ザルカウィは米軍の情報戦の産物か?利用される「アルカイダ幹部」 その2

宗派間抗争のあおりで1万家族が避難生活 - イラク

【サマラ/イラク 13日 AFP】イラク当局者が4月に語ったところによると、相次ぐ宗派間抗争の中での脅迫を受け、およそ1万家族が自宅を離れることを余儀なくされている。写真は13日、バグダッド北方の都市サマラ(Samarra)で、イラク赤新月社(Red Crescent Society)から配給された食糧のそばに腰を下ろす避難民の女性。(c)AFP/DIA HAMID

AFPBB News


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 パソコンの調子が悪く、アップが遅れましたが、前回のエントリ*の続きです。
* http://www.actiblog.com/shiba/5867

■ザルカウィは「米国が作り出した想像上の産物」???

 米軍の標的は果たしてザルカウィなのか?04年11月のファルージャ総攻撃では「ザルカウィ掃討」が名目とされたが、米軍は「ザルカウィは逃走した」と発表した後も女性や子どもを含む一般市民を数千人虐殺するまで、軍事作戦を終えなかった。その後も「ザルカウィ掃討」名目の軍事作戦は主にイラク西部アンバル州で繰り返されたが、いずれも一人の人間を「始末」するのには、あまりに大規模で荒っぽく、むしろ街そのものを破壊してきた。そのため、「ザルカウィは地元の反占領運動を叩き潰すために米国が作り出した想像上の産物」との見方も現地では根強くある。

続き)
 果たしてザルカウィは実在するのか、それとも米軍の作り出した虚像なのか。先月10日、ワシントンタイムズ紙は衝撃的な記事を掲載した。同紙が入手した内部資料によると、2年前から米軍は「心理作戦の一環」としてイラク国内のテレビや新聞、ラジオなどを通じ、ザルカウィの脅威を過大に煽ってきたというのだ。こうした「ザルカウィ・キャンペーン」関し、米中央軍のキミット陸軍准将は「最も成功した情報戦」と語っているのだと言う。当然というべきか、米国のメディアもこの心理作戦のターゲットにされていた。前述のワ紙によると、ニューヨークタイムズ紙が04年2月に”スクープ”した「ザルカウィ容疑者がシーア派に対しての攻撃を呼びかける声明」も米軍がリークしたものだという。


■「ザルカウィの脅威」演出が宗派間対立を招いた?

 ワ紙の記事によると、米軍がこうした情報戦を行ってきたのは「スンニ派住民とザルカウィを引き離すため」だそうである。ただ、すでに述べたように、もともとスンニ派住民達もザルカウィやその一派のような極めて残忍なテロ集団を支持しておらず、排除しようとしてきた。米軍の心理作戦はむしろ、スンニ派とシーア派を分断させたのではないかと思われる。なぜなら、「ザルカウィはシーア派を敵視している」とされ、シーア派の人々はテロに怯えてきた。そこへ米軍やイラク軍が確たる証拠もないのにスンニ派地区にザルカウィが潜んでいる、と繰り返し掃討作戦を展開したことで、シーア、スンニ両派の不信感を高めていってしまったのではないか。イラク事情に詳しい元アジア経済研究所(現東京外語大)の酒井啓子さんは04年11月のファルージャ総攻撃に関し、「スンニとシーアの宗教指導者の間で『なぜファルージャへの攻撃を非難しないのか?』『そちらこそテロリストをなんとかしろ』という激しいやり取りがあったそうです」と語っていた。確かに、スンニ派とシーア派の不協和音が現れたのもこの頃からだった。


■まだある米軍とイラク政府の「心理戦」疑惑

 宗派対立を煽る米軍やイラク政府の愚行はまだある。本ブログでも紹介したことがある、イラク内務省下の治安部隊「オオカミ旅団」はシーア派民兵組織「バドル団」を主体とし、米軍に訓練され、米軍のスンニ派地域での掃討作戦に参加してきた。現地人権団体代表のムハンマド・タリク氏はオオカミ旅団の問題をこう指摘する。「オオカミ旅団は、捕らえた住民に殴打や電気ショックなどの激しい拷問を加え、やってもいない罪を認めさせる。その様子はビデオ撮影され、国営放送『イラキーヤ』の対テロ番組で放映されるのだ」。

 このイラキーヤ放送も、元はといえば米国防総省によって設置されたもので、イラク政府よりの報道が目立つ。04年4月の人質事件以降も現地への支援活動を続ける高遠菜穂子さんも「以前はスンニもシーアも関係ないと言っていた人が、『スンニ派はテロリストだ』というイラキーヤ放送を見ているうちにバドル団やオオカミ旅団を支持するようになってしまった」と嘆いている。


■結局米軍は何をしたいのか?

 ブッシュ政権は口では「宗派間の融和」を求めているものの、実際にやっていることを観ていると、少なくとも宗派間の衝突を止めるつもりはないようだ。イラク国外に逃れた友人は「米軍は何のためにいるんだ?あいつらは僕たちが民兵どもに襲われている間も何もしやしない」と憤る。友人が憤るのも無理はない。宗派間衝突は収まる気配がなどころかますます激化している様相すらあるのだ。NPO法人PEACE ON代表の相澤恭行さんの元に現地スタッフが送ってくる報告*を観ていると、現地スタッフが住んでいる地域だけで連日70人前後が殺され、300~400人が連れ去られるなど、「4月の宗派間衝突の犠牲者はバグダッドだけでも1091人」というイラク政府の発表も控えめに思えてくる。 

*PEACE ON IRAQ http://peaceonyatch.way-nifty.com/

 こうした状況を見ていていると、結局米軍は何をしたいのか?という疑問が出てくるが、米国の選択肢はおそらく4つある。

A.なるべく早期にイラクの治安を安定させ、英雄としてイラクから米軍を撤退させる。
B.宗派間対立を放置、または煽ってイラクの混乱をイラク人のせいにして撤退する。
C. 宗派間対立を放置、または煽ってイラク人同士を戦わせ、「米軍が撤退すれば今以上に混乱する」という名目でイラク占領を続ける。
D.宗派間対立を煽りイラクを分裂させ、比較的抵抗の少なく石油資源の豊富な北部と南部で米軍の駐留を続け、現地指導者らを操り人形として米国の権益のために働かせる。

 順番に解説すると、Aについては識者の間に多い意見だが、イラク情勢が過去最悪の状態の中では、まったく現実味がない。もしイラクから撤退するのであれば、Bのような行動をとるだろう。ただ、ブッシュ大統領は「自分の任期中の撤退はない」と発言している。となると、CかDを選択する可能性が高い。米国にとってザルカウィが利用価値があるとすれば、C,Dの選択肢においてあるのだろう。また、米国でもイラク戦争/占領の失敗を非難されブッシュ政権の支持率が過去最低に落ち込む中、「アルカイダ幹部のザルカウィ」がイラクに居てくれた方が、イラクで米軍を居座らせるのには都合がいいのだろう。

 いずれにしても、今後のイラク情勢に明るい要素はない。ファルージャを取材した時「ザルカウィが居ることよりも米軍がいることが最大の問題だ」と住民たちは言っていたが、まったくその通り。ザルカウィが実在する人物であろうがなかろうが、米国の愚行のために殺される人々の数は増える一方なのだから。

カテゴリー[ イラク・中東 ], コメント[5], トラックバック[0]
登録日:2006年 05月 16日 17:33:46

コメント

「赤旗」が、駐イ米軍の巨額の予算を掛けた恒常的基地を、米紙報道・調査局報告等から精査して報道したそうです。
早い話が、米軍再編たら、日本を含め、全世界規模で何処でも「基地恒常化」な訳ですよ。
所で、辺野古のV字型滑走路案についての防衛庁長官の発言~住民の安全の為に、寝ていて考え付いた~嘘を暴く、既に滑走路現物があるバラド空軍基地について、何か詳細が判りませんでしょうか?
もしかして可能でしたら、是非、宜しくお願いいたします。
沖縄の一助になります、相澤さんに、是非ご一報を。

田仁 @ 2006年 05月 18日 15:19:54

アメリカなら考えそうなことですが、シバさんは日本を「メイド国家」と蔑むこと憚りませんが、日本もある種そういうアメリカの策略に常に晒されているんではないでしょうか?
在日米軍再編計画に見て取れるようにアメリカは日本に対して静々と軍事国家の道を歩むよう布石を敷いているように見受けられます。なぜならアメリカ傀儡国家である日本が自主的に憲法9条にメスを入れることなど許されないように思えるからです。つまり、アメリカの言いなりであることはさておき、アメリカが日本に対して何を緩めてきているかという所を是非解いてもらいたいと切に願います。

kuma @ 2006年 05月 19日 01:37:52

私も赤旗の記事はどこかのMLで流れていたのを読みました。まあイラクに恒常的基地をつくり中東支配の基盤を整えるのは間違いなくアメリカの目的のひとつであり、彼らの望む「名誉の撤退」とはあくまでも現在イラクの治安維持と称して展開している部隊だけの話であって、完全撤退する気などさらさらないのは日本を見るだけでも明らかですよね。

ところでシバくん、泰行じゃなくて恭行なんでよろしくね。

Yatch @ 2006年 05月 20日 12:02:32

Yatch 、ごめん。直しましたっす!

シバレイ @ 2006年 05月 20日 21:54:33

?直ってないなあ

恭行 @ 2006年 05月 21日 01:33:40

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プロフィール
志葉 玲(シバレイ)
志葉 玲(シバレイ)
(男)
HP:志葉玲Official Web Site
■1975年生まれ。番組制作会社を経て2002年からフリーに。イラク、レバノンなどの紛争地での現地取材の他、地球温暖化などの環境問題、共謀罪など国内政治まで幅広く取材している。

■志葉関係の本が相次いで出版されました!二冊とも、御一読いただければ幸いです。

『川田龍平 いのちを語る』 (川田龍平 著 志葉玲 写真/明石書店)

『たたかう!ジャーナリスト宣言 ボクの観た本当の戦争』(志葉玲 著・写真/社会批評社)
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