オウム返し症候群
【11月21日 AFP】図は、日本が予定している調査捕鯨について示したもの。(c)AFP
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■オウム返し症候群
先日、同志社大学での講演「戦争とメディア」の中で“オウム返し症候群”という話をした。これは、私がつくった言葉で、どういう意味かというと、こんな感じ。
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【おうむがえししょうこうぐん】
1.自分自身はその問題について詳しく知らず、またロクに調べようとしていないのに、政治家や役人、専門家、テレビに登場するいかがわしいコメンテーターといった“権威”が発した言葉や、世間(主にマスコミ)で流布されている情報を、全く批判したりや疑問を持ったりしないままに、自分自身の「考え」として、主張すること。
2.上記のような行動をすることで、思考停止に陥っていること。或いは事実ではなく、思い込みを優先しての言動を繰り返すようになること。
例1:「テロとの戦いのため、日本はお金だけでなく、人も出して国際貢献すべきだよね」
例2:「原発は危険かもしれない。でも、止めたら電気が使えなくなって原始時代に逆戻りになっちゃうから、仕方ないね」
---------------------------------------------------------
続き)
こういった、思考・表現パターンは特に戦争や紛争に関してよく観られるのだけど、それ以外の問題でも、非常に多く観られる。 何故この話を持ち出してきたかというと、ニュースに関連したネットの書き込みを観ていると、その記事に対しての脊髄反射的な反応で感情的なコメントを書き連ねているヒトビトが多いと思うことが度々あるからだ。せっかく、従来のテレビや新聞に加え、インターネットが発達するなど、高度情報化社会となっているのに、ヒトビトの思考力はむしろ落ちているような気がする。「仕方ない」「ムカつく」などネガティブな感情を吐き出す材料として、報道が使われるのは、メディア業界で活動する者の端くれとして、非常に残念なことだ。
さらに悪いことは、メディア関係者、特に現場から離れたお偉いさんに、オウム返し症候群を患っているヒトビトが少なくない。先日、某新聞の記者に聞いたのだが、その新聞のお偉いさんが、とある温暖化懐疑論の本(これが全く酷いトンデモ本なのだが)に感化されちまって「温暖化懐疑論の特集をやれ」と騒ぎ出し、記者たちは大いに困惑しているのだという。オウム返し症候群は“感染力”が強く、“治療”も簡単じゃないだけに、メディアの幹部がこれを患うと、もう目も当てられない。
■捕鯨報道におけるオウム返し症候群
捕鯨関係の報道でも、オウム返し症候群はよく観られる。例えば、時事通信の配信記事
グリーンピースが調査捕鯨妨害=警告無視し、危険行為-水産庁
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2008012200664
グリーンピースの活動のあり方については、特に日本で反感が強いのは否めないだろう。だが、実際にはグリーンピースのそれは「非暴力直接行動」というスタイルであり、シーシェパードといったより過激な団体のそれとは異なるのにも関わらず、「環境テロリスト」というような、過剰なバッシングが目に余るような気がするし、メディアもそれを煽っている。
これまでもグリーンピースと日本の捕鯨船は小競り合いが何度もあったのだが、その度ごとに両者の主張は180度食い違っているのだ。それにもかかわらず、時事通信の記事は、水産庁の発表のみでグリーンピース側の主張は反映されておらず、(日本のメディアのお家芸である)「中立的」ですらない。
おそらく、時事通信の記者やデスクは水産庁からグリーンピースへの恨み節を聴かされ続けていて、それこそ「脊髄反射的」に引用記事を配信してしまったのだろう。今回は時事通信の記事を取り上げたが、日本のメディアは、こと捕鯨がらみになると、なぜこうも感情的になるのか。今回にしても、
・ザトウクジラやナガスクジラなど、個体数が少なく絶滅の恐れのあるクジラが捕鯨されようとしている
・そもそも調査捕鯨の調査としての妥当性の是非(殺さないでも調査ができるのでは、調査内容のお粗末さetc)
・南氷洋での捕鯨船への給油活動は、南氷洋の汚染を禁じる南極条約に違反する
といった問題をものの見事に無視した報道が多い。言葉の使い方一つにしても、グリーンピースの行為に関して、水産庁の言う「妨害」という言葉をそのまま使っているが、例えば「抗議」というような表現もあるのではないか。調査捕鯨は、その是非が国際的な議論の分かれているだけに、日本のメディア関係者達も、もう少し丁寧な仕事をしたらどうか、と思う。
コメント[5], トラックバック[0]
登録日:2008年 01月 24日 13:01:54
コメント
ステキ!!
全く、その通りだと思います
久しぶりに良識あるご意見に賛同の一言
neko @ 2008年 01月 24日 21:27:41
>ザトウクジラやナガスクジラなど、個体数が少なく絶滅の恐れのあるクジラが捕鯨されようとしている
昨年のことですがレッドリストを出しているIUCNは、ザトウクジラとミンククジラの生息数の増加が確認されたとして、この2種を絶滅の懸念が少ないランク(低懸念種)に格下げしたそうです。
IUCNはIWCとは無関係な団体ですが、ワシントン条約締結に深く関わった国際団体ですから権威はありますね。
これも調査捕鯨の成果の一つです。
ところで鯨類保護を訴える人達のうちで"鯨類の大規模な生態調査"を行おうって進言する勇者は居ないんですかね。
国家レベルでの予算が必要なら、鯨類保護に熱心な国の政府に働きかけるとか。
正直、学術分野は行動学的な側面(個体にGPSトレーサーを付ける・個体の生活挙動を調査する・等)が多いようで、数の議論をしにくそうです。
豪州・NZなどは国費で率先してやっても良さそうなのに、目立った動きがないのは不思議。
まぁ外観調査では鯨の生態そのものは多くが不明でしょうが、"数だけ"はある程度の確度で把握できます。
>そもそも調査捕鯨の調査としての妥当性の是非(殺さないでも調査ができるのでは、調査内容のお粗末さetc)
目視で同じデータが得られるとは環境保護団体が良く言うことですが、具体的にその方法が明示されたことは寡聞にして知りません。
第一、外観だけで年齢・食性・各種化学物質(重金属含む)の蓄積量と蓄積箇所・等々について、データが得られるなんて荒唐無稽というものです。
それ以前に"鯨の年齢"を鯨のどこの部位で調べるかを知っていれば、こんな事は恥ずかしくて言えないことでしょう。
ちなみに陸生動物や(鯨に比して)小型の海洋生物と異なり「健康を損なわず苦しめることもなく、水中に棲息する巨体をセンシング」するような技術は未だ存在しません。
もちろん将来的には判りませんが、もし本気で非殺傷調査を求めるならば、くだらぬ世迷い言で非難ごっこにうつつを抜かさず、資金と人材を確保して開発に勤しむべきですね。
>南氷洋での捕鯨船への給油活動は、南氷洋の汚染を禁じる南極条約に違反する
給油活動を禁じるという直接的な条項はありませんので、具体的な証拠を元に汚染を助長していることを証明するべきでしょう。
シバ氏ご自身も"オウム返し症候群"と呼ばれたいなら不要ですが。
あと国連海洋法条約でも繰り返し「航行の権利と自由を妨害してはならない」とありますので、件の「非暴力直接行動」による航行妨害も条約違反です。もちろん接触を企図した操船も同様です。
ただ当事者の拿捕や処罰が正当化される海賊行為などとは異なり、主に旗国の管理責任が問われる類の違反行為です。
そういえばシーシェパードはロープや網を流すなどして、モロに南極条約違反を繰り返してますね。
さすがエコテロリストと言うべきか。
南極条約議定書 附属書Ⅳ 海洋汚染の防止 第五条 廃物の処分
1 合成繊維製のロープ及び漁網、プラスチック製のごみ袋等のすべてのプラスチック類の海洋への投入による処分は、禁止する。
法と道は相反せず @ 2008年 02月 01日 12:59:36
nekoさん、法と道は相反せず さん、コメント有難うございます。雑誌の特集に追われ、レスが遅れました。
法と道は相反せず さん:
>昨年のことですがレッドリストを出しているIUCNは、ザトウクジラとミンククジラの生息数の増加が確認されたとして、この2種を絶滅の懸念が少ないランク(低懸念種)に格下げしたそうです。
ザトウクジラは結局格下げされず、まだVU(危急種)では?
http://www.iucnredlist.org/search/details.php/13006/summ
*Megaptera novaeangliae というのはザトウクジラの学名です。
それにナガスクジラは依然、EN(絶滅危惧種)ですし。
>目視で同じデータが得られるとは環境保護団体が良く言うことですが(略)
そもそも何のための調査なのでしょうか?水産庁等は「資源量の管理」と言っていますが、個体数調査ならば、目視など非殺傷型の調査で充分な筈で、いちいち殺したりする方がむしろおかしいでしょう。肉や内蔵の化学物質を調査したり、そもそも捕殺する、というのは商業捕鯨再開を前提としているからではないでしょうか。昨年のIWC総会でも、「調査捕鯨は『調査』という名目の商業捕鯨だ」と批判が続出しています。しかも、日本国内で流通していたクジラ肉をNGOがDNA検査したところ、特に絶滅の恐れがあり、調査捕鯨の対象外である種が混ざっていたことが判明しているなどの問題もあります。
>給油活動を禁じるという直接的な条項はありませんので、具体的な証拠を元に汚染を助長していることを証明するべきでしょう。
海水を汚染する恐れがある時点で、抗議されても致し方ないかと。実際に犯罪行為が完遂されなくとも、そうした行為に及ぶだけで批難されるのと同じことです。なお、調査捕鯨を行う日新丸は、これまでも大量の鯨油や血液、皮を海洋に投棄している、という具体的な事例があります。
>そういえばシーシェパードはロープや網を流すなどして、モロに南極条約違反を繰り返してますね。
さすがエコテロリストと言うべきか。
シーシェパードの場合、酸の入ったビンを投げつけるなど、その行為は度がすぎています。さすがに批難されてしかるべきでしょう。むしろ水産庁は内心、「過激な環境団体が日本をいじめている」というイメージ作りに役立つと、ほくそ笑んでいることでしょう。
*シバレイ @ 2008年 02月 05日 23:51:56
消費者の立場から一言、イイです?
ズバリ!海洋汚染の最終終着点である地球最大の哺乳類を余り沢山食べたくは無いです。
ってか、体が弱ってる感のある時に極々超稀に赤身を買う程度で。
只、(溜まり易い脂身を)他人が食べるのを止める程の「隣の斉藤さん」的信念もありません。
でも、米国とか、マグロの水銀でさえギャアギャア言ってるのにねぇ?変なトコだけ意固地な日本人も問題な気がします。
一方で、過激行動の「信念の礎」が聖書のヨナの話だとしたら、ソレはソレで原理主義っぽくって怖いし~。
田仁 @ 2008年 03月 02日 16:04:25
遅レス過ぎますが一応。
>ザトウクジラは結局格下げされず、まだVU(危急種)では?
この件に関しましては私の不見識でありました。謝罪し撤回致します。
>肉や内蔵の化学物質を調査したり、そもそも捕殺する、というのは商業捕鯨再開を前提としているからではないでしょうか
海洋環境の把握のために重金属や化学物質の調査を行うのは当然のことです。
田仁さんのようにマグロや鯨やその他の漁獲可能な水生生物について、水銀や危険な化学物質などの蓄積について、ニュースや話を聞いたことのある人は多いと思います。
なぜなら環境動向を把握して長期的予測をするには、こういった情報が欠かせないために調査が行われるからです。
例えば年齢が増すごとにリニアに蓄積量が増加しているなら、その物質に関して環境上で変動がないことの一つの根拠になり得ますが、若いグループの増加率もとに将来予測を立てた値が年老いたグループの実測値を大きく上回るなら、環境に含まれる危険物質量が急増しつつあることを示唆する重要な根拠になり得ます。
何より鯨の正確な年齢は殺して解体しない限り判らない部位にあり、外観では大まかに子供と大人の区別をつけるのが精一杯なのです。
それに変わる方法の発見・発明を鯨の研究者も環境保護団体も待ちわびていると思いますし、鯨類保護に熱心な豪州政府などが率先して資金を投じても良さそうなものですが、口ばかりとは実に不可解ですね。
>しかも、日本国内で流通していたクジラ肉をNGOがDNA検査したところ、特に絶滅の恐れがあり、調査捕鯨の対象外である種が混ざっていたことが判明しているなどの問題もあります。
混獲は確かに問題です。
但し、「国内流通しているもの」には 1.禁止前に捕鯨した物 2.調査捕鯨した物 3.沿岸の漁網などで混獲されたもの 4.密輸された物 が含まれており、密輸品に関してはDNAで調査が行われます。
つまり言い方を変えれば、密輸品以外の鯨肉には参照可能なDNA情報が日本にはあるということです。
そのNGOがどの様な調査を行っているかは知りませんし、行政の調査とて絶対確実などとは一切申しませんが、市場にあること=調査捕鯨とするには些か短慮では無かろうかと考えます。
>実際に犯罪行為が完遂されなくとも、そうした行為に及ぶだけで批難されるのと同じことです。
犯罪行為は完遂されずとも批判に値するのは当然ですが、給油を戒める条項が無い以上は”犯罪行為ではない”としか言えません。
また実際問題として海上給油は捕鯨船だけが行う行為ではありません。
帰港して給油した方が時間はかかっても安いというだけであって、デリバリーそのものはごく普通の商業行為です。
もちろん”予防検束”や”共謀罪”が公海上で必要であるとは私は思いません。
それどころか海上給油の妨害として給油管にロープをかけて引っ張る行為をしている活動家に対しては、シバレイ氏の仰る「犯罪行為」を幇助する意図しか私には見えません。
彼らは「燃料が海洋にまき散らされること」を回避する気がないことは行動の結果として明白であり、海上給油を批判されるならより強い姿勢で彼らを批判するべきでしょう。
>これまでも大量の鯨油や血液、皮を海洋に投棄している
血液はともかく鯨油と皮は勿体ない話です。
ただ該当法を見れば判る通り、一定のルールの枠内では投棄が認められる物もありますし、「生鮮魚及びその一部」などは除外されています。
例えば海水を汲み上げてそれを捨ててはいけないかということ、そんなことはありません。
あくまで南氷洋に産しないものを持ち込んで廃棄することを禁じているだけでの話であって、南氷洋に産する魚や鯨の死体も環境破壊に寄与して居るなどという暴論を条約にしている訳ではありません。
>「過激な環境団体が日本をいじめている」というイメージ作りに役立つと、ほくそ笑んでいることでしょう。
イメージも何も、実際に彼らが過激であることや、環境保護のためなら環境破壊に荷担しても良いと考える愚者であることは、彼ら自身の行動により否応なく証明されていると思いますが。
法と道は相反せず @ 2008年 03月 10日 13:26:47
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- 志葉 玲(シバレイ)
- (男)
- HP:志葉玲Official Web Site
- ■1975年生まれ。番組制作会社を経て2002年からフリーに。イラク、レバノンなどの紛争地での現地取材の他、地球温暖化などの環境問題、共謀罪など国内政治まで幅広く取材している。
■志葉関係の本が相次いで出版されました!二冊とも、御一読いただければ幸いです。
『川田龍平 いのちを語る』 (川田龍平 著 志葉玲 写真/明石書店)
『たたかう!ジャーナリスト宣言 ボクの観た本当の戦争』(志葉玲 著・写真/社会批評社)
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