静かなる男

米シアトル郊外で一家6人射殺される、男女2人を逮捕

【12月27日 AFP】米ワシントン(Washington)州シアトル(Seattle)郊外のカーネーション(Carnation)で26日、幼児を含む家族6人が射殺されているのが発見され、地元警察当局は事件に関係しているとみて男女2人を逮捕した。
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(c)AFP

AFPBB News


 芝居の稽古というのは、たいがいひと月、長いところでふた月といったところだけれども、僕らは長くて3週間。短いと2週間で稽古を終える。

 もちろんこれには、いろいろな理由があって、まず、食べていくための仕事を優先させるというのがある。ほとんどのものは芝居だけでは食べていけないので、て

いうか芝居で食べて行く気などハナからないので、それぞれしっかりとした生業を持っている。フォークリフトに乗っている者もいれば、携帯料金滞納者取り立て業者もいるし、石屋もいる。彼らにとってまず優先すべきはそれら生業で、となると、あまり長く稽古期間を設定する訳にはいかない。

 それから作演出でもある僕が大変な厭き性である。稽古を長くやってるとすぐに飽きる。長くやってると、おもしろいのかそうでもないのかがわからなくなる。どうでもいいことに時間をかけるようになる。時間の無駄である。ま、時間を無駄にすることが悪いことだとは思わないけれど、とにかく飽きる。

 その他、稽古場の事情、短い方がいいのが出来る等、いくつかあるけれども、そういった様々な理由から僕らの稽古は短い。

 がしかし。「だから」というか「おのずと」というか、その短い稽古期間はかなり過酷である。みんなでお菓子を食べたり、稽古帰りに飲みにいったりというような劇団にありがちな楽しい局面は、ない。最初から最後まで怒号が飛び交う。手も出るし足も出る。椅子も飛ぶ。

 「演劇はプレイでしょ。遊びでしょ。楽しくやろうよ」とかいう人もいるけれど、遊ぶならよそで遊ぶ。僕らの劇は「遊び」ではない。もちろん金にはならないのだから「仕事」でもない。「なら何だ」の問いに答えられなくはないけど、答え出すと長くなるので今はよす。

 とにかく、そのように激しく怒号が飛び交う。前回の稽古もそのような展開を見せた。いつも以上に激しく鋭い稽古だったともいえる。

 うちにとても朴訥寡黙な役者がいる。ちなみに東北出身である。今時珍しい「静かなる男」である。真面目で誠実な「静かなる男」である。その「静かなる男」、普段はそれなりに声を出すこともたまにあるのだけれども、稽古になると何故か一切声を出さなくなる。どうやら上がるらしい。だから何時間でも黙ったまま人の話を聞いている。その男が、その公演では主役を演じた。いちおう主役だから、出番は多い。出番が多けりゃこちらから出す指示も増える。指示が増えれば、それに返答する機会も増える。しかし。彼は稽古になると石のように寡黙になるから何を聞いても答えない。修行のように口を閉ざす。ただ、黙ったまま、こちらが怒鳴り散らしつつ叫ぶダメ出しを聞いている。ていうか見ている。だからこちらはなおさら怒鳴り散らす。あちらはなおも上がって黙る。わかるよ?わかるけど腹が立つ。「何の試練ぞ神よ」と思う。それでも黙ったままこちらを見ている。切れてみる。それでも奴は黙っている。

 そのときである。今、もし今、目の前に玉のこめられた拳銃があったなら、玉がこめられて撃鉄の起こされた拳銃があったなら、撃つだろう。思わず、撃つだろう。きっと撃つだろう。と、瞬間頭を過った。

 そして、実感として、心から、わかった。そのとき、はじめて「銃、もしくはボタンひとつで発射されるような兵器類」を、心から、あってはならないと思った。それは、やられて困る被害者の立場からではない。使ってしまうであろう加害者の立場から、そう思ったのである

 簡単に人を殺傷できる道具をはびこらしてはならない。厳しく銃は規制すべきである。銃反対。核反対。兵器反対。間違いない。あれば使う。僕は使う。一瞬の激情で。

 なくてよかった。撃たなくてよかった。つまらぬ理由で「静かなる男」をあやめるとこでした。あいつはとてもいい奴だもの。

 今年も終わります。毎回たくさんの人が見に来てくれました。ありがとうございました。来年からはもっと身辺雑記なども交えつつ、ブログらしく、更新の頻度をあげたいと思っています。

 よいおとしを

コメント[3], トラックバック[0]
登録日:2007年 12月 29日 14:33:15

コメント

切々と真剣に書かれている感じがまたおかしい。
怒鳴り散らしつつ叫ぶとき
コントロールの及ぶ範囲をやや超えているのね。
彼が貴方をそうさせるなら
ボタンひとつで発射する兵器はまずいね。
そうさせるのはヤツ…というところでもうおかしい。
ひたすら修行のように耐える彼に、憤慨。
ああなんだろう。すごくおかしい。
殺されそうな勢いなんだ。
ふふっ。おかしいよう。
いいヤツなんだよねえ…。

というところで今年ももう、そろそろねえ…。
私ももう、そろそろねえ…。
澄さま、また来年もたくさん書いてね。

桜井浩子 @ 2007年 12月 30日 02:19:40

フォログが更新していると、なぜか安心します。
山下さんの感覚が、なんて言うか…浮ついてなくて
どこか私の奥のほうの不安材料をホッとさせてくれる。
身辺雑記…楽しみだな~(*^_^*)
それから、桜井さんのコメントもいつも澄さま愛に溢れていて読むのが楽しいです。
山下さんのフォログはお気に入り♪
コメント欄を覗くのもまた楽しみの一つです(*^_^*)
お体、大切にして下さいね(*^_^*)
更新があるのは元気な証拠…と思っていますから☆
今年もたくさんの"元気のもと"をありがとうございました(*^_^*)

静かなる男…そう言えばお芝居で
テンポの悪い会話のシーンで
山下さん殴る体勢してましたね(笑)…思い出した(笑)
おかしかったな~あのシーン。山下さんの気持ちがわかって(笑)
あんな感じなのかな~
反応が表に出ない人も色々複雑に考えてはいるのでしょうね。
あ~また『石のうら』観たくなっちゃった。

kiki @ 2007年 12月 30日 03:43:24

山下さんのフォログ見て、作演出家×役者Xファンで多くの人にいろいろな思いを残しているんだな・・と実感しました。
そして、とても身近に感じることができました。

その思いに込められて生まれだされるFICTION の劇。
まだ観ぬFICTION の劇を、来年の8月を楽しみに思いを膨らませています。

kumi @ 2007年 12月 30日 15:52:14

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山下澄人
FICTION WEB
FICTION構成員の日々
「FICTION 」主宰。映像監督作品に「ON THE ROCK」。季刊誌『真夜中』 (リトルモア)5号にエッセイ掲載中。劇についてのワークショップを時々開催中。

FICTION Vol.31「ディンドンガー」
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7月22日(水)から26日(日)
富良野 富良野演劇工場
9月 3日(木)4日(金)
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9月 6日(日)
札幌 シアターZOO
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