僕と望遠鏡の違い
ハッブル宇宙望遠鏡の主力カメラが故障、機能回復は困難な見通し - 米国
【ワシントンD.C./米国 31日 AFP】航空宇宙局(NASA)は30日、電気配線のショートによりハッブル宇宙望遠鏡(Hubble Space Telescope)の主力カメラ(Advanced Camera for Survey、ACS)が故障していることを発表した。
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(c)AFP/NASA VIDEO
先日、所用で札幌へ行った。で、千歳空港から札幌まで電車にのった。外の景色は、はやりの(はやりはおかしいか)暖冬らしいので、もしかしたら雪は例年以下なのだろうけれども、やっぱりそこは北海道、一面の雪景色で「こりゃいい」とぼんやりながめたりしていた。
けれども、景色をながめるというのは、あれ、厳密にいうとほとんどは景色をながめながら、いろんなことを考えたりしているもので、景色をながめているという
よりも、景色をながめながらいろんなことを考えていたというのが正しくて、見ているのに見ていないことの方が多いということに、そのとき気がつき、今更ながら驚いた。
というのも、身体的にはあきらかに僕は景色を眺めていたわけで、いくら考えごとをしていたとしても目は景色を見続けていたはずなのに、数分前に見ていたに違いない景色をまったくおぼえてない。見てたのに。僕の目はちゃんと見てたはずのに。
そう思うと、耳もそうだと気がついた。そのとき僕はイヤホンをはめて音楽を聞いていたのだけれど、気がつくとさっきまで聞いていたに違いない曲が終わっている。耳は聞いてたのに。僕の耳は聞いてたはずなのに「僕」は聞いてない。
見ていたものや聞いていたものをおぼえてないからといって、見えてなかったわけでも、聞こえてなかったわけでも、まさかない。もし、突然見えなくなってたり、聞こえなくなってたりしたら、その時点で僕は慌ててたはず。
目と耳。ずいぶん健気なものだと感心した。
けれどもそれと同時に思うのは、人の体というのは、ずいぶん機械的なのだなぁということで。ま、そんなことをいちいちそんな風に考える僕というのも、ずいぶん暇だけれども、それでも「人の体」を機械的にとらえたことなんて今まで1度もないから、何となく「僕の体なのだから、ま、ほとんど僕の気持ちと一致しており、僕の意思に付随して作動しているのだろう」くらいに漫然と考えていたものだから、その何ていうか機械的な「意識は見てないのに目は見てる」という感じに、やっぱり少し不思議な気がした。
で、そうなると続けて思うのは、じゃあ一体どこまで、僕は僕を乗りこなしているのかということで。
乗りこなしていると思い込んでいた「目」や「耳」でさえ、僕の意図せぬ場面でも、知らぬ間に職務をまっとうしている。見る気のないものや、聞く気のないものまで見るし、聞いている。内臓となると、もうその比じゃなくて、そもそも奴らがいつどう動いているのかさえ、僕はほとんど知らない。
「手」や「足」だってそう。思うように動かせていると思い込んでいるけれど、少しでも目盛りを振り切ると、奴らはとたんに動かなくなる。
なら、脳はどうか。脳内にあるとされる気持ちは?意思は?
乗りこなそうとするのが「僕」なのか、意に反してそれぞれ独自に職務をまっとうしている奴らこそが「僕」なのか。それともそのどちらともが「僕」なのか。とまあ「僕僕」いうてますけれども、だいたいそのとき僕は何を考えていたのか、今思い出そうとしても思い出せないし。
「なら私って何」という獏とした不安というよりも、しょせん「僕」などその程度のものかという気楽な気分の方が大きいけれど、ま、自分というものは思っている以上にあやふやらしい。
けれども、ひとつだけはっきりしているのは、宇宙で遠くを「見る」ために打ち上げられた望遠鏡はそんなことを考えることもなく見ているはずで(たぶん)、見えなくなっても「見えなくなったどうしよう」と望遠鏡が慌てることはないはずで(たぶん)、そこにだけ、僕と望遠鏡の違いはあり、こう書いてくると何だか大した違いとは思えないけれど、その些細な違いが僕と望遠鏡を大きく隔てている、はず。
コメント[1], トラックバック[0]
登録日:2007年 02月 13日 01:59:30
コメント
私はちょっと変わっているのでしょう。窓の景色をながめている時、ほとんどなにも考えていないです。なにか考えようと意識しないかぎり、何時間でも無心のままです、たぶん。かといって見ていた景色をくっきりはっきり覚えているわけではもちろんなくて。
こんな私はどちらかというと望遠鏡よりかしら、と思ってしまいました。
JK @ 2007年 02月 14日 23:42:07
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- 山下澄人
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- 「FICTION 」主宰。映像、ラジオドラマのシナリオも手がけ、2005年には初監督作品「ON THE ROCK」を発表。
E-mail:yamashita@fiction.gr.jp
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