【北朝鮮ミサイル問題】「危機」の時こそパニクる前にまず事実を確認すべし。

<北朝鮮ミサイル>北朝鮮保有の弾道ミサイルの解説

北朝鮮は4種類の弾道ミサイルを保有しているものと思われる。
≫続きを読む…
(c)AFP

AFPBB News


 昨日未明、W杯ドイツ対イタリア戦をみていたら、「北朝鮮が日本海にミサイル発射」とのテロップが。「アホや、アホすぎる。そんなことやったら、むしろ日米のタカ派が喜ぶだけじゃん」私は思わず口に出してそう言った。朝になると、当然どこのチャンネルでもこの事件に大きく時間を割いて扱っていた。NHKにいたっては、阪神大震災以来はじめて朝の連ドラをとばして、ミサイル発射事件を報道。これらのニュースを観ていると、まるでこれから戦争が始まるんじゃないんか、という気すらしてくる。でも、ちょっと待って欲しい。こういう時こそ冷静になることが大切だ。だんだん情報が明らかになる中で、日本のメディアの加熱報道こそ、テポドンよりも怖いんじゃないか、という気がしてきた。

続き)

攻撃されたのは日本ではない

 報道ではどこも「北朝鮮のミサイルが日本海に落下」というように、「日本海」という言葉を使っている。しかし、この言葉がクセモノで、日本海は、日本の領海だけではなく、北朝鮮、韓国、中国、ロシアもそれぞれ面している海なのである。で、今回北朝鮮のミサイルが落ちたのは、ロシア沿岸近く。つまり、今回のミサイル発射は日本の領海への攻撃ではないということだ。しかし、報道の中で「日本海へミサイルが~」というと、「日本が攻撃された!」という誤解を視聴者や読者に与えかねないのである。

*落下点の見取り図 By 読売新聞 
*日本が主張する領海
*沿海地方近海落下に衝撃=北朝鮮ミサイル、サミットの重要議題に-ロシア


北朝鮮の狙いは米国との交渉

 攻撃の矛先が日本ではないならば、北朝鮮はどこに対しミサイル発射をしたのか。思うに、北朝鮮の狙いは米国だろう。というのも、ミサイルが落下した近くにはロシアの軍港ウラジオストクがあるが、ちょうど米艦隊が共同演習のために、この軍港に立ち寄っていたのである。しかも、昨日はアメリカ時間で7月4日、つまり米国の建国記念日だったのだ。

 では何故、北朝鮮はわざわざ米国を刺激するようなマネをしたのか。これに関しては英紙ガーディアンが面白い分析*をしている。同紙によると、米国が北朝鮮の支配階級が利用しているマカオの金融機関に対し圧力をかけたことで、マネーロンダリング(資金洗浄)がやりにくくなった。これにより、北朝鮮の支配階級が困窮し、ヘンな髪型のショーグン様が米国の交渉の場に出そうとつい「やりすぎた」とのこと。なるほど、さもありなんである。

*"Kim Jong-il overplays his hand"


むしろ米国と日本が暴走するかも

 奇妙なことに、日本のメディアは「日本海」という言葉ばかり使い、ミサイルの落下点がロシア沿岸であり、日本の領海ではないことをほとんど伝えない。そして、特に根拠もなく「これは日本への攻撃だ!」と危機感を煽り立てる「専門家」「解説者」のヒトビトがやたら目立つ。これでは戦争を煽っているも同然である。

 誤解がないようにハッキリさせて置くが、私は今回の件に関して、北朝鮮を擁護するつもりはサラサラない。いかなる理由があれ、批難されて当然の行為である。それに、あのヘンな髪型のショーグン様の独裁の元で苦しむ北朝鮮の普通の人々に深く同情するし、あんな体制はさっさと崩壊した方がいいとも思っている。

 だが、実際のところ北朝鮮の体制の唯一最大の目的はヘンな髪型のショーグン様をお守りすることである。所詮、日本と米国相手に本気で戦争するつもりはないだろう。もし、戦争が始まるとすれば、むしろ暴走しかねないのは米国と日本だ。米国はありもしない大量破壊兵器を口実にイラクへ侵略戦争をおっぱじめた前歴があるし、日本は日本で、メディアがあたかも日本本土が攻撃されたかのように、感情的に騒ぎたてる。このまま不安と恐怖があおり続けられれば、「日本の防衛のため、北朝鮮を先制攻撃しろ」という意見が、世論の支持を得ることにもなりかねない。そうすれば、避けられる戦争も避けられないものになってしまう


ミサイル発射にパニクって誰が得をするのか?

 危機の時ほど、冷静さが必要だ。ここでビビりまくって誰が笑うのか。もちろん、あのヘンな髪型のショーグン様だ。ここで逆上して誰が喜ぶのか。それは好戦的なタカ派の政治家達や、軍需産業だ。世界の紛争地を歩いてきて私が痛感するのは、どんな大義名分を掲げようが、戦争で最も理不尽に苦しむのは、最も罪のない普通の人々だ。そして、戦争が起こした張本人達は最後まで安全なところに隠れ、のうのうと私腹を肥やしていることが多い。繰り返すが、危機の時ほどパニックは厳禁だ。冷静に情報を収集し状況を理解して、何がベストの選択なのか、考えることが必要なのである。

カテゴリー[ ホットトピックス ], コメント[5], トラックバック[3]
登録日:2006年 07月 06日 12:34:34

コメント

米日朝の軍事万能崇拝カルトが三つ巴で危険なゲームをしている状態ですが、幸い世界は冷静でした。
日本国内の過熱ブリが世界でも通用すると勘違いした極右政治家が、世界にまたもや恥を曝したのが、日本人として嫌です。
誰が国連に恥を曝して、「愛国心」の逆を実地でやっとるネン!と心から怒鳴りたい気持ちで一杯です(泣)。
ちなみに日本の大手マスコミは駄目ですねぇ。

田仁 @ 2006年 07月 12日 14:50:16

>>日本のメディアの加熱報道こそ、テポドンよりも怖いんじゃないか、という気がしてきた。

日本のメディアはありのままを伝えているだけであり、加熱報道などではない。少々パニックになろうともありのままをはっきりと伝えることが重要。それに今回は日本本土に飛んでは来なかったが、いつ(本土に)飛んでくるかも分からない。メディアは日本に起こりうる最悪の事態も想定して視聴者に伝えることが必要である。こちらのブログの管理人の志馬さんという方は「最悪の事態も伝える」と言うメディアの重要性もわからないような方なのだろうか。

バラジャット @ 2006年 07月 13日 19:37:37

> 最悪の事態も想定して視聴者に伝えることが必要である
> 「最悪の事態も伝える」と言うメディアの重要性

「最悪の事態」ならむろん伝える必要はあるが、
「最悪の事態になるかもしれない」ケースを想定して伝える際には
多方面からの充分な検証と冷静な分析をもって報道することが最重要だということです。
それが、このブログで管理人さんが書かれておられる記事の主眼だと思います。

安易に上記の二つの状況を混同しないほうがいいですよ。

ribging the bell @ 2006年 07月 17日 19:11:11

私も「日本海」の使い方は問題だと思います。
言葉による誤解を助長する面は、確かにあります。

久しぶりに見に来たら、更新がないようですが、また海外へ行かれているのですか?
今回のレバノン侵攻へのシバレイさんの見解を、楽しみにしています。

mumu @ 2006年 08月 02日 19:08:31

SPA!の外国人労働者の話を読みました。面白かったので一言書いていきます。

九郎政宗 @ 2006年 08月 05日 01:17:16

コメントを追加

Trackback

この記事に対するトラックバックURL:

安保理の制裁決議は戦争の道開く

7月9日、日曜日は朝からどのテレビ局も、テポドン、テポドンと北朝鮮のミサイル発射・走力検証、日本の対応・・ ブロガーは自宅のテレビが故障、どんな番組の内容か詳しくつかめないが、テレビ欄を新聞で眺めていると、日本の空気は一気に戦争突入モードになっている。

date:2006年 07月 10日 12:25:58

事実の作り方

映画「東京湾炎上」は全くつまらなかったが、その原作の「爆発の臨界」は非常に優れた緊迫感のある小説であった。映画「カプリコン1」と共に「事実の作り方」という謀略を教えてくれたという点で衝撃的な内容であった。これらの作品が、教えてくれたことは「マスコミで報...

date:2006年 07月 08日 10:31:07

テポドン、テポドンって騒ぎ過ぎじゃねぇか?〜noumin1978さんからの御質問に答えて〜

noumin1978さんから以下のようなコメント(ご質問?)を戴きましたので回答しておきますね。一言で言えば、「テポドン、テポドンって騒ぎ過ぎじゃねぇか?」というのが私のスタンスです。<noumin1978さんからの御質問>== ここから =========....

date:2006年 07月 06日 20:02:27

プロフィール
志葉 玲(シバレイ)
志葉 玲(シバレイ)
(男)
HP:志葉玲Official Web Site
■1975年生まれ。番組制作会社を経て2002年からフリーに。イラク、レバノンなどの紛争地での現地取材の他、地球温暖化などの環境問題、共謀罪など国内政治まで幅広く取材している。

■志葉関係の本が相次いで出版されました!二冊とも、御一読いただければ幸いです。

『川田龍平 いのちを語る』 (川田龍平 著 志葉玲 写真/明石書店)

『たたかう!ジャーナリスト宣言 ボクの観た本当の戦争』(志葉玲 著・写真/社会批評社)
最近のコメント
[07/16] ブラッド・アイボリー~買わなければ殺されない ☆★永作博美 懐かしの映像!!!!
[07/16] ブラッド・アイボリー~買わなければ殺されない ●離婚!広末涼子に衝撃の事実!都内ラ.ブホ.テルで・・・。
[07/15] 地球温暖化から観る参院選―どの党・候補が人類の未来を救えるのか? スパイラルドラゴン
[06/29] 減肉のススメ~あなたが地球温暖化防止のためにできること 安.田美沙子大慌て! 『ちょっと聞いてや!』
[06/09] ビルマ(ミャンマー)被災者支援情報! ◆川田亜子 衝撃映像・・・・・悪魔になった真相とは・・・?!
[05/24] 「血塗られたダイヤモンド」の真実 d5
[03/15] 減肉のススメ~あなたが地球温暖化防止のためにできること kaga
[03/10] 減肉のススメ~あなたが地球温暖化防止のためにできること スパイラルドラゴン
[03/10] オウム返し症候群 法と道は相反せず
[03/02] 最も足らないのは“人的資源”~枯渇する石油、日本の対応は? 田仁
最近のトラックバック
お気に入りリンク
検索