共謀罪と「格差社会」のアヤシイ関係

ジェームズ・マクティーグ監督の新作「Vフォー・ヴェンデッタ」の記者会見開催 - 東京

【東京 19日 AFP】18日、ジェームズ・マクティーグ(James McTeigue)監督作品の話題作「Vフォー・ヴェンデッタ(V For Vendetta)」のプロモーション会見が18日、都内で開催された。
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(c)AFP/Toru Yamanaka

AFPBB News


 「人民が政府を恐れるのではない。政府が人民を恐れるのだ」―映画『V・フォー・ヴェンデッタ』より

 国民を統制しよう、という下心をごまかすのに「対テロ」という言葉ほど便利なものはないだろう。「実際に犯罪をやらなくても話し合っただけで逮捕」というトンデモ法・共謀罪も、やはり「対テロ」を口実に出てきたものだ。米国主導の対テロ条約「国際組織犯罪防止条約」に従い創設する必要があるとのことだが、ホントにテロ対策なの?と調べてみると、いろいろ疑問が出てくる。

続き)

■ホントに対テロ???

 例えば、「対テロの国際的な連携」がさかんに言われるのだが、共謀罪には国をまたぐ国際犯罪に限定するという規定がない。むしろ、国内の取り締まりのほうに使われる可能性が高いのだ。そもそも、現在の法律でも、殺人・放火・強盗といった凶悪犯罪は準備段階で「予備罪」として罰せられる。爆弾の使用にいたっては、「共謀」段階、つまり、話し合っただけでも取り締まり可能なのである。「既に行われた犯罪を裁く」という日本の刑法の原則を覆して、619もの罪を「共謀」段階で取りしまる必要性があるかは疑問なのだ。


■19世紀の米国で起きたこと~共謀罪の真の目的は?

 では、なぜ、政府は共謀罪成立に拘っているのか?共謀罪の問題に詳しい海渡雄一弁護士は興味深い指摘をしている。

 「共謀罪は国王暗殺を防ぐ等からイギリスで生まれ、19世紀にアメリカに渡り発展しました。当時盛り上がっていた労働運動を潰すのに共謀罪が活用され、その猛威を振るったのです」。

 なるほど。最近、「格差社会」という言葉をよく聞くようになったが、富める者と貧しき者の格差は広がる中で社会に高まる不満を押さえつける、強力な武器として共謀罪を使うのではないか・・・などと、疑り深い私は考えてしまうのだ。

 よく言われることだが、小泉政権の経済政策は「富める者はますます豊み、貧しき者はますます貧しく」「大企業には減税、医療や福祉など社会保障費はカット」という最近の米国のような「弱肉強食」型の経済政策=ネオ・リベラリズムに強い影響を受けている。小泉政権は、大企業がリストラや不良債権の不安解消(莫大な税金が投入されたからなのだが)で空前の利益を上げている中、大幅減税を行った。一方で実行もしくは決定された庶民の負担増は、定率減税の撤廃や、サラリーマンや老人医療費の改悪、介護保険料や年金保険料の引き上げetcなど、約13兆3000億円にものぼる。

 この間の年3万人以上という自殺者数もその動機のトップは「健康不安」、2位が「経済・生活問題」であわせて約7割。小泉政権発足(2001年4月)から、データが公表されている昨年11月まで約15万8177人が自殺している。つまり、約11万人もの人々が「弱肉強食」的な政策の中で、救済されることがなく死んでいったのかもしれない、ということである。

 最近、ポスト小泉は誰かとメディアで騒がれているが、次期首相候補の最右翼とされる安倍晋三氏は、基本的に小泉政権の政策を踏襲していくと考えられる。加えて、消費税率の引き上げも来るだろう。その時、「負け組」と蔑まされる社会的弱者は、より苦しい立場になることは間違いない。


■既にある警察による「弾圧」

 読者の中には、「共謀罪がそんなに乱用されるだろうか?」と思う方もいらっしゃるかもしれない。しかし、「表現の自由への弾圧」というべき当局の横暴は既に始まっている。

 例えば、先月末のメーデー・デモへの警察の対応だ。この日、東京・原宿~渋谷で「自由と生存のメーデー’06」と題し、低賃金かつ不安定な状況で働かされるフリーターの地位向上を訴える集会とデモ行進が行われた。このデモは、ゲリラ的に行われたのではなく、ちゃんと前もって警察署に届け出て許可をえたものだったにも関わらず、「道交法違反」「公務執行妨害」で3人が逮捕されてしまった。以下の写真や映像を見てもらえば、その時の異常な雰囲気がわかるだろう。
*Galleria Kamex かめよん写真館より 自由と生存のメーデー 06
http://www.mkimpo.com/diary/2006/mayday_06-04-30.html

 この時拘束された一人のYさんは、警察がデモのアドバルーンを勝手に持ち去ろうとしたことに抗議しただけで、20人もの警官に組み伏され、逮捕されてしまったそうである。結局、Yさんは12日間も警察署に留置されることになったが、「今回はたまたま連休中だったから職場も理解してくれたけど、次回こんなことがあれば契約を切られるかのしれない」と語った。たとえ、有罪にならなくても、逮捕は仕事や生活には大打撃となる。なんと3人は家宅捜索まで受けたのだった。なぜそこまでやる必要があるのか。私は警視庁に問い合わせ、憲法21条(表現の自由)への見解もあわせて聞いたが、返ってきた答えは「本件は違法行為に対して適切に対応した」という一文だけだった。


■油断大敵、人々の自由を奪うのは「黙っていること」

 現在公開中の映画『V・フォー・ヴェンデッタ』は、人々の自由を奪い、反抗的な者や異端者を情け容赦なく処刑する独裁国家となったイギリスと、反政府活動家「V」の戦いを描く。私が興味深く思ったシーンは「V」がテレビ局を占拠して国民に問いかけるところだ。「君たちの自由を奪った者が誰か知りたければ、鏡を見るといい」と。テロに怯え、強権的な政府を望んだのは、他でもない国民自身だった、ということである。何とも皮肉な言い方だが、逆に言えば、国民がその気にさえなれば政治を変えられる、ということでもある。

 共謀罪をめぐる世論調査では、JNNの集計で「今国会成立に拘らず」が8割、ライブドアの集計では「共謀罪の自民党再修正案を支持しない」が9割だとのこと。強行採決に野党が強硬に抵抗してきたのも、世論と無関係ではないだろう。ただし、油断大敵。この日本においては、政治の暴走を許すのは人々の「恐怖」ではなく、「黙っていること」なのだ。ネット上でも、身の回りでも、共謀罪について、あちらこちらで話してみるといい。少なくとも今はまだ罰せられないのだから。


P.S. 本日発売の週刊SPA!で私が担当した共謀罪特集が掲載されています。よかったら、ご覧くださいませ。

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登録日:2006年 05月 30日 18:20:21

コメント

自民党の国民投票法案で「公務員(公立校の教職員)が憲法について述べてはならない」とある現状は既に東京都下での処罰事例があるそうです。

田仁 @ 2006年 06月 07日 18:02:39

詳細はホームページをごらんください
http://www.hpmix.com/home/fusako/index.htm

@ 2007年 06月 20日 17:03:04

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プロフィール
志葉 玲(シバレイ)
志葉 玲(シバレイ)
(男)
HP:志葉玲Official Web Site
■1975年生まれ。番組制作会社を経て2002年からフリーに。イラク、レバノンなどの紛争地での現地取材の他、地球温暖化などの環境問題、共謀罪など国内政治まで幅広く取材している。

■志葉関係の本が相次いで出版されました!二冊とも、御一読いただければ幸いです。

『川田龍平 いのちを語る』 (川田龍平 著 志葉玲 写真/明石書店)

『たたかう!ジャーナリスト宣言 ボクの観た本当の戦争』(志葉玲 著・写真/社会批評社)
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