「史上最悪」の核施設、青森で試験運転を開始~史上最悪の原発事故から20年目に

<チェルノブイリ原発>事故から20周年 反核を訴え会見 - フランス

【シェルブール/フランス 15日 AFP】シェルブール(Cherbourg)で15日、新たな原子炉、欧州加圧水型炉(EPR)への抗議とチェルノブイリ(Chernobyl)原発事故から20周年を迎えるにあたり記者会見が開かれた。
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(c)AFP/MYCHELE DANIAU

AFPBB News


 今月26日で、チェルノブイリ原子力発電所事故から20年が経つ。史上最悪の原発事故による汚染物質の拡散は、事故現場の旧ソ連ウクライナに止まらず、欧州や日本にも及んだ。事故以後、欧州では「原発から自然エネルギーへの移行」が進んだ。だが、日本はその後も原発を中心にすえたエネルギー政策に固執。先月31日には放射能「クリプトン85」をたった一年でチェルノブイリ原発事故の10倍も出すとされる「史上最悪の核施設」が試験運転を開始し始めた。

続き)
■史上最悪の原発事故

 1986年4月26日、チェルノブイリ原発4号炉はテスト運転中に暴走し、大爆発を起こした。その被害は正に「史上最悪」だとしか言いようがない。事故現場となった旧ソ連ウクライナでは、現地NGO「チェルノブイリ身体障害者同盟」発表によると死者数は150万人。ロシアやベラルーシも含めると被爆者総数は最大で900万人という説もある。風下にあったベラルーシは国土の23%が汚染されてしまった。

 核汚染の拡散は旧ソ連3国に止まらない。欧州全域に死の灰が降り注ぎ、気流の関係で特に汚染が酷かったスウェーデンでは、発がん率の増加も報告されている。放射能はジェット気流に乗って8000キロ離れた日本にまでも届いた。大規模な原発事故の汚染が地球規模であることを突きつけられたのである。


■欧州で本格化する「原発から自然エネルギーへの移行」

 チェルノブイリ原発事故の衝撃は、特に欧州でのエネルギー政策を大転換させた。原発の停止・縮小が相次いだのである。たとえばオーストリアは’78年に完成した原発を一度も操業しないまま閉鎖。その後も原発を導入しない方針をとった。イタリアも’90年に4基の原発全てを閉鎖。経済大国ドイツは02年4月に施行された改正原子力法により、19基あった原発を2020年までに全て停止させる計画だ。

 風力や太陽光、小規模水力、バイオマス*や地熱などの自然エネルギーの活用も活発化した。豊富な水を誇るオーストリアは従来の水力発電に加え、風力やバイオマスを積極的に導入。EU加盟国で定める2010年までの自然エネルギー比率でも、78.1%という高い目標を掲げている。その他、スウェーデンが60%、ポルトガルが45%という目標を設定している。それに比べて、目標設定の低さが目立つのは日本だ。2010年までに1.4%と、まるでやる気がみられない。

*バイオマス:間伐材や建築廃材、糞尿や生ごみなど、生物に由来するエネルギー資源の総称。そのまま燃やしたり、ガスや液体燃料に加工して使用する。例えば、車の燃料になる「バイオ・ディーゼル」は使用済みを食用油をメタノールに反応させて作ったもの。


■「史上最悪の核施設」六ヶ所再処理施設

 多くの国々が原発の縮小・廃止へと向かう中で、日本のエネルギー政策は原発に固執し続けている。03年4月には、東京原発所有の17基の原発が全て止まるという異常事態が起きるなど、業界や監督省庁の著しい信頼低下にも関わらずだ。そんな中、先月末31日に「史上最悪の核施設」が最終試験運転を開始した。青森県六ヶ所村の核燃料再処理施設だ。これは原発から出る使用済み核燃料から、プルトニウムやウランを抽出するもので、現在、六ヶ所村には全国の原発から出た使用済み核燃料が集中している。

 だが最も恐るべきは、再処理施設から排出される大量の放射能だ。再処理施設は、その工程で数十種類の放射性物質を出すが、中でも皮膚がんとの関連が指摘されるクリプトン85の排出量はすさまじい。フランスの民間研究所CRIIRADの推計によれば、六ヶ所再処理施設が一年で排出するであろうクリプトン85の量はチェルノブイリ原発事故の約10倍。大飯原発(福井県)一基が一年に出す量を一日で排出するのである。これはラ・アーグ(仏)、セラフィールド(英)といった他の再処理施設に比べてもダントツの排出量なのだ。


■やっぱり起きたトラブル

 さらに恐ろしいのが、再処理施設で抽出されるプルトニウムだ。その名がギリシャ神話での地獄の王「プルート」に由来する通り、「スプーン一杯で東京都民1200万人を殺せる」最強の猛毒。そんな危険物が年間最大8トンも抽出される予定だが、万が一事故など起きれば正に大惨事になる…と懸念していた矢先に、今月11日に放射能を含む洗浄水が40リットル床に漏れるというトラブルが発生した。最終試験運転開始から、わずか2週間でこの有様である。先行きが思いやられるとは、このことだ。


■そもそも再処理不要???

 ところで、そもそも核燃料再処理の必要性自体に疑問視する声も少なくない。本来、再処理した核燃料を使うはずだった高速増殖炉「もんじゅ」は'95年の事故以来、止まったまま。苦汁の策でMOX燃料(プルトニウムとウラン酸化物の混合燃料)を燃やすプルサーマル計画に使われるようになったが、プルサーマルも安全性が疑問視され、原発を抱える自治体では慎重論が根強い。ただでさえ英仏や東海村の再処理施設で処理されたプルトニウムが余っているのに、この上さらにプルトニウムをため込んで一体どうするのか、という声も少なくない。


■「日本の核武装」を懸念する声も…

 大量にプルトニウムを保有しさらに抽出しようとする日本に対して「核武装したいのでは?」といぶかしむ声もある。昨年5月にはノーベル賞受賞科学者ら27人が「核拡散防止条約(NPT)を強化するとの日本の約束について疑問を抱かせる」として六ヶ所再処理工場の運転を無期限に延期するよう日本政府に呼びかけている。プルトニウムは核兵器の原料であり、六ヶ所再処理施設が一年で抽出するプルトニウム8トンは核兵器1000発分に相当するからだ。現在、「ポスト小泉」と言われる安倍晋三氏も02年に早稲田大学での講演で「自衛のためなら核兵器の使用も違憲ではない」などと発言している。安倍氏ら自民党の右派政治家の間に核兵器を明確に否定する姿勢が見えないのもまた事実なのだ。


■歴史からも経験からも学ばない日本

 原発の歴史は、事故と犠牲、その隠蔽の繰り返しだった。日本の政府も例外に漏れず、自らの経験として原発事故を目の当たりにしてきたのである。よく「愚者は経験に学び賢者は歴史に学ぶ」というが、史上最悪の原発事故から20年目に、史上最悪の核施設が稼動しようとしている現実を目にすると、日本政府は歴史からも経験からも学ばない愚か者なのだろう、と思えてならない。

カテゴリー[ 環境 ], コメント[12], トラックバック[3]
登録日:2006年 04月 16日 23:55:01

コメント

こんにちは。
私は、例えば六ヶ所村の使用済み核燃料再処理工場の操業後10年程経過して、工場関係者と周辺住民のガンによる死亡率が100倍程度増加しないと、この国の殆どの国民は原子力の危険性を認めないと思います。
何故かというと、自民党の土建屋族議員達が中心となって長年続けてきた「原子力に関する洗脳教育」が、隅々まで行き渡っているからです。

スパイラルドラゴン @ 2006年 04月 17日 15:02:45

佐賀の玄界灘発電所は、プルサーマルを始めるようなのですが、エネルギーは、良い商売なのでしょうか?

いかメン @ 2006年 04月 18日 13:39:44

シバレイさんこんにちは。昔広瀬崇さんが書いた、ジキル博士とハイド氏という原発問題を取り上げた本を読んで以来、個人的に原発に対するアレルギーを持ち続けています。原発は利用した後の管理に膨大なコストがかかり、結果的にそのコストというのはエネルギー消費量に換算され、別の原発を必要とする。。。。
終わりなき道に突き進まないように祈ってやみません。

【スタッフの一人言】 @ 2006年 04月 19日 15:36:14

はじめまして。とても興味深い内容でしたので、トラックバックさせて頂きました。よろしくお願いします。

Dora @ 2006年 04月 19日 16:55:01

チェルノブイリ周辺では20年経った今でも癌患者が急増中だそうです。癌患者はすぐに発症するのではなく、ある程度の年数が経ってから急増するそうです。染色体が破損するので、次世代にも受け継がれるそうです。広島の原爆もそうですよね。
「脱原発」の流れになるのは当然だと思うのに、政治家も企業のお偉いさんも自分だけは大丈夫だと思っているのでしょうか?でも、そんなことはないですよ。事故炉から半径300キロ以上の土地は居住や耕作を制限する汚染地帯になるそうですから。
金沢地方裁判所は志賀原発運転差し止めの判決を下したのに、判決を無視して原発は運転を続けているそうです。原発の耐震設計基準は1979年のものでその後見直しもされず、昨今の耐震偽造問題よりはるかに深刻な問題なのにマスメディアはなぜか沈黙を守っていると、神奈川新聞(4月17日)で藤田慶大助教授が警告を発しています。

はな @ 2006年 04月 20日 11:33:29

>染色体が破損するので、次世代にも受け継がれるそうです

これは迂闊なコメントでは?
被爆による染色体異常が遺伝したと確認された事実はないでしょう
こういうこと書く場合はもっと調べてから書かれた方がよろしいかと
少なくとも文章の最後に「~なそうです」などと書かなくて済むようにね

迂闊なコメントですね @ 2006年 04月 21日 08:28:52

 こんにちは。先日六ヶ所村のドキュメンタリーを撮られた監督さんの報告会へ行ってきました。六ヶ所村は自分が学生時代に偶然訪れた場所です。再処理施設を受け入れるか否かで村中が真っ二つに割れている最中でした。あちこち親切に案内をしてくれた地元の宅急便のおじさんが、「今に死人が出るような騒ぎになる」と顔を曇らせていたのが記憶に残っています。当時は何のことかわかりませんでしたが、今になってあそこの方々に降りかかる悲劇の意味を知りました。
 確かに、めぼしい産業もなく、隣の地区でも“森”ひとつ越えていかねばならないような土地です。でも、静かにゆっくり暮らしたいということで、都心に出ていた若者がまた戻ってくる、そんな良い場所だとも語っていました。その方のお子さんたちも、やはり地元に戻って根を下ろし、暮らしていらっしゃると。夏の終わりで、泊の浜もとても美しかった気がします。
 あの方達は今どうなったのか、激変した風景を見るのも怖く、フィルムを観に行く気にもなれません。
 新しい教育基本法では、国と故郷を思う心を高らかに謳っているようですが、両者は時に矛盾するもので、一方が他方を殺そうとすることもあるというのが現実ではないでしょうか。瞬間的な暴力は“テロ”と呼びますが、時間をかけて人と環境を破壊していくことも、同じような暴力だと感じました。
 

sasa @ 2006年 04月 21日 15:38:56

補足です。
4月16日21時からのNHKスペシャル「チェルノブイリ事故20年」は素人にも大変わかりやすいものでした。
チェルノブイリの住民の被爆被害を長年調査し続けている医師が解説していました。染色体を固定した写真をみると一目瞭然で、染色体のどの部分が欠損しているか、どの部分が切れて他の染色体とくっついてしまっているかわかりました。これが生殖細胞に起こると次世代に染色体異常が受け継がれていってしまうということです。
この番組はぜひ再放送してほしいものです。

はな @ 2006年 04月 22日 10:44:16

原発以外のエネルギーの模索も、
もっともっと積極的に考えていかねばならないと思いました。
しかし、使用済み核燃料は再処理以外に、
どのように始末するのか疑問がわきました。
どこかに捨てるんですか?

kuma @ 2006年 04月 23日 09:12:29

>>kumaさん
地盤の安定した地下に捨てるって、CMでやってました。
地震大国日本の安定した地盤です。

Vine @ 2006年 04月 27日 18:59:06

なはさんへ

 注意させていただいたのにルールを無視される方の書き込みは削除されこともありますので、ご注意。
http://www.actiblog.com/shiba/2715#extend

シバレイ @ 2006年 04月 28日 01:04:29

先週の環境イベント、水俣病コーナーで呼び止められ、汚染の元凶の水銀は今も埋められたまま、永久に厳重管理し続けねばならないと知りました。その水俣でまたもずさんな産廃の最終処分場計画が持ち上り、地元の激しい怒りを買っていることも。何の為の犠牲だったのか、原発をめぐる状況とも重なって見えました。

逸れますが… @ 2006年 04月 29日 18:57:06

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六ヶ所再処理工場について。

 まだ詳しいことは、よくわからないのですけれど、2007年5月より操業開始予定の六ヶ所再処理工場について、心配の声が上がってるようです。原子力発電所1年分の放射能が、この再処理工場では1日で排出されるそうです。  今、イランの核開発について世界から心配の声があがってますが、日本は既に核兵器を自前で作れるようになる準備を進めてるそうですし、イランより早くに核兵器製造の可能な国になるようです(早雲さんのブログ「晴耕雨読」より)。既に実用段階に入っているロケット技術と合わせれば、国産核ミサイルの製造も可能になるそう。この六ヶ所村の再処理工場がそれらにどうかかわってくるのかは、わかりません...

date:2006年 05月 12日 03:23:31

【緊急】放射性廃液が海に流れ出る前に

“STOP!再処理 ネットワーキング”に参加しませんか。「再処理反対」それだけで繋がりあった各個人(サイト)が、自由な方法で、ネットワークを大きく拡げていく運動です。 最新情報原燃はこっそりと海への放射能放出を狙っている「廃液がどれぐらい溜まっているかは公...

date:2006年 04月 23日 10:30:04

NHKスペシャル「汚された大地で〜チェルノブイリ 20年後の真実〜」

とてもいい番組だと思う。電力会社から広告料をもらっている民放には作れない内容だと思う。NHKもまだまだ捨てたものではないと思った。 見ていて思い出したので、だいぶ前に原発に

date:2006年 04月 19日 15:49:22

プロフィール
志葉 玲(シバレイ)
志葉 玲(シバレイ)
(男)
HP:志葉玲Official Web Site
■1975年生まれ。番組制作会社を経て2002年からフリーに。イラク、レバノンなどの紛争地での現地取材の他、地球温暖化などの環境問題、共謀罪など国内政治まで幅広く取材している。

■志葉関係の本が相次いで出版されました!二冊とも、御一読いただければ幸いです。

『川田龍平 いのちを語る』 (川田龍平 著 志葉玲 写真/明石書店)

『たたかう!ジャーナリスト宣言 ボクの観た本当の戦争』(志葉玲 著・写真/社会批評社)
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