
*新日本石油開発と日本政府がそれぞれ50%ずつ出資。
■同じ人間として・・・
日本にいるビルマ人民主化活動家達も、そうした軍政と日本政府・企業の結びつきを知らない訳ではない。だが、彼らは長井さんの死に涙し、黙祷をささげるのだ。「“同じビルマ人として、長井さんが殺されたことを申し訳なく思う”。そこまで言うビルマ人もいるのですよ」と田辺さんは語る。在日ビルマ人達が長井さんの犠牲を悼むように、私達日本人も、もっとビルマの人々の状況に思いをはせるべきなのではないか。今回の取材を通して私は改めてそう思わないではいられなかった。
カテゴリー[ 戦争・紛争全般 ], コメント[4], トラックバック[0]
登録日:2007年 11月 01日 00:07:05
コメント
ついでに、かの「クンサー」死亡のニュースが流れました。
何処まで情報戦か判りませんが、最近のCNNは反ネオコン派っぽいニュースを結構流しており、ミャンマーの「法衣革命」は東欧の「カラー革命」と同じ、CIA御用達の「米国民主基金」、ジョージ・ソロス主導の「開かれた社会研究所」と「自由の家」、ジーン・シャープ主導の「アルバート・アインシュタイン研究所」が後押ししている、と言ってます。
マラッカ海峡の制海権掌握を睨んだ国策で、「ブッシュの戦争」投機筋としては、先物原油市場利益の二匹目の泥鰌(一匹目はイラク)とも。
血が流れるのに変りはありませんが…。
田仁 @ 2007年 11月 04日 14:24:55
国連のミャンマー民主化要求決議案を否決してるのはどことどこの国でしたっけ?
鈴木 @ 2007年 11月 13日 12:51:10
文春が変な切り張りをして、ご遺族から訴えられちゃいました。
アブサヤフの創設者の一人か?!ってなフィリピンでの議員暗殺とか、如何してもマラッカ海峡を「ホット・スポット」にして「ブッシュの戦争」投機筋が稼ぎたいシナリオは、資金潤沢なだけに根強いですね…。
強引なカラー革命は、グルジアとか混乱激しいですけど、そんな痛みなんて投機筋には関係ないから。
(まっ!自民党政権も庶民の痛みなんて関係ないし!見ました?あの母子家庭の「限定的な」支給額減額取り消し。)
田仁 @ 2007年 11月 17日 15:19:55
なんだ、まだ生きてたのか
@ 2007年 11月 29日 12:28:35
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- プロフィール

- 志葉 玲(シバレイ)
- (男)
- HP:志葉玲Official Web Site
- ■1975年生まれ。番組制作会社を経て2002年からフリーに。イラク、レバノンなどの紛争地での現地取材の他、地球温暖化などの環境問題、共謀罪など国内政治まで幅広く取材している。
■志葉関係の本が相次いで出版されました!二冊とも、御一読いただければ幸いです。
『川田龍平 いのちを語る』 (川田龍平 著 志葉玲 写真/明石書店)
『たたかう!ジャーナリスト宣言 ボクの観た本当の戦争』(志葉玲 著・写真/社会批評社)
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