低気圧がつらい

■桜はたくさん見るけれど、これからたくさん今年も見るのだろうけど、桜の種を見たことがない。
で、調べてみたら、街でよく見るソメイヨシノという名前の桜は、何とかという桜と何とかという桜の間の子で、人工的に作られたもので、種がないのだそうで、接ぎ木などをして増やしていくのだそう。接ぎ木ってどうするものなのかよくわかってないけど。
桜など毎年見てて、うちの窓からも見えているのにもかかわらず、種に気がいったのなんてこれがはじめてで、気がついてみると何故いままで気がいかなかったのか不思議になる、というかその逆に、何故いま気がいったのか不思議になるけれど、そんなことは他にもたくさんあって、いまは「それ」に気がいってないから、「たとえば」とここに「たとえ」をあげられないけれど、見えているのに見てないものや、見てなどいないのに見えていると見たつもりになっているものにかこまれて、ぼくは何ひとつ不思議に思うことなく生活をしていて、そう思うと、知ったつもりになっていることの全部が、少しゆれる。
■地震のドキュメンタリーを見ていると、地震学者は大地震が「来るか来ないか」を調べているのではなく、いずれそのうち「ほぼ100%来る」ものが「いつ来るか」を調べているのがよくわかる。
来るのですよ。いずれそのうち、ほぼ絶対に。
だけどそうなると、地震対策というのは、水を用意したり缶詰を用意したりつっかえ棒を本棚やタンスに設置したりという、地震が来てもぼくはわたしは死なない前提の準備も大事だけど、もっと違う、いずれ全部(自分も含む)がこわれてなくなってしまうかもしれないということに対する「準備」こそしておかなければいけないのではないか、と思う。
■先日、喫茶店の隣の席でごくふつうの若い女の子がくわえたばこで本を読んでいて、何を読んでいるのだろうと横目でのぞくと、「いまだ到達してない成功へ向うには」とか「もっと自分で自分を褒め讃える」とかいう見出しが見えて、ぼくをはさんだ反対隣では、五十前後の男と四十前後の女が、ものすごい小さな声で話をしていて、がんばって聞き取ろうとしてみたけど、それはまったく聞き取れず、もしかしたら二人は口だけ動かして声を出さずにしゃべっているのか、まさか、と、思ったけど、二人共やっぱり小さいながらも声は出していて、けれど、男とぼくの距離の方がどう見ても、男と女の距離より近いのに、男の声はまったくぼくには聞こえず、けれど女には届いているようで、男の話に女はいちいち小さく笑っていた。
■たまに見てしまうネットの、無料の、無料だから切れ切れのエロ動画。
けれどやっぱり作り手の思惑からはなれて、どうしても職業柄、出演者の演技に気がいくのだけど、やっぱり演技者は、作品の向う方向というか、ずれていくにしてもやっぱり作品のにじり登ろうとする運動へ自身を投げ出さなければ、ただの「自意識のかたまり」でしかなくて、「邪魔」で「うっとおしい」だけで、いくら渾身の演技を披露しても、それをすればするほど、作品からどんどん気持ちは離れていく。ただ、そこのジャッジはほんとうに微妙で、そもそもそれをジャッジする側の判断は正しいのかという問題もそこには含まれていて、というか、そんなことに「正しい」「正しくない」なんてあるのか、というよくある疑問もあって、ただまあそれをいわれるとぼくは「ある」とこたえるのだけど、ただここにそれを簡潔に書くなんてことはぼくには出来ず、というか、簡潔に書けたり話せたりすることなんて全部がいんちきで、誰にでもわかるという謳い文句で書かれたことや話されたこと(もちろん作品も)も全部いんちきで、本気で伝えようとすれば長くなるし、話は込み入って来るし、わかりにくい部分だってどうしたって出てくる。とかまあ、いろいろ考えが広がっていく。切れ切れのエロ動画を見ながら。というか、切れ切れのエロ動画だからこそ。
しかし、ぞくにいう「うまい演技」を「良い」とする人たちって、あのエロ動画でたくみにあえいだりその気になっているような演技をする演技者を「いい」と思うのだろうか。
■去年、うちの芝居に出ていた少年(小5)が、ついひと月ほど前、突然、かあさんに「あわあわあわあわあわ、師匠(彼はぼくのことをそう呼ぶ。呼ばせているわけではない)に報告しなきゃっ!」と喜び叫んで風呂場から飛び出して来たのだそう。
おめでとう。
■低気圧がつらい。
何がつらいのかわからなくなるぐらい、つらい。
コメント[7], トラックバック[0]
登録日:2010年 03月 05日 19:12:29
コメント
>いずれ全部(自分も含む)がこわれてなくなってしまうかもしれないということに対する「準備」こそしておかなければいけないのではないか、と思う。
それはいつ来るか分らないけど絶対来る「死」の準備に等しいから、、、そんなことは気にしないで今を楽しめばいいの(笑)。
がぶん@@ @ 2010年 03月 07日 03:49:51
だけどぼくはタンスや本棚を倒れなくしたり、耐震設備のととのったところを探して住んだりすることを考えたり、何も考えないより、来たら死ぬぞ、みんな死ぬぞ、すごいぞ、さあどうする、と考えているのが、どうもとても楽しいのです。
山下 @ 2010年 03月 07日 04:54:29
ははは、そりゃいいやー。
で、そういう想像するときって、世間ははそりゃもう壊滅的な状況なんだけど、自分は奇跡的に助かってて廃墟と化した町並みを歩いてる、、、か。
がぶん@@ @ 2010年 03月 07日 13:26:00
山下さん、ご無沙汰しています。
ネットの接続環境があまりにも悪すぎるのですが、毎回「これで様子を見てください」ていうのは「医者の決まり文句」みたいで、農村山間部の限界と思われます。
>来たら死ぬぞ、みんな死ぬぞ、すごいぞ、さあどうする、と考えているのが、どうもとても楽しいのです。
私もいろいろ考えるのですが「準備」は苦手です。心の準備とかも言うけど、きっとそういう想像できるような物事はほとんどは役にたたなくて、全部超えてるんだろうとか、「超えてる」というのはどんな感じだろう・・・などとダラダラ思い巡らし無駄に時間をすごすのが好きです(笑)
なな @ 2010年 03月 07日 15:24:58
>自分は奇跡的に助かってて廃墟と化した町並みを歩いてる
いえ。もちろんそこは、ぼくも「込み」の想像です。じゃなきゃ、おもしろくない。
>「超えてる」というのはどんな感じだろう
昨日テレビで「カバの実物は思い描いているのよりでかい」というのがあって、そのあと実物のカバが出てきたら、やっぱりでかかった。思っていたよりもずっと。
山下 @ 2010年 03月 07日 20:14:29
突然ものすごいアクセスでびっくりしたら、どうもタイトルらしくて、「低気圧がつらい」で検索したらこれがいちばん上に出て来た。
みんなつらいのだなあ。つらいですよね。
山下 @ 2010年 03月 10日 03:54:24
辛くはないんだけどさ、やっぱ低気圧のせいで、とにかくぐるぐるぐるぐる目眩がして面白い。
がぶん@@ @ 2010年 03月 10日 13:53:03
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